著者
奥田 健次 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.51-62, 2002-04-20 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
1

本研究では,奥田・井上・山口(2000)の空間的視点取得課題に通過した3名の自閉症児者に対して,認知的視点取得課題において自己および他者の「知識の有無」状況を弁別可能にするための条件について検討を行った。まず,介入フェイズ1において,自己の「知識の有無」状況の弁別を獲得するための指導的介入を行った結果,自己質問に対して正答可能となったが,他者の「知識の有無」状況の弁別に転移しなかった。次に,介入フェイズ2において,自己と他者とで可視/不可視が異なる条件のみ指導的介入を行った結果,介入を行った条件での成績が向上したが,自己と他者とで可視/不可視が同一の条件での誤答が増加した。そこで,介入フェイズ3において,自己と他者とで可視/不可視が異なる条件に加え,可視/不可視が同一の条件についても指導的介入を行った。その結果,ポストテストにおいては,3名とも自己と他者の「知識の有無」状況の弁別を獲得し,指導的介入を行わなかった他者同士の「知識の有無」状況についても弁別することが可能となった。本実験の結果から,認知的視点取得課題や「心の理論」課題における課題設定の問題について検討を行った。
著者
井上 雅之 中井 英人 永谷 元基 清島 大資 佐藤 幸治 林 満彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.632, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】下肢骨折や骨関節疾患などの術後患者に対する理学療法において,段階的な歩行獲得を図るために部分荷重訓練が必要であり,多くの施設で施行されている.しかし訓練後の不適切な荷重は,治癒過程の阻害や再骨折などを引き起こす恐れがあり,治療スケジュールの遅延につながる為,効果的な荷重コントロールが行われなければならない.そこで今回,下肢部分荷重訓練装置を使用して動力学的な部分荷重訓練を実施した後,床反力計を用いて時間の経過に伴う荷重量の変化を測定し,短時間における学習効果や訓練の有効性について検討したので報告する.【対象】下肢に障害の既往のない健常成人20名(男性12名,女性8名),平均年齢25.6±4.1歳,平均身長169.8±9.0cm,平均体重65.5±17.1kgであった.【方法】歩行形態は片松葉杖,2/3部分荷重による2動作歩行とし,測定前に部分荷重訓練装置(アニマ社製MP-100)を用い,20分の部分荷重訓練を実施した.装置の目標値を体重の2/3に設定し,目標値を超えた場合には警告音で知らせ,聴覚からのフィードバックを与えた.また、全ての被験者が時間内に2/3部分荷重を獲得したことを確認後,測定を開始した.被験者は左右独立式床反力計(アニマ社製MG-1120)上を初回,15分後,30分後,45分後,60分後の計5回歩行し,各測定間の休憩は15分間の椅子坐位とした.各回の踵接地期(以下HC),立脚中期(以下MSt),つま先離地期(以下TO),各回における最大の荷重量(以下最大値)の4項目の荷重量を測定し,目標値に対する荷重量の割合の平均値を算出した.なお,統計学的処理は反復測定分散分析を行った後,FisherのPLSDを用い,有意水準は5%未満とした.【結果】初回と60分後の比較では,HC,MSt,TO,最大値のいずれも荷重量が減少していたが,HC,最大値においては有意差はみられなかった(p>0.05).また初回のHC,最大値を除く全ての回において,荷重量は目標値を下回っていた.HC,MSt,TOの荷重量は,初回から60分後までのいずれにおいてもHCが最も大きく,次いでTO,MStの順であった。【考察】今回の測定結果から,訓練後1時間以内では荷重量は目標値を大きくは超えないことが明らかとなり,部分荷重訓練の短時間における学習効果が認められたが,これには部分荷重訓練装置の聴覚へのフィードバック効果の影響があったのではないかと考えられる.また,清島らによると,理学療法士の最も多くが部分荷重の許容できる誤差範囲を±10%以内と考えている,と報告しており,今回の結果は1時間以内における荷重量と目標値との誤差が,実際にこの範囲内であることも示した.しかしHC,最大値では一度荷重量が減少し,60分後に再び増加する傾向がみられたことから,数時間後あるいは数日後といった長時間における学習効果についての検討の必要性が示唆された.
著者
井上 雅理 道木 慎二
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.139, no.7, pp.637-644, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
7
被引用文献数
2

