著者
井上 雅夫 藤野 陽三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.14-26, 2010
被引用文献数
2

2007年8月の米国ミネソタ州での鋼トラス橋落橋事故の社会的影響を行政機関等の資料に基づき総括的に調査整理した.その結果,1)事故は,直接損失および間接損失(交通迂回損失,経済損失)に加え,橋梁の安全性に関する国民の不安を生んだ.その不安を受け,全米での道路橋の緊急点検,点検厳格化の連邦法案,連邦および州による追加的な橋梁改築などの多様な追加安全対策(事故前より安全の水準を引き上げ)が講じられている.2)追加安全対策は,全米で実施され,時間的にも事故から10年程度あるいは永続的に実施されるものもあり ,その総額は,直接および間接損失よりかなり大きい.3)追加安全対策のなかには,点検厳格化の連邦法案など合理性に問題があると指摘されている対策もあることがわかった.
著者
米田 健一 井上 雅央 一ノ瀬 浩史 高藤 晃雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.245-250, 2005 (Released:2006-02-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

In mountainous regions of Japan, some people grow grapes for personal consumption. Damage to grapes caused by birds is serious in many such areas. At present, the only effective method against bird damage is to install physical barriers, such as nets, around or over vineyards. To install nets easily and safely, we designed a new grape cultivation method: the trellis height is equal to the width of a simple commercially available net (1×50 m, 12 g/m2). Using the new cultivation method, we evaluated its bird damage prevention effect and working efficiency. Results showed that: 1) net installation was easy and safe; 2) nets installed only on the lower edges of the trellis reduced bird damage effectively because brown-eared bulbuls (Hypsipetes amaurotis), a main bird that damages grapes, tended to invade the vineyard from under the trellis; 3) nets installed both on upper and lower sides of the trellis perfectly prevented bird damage. These results suggest that this is applicable as an effective method against bird damage to grapes in these areas.
著者
井上 雅友 渡邉 勇太 島田 達郎 山内 将行 田中 衞
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.547, pp.43-48, 2006-01-17
参考文献数
8

本論文では, 離散時間型セルラーニューラルネットワーク(DT-CNN)を利用し, 学習によって得られたデータをもとに時系列データの予測方法を提案している. 予測に用いられるモデルは連立微分方程式であり, その係数はDT-CNNの状態方程式の平衡解から得られる. 機械学習によって得られたAテンプレートは時系列が多系列になるにつれて密行列になる. そこで, ハウスホルダ変換(HHT)を用いてAテンプレートを3重対角化することにより疎行列にし計算の小規模化を実現している. 時系列データにはChua回路のカオスアトラクタを用いている. シミュレーション結果では, 本提案手法を用いて観測されたデータから十分にアトラクタの予測が可能であることを示している.
著者
井上 雅勝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第11回大会
巻号頁・発行日
pp.73, 2013 (Released:2013-11-05)

(a) 藤田が今井を殴った吉田を誉めた。という固有名詞を含む構造的曖昧文の理解において、関係節主要部(e.g. ,吉田を)での再解釈のための処理負荷(ガーデンパス (GP) 効果)が大きくなる現象 (井上, 2008) については、語句間の何らかの共起関係が高いことによって単文が選ばれやすくなったことに基づくという説明も可能である。この可能性を排除するため、本実験では、 (b) A男が今井を殴った吉田を誉めた。のように、共起関係をもち得ない仮名の固有名詞を含む (b) 文と、(a) 文のGP効果量を比較した。その結果、GP効果の指標となる「吉田を」の読み時間に、(a)–(b) 間で差はみられず、同程度のGP効果があらわれていた。以上の結果から、(a) におけるGP効果は、共起関係が高さに基づくものではないことが示された。
著者
一宮 孝至 大住 政寛 小林 靖尚 長坂 健司 井上 雅文
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.14-19, 2021-01-25 (Released:2021-01-30)
参考文献数
17

特別養護老人ホームとして使用される延床面積1977.75m2の鉄筋コンクリート造建築,および,同等の規模と機能で設計した木造建築について,材料製造,輸送,建設,解体における温室効果ガス (GHG) 排出量をライフサイクルアセスメントによって算出した。GHG排出量は, 木造建築で592.3 t-CO2eq,鉄筋コンクリート造建築で1155.6 t-CO2eqとなり,木造建築の優位性が示された。木造建築において準耐火構造を耐火構造に変更するとGHG排出量は6.5%増加し,基礎構造を杭基礎に変更するとGHG排出量は8.4%増加するが,木造建築の優位性はそれらの変更後も保たれた。重量カバー率とGHG排出量の関係を検討したところ,軽量な部材であっても原単位の大きな部材の影響が大きいことが確認された。
著者
井上 雅人
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科都市文化研究センター
雑誌
都市文化研究 (ISSN:13483293)
巻号頁・発行日
no.12, pp.125-138, 2010-03

