著者
明崎 禎輝 山﨑 裕司 野村 卓生 吉本 好延 吉村 晋 濱岡 克伺 中田 裕士
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-31, 2007-03-31 (Released:2018-09-05)
参考文献数
12

脳血管障害片麻痺患者79名を対象に,歩行自立のために必要な麻痺側下肢荷重率について検討した.下肢荷重率の測定には市販用体重計を用い,5秒間安定した保持が可能であった荷重量を体重で除し,その値を下肢荷重率とした.単変量解析では,年齢,麻痺側下肢筋力,下肢Brunnstrom stage,麻痺側下肢荷重率,深部感覚障害の有無において自立群と介助群間で有意差を認めた.ロジスティック解析の結果,麻痺側下肢荷重率のみが自立群に関係する有意な要因であった.Receiver Operating Characteristic曲線による曲線下面積を求めた結果,麻痺側下肢荷重率は自立群を有意に判別可能な評価方法であった.麻痺側下肢荷重率71.0%をカットオフ値とした場合,感度,正診率,陽性適中率のいずれも高い精度で自立群を判別可能であった.脳血管障害片麻痺患者における麻痺側下肢荷重率は,歩行自立度を予測する上で有用な指標と考えられた.
著者
大野 夏樹 中田 裕之 大矢 浩代 鷹野 敏明 冨澤 一郎 細川 敬祐 津川 卓也 西岡 未知
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

大規模な地震の発生後に地面変動や津波により生じた音波や大気重力波が電離圏高度まで伝搬し電離圏擾乱が発生することが知られているが,地震発生後の電離圏中での鉛直方向の伝搬を捉えた例は多くない.本研究で用いる HFドップラー(HFD)では, 異なる送信周波数(5.006,6.055,8.006,9.595 MHz)の電波を用いることで複数の高度での変動を観測することが可能である.国土地理院のGNSS連続観測システム(GNSS Earth Observation Network : GEONET)により導出されるGPS-TECのデータと合わせて,地震に伴う電離圏擾乱の変動について高度方向の変化に注目し,解析を行った.2011年3月11日 14:46(JST)に発生したM9.0の東北地方太平洋沖地震において,観測点( HFDの電波反射点)直下付近の地震計に変動が確認された.HFDでは地震計に表面波が到達した約9分後に菅平,木曽受信点の両データに変動を確認しGPS-TECでは約10分後に変動を確認した.津波から直接音波が到達するには約20分かかるため,変動初期の10分は地面の変動により励起された音波が上空に伝搬して発生したと考えられる。さらにHFD, GPS-TEC, 地震計のデータにより観測された擾乱の周波数解析を行った.地震計および比較的低高度電離圏で反射したHFDデータ(5.006,6.055 MHz)の変動は,3~20 mHzまで周波数成分を含んでいたが高高度で反射したHFDデータ( 8.006,9.595 MHz)は3~5 mHzの周波数成分が卓越していることが分かった.3~5 mHzは多くの地震に伴うTEC変動で卓越する周波数帯であり本イベントでも同様の変動が確認され,高高度で反射したHFDデータにおいて近い周波数成分をもつ変動が確認された.7~20 mHzの周波数成分は,地震波が励起した音波は高い周波数ほど高高度で減衰するため,8.006,9.595 MHzのデータでは変動が減衰したと考えられる.この変動について,他の受信点のHFDデータとGPS-TECデータ, 地震計データを用いて比較・解析を行っており,発表ではその結果について報告する予定である.
著者
松本 亮介 中田 裕貴 栗林 健太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-42, no.1, pp.1-8, 2018-06-21