This paper describes a new discrete-time PMSM model for the discrete design of current vector control systems. The discrete design of current control system minimizes the discretization error and improves the current control performance at the sampling point. The conventional PMSM model discretization method presumes that park transformation runs continuously. When the sampling frequency is considerably lower than the fundamental electric frequency, this assumption is invalid and the control performance will degrade due to modeling error. In this paper, the authors propose a method of PMSM model discretization considering discrete-time park transformation and design an additional cross-coupling compensator for the proposed model. The experimetntation results demonstrate the effectiveness of the proposed model.
著者
柳原 敏昭 七海 雅人 狭川 真一 入間田 宣夫 菅野 文夫 堀 裕 山口 博之 誉田 慶信 佐藤 健治 齊藤 利男 飯村 均 乾 哲也 井上 雅孝 及川 真紀 岡 陽一郎 菅野 成寛 鈴木 弘太 長岡 龍作 奈良 智法 畠山 篤雄 羽柴 直人 若松 啓文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本科研がめざしたのは、歴史資料の再検討による、平泉研究の新たな展開のための基盤整備である。研究目的に即し、文献・考古・石造物の三班に分かれて研究を遂行した。文献班は、中尊寺文書を中心とする同寺所蔵中世史料の悉皆的な調査を実施し、多くの新知見を得た。また、平泉関係の文献史料を集成した。考古班は、経塚を中心とする12世紀代の遺跡の発掘調査を行い、日本最北端の経塚を確認するなどの成果を上げた。また、平泉に関連する北海道・東北地方の遺跡の集成を行った。石造物班は、平泉とその周辺の石造物を調査、資料化し、主要なものについて報告書に掲載した。結果、平泉研究に新しい面を開くことができた。
著者
間瀬 肇 宮平 彰 桜井 秀忠 井上 雅夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.726, pp.99-107, 2003
被引用文献数
6

本研究は, 人工リーフが設置された場合とない場合について, 汀線近傍に設置された護岸への不規則波の打上げ実験を行ってその特性を調べるとともに, 現行算定法による打上げ高算定値が実験結果をどの程度表せるのか, すなわち不規則波のどのような代表打上げ高に対応するかを検討した. その結果1) 不規則波の打上げ高分布は Rayleigh 分布で表されること, 2) 人工リーフが設置された場合に, リーフ通過後も有義波周期は変化しないとして求めた打上げ高算定値の方が実験値との対応が良くなること, 3) 打上げ高算定値は1/3最大打上げ高の下限および平均打上げ高の上限に対応する値であることが明らかになった.
著者
沼田 宗純 近藤 伸也 井上 雅志 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.755-763, 2011

本研究では, 広域的災害に対し, 地域防災計画の記述の統一化が広域的応援を円滑かつ効果的に実施に繋がるのではないかとの立場に立ち, 自治体間での地域防災計画の記述の違いについて考察し, 実効性の高い広域連携体制のあり方の方向性を示そうとするものである.そのために, 1995年兵庫県南部地震と2004年新潟県中越地震における支援の実態について既往の研究を参考に, 広域的支援の有り方を検討する際のフレームワークを整理し, 広域的支援における災害対応業務について考察し, 自治体間の地域防災計画を比較することで, その記述の違いについて考察している.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
井上 雅志 福岡 淳也 大西 修平 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.283-288, 2018

<p>地域防災計画の多くは,記載事項が膨大なため,有事の際,職員が災害対応に必要な情報を即座に探し出すことが困難であり,過去の災害においても有効に活用されていないことが多い.本研究では,地域防災計画の記述を可視化すべく,「災害対応フロー図」を作成し災害対応業務を体系的に整理すると共に,熊本県の地域防災計画を標準化した.加えて,これを効率的に運用するために,業務実施上の参考情報をまとめた詳細シートデータベースを構築した.また,作成された災害対応業務フロー図について,部署間の連携関係をネットワークの形で可視化することで,業務における担当部署と,部署間の関係を一目で確認できることを示した.</p>
著者
井上 雅道
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.499-522, 2013