日本のファッション誌は『装苑』によってはじめられ『アンアン』によって完成された, と歴史化されつつあるようだ。それによれば『装苑』は洋裁のための雑誌であり, 『アンアン』は消費文化のための雑誌であるという。しかし, 細かく検討していくと, そこまではっきりと線を引くことはできず, 曖昧な領域があることがわかる。本稿では, 『装苑』から『アンアン』へと続くファッション誌の流れの横に別の筋道を浮かび上がらせることによって, 日本における衣服に関する雑誌と, それを取り巻く文化の重層性を明るみにすることを試みている。特に, 戦前に創刊されて, 『装苑』とは異なる高度な誌面作りを行った『ル・シャルマン』, 戦後占領期に『装苑』以外にも大量に創刊された「スタイルブック」と呼ばれる雑誌群, 1950年代に創刊されて, 洋裁学校を背後に持たずに洋裁だけに依存しない誌面作りを行い, 60年代に多くの読者を抱えた『若い女性』, といった雑誌を中心的にとりあげることによって単線的ではない歴史を描き, それぞれの時期に, 雑誌を取り巻く社会の構造が異なり, それゆえ雑誌自体の性格や位置も異なっていたことを指摘する。ファッション誌という現在通用している概念枠組みをもって歴史をさかのぼり物語ってしまうことは, かつて衣服に関する雑誌が持っていた, ファッション誌という概念の範疇には収まらない振れ幅を見逃してしまうことになる。今では忘れられた「ファッション誌」のオルタナティブをさぐることや, かつて存在した違う分類枠組みを検討することによって, 「洋裁文化」とその後の時代の連続と分断を明るみにする。
著者
宮崎 光明 加藤 永歳 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.19-31, 2014-07-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

研究の目的 無発語または発声・発語が少なく、音声によるコミュニケーション行動が乏しい自閉症児を対象に、アイコンタクトおよび発声・発語を促進するために、PECSの要求場面において、対象児が絵カードをコミュニケーション・パートナーに渡した後に動作模倣を取り入れた際の介入効果を検討することを目的とした。研究計画 ベースライン期、PECSの訓練、PECSに動作模倣を取り入れた訓練、維持テストからなるABCAデザインを用いた。場面 プレイルームにて実施した。対象児 無発語または発声・発語が少なく、コミュニケーション行動が乏しい自閉症児4名であった。介入 訓練期1ではPECSのフェイズIの訓練を行い、訓練期2では、フェイズIに動作模倣を取り入れた訓練を行った。行動の指標 絵カードを用いた要求行動を構成する行動の正反応率、アイコンタクトおよび発声・発語の生起率、動作模倣の正反応率を行動の指標とした。結果 本研究に参加したすべての自閉症児において、絵カードを用いた要求行動を構成する行動の正反応率、アイコンタクトおよび発声・発語の生起率が増加した。また、3名の動作模倣の正反応率の増加が見られた。結論 PECSの訓練手続きに動作模倣を取り入れることで、アイコンタクトおよび発声・発語が促進されることが示唆された。
著者
井上雅人著
出版者
ミネルヴァ書房
巻号頁・発行日
2019
著者
宮原 牧子 井上 雅人 玉井 雄大 大野 博康 岡本 幸一郎 原 徹男
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.262-266, 2016

症例は33 歳女性,妊娠9 週3 日で突然の頭痛にてくも膜下出血を発症した.妊娠中ではあるが,産婦人科医師と連携し,遅滞なく通常通りCT,CTA,血管撮影を行った.急性水頭症を認め当初Grade5(H&K,WFNS)であったが,脳室ドレナージ施行後から意識レベルの改善を認めたため責任病変である左内頸動脈眼動脈分岐部の破裂脳動脈瘤に対し血管内治療を行った.術後経過良好で,妊娠も安定していたため中絶は行わず,第24 病日にリハビリテーションのため転院後,妊娠38週5 日で帝王切開術にて正常児を出産した.現在まで母児ともに経過は良好である.妊娠極初期の血管内治療については過去報告がなく,今回一連の治療後,良好な転帰を得たため報告する.
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05 (Released:2017-06-28)

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
奥田 健次 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.51-62, 2002-04-20 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
1

本研究では,奥田・井上・山口(2000)の空間的視点取得課題に通過した3名の自閉症児者に対して,認知的視点取得課題において自己および他者の「知識の有無」状況を弁別可能にするための条件について検討を行った。まず,介入フェイズ1において,自己の「知識の有無」状況の弁別を獲得するための指導的介入を行った結果,自己質問に対して正答可能となったが,他者の「知識の有無」状況の弁別に転移しなかった。次に,介入フェイズ2において,自己と他者とで可視/不可視が異なる条件のみ指導的介入を行った結果,介入を行った条件での成績が向上したが,自己と他者とで可視/不可視が同一の条件での誤答が増加した。そこで,介入フェイズ3において,自己と他者とで可視/不可視が異なる条件に加え,可視/不可視が同一の条件についても指導的介入を行った。その結果,ポストテストにおいては,3名とも自己と他者の「知識の有無」状況の弁別を獲得し,指導的介入を行わなかった他者同士の「知識の有無」状況についても弁別することが可能となった。本実験の結果から,認知的視点取得課題や「心の理論」課題における課題設定の問題について検討を行った。