著者
大隅 智之 清水 博之 小室 治孝 川田 智子 井上 明子 喜古 康博 岩瀬 滋 西川 正憲
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.125-131, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
22

病院職員の集団接種において,mRNAワクチンであるBNT162b2接種後の副反応とIgG抗体価の関連について調査した.副反応は自己申告形式の調査票を用いて2回目接種の副反応の程度を,抗体価は2回目接種の9週間後のスパイク蛋白に対するIgG抗体価の変動を用いて検討した.調査対象者は228名であり,発熱,倦怠感,頭痛の程度とIgG抗体価の上昇に関連が認められた.対象者の年齢を45歳未満と45歳以上に群別すると,45歳未満群では倦怠感,45歳以上群では発熱とIgG抗体価の上昇が関連していた.IgG抗体価と接種後の一部の副反応の程度には関連がある可能性が示唆された.
著者
井上 明星 板橋 健太郎 濱中 訓生 井本 勝治 山﨑 道夫 坂本 力 岩井 崇泰 川上 光一 小林 久人 村田 喜代史
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.99-106, 2019 (Released:2019-11-22)
参考文献数
15

[背景]Fibromatosis colliは新生児の頸部腫瘤で斜頸の原因となる疾患である.過去に多くの画像所見が報告されているが,その画像所見は日齢に応じて変化する可能性がある.[目的] 本研究の目的はfibromatosis colliのUSとMRIの画像と検査時の日齢をと画像所見を検討し,その多様性を明らかにすることである.[対象と方法]対象は臨床的にfibromatosis colliと診断された13症例(M:F=6:7)である.超音波検査が12例に対して21検査(8例に1検査,1例に2検査,1例に3検査,2例に4検査),MRI検査が5例に対して7検査(3例に1検査,2例に2検査)が行われていた.USでは,長軸像における患側の胸鎖乳突筋の最大径,健側と比較した胸鎖乳突筋の輝度,筋束の不連続性,胸鎖乳突筋内の低輝度域,MRIでは胸鎖乳突筋の最大径,T2WIでの胸鎖乳突筋の高信号域のパターン(斑状またはびまん性),胸骨頭および鎖骨頭の腫大の有無を評価した.4例のUS,2例のMRIについて画像所見の推移を評価した.[結果]USが行われた12例中,胸鎖乳突筋の高信号を12例,筋束の不連続性を4例,胸鎖乳突筋内の低輝度を8例に認められた.MRIが行われた5例中,斑状高信号が2例,びまん性高信号が3例,胸骨頭の腫大が4例,鎖骨頭の腫大が1例に認められた.胸鎖乳突筋の最大径と検査時の日齢の間に有意な相関を認めなかった(R=0.111).USでの経過観察で,胸鎖乳突筋の輝度は4例中2例,筋束の不連続性は1例中1例,胸鎖乳突筋内の低輝度域は4例中2例で改善を認めた.[結論]Fibromatosis colliのUSおよびMRI所見は時間経過とともに変化すると考えられた.
著者
井上 明人
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.59-66, 2009

ゲームを理解させていくプロセスにこそ注目をしていくようなゲーム観やゲームデザイン観を「チュートリアリズム」と名付け、こうしたゲームデザイン観が1980年代前半の日本ゲーム市場の持つ歴史的な偶然性から発達してきた可能性について提示し、このようなゲームデザイン観の可能性と問題について素描した。
著者
堀辻 麻衣 森田 美穂 井上 明典 北谷 典丈
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.181-187, 2019