帝国の時代にあって、生-権力は、多様な身体・意識・行為によって構成されるマルチチュードとの交渉の中で、いかにセキュリティを構築し自らを形成しているのか。本稿では、現実の世界がさまざまな出来事を通じて演劇的に構成される仕方を分析する「ドラマトゥルギー」の手法=視点を用いながら、アメリカの大学警察(ケンタッキー大学警察部)の史的かつ民族誌的記述を通してこの問いを考察したい。この目標に向けまず、大学警察が「いれば煙たがられ、いなければ文句を言われる」二律背反に直面するようになった経緯を、1960年代から1970年代にかけての学生運動とその後の歴史的文脈の中で検証する。続いて、いなくて文句を言われることがないよう警察が被疑者・犯罪者を「見る・排除する」プロセスが、いることで煙たがられることのないよう警察が自らをキャンパス共同体(マルチチュード)に「見せる」プロセスといかに交錯しているかを分析し、警察が被疑者・犯罪者とキャンパス共同体を含む三者関係の中で、死に対する(=排除する)権利を行使する「見る主体」と生に対する権力を行使する「見せる主体」とを統合するようになったこと、またこの統合が大学における生-権力=セキュリティの強化をもたらしていること、を明らかにする。その後「生-権力は際限なく強化され、私たちを無力化している」という先行研究の議論の妥当性を検討すべく、近年-特に9・11同時多発テロ以降-セキュリティが強化されたまさにそれゆえに、警察官の意識・行為において見る主体(「死に対する(=排除する)権利」)と見せる主体(「生に対する権力」)の統一が崩れ、そこにある種の危機が現れていることを明らかにする。更にこの危機を「生-権力の臨界」として概念化し、それが呼び起こすマルチチュードの新しい自由・自律への含意を論じた後、この含意を「大学のエスノグラフィー」の可能性の中で検討する。
著者
井上 雅文
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.242-243, 2015

<b>効能効果</b>:魚の目,タコ,イボ<br><b>成分分量</b>:(本品1g中) サリチル酸0.1g,添加物としてコロジオンを含む<br><b>用法用量</b>:1日4回,キャップ付属の棒で,1滴ずつ患部に塗布
著者
安川 人央 中野 智彦 黒瀬 真 信岡 尚 井上 雅央
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.41, pp.29-33, 2010-03

シカ出没圃場におけるキャベツ栽培で、農地を効率的に活用するために、柵の設置の有無が耕起や移植にかかる作業時間と定植苗数に及ぼす影響並びに、肥料制限苗の定植直後のシカ被害軽減効果を調査した。キャベツの定植苗数は柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で多く、耕起と定植に要した作業時間は、柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で短かった。キャベツのシカによる被害には、食害と踏害があった。また、肥料制限苗の草丈および最大葉長は、慣行苗に比べて小さく、定植直後の食害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて明らかに小さかった。さらに定植直後の踏害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて小さい傾向が見られた。肥料制限苗のみを定植した場合、定植直後の食害株率はいずれの定植時期でも1%未満と小さかった。しかし、シカの出没が多い場合、少ない時期に比べて踏害株率が大きかった。これらから、シカ出没圃場において、キャベツ肥料制限苗を利用することで、慣行苗に比べてシカによる食害が軽減できることから、柵の設置を定植後に行うことが可能となり、柵設置圃場に比べ、耕起や定植時の作業性が良くなるとともに圃場全体を有効に活用できると考えられる。
著者
森岡 郁晴 和泉 有里奈 井上 雅 岡田 佳奈子 坂口 佳穂 宮井 那津季
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.146-152, 2014