スマートフォンや PC のモバイル化,SNS の爆発的普及に伴い,個人の Web サイトであってもコンテンツ次第でアクセスが集中する機会が増大してきている.我々は,サービス利用者に専門的な知識を要求せず,アクセス数や負荷に応じて反応的かつ高速にリソースをインスタンスに再割当てすることで,サービス利用者や事業者に手間を強いることなく突発的なアクセス集中に耐えうる FastContainer アーキテクチャを提案した.一方で,従来のホスティングサービスやクラウドサービスと同様に,インスタンスの収容サーバ障害時に,HTTP タイムアウトが生じない程度での可用性を担保しサービスを継続提供するためには,複数収容サーバに横断して,それぞれ複数インスタンスを立ち上げておく必要があった.そのため,利用者にとってはサービス利用コストの増加に繋がっていた.本研究では,HTTP リクエスト処理時において,単一のインスタンスであっても,収容サーバの状態に応じて自動的にインスタンスを別の収容サーバに再配置しサービスを継続させる,HTTP リクエスト単位での低コストで高速なインスタンススケジューリング手法を提案する.高速にインスタンスを再配置するために,Web サーバソフトウェア自体を拡張することなく,Web サーバプロセス起動時に実行されるシステムコールを監視して,起動完了する直前のシステムコール実行前の段階でプロセスイメージを作成しておくことにより,インスタンス再配置時には高速に Web サーバプロセスをそのイメージから起動させる.
著者
徳永 隆久 中田 裕子 田代 靖人 平山 匡男 日高 秀昌
出版者
財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
ビフィズス (ISSN:09142509)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.143-150, 1993 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16
被引用文献数
5

27名の健常者 (男21名, 女6名) を3群に分け, フラクトオリゴ糖 (FOS) 1g, 3g, 5g/日をそれぞれ2週間摂取させて腸内細菌叢および便通に及ぼす影響について調べた.その結果, いずれのFOS摂取水準においても, 便中のBifidobacteriumの菌数は有意に増加した (p<0.01またはp<0.05).また, 全試験期間中の被験者の便通状況を解析した結果, FOS摂取により排便回数の有意な増加と (p<0.05), 便の硬さが有意に軟らかくなる (p<0.01) ことが観察され, 便通の改善効果が認められた.
著者
鈴木 進太郎 中田 裕貴 松原 克弥
雑誌
コンピュータシステム・シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.22-29, 2022-11-28

クラウドサービスにおけるアプリケーション実行環境として広く活用されているコンテナ型仮想化は,不特定多数のユーザが単一のホスト内に同居するため,コンテナ間の隔離を強固にする必要がある.しかし,追加の隔離環境は,堅牢なコンテナ間隔離を実現する代わりに,コンテナの高速な起動という特性やアプリケーション性能が損なわれる.このトレードオフを解消するために,我々は異種 OS 機能連携によって OS カーネルの脆弱性を悪用した攻撃を回避し,異種 OS 固有のセキュリティ機能を利用できるセキュアコンテナの実現を目指している.本稿では,FreeBSD の OS 機能を活用した Linux コンテナ互換実行と FreeBSD 固有のセキュリティ機能の適用について検討し,異種 OS 機能連携による特定 OS カーネルを対象にした攻撃回避の実現可能性について議論する.
著者
中村 和之 酒井 英男 小林 淳哉 小田 寛貴 浪川 健治 三宅 俊彦 越田 賢一郎 佐々木 利和 瀬川 拓郎 中田 裕香 塚田 直哉 乾 哲也 竹内 孝 森岡 健治 田口 尚 吉田 澪代
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、14~16世紀のアイヌ文化の状況を明らかにすることである。この時期は、近世のアイヌ文化の成立期であるが、文献史料と考古学資料が少ないため、状況がわかっていない。そのため、漢語・満洲語・日本語史料の調査を行うと同時に、遺物の成分分析や年代測定、それに遺跡の電磁探査など、さまざまな分析方法で情報を収集した。その結果、14~15世紀の北海道でカリ石灰ガラスのガラス玉が発見された。本州でほとんどガラス玉が出土しないので、アムール河下流域からの玉と考えられる。この時期は、元・明朝がアムール河下流域に進出した時期に重なるので、北方からの影響が強くアイヌ文化に及んだことが推定できる。
著者
山梨 利顕 中田 裕久 児玉 和也 山田 勤 松尾 武文
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.981-985, 1990-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
17