<p>近年,コットン等にとってふきとるような動作で使用する,「ふきとり化粧水」の効果や重要性への注目度が高まっている。ふきとりに際して使用する液や日常のスキンケアに対する「ふきとり行為」の追加が皮膚に与える作用については報告があるものの,コットンによるふきとりという行為が皮膚に与える影響とそのメカニズムを解明するには,さらなる検討が必要であった。本研究では,この行為に着目し,ふきとりの作用と機能を明らかにすることを目的として,コットンによるふきとりとパッティングが皮膚状態および皮膚成分に与える作用を比較した。2週間の連用試験の結果,ふきとりを行った部位について,試験開始前のメラニンインデックスが高い測定参加者ほど値の低下が大きかった。さらに,コットンに付着した角層由来タンパク量について,パッティング使用した場合と比較して,有意に多いにもかかわらず,角層厚に変化はみられなかった。これらの結果から,ふきとり行為にはメラニンを含む角層の除去と同時に新たな角層の生成を促進する機能があることが示唆された。さらに,ジヒドロキシアセトンを適用した人為的なサンレスタンニング部に対する適用試験により,ふきとりの角層交換促進作用が確認された。本研究により,コットンによるふきとりが角層交換促進機能を有し,これによって色素を含んだ角層が減少することで,皮膚色を明るくする作用を発揮していることが示された。</p>

3 0 0 0 OA Unhappy Triad?

著者
阿部 隆伸 堀部 秀二 野口 蒸治 副島 崇 有吉 護 井上 明生
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.1363-1365, 1993-09-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
6

In 1950 O'Donoghue called attention to “that unhappy triad which comprised (1) rupture of the medial collateral ligament, (2) damage to the medial meniscus, and (3) rupture of the anterior cruciate ligament” and recommended early surgical intervention.Ten patients with arthroscopically confirmed acute (<1 month) tears of the medial collateral ligament (MCL) and anterior cruciate ligament (ACL) were identified. There were 9 men and 1 woman with an average age of 33.4 years (range; 17-52 years).There was a 50% incidence (5 knees) of lateral meniscal tears. Of these, 1 knee had an associated medial meniscal tear. There were only 2 knees (20%) with medial meniscal tears. Chondral injuries to the lateral compartment were noted in 4 cases. There were 3 knees without meniscal tears and chondral injury.We conclude that the “unhappy triad” is an unusual clinical entity with knee injuries and may be more accurately described as a triad consisting of ACL, MCL, and lateral meniscus tears.
著者
根本啓一 高橋正道 林直樹 水谷美由起 堀田竜士 井上明人
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2013-GN-87, no.17, pp.1-8, 2013-03-11

近年,自発的・持続的な行動変革を誘発するためのアプローチとして,ゲーミフィケーションというアプローチが着目されている.ゲーミフィケーションとは,ポイントやランキングに代表される,ゲームに利用されてきた様々な要素や仕掛けを現実世界の活動に援用するアプローチである.このゲーミフィケーションを活用して,多数のユーザの行動変容を促すことで,社会的な課題を解決する活動なども生まれている.本稿は,このような社会的課題の解決にゲーミフィケーションを活用することに関するものである.従来のゲーミフィケーションは,ウェブ作成者など特定の作者が作成した仕組みを使って,ユーザに対して特定の行動を喚起するために利用されることが多かった.しかし,個々のユーザやコミュニティが抱えている課題は多種多様であるため,課題解決の観点では,従来の方法では本質的課題を捉えることが難しい.課題を抱えるユーザ自身が行動をデザインすること,必要に応じて改良を施していくことが可能な参加型の仕組みが必要である.そこで,課題を持つユーザ達自身による課題解決のための自発的・持続的な行動の設計と実行をゲーミフィケーションのアプローチを利用して支援する仕組みを提案する.我々は,参加者が自らの課題に取り組むためのゲームを設計するワークショップを設計・実践し,さらに,そのアイデアをゲームにして実行に移すことができる,ゲーミフィケーション・プラットフォームと呼ぶウェブサービスを試作した.ゲーム作りのワークショップを計 3 回実施し,48 名が参加した.プラットフォーム上には 9 つのゲームが作成され,課題プレイを通じて,827 個の行動がなされた.本論文では,これらの結果をふまえ,動機付け,能力,誘因という 3 つの観点から自発的・持続的な行動を生み出すための課題について考察する.