Objectives: The purpose of this study was to clarify the effect of stone spa bathing (Ganban-yoku) and hot-spring bathing on brachial-ankle pulse wave velocity (baPWV) in healthy, late middle-aged females. Methods: The subjects were 13 females (mean age, 47.3 years). The skin and tympanic temperatures, blood pressure, and baPWV were measured before and after stone spa bathing and hot-spring bathing. For the stone spa bathing, the subjects lay down three times for approximately 10 min each time over warm stone beds. Results: Although body weight showed no change after the hot-spring bathing, it significantly increased after the stone spa bathing. The increase was significantly related to the amount of water intake. The skin and tympanic temperatures increased to a smaller degree after the stone spa bathing than after the hot-spring bathing. The diastolic blood pressure decreased to a smaller degree after the stone spa bathing. BaPWV showed no significant change after bathing both in the stone spa and in the hot-spring. The results of multiple regression analysis showed that the factors significantly related to the change in baPWV after the stone spa bathing were the changes in skin and tympanic temperatures and habit of smoking, and that after the hot-spring bathing was the change in skin temperature. Conclusions: The results suggest that, compared with the hot-spring bathing, stone spa bathing causes less strain on the body. The stone spa bathing and hot-spring bathing showed no marked effect on baPWV. However, there is a possibility that the stone spa bathing may be used as a load for investigating arterial stiffness.
著者
井上 雅 横山 光彦 石井 亜矢乃 渡辺 豊彦 大和 豊子 公文 裕巳
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.359-362, 2011-05-20
参考文献数
11

尿管結石の疝痛発作に対して芍薬甘草湯を投与し,その臨床的有用性を非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)と比較検討した。対象は尿管結石患者25名で,11名に対し芍薬甘草湯5.0gを内服させ,コントロール群として,14名にNSAIDsを内服させた。内服時,内服後15分,30分,60分にNRS(numerical rating scale)を用いて比較検討した。NRSは0点を全く痛みなし,10点を最も強い痛みとした。結果は芍薬甘草湯内服群では内服時NRSは6.7 ± 2.3点で,内服後15分で3.4 ± 3.5点と有意に軽減した。NSAIDs内服群では内服時8.3 ± 1.8点で,内服後15分では7.0 ± 1.9点と有意な鎮痛効果は認めたが,鎮痛効果は芍薬甘草湯の方が有意に優れていた。その他の時点においても同様の結果で,芍薬甘草湯は尿管結石の疝痛発作に対して即効性があり,NSAIDsよりも有意に鎮痛効果を認めた。
著者
宮川 博文 稲見 崇孝 井上 雅之 小林 正和 西山 知佐 大須賀 友晃 本庄 宏司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2127-C3O2127, 2010