マムシ咬傷により横紋筋融解症から, 急性腎不全を来し, 血液透析にて救命し得た症例を経験したので報告する. 患老は71歳の女性で, 昭和63年8月13日自宅にてマムシに左足蹠を噛まれ, 本院救急外来を受診し局所処置を受け帰宅した. その後左下肢の腫脹, 黒褐色尿を見るようになり, 次第に呼吸困難, 無尿を呈し8月16日内科入院となる. 意識は傾眠状態で, 左鼠径部以下の下肢の著明な腫脹, 左足蹠に血性水疱を伴う咬傷が認められた. 入院時検査では. BUN・Crの上昇と共に, GOT, GPT, LDH, CPK, ミオグロビンなどの筋由来と考えられる酵素群の上昇がみられ, マムシ咬傷による横紋筋融解症による急性腎不全と考えられた. 第1病日より血液透析を開始し, 計13回施行, 第18病日より尿量の増加と共に, 臨床症状の軽快を見た. 同時にミオグロビンや骨格筋由来の酵素値は急速に減少し, マムシ毒による横紋筋融解症は一過性のものと思われた. また経過中一過性の血液凝固異常がみられ, 蛇毒によるものと考えられた. 以上のことより, マムシ咬傷による横紋筋融解症から生じた急性腎不全は, 発症早期からの血液透析にて急性腎不全の状態を乗り切れば予後は良好であり, また一過性の血液凝固異常に対し, 体外循環時の抗凝固剤の使用には注意が必要なことが伺われた.
著者
中田 裕貴 松原 克弥 松本 亮介
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2020-OS-148, no.12, pp.1-8, 2020-02-20

近年,コンテナ型仮想化技術を用いて,マルチテナント向けクラウドコンピューティング基盤を実現する事例が増えている.コンテナ型仮想化システムでは,OS カーネルを共有しつつ,プロセス単位で OS リソースを多重化することで,各コンテナ環境を隔離する.しかし,隔離空間から抜けて,他コンテナに対しての攻撃が可能な OS リソースや機能が存在する.これらの利用は実行権限によって制限されているが,粒度が不十分である.従来,これらの OS リソースの制限をおこなうために,コンテナのセキュリティ機能を用いた制御,仮想マシンを用いた OS 多重化による隔離,ユーザランドにおけるネットワークスタックの再構築などの手法が提案されている.しかし,これらの手法は,設定が柔軟でなかったり,ネットワークのオーバヘッドを増大させる課題があった.本研究では,ハードウェア仮想化技術を用いつつ,OS を多重化せずに軽量かつ柔軟なネットワーク隔離手法を提案する.
著者
中田 裕久 土肥 博至 志田 隆秀
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.306, pp.115-125, 1981-08-30
被引用文献数
6