3 0 0 0 OA 眼性斜頸の2例

著者
長谷川 善廣 井上 明生 奥野 徹子 村山 哲郎 楢原 知啓 大橋 輝明 宮崎 正樹
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.1397-1400, 1986-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
7

Two cases of ocular torticollis were reported. One case was a 3-year-old female, and another case was an 8-year-old male. These cases had been diagnosed by orthopedic surgeons as a habitual torticollis. They were introduced to our university hospital because their torticollis position had not been improved after three years old.It was revealed by examination that sterno-cleido-mastoid muscle and range of motion was normal. Their torticollis position was improved by Patch test on one eye and Bielshowsky head tilt test was positive. These findings suggested that it was due to ocular torticollis. They were treated by an ophthalmologist and improved.
著者
井上 明子 井上 有史 鈴木 節夫 渡辺 裕貴 八木 和一 清野 昌一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1157-1162, 1989-11-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

成人てんかん患者200人に意識調査を行い, 悩みについて分析した. 悩みとして選択された項目をクラスター分析により8種に分類した. 1. 発作をめぐる悩みはもつとも多く, 続いて, 2. 社会の無理解, 3. 結婚の悩み, 4. 就職の悩み, 5. 抗てんかん薬の副作用, 6. 治療継続の負担, 7. 対人関係・性格の悩み, 8. 日常生活・家庭での悩み, の順であつた. 1の発作をめぐる悩みはさらに3群, 1)発作発生の予測困難, 発作中の行動の不安, 2)社会を意識した悩み, 3)身体へ向かう悩み, に分けられた.これらの悩みの選択と, 患者の病態および調査票の他の質問項目の回答との関係を検討し, てんかんの心理社会的問題の背景を考察した.
著者
香川 貴志 井上 明日香
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.136-144, 2016 (Released:2016-03-15)
参考文献数
18

国際地理オリンピック(iGeo)は,主に高校生が選手として出場する競技会で,最近では国際地理学会議(IGC)の地域大会の開催地で毎年催されている.日本は長らく苦戦を続けていたが,直近の2015年8月にロシアのトヴェリで開催されたiGeoでは,代表選手の全員がメダルを獲得するという史上初の快挙を成し遂げた.その背後には,日本代表選手の選考にあたっての選抜試験の工夫,代表選手に対する強化研修の取り組みなど,成績の改善に向けた不断の取り組みがある.本稿では,前者に焦点を当てて,2015年における3次試験の内容を紹介し,地理教育を改善していくための一助としたい.
著者
秋吉 英雄 井上 明日香 濱名 昭弘
出版者
島根大学
雑誌
島根大学生物資源科学部研究報告 (ISSN:13433644)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.7-16, 2001-12-20
被引用文献数
1