【目的】愛知県理学療法士会健康福祉部は平成17年より、地域住民の健康増進、スポーツ傷害の予防と改善を目的に県内行政機関と連携をとり、スポーツ傷害講座を年1回開催している。平成20年度はスポーツ傷害の発生機序からの予防対策に注目し、小・中学生バスケットボールチームを対象にバスケットボール女子日本リーグ機構(以下WJBL)外傷予防プログラムの紹介を中心に講座を開催した。今回の研究の目的は小・中学生に対するWJBL外傷予防プログラム(以下プログラム)の有効性、問題点をアンケート調査及びプログラム紹介後の実施状況より検討することである。<BR>【方法】対象はN町小学生(以下ミニ)・中学生(以下ジュニア)バスケットボールクラブチーム女子選手38名(ミニ17名:平均年齢10.7±1.1歳、ジュニア21名:平均年齢14.0±0.9歳)、保護者22名、指導者3名の計63名である。尚、競技レベルはミニがA県大会出場レベル、ジュニアは東海大会出場レベルである。プログラムは膝前十字靭帯(以下ACL)損傷、足関節捻挫など下肢の外傷予防を目的に2007年日本臨床スポーツ医学会、国立スポーツ科学センター、WJBL所属チームのトレーナーによって作製された。その内容は1.筋力(下肢・体幹筋)、2.バランス、3.ジャンプ、4.スキルの4項目で、それぞれベーシック(高校生、大学生)、スタンダード(大学生上位・実業団)、アドバンス(WJBLトップ選手)の3段階より構成されている。今回は体育館を会場とし、ベーシックを中心としたプログラムを6名のスタッフ(理学療法士3名、トレーナー1名、理学療法士養成校学生2名)による講義及び実技にて紹介した。<BR>アンケートはプログラムの紹介後に会場内で調査用紙を配布し、記入後その場で回収した。アンケート内容は以下の5項目である。1)下肢外傷の既往歴:医療機関で診断された外傷、2)プログラムがどの程度できたか:自覚的達成率、3)プログラムで最もケガの予防に役立つと思われる項目は何か、4)プログラムを通常の練習に取り入れたいか、5)プログラムを練習に取り入れる場合、何分が適当か、尚、プログラム紹介後に実施状況を調査した。<BR>【説明と同意】アンケート調査の説明はスポーツ傷害講座終了後、全対象に行い、同意の上で調査の協力を得た。<BR>【結果】回答数は63件で回収率は100%であった。1)下肢外傷の既往歴:ミニ期での発生は足関節捻挫3件、足関節骨折1件、ジュニア期は足関節捻挫8件、足関節骨折3件、ACL損傷2件であった。2)プログラムの自覚的達成率:筋力はミニ72.1、ジュニア79.8%、以下同様にバランスは69.1、78.6%、ジャンプは76.5、81.0%、スキルは67.6、82.1%であった。 3)プログラムで最もケガの予防に役立つと思われる項目:ミニは筋力とジャンプ、ジュニアはジャンプであった。4)プログラムを通常の練習に取り入れたいか:対象全員が取り入れたいと回答した。5)プログラムを練習に取り入れる場合の時間:最も回答の多かった時間はミニ15、ジュニア20、保護者20、指導者10分であった。プログラム紹介後の実施状況:紹介後4ヵ月での実施状況は、ミニはジャンプ、スキルの一部、ジュニアは筋力、ジャンプの一部が実施されるのみで、プログラムは通常練習に十分に取り入れられていなかった。<BR>【考察】ミニ・ジュニア選手に対するプログラムのスポーツ現場への導入は、ジュニアを中心に下肢外傷が多数発生していること、ベーシックを中心としたプログラムがミニ約70%、ジュニア約80%の自覚的達成率で実施可能であること、選手、保護者、指導者全てが通常練習への導入を希望していること等から早期に実現すべきと考える。しかし、スポーツ現場への導入は今回紹介したスポーツ傷害講座の開催による現場指導者や選手へのスポーツ外傷予防に対する理解を得るのみでは困難であった。スポーツ現場への導入にはそれに加えてプログラムの実施が現場のスポーツ活動の妨げにならず、さらに競技力向上につながるプログラムメニューの工夫が必要であり、我々理学療法士がスポーツ現場に足を運び指導者、選手と意見交換を重ねメニューを作成することが必要不可欠と考える。具体的には1)プログラムの実施時間は10~15分とする、2)プログラムの内容はウォームアップメニューとしてリズミカルでチームの士気を高め、さらにサーキット形式、ボールを使った形式など実践に近いメニューも取り入れる等の工夫が必要と考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場は外傷予防に強い関心を持っているがその導入に至っていないのが現状である。外傷予防プログラムの内容、導入方法等の検討はスポーツ傷害の発生機序からの予防対策として重要であり、理学療法学研究としての意義は高いと考える。<BR>
著者
菅野 千晶 羽鳥 裕子 井上 雅彦 小林 重雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.33-38, 1995
被引用文献数
3 1

自閉症生徒1名を対象に買物指導を行い、日常生活におけるスキルの般化と維持に関して検討を行った。シミュレーション訓練により、対象生徒は買物に必要な行動レパートリーを獲得することができたが、現実の店舗では、行動連鎖中、部分的に誤反応が生じることがあった。しかし、ほとんどの誤反応は支払い時に生じたため、レジの店員の援助によって買物を遂行することが可能であった。また、日常生活においては、母親が対象生徒に買物をさせる機会を積極的に提供することで、買物行動が維持されていることが明らかになった。本研究の結果、対象生徒の買物スキルが日常生活で般化・維持した背景には、店員や母親などの対象生徒をとりまく人々からの援助といった環境要因が影響を与えていたことが示唆された。