以上の検討結果, 以下のことが明らかとなった。No.1大学キャンパスにおける学生の認知スコアで示される認知領域は移転直後から急速に拡大し, ほぼ1ヵ月という短期間で安定し, その後はゆっくりと拡大する。No.2この期間, 移動経験(行動量)の多い集団ほど認知領域は大きく, その移動経験は集団の居住地と主要な目的地の生活空間に占める位置関係により決定される。No.3空間の認知のされ易さを示す認知度をみると, 認知領域の拡大傾向が空間側からも認められ, まず居住地および目的地の周辺, 次に両者を結ぶルートの近辺から外周へと拡大して行く。No.4また, 空間の認知のされ易さに関連する空間要因として, その空間の属する地区の機能, 地理的位置, 生活空間内での動線上の重要度, 空間自体の特質があげられる(表-13)。No.5空間の特質についてみると, エッジとなりうる池空間>滞留が可能であり利便である広場・ペデ>幹線道路の順で認知され易い。小さな自然(池), サブペデ, 補助道路についても, ほぼ同様な傾向が認められる。No.6評価については, 肯定的評価と否定的評価とに差異が認められ, 後者として指摘される空間は前者に比べて安定的でなく(頻度が低い), ルートに代表されるように行動領域の拡大と共に次から次へと発見される傾向をもつ。No.7肯定的評価の得られる空間には, 数多くの人々に評価される自然的景観や滞留できるスペースを持つ空間の他に, 特定個人に安定的に評価される空間(小自然, 緑道等)がある。No.8評価理由をみると, 肯定的評価空間は視覚レベル, 否定的評価空間は行動レベルに近い理由で評価される。これらの傾向から, 環境の認知・評価, 行動の構造について, 次のようにまとめることができよう。(I)環境認知と行動の関係(No.1〜No.3)環境の認知はごく短期間のうちに安定化し, その認知領域は移動経験と正の相関関係にある。従って, 一般の生活空間における居住者の認知領域は移動体験などの経験行動によって形成されているものであり, ある特定の時間帯や期間の行動とは直接的には結びつかないものと考えられる。(II)環境認知と評価の関係(No.4〜No.8, 表-14)肯定的評価空間は共有性が高い空間と共有性は低いが安定性が高い空間の2つのタイプが存在する。前者は居住者全体にとって高い認知レベルにあり, 接触の度合も高い。一方, 後者は居住者全体の認知レベルと関係の弱い個人的な空間であり, その個人にとって独占性(排他性)を満たすことのできる空間構成, スケールをもっている。否定的評価空間は, 日常行動と密接に結びついており, 特に共有性の高い空間は日常ルートに結びついた高認知空間である。(III)環境認知の構造化過程(No.3〜No.5, No.7)認知の早期段階では, ペデや幹線道路といったパス空間よりも池周辺などが認知され易いことから, ある特色ある空間構成や大きなスケールを有する特定のポイント(エッジやランドマーク)が認知され, それらの位置関係や方向性を基準にパスが形成され, パスを「知っている」と認識するプロセスで環境認知の構造化がなされるものと考えられる。なお, 以上の解析は, 一般の都市空間に比して, 限定的な機能をもつ大学キャンパスというセッティングにおける学生という特異な集団を扱ったものであり, また, 環境的にも池, 広場, ペデ, 樹林地等の豊かな空間条件下における検討結果でもある。これらの制約を緩めて行くことが今後の課題であると考える。文末ながらHSNO 1並びにHSNO 2調査実施に当り, インタビュー調査を担当していただいた筑波大都市研究会の学生諸君, そして調査・集計の一連の解析を手伝っていただいた筑波大生柿下智子君に謝意を表わす次第である。
著者
原 敦子 深堀 範 中田 裕子 福島 千鶴 松瀬 厚人 河野 茂
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.574-577, 2006
被引用文献数
2

症例は21歳,男性.夕食摂取後に突然のくしゃみ,咳嗽,鼻閉を伴った呼吸困難が出現し,救急外来を受診したところ,低酸素血症,高炭酸ガス血症を認め,全肺野で笛声音を聴取し,顔面・前胸部・四肢に膨疹を認めた.夕食は市販の粉を使用して作ったお好み焼きであり,この粉は数カ月前に一度開封した後,室温で保存されていたものであった.皮膚プリックテストでは原因となったお好み焼き粉とハウスダストに対しては陽性であったが,開封直後の粉に対しては陰性であった.そのほか免疫学的精査の結果から,お好み焼き粉に混入したダニが原因のアナフィラキシー症例であったと考えられた.
著者
竹久 洋子 前田 環 中田 裕二
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.17-22, 2007

一般的な医療現場における有効な手洗い方法を明らかにするために,看護学生を対象とした示指細菌数の測定と手洗い効果判定を行った。手洗いの方法は,通常石鹸,0.1%塩化ベンザルコニウム液,通常石鹸+0.1%塩化ベンザルコニウム液,70%エタノール,ウエルパス,市販薬用石鹸の6通りを比較した。手洗い前後の菌数の比較では,0.1%塩化ベンザルコニウム液,通常石鹸+0.1%塩化ベンザルコニウム液,70%エタノール,ウエルパスについてはそれぞれ手洗いの後に有意に細菌数が減少していたが,通常石鹸・市販薬用石鹸では有意な減少が見られなかった。また,示指に存在する抗生物質(アンピシリン,カナマイシン)耐性菌の構成率を測定し,耐性菌の存在が確認された。以上より,各段階における結果を踏まえた上でより有効な手洗い方法を確立していくことが重要と考える。
著者
津川 卓也 齋藤 昭則 大塚 雄一 西岡 未知 中田 裕之 齋藤 享
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