Background/Aims: Teleost livers are classified into two groups by histochemical properties in hepatocytes. One group contains the abundant glycogen, and the other contains the lipids in hepatocytes. The hepatic metabolism is in intimate connection of hepatic blood circulation and biliary pathway. We have studied on the correlation between behavior and histological components in livers by histochemical technique. Methods: Fifty species marine teleosts were collected from the local coasts of Shimane Peninsula and Oki Island. Livers were fixed by perfusion with paraformaldehyde, and observed by light microscopy in Osmium staining for lipid and PAS staining for glycogen. Sinusoids and vascular beds in blood capillaries were identified by immunohistochemistry for α-smooth muscle actin. Results: The lipid-rich livers had 13 fishes, the glycogen-rich livers had 33 fishes and both glycogen and lipid livers had 4 fishes. Hepatopancreas had 26 fishes. The glycogen-rich livers were well developed both the sinusoidal blood system and the bile ductal system. In contrast, the lipid-rich livers were poor developed of the sinusoidal capillaries. Conclusions: The present study indicates that there were differences in the pattern of hepatic histochemical components with different moving habits. A group of streamlined and well move fish has glycogen-rich liver, and a stocky body and poor move fish that live in the bottom of the sea, has lipid-rich liver.13;13;肝臓は生体を維持する上で中心的な役割を担う臓器で,身体へのエネルギ−供給と様々な消化吸収物質の処理を行う等,多様な代謝機能を有している.また,身体を構成するタンパク質の合成,糖原および脂質の貯蔵等の有機物質代謝,鉄・カルシウム等の無機物質代謝,ビタミンおよびホルモン代謝,胆汁産生,解毒排出など,その働きは多岐に渡っている.13; 一般に動物の運動能力は生体におけるエネルギ−産生系で作られたエネルギ−量に左右されており,常に遊泳している魚種は,海底にじっとしている魚種に比べ,消費エネルギ−量は大きい.このエネルギ−供給源となる糖・脂質の貯蔵様式はそれぞれの魚種の食性に直接影響をうけている可能性が高く(1−3),エネルギ−産生系に関連した肝細胞内における貯蔵物質の生化学的組成の質・量的な変異が各魚種間で存在することが推察される.一方,この貯蔵物質の質・量的変異は,成長過程(4)および繁殖(5,6),越冬(7)など魚の生活サイクルの中でも変動することが知られているが,その変動の幅と肝臓機能との相関関係は未だよく解っていない.13; 脊椎動物の肝臓は,一般に糖代謝すなわちグリコ−ゲンを主体としたエネルギ−代謝系を構築しているが,魚類から哺乳類に至る動物の中には,積極的に糖質から脂質転換を行って,トリグリセリド(TG)の形で肝臓に貯蔵し,このTG がβ−酸化を経てTCA サイクルに取り込まれて,エネルギ−代謝系を構築しているグループが存在する(8,9).このTG を主体とした貯蔵様式をとっている脂肪性肝臓は,病態時(10−12)におけるいわゆる脂肪肝(Fatty change)または脂肪変性(Fatty regeneration)とは明らかに異なっており,その成立要因はほとんど解明されていない.13; 脂肪性肝臓を有する代表的な動物種は軟骨魚類,硬骨魚類の一部であり,両棲類幼生であるオタマジャクシをはじめ,ヒト胎児期のある一定時期においても脂肪性の肝臓を有している(13).特に魚類の肝臓は,組織学的に主としてTG が貯蔵された脂肪性肝臓とグリコ−ゲンの貯蔵を主体としたグリコ−ゲン肝を有する群に2分され,それぞれの代謝系は肝内微小循環系(14)および胆管系(15−18)と密接に連動して機能している.13; 今回,海水産硬骨魚類50種の肝臓を用いて,魚類の行動と肝臓の組織生化学的特性の相関関係を解明することを目的に,光学顕微鏡によって形態学的に観察した.焦点は,肝臓内の生化学的特性とコレステロ−ルおよび脂質代謝に関与した胆道系と微小血液循環系の形態学的特徴に注目し,魚の生態および行動に関連した若干の考察を加えたので報告する13;
著者
香川 貴志 井上 明日香
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.136-144, 2016

国際地理オリンピック(iGeo)は,主に高校生が選手として出場する競技会で,最近では国際地理学会議(IGC)の地域大会の開催地で毎年催されている.日本は長らく苦戦を続けていたが,直近の2015年8月にロシアのトヴェリで開催されたiGeoでは,代表選手の全員がメダルを獲得するという史上初の快挙を成し遂げた.その背後には,日本代表選手の選考にあたっての選抜試験の工夫,代表選手に対する強化研修の取り組みなど,成績の改善に向けた不断の取り組みがある.本稿では,前者に焦点を当てて,2015年における3次試験の内容を紹介し,地理教育を改善していくための一助としたい.
著者
井上 明人 高橋 志行
出版者
一般社団法人 日本デジタルゲーム学会
雑誌
日本デジタルゲーム学会 年次大会 予稿集 第13回 年次大会 (ISSN:27586480)
巻号頁・発行日
pp.51-56, 2023 (Released:2023-03-30)
参考文献数
33