国内外のGPS受信機網データから、電離圏全電子数や電離圏擾乱指数、GPSロック損失率等の2次元マップを作成し、データベース化した。これらのデータを用い、伝搬性電離圏擾乱やプラズマバブル等の電離圏擾乱の統計的性質を明らかにすると共に、衛星測位への影響について調べた。日本上空については、全電子数リアルタイム2次元観測を開始し、東北地方太平洋沖地震後に津波波源から波紋状に拡がる電離圏変動の詳細を世界で始めて捉えた。
著者
庄子 聖人 中田 裕之 鷹野 敏明 大矢 浩代 津川 卓也 西岡 未知
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

地震や台風、火山噴火などの下層の現象に伴い、大気波動が生じ、これによって電離圏擾乱が引き起こされることが知られている。火山噴火に伴い、大気波動が生じることは知られているが,火山噴火に伴う電離圏擾乱の観測事例はそれほど多くない。そこで本研究では、火山噴火に伴う電離圏の変動について、全電子数(Total Electron Content(以下TEC))を用いて解析を行った。本研究では、国土地理院のGNSS連続観測システム(GNSS Earth Observation Network : GEONET)より導出されたTECデータを使用した。また、電離圏貫通点は300kmと仮定した。解析に用いたデータは、GEONETの受信点1200点、衛星仰角30度以上の30秒値である。解析対象は桜島で発生した火山噴火4事例(2009年10月3日7時45分(UT)、2012年9月19日1時7分(UT)、2012年12月9日20時25分(UT)、2014年2月12日20時21分(UT))である。噴火の規模は東郡元における空振計データにより評価した。それぞれの事例においてTEC変動を抽出したところ、空振計の圧力変動が大きいほど、TEC変動が大きい事例が多かった。エネルギーが火口からの距離応じて減衰していくため電離圏の変動が火口からの距離と逆相関関係を取ると考えられる。そのため、TEC変動と火口から貫通点までの距離との相関を求めた。その結果、4事例中1事例で距離との逆相関関係はみられたが、3事例は相関関係がはっきりしなかった。これは磁場の影響と、変動の波面と衛星-受信機の視線方向が直角でない2つの影響によるものであると考えられる。これらの影響を取り除くために音波レイトレーシングのデータを算出し補正行った。補正したデータに対し、補正前のデータと同様にTEC変動と火口から貫通点までの距離との相関を求めたところ、4事例中3事例で補正前と比べTEC変動と火口からの距離との間に強い逆相関関係が確認された。しかし、補正したデータにおいて全体の傾向と比べ高い値を示したデータがいくつかみられた。これらのデータはTEC変動に対する磁場の影響を取り除くための補正が他のデータと比べ大きくかかっている傾向がみられたため、補正が効きすぎているのではないかと考えられる。以上の結果より、火山噴火の規模とTEC変動の間には定量的な関係があると考えられるが、多くの場合は磁場と視線方向の影響を補正する必要があることが明らかとなった。
著者
中田 裕康
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.1, pp.4-8, 2007 (Released:2007-07-13)
参考文献数
27

GPCR型プリン受容体のサブタイプの一種であるA1アデノシン受容体の精製の際,アデノシン受容体とP2受容体の特異性を併せ持つハイブリッド的タンパク質(P3LP)を見出しましたが,これが私のGPCRダイマーの研究に携わるきっかけでした.P3LPの特性を再現すべくアデノシン受容体とP2受容体のヘテロダイマーを培養細胞や組織を用いて発現させて解析したところ,いろいろ面白いことがわかってきたのです.また,その他のプリン受容体でもダイマー,もしくはオリゴマーの形成が観察されました.このようにGPCR型のプリン受容体間のダイマー形成はさまざまな様式で受容体の活性調節をつかさどることが示唆されます.
著者
鷹野 敏明 大矢 浩代 中田 裕之
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

高層の淡い雲の構造・性質解明を主目的に、研究代表者らは高感度高分解能のミリ波レーダ FALCON-I (FMCW Radar for Cloud Observation-I)を開発・運用してきた。この装置は従来のレーダに較べて周波数が 95 GHzと高く、空間分解能や感度が優れており、またドップラー測定の精度も高いことが特徴である。 FALCON-I を用いて、過去 10 数年にわたって地上から高度 20km までの範囲で、陸および海洋で雲や雨の観測を実施してきた。これらの観測を通じて FALCON-I では大気中に浮遊する昆虫などが観測できることが示された。そこで、FALCON-I などの新しい手段を用いて、どこまで小さい浮遊物が検出できるか、その計数、サイズ分布、時間および高度分布、季節変化を探索・解明する手法を創設することが本研究の目的である。初年度の 2018年度は、9月末から 10月初めにかけて、空中浮遊物を採集する係留気球実験を実施し、FALCON-I で得られるエコーデータとの比較を行った。また、これまでに行った春・秋・冬の空中浮遊物採集実験の結果の解析・整理を行った。その結果、大きさが 0.5mm 程度以上の浮遊物体は、もれなく FALCON-I で検出できていること、これまでに行った春・秋・冬の季節と比べて、2018年度 9・10月の空中浮遊物の空間密度は 1.5倍高いこと、気温が低い冬期は浮遊物体の空間密度が 1/5 程度となること、などが明らかになった。2019年度はさらに解析を進めるとともに、地上から上空までの風速・風向と大気浮遊物体の空間密度の相関などについて調べた結果、風が弱い場合のほうが大気浮遊物体の空間密度が高いことが分かった。さらに風の様子のシミュレーションなどを行い、大気浮遊物体が受ける影響を評価し観測結果と比較検討を進めた。
著者
木村 純子 野田 恵子 楠田 康子 林原 礼子 近藤 泰子 白川 孝子 桜井 宏子 横手 香代 細澤 仁 中田 裕久 馬場 久光
出版者
神戸大学保健管理センター
雑誌
神戸大学保健管理センター年報 (ISSN:09157417)
巻号頁・発行日
no.23, pp.83-88, 2003-04

神戸大学で,2年次学生を発端者とする結核集団感染が発生した。その後の調査により,この学生が神戸大学に入学する2ヶ月前に,高校3年次の同級生が'排菌'を伴う結核で入院していた事が判明した。また,他の大学に進学した当時の同級生2名と副担任1名も,神戸大学における発端者とほぼ同時期に結核を発病していた。結核菌のDNA分析により,神戸大学における結核集団感染の発儒者と同級生2名および副担任1名の起炎菌は同一株と判明し,これら4名の者は全て,高校3年次の患者から感染し,約1年~1年半を経て発病したものと考えられた。翌春,新入生全員 (3,871名)に「入学以前の結核感染の機会」など'結核'に関する質問項目を含む健康調査を実施した。調査用紙を提出した3,797名(回収率 98.1%)の中に,「結核治療中の者」はいなかったが,「過去に結核の治療を受けた者」が14名(0.4%)存在した。また,「結核で入院したり,入院している人が周囲にいる者」が118名(3.1%)〔(1)現在5名,(2)過去1年以内36名,(3)過去1~2年16名,(4)3年以上前61名〕存在した。神戸大学における事例や,結核菌感染から発病までの一般的な期間に鑑み,(1)~(3)の計57名は,新入生健康診断時の胸部X線撮影では異常がなくても,在学中に結核を発病する可能性の高い集団と考えられた。以上のことから,新入生に対して「入学以前の結核感染の機会」について調査することは, 発病の可能性の高い学生を予め把握し,結核集団感染を未然に防ぐ上で極めて有用であると考えられた。