本稿では文献レビューを通して、ゲーミフィケーションの倫理的ガイドラインに、どのような内容が多く提案される傾向にあるかを示し、この作業を通じてゲーミフィケーションに取り組む運営者が、実際に配慮すべき現時点の方向性を提供する。また、ゲーミフィケーションに係る倫理的ガイドラインの限界についても見通しを提示する。最後にゲーミフィケーションのガイドラインとして必要最低限と思われる水準の案を提示する。
著者
窪田 諭 井上 明日香 関 和彦 安室 喜弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
インフラメンテナンス実践研究論文集 (ISSN:2436777X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.224-232, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
17

国土交通省は,橋梁の維持管理の効率化と高度化を図るために,3次元モデルの活用を推進している.既設橋梁においては,紙図面から精確な3次元モデルを生成することは容易ではない.また,図面が残されていない橋梁も多く,点検時に図面を参照することや点検結果を図面に記録できない課題がある.本研究では,3次元モデルを維持管理に関する情報を記録するための基盤とすることを目的として,地上型レーザスキャナ,UAV搭載型カメラとMobile Mapping Systemにより実橋を計測したデータから生成した点群データにパラメトリックモデリングを適用し,3次元モデルを構築する手法を提案した.各計測機器により取得した実橋の点群データを用いて提案手法を検証し,データが一部欠損していても3次元モデルを構築できることを示した.
著者
渋谷 雄平 井上 明 河上 靖登
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.432-436, 2006

<b>目的</b>&emsp;フィブリノゲン製剤納入先医療機関名の公表に伴い,神戸市では相談窓口の設置に加えて C 型肝炎ウイルス(以下 HCV)の無料検査(年齢制限及び HIV 同時検査なし)を実施した。それらの分析結果より今後の C 型肝炎対策についての一考察を加えた。<br/><b>対象と方法</b>&emsp;平成16年12月,保健所,各区役所保健福祉部など市内12箇所に相談窓口を設置するとともに,「平成 6 年以前に,公表医療機関で出産や手術等の際に出血のためフィブリノゲン製剤を使用された可能性がある神戸市民で,その後 C 型肝炎検査を一度も受けられていない人」を対象として,平成17年 3 月末まで HCV 検査を実施した。HCV 抗体を測定し,陽性の場合は HCV-RNA にてウイルスの有無を確認した。<br/><b>結果</b>&emsp;(相談件数・内容について)3,717件の「相談」があり,女性3,145件(84.6%),男性572件(15.4%)と女性が圧倒的に多かった。相談内容の主なものは,「肝炎検査について(検査場所,費用等)」,「過去に出産・手術をしたが大丈夫か」等であり,国の中間集計と同じ結果がみられた。<br/>&emsp;(C 型肝炎検査について)1,372人が検査を受け,女性1,165人(84.9%),男性207人(15.1%)と,「相談」と同様に女性が 8 割以上を占めた。HCV 抗体陽性は32人(陽性率:2.3%)で,その内 HCV-RNA 陽性者は13人(陽性率:0.95%)であった。持続陽性者は60歳代で 7 人と最も多かったが,30歳代でも男性 1 人を認めた。平成13年の非加熱血液製剤の使用医療機関公表時の実績(HCV 抗体陽性率:8.2%)と比較すると,今回の抗体陽性率は有意に低かった(<i>P</i><0.01)。HCV-RNA 陽性率を節目検診(平成15年度)と比較してみると,女性では低く(0.60%),逆に男性では高い傾向がみられた(2.90%)。特に69歳以下の男性では有意に高く(<i>P</i><0.05),節目外検診における HCV-RNA 陽性率にほぼ匹敵していた。<br/><b>結論</b>&emsp;「相談」・「検査」共に女性が多かったことが特徴的であったが,フィブリノゲン製剤は過去に外科的手術だけでなく,出産時にも頻繁に使用された経緯があるためと推察された。この公表を契機として肝炎対策を一層推進するために実施された今回の措置は,大規模な節目外検診として有益であった。今後も年齢に拘らず,C 型肝炎の感染リスクのより高い者を対象として,積極的に検査の普及啓発を展開していくことが適切な対応と思われる。
著者
庄司 昭伸 井上 明子 谷 幸子 木下 香里 武林 亮子 西田 則彦 柏谷 久美 不破 順清 山田 英幸 野村 正和
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.481-491, 1999 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

セリシンを定着させたブラジャーを用いて, ブラジャーが接触する部分に皮疹がみられるアトピー性皮膚炎患者および接触皮膚炎患者計31例を対象に着用試験を実施した. 着用期間は1ヵ月とし, 担当医師が記入する調査表と, 1ヵ月着用後に患者が記入する着用アンケートの両方から観察結果を得た. その結果, 調査表より, 全般安全度については観察しえた20例全てが安全と判定された. 有用率は, 極めて有用5例 (24%), 有用8例 (38%), やや有用7例 (33%), 有用性なし1例 (5%), 好ましくない0例 (0%) であった. 着用アンケートより, ブラジャーが接触しない部分の皮膚症状に比べ, x2検定にてブラジャーが接触する部分のかゆみ (p<0.01), チクチク感 (p<0.05), ヒリヒリ感 (p<0.01) の改善率は有意に高かった. (皮膚, 41: 481-491, 1999)
著者
広松 聖夫 井上 明生 木下 斎 境野 昌範 諌山 照刀 奥野 徹子
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.436-445, 2013-09-25
参考文献数
16

「はじめに」変形性股関節症の進行・末期例に対するキアリ骨盤骨切り術においては,術後に関節裂隙の開大が得られないことがある.我々はこのような症例に対してはJiggling(股関節を貧乏ゆすり様に小刻みに動かす運動)を指導している.今回この効果について検討した.「方法」対象は2000年より当院で手術した385股のうち術直後に関節裂隙の開大が見られないか,もしくは経過中に関節裂隙の狭小化が生じた症例92股であり,これらの症例に対し頻回のJigglingを指導した.その結果65股(70%)の症例でX線上関節裂隙の開大を認めた.「考察」関節軟骨修復再生の促進については古くはSalterのCPMの実験が有名であるが,Haradaらはラットの尾骨切断面に機械的摩擦刺激を加えることで硝子様軟骨が生じたことを報告している.変股症の治療成績向上のためには関節構造の改造だけでなく軟骨修復再生の促進という新しい視点も必要であると考える.
著者
広松 聖夫 木下 斎 井上 明生
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.389-395, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

[はじめに]変形性股関節症に対する各種温存手術の後,関節症変化が進行してきたときの対応には,いろいろの方法があるが,今回は特にわれわれが保存療法として勧めているジグリング(貧乏ゆすり様運動)の成績を検討した.[対象と方法]温存手術の後,関節症変化がいったんは良くなったものの再び悪化してきた症例,および術後3年以上たっても改善してこない症例を対象に,一日2時間以上のジグリングを指導し,6か月ごとに追跡し,関節裂隙の開大とともに症状,主としてJOA score疼痛点の改善で評価した.[結果]対象になったのはキアリ手術術後29関節,寛骨臼回転骨切り術後4関節,棚形成術術後3関節の合計36関節で,そのうち著明に改善したのは17関節47%であった.[結語]変形性股関節症に対するキアリ手術の成績向上のために考案したジグリングは,温存手術の成績不良例にも試しみる価値のある治療手段であることがわかった.