著者
内堀 朝子 小林 ゆきの 上田 由紀子 原 大介 今西 祐介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は本研究プロジェクト3年間のうち1年目として,文末指さしを含む日本手話文のデータ収集に取り掛かった。特に,研究体制として設定した二つの研究グループのうち,「話題要素担当グループ」によるデータ収集に重点を置き,日本手話母語話者の協力のもと調査を行った。調査では,第一に,文頭に話題化非手指標識を伴う要素と,その要素を指示対象とする文末指さしの両方を含む文が,日本手話母語話者にとって自然であると判断される文脈,つまり,その文が文法的かつ談話上適切であるような文脈を設定した。第二に,それと同じ文脈のもとで文頭の話題化要素を省略し,かつ,その要素を指示対象とする文末指さしが許されるかどうか,日本手話母語話者の内省・直観による判断を調べた。なお,第二のデータは,もう一方の研究グループである「非項/陰在的項担当グループ」の収集対象と合致するものが含まれることとなった。調査の結果,日本手話において以下の二つの可能性があることが確認された。すなわち,①話題化要素が省略される可能性(もしくは,空の話題要素が現われる可能性)があること,および②文末指さしが音声化されていない話題要素を指示対象とする可能性である。したがって,この調査は,「研究の目的」で述べた,本研究プロジェクトの課題のひとつである「問題Ⅰ:話題要素を含む文における文末指さしは,何を指示対象とすることができるのか?」に対する肯定的な回答を与えるものと言える。さらに,この調査は,「研究の目的」で述べた,文末指さしを持つ手話言語の類型に関わる問題に対して,日本手話が,文末指さしが主語を指すアメリカ手話と,話題要素を指すオランダ手話の両方の性格を併せ持つことを示唆するものであった。
著者
吉川 泰司 今西 悠基子 福嶌 五月 秦 広樹
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

骨格筋芽細胞シートおよびiPS細胞由来心筋細胞シートの臨床応用可能な凍結保存方法に関して探索を行った。その結果、ガラス化凍結された骨格筋芽細胞シートは保存後もシートの形態や機能の維持していた。また、心筋梗塞ヌードラットに保存後の細胞シートを移植した後に心機能改善効果が認められた。また、iPS細胞由来心筋細胞を凍結保存後にも心筋細胞純度は凍結前とほぼ同じ結果を再現でき、同期拍動する心筋細胞シートを作成できた。さらに心筋梗塞ヌードラットに移植し、凍結心筋細胞を移植しても非凍結心筋細胞と同程度の有効性を有することを確認した。
著者
細田 耕 荻原 直道 今西 宣晶 名倉 武雄 清水 正宏 池本 周平 菅本 一臣 成岡 健一 MACEDO ROSENDO Andre Luis 伊藤 幸太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究課題では,脳やせき髄からの投射がない場合の,歩行状態における人間の足部の機械的特性を計測するために,歩行状態を再現するための歩行シミュレータを作成し,これに屍体の足部を取り付け,二方向エックス線透視撮影装置の中で歩行させることによって,足部内部の骨の動きを観察するためのプラットフォームを開発した.これに関連して,歩行状態を再現するための歩行シミュレータの制御や,透過画像から各骨の三次元運動を精密に再構成するための画像処理技術などを開発した.足部に存在する機械的特性のうち,中足骨関節に着目し,同等の機能の足部をもつ二足歩行ロボットを開発,実験によって中足骨関節の歩行安定性への寄与を調べた.
著者
加納 嘉人 草野 史彦 酒井 義法 田沢 潤一 渡辺 守 永山 和宜 池邊 佐和子 鎌田 和明 今西 暁 伊藤 祐子 大木 史郎 望月 奈穂子 相馬 友子
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.58-59, 2008

症例は拘置所収容中の42歳男性。重症筋無力症に対して胸腺摘出後ステロイドを内服中であった。吐下血を主訴に救急搬送され、内視鏡では胃内にふりかけ・菓子の袋など大量の異物があり、胃角部に噴出性出血を伴う潰瘍を認めた。止血処置後異物は把持鉗子を用い経口的に30個全てを回収した。内視鏡的に摘出した数として異例であり出血性胃潰瘍の合併もあり類似症例の初期対応、特に関係者からの問診上示唆に富むと考えられ報告する。
著者
今西 一
出版者
大学進学研究会
雑誌
大学進学研究 (ISSN:03874583)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.58-61, 1984-07
著者
木原 健二 河崎 洋子 今西 宏之 宇宿 智裕 西村 美緒 水戸 敬 高田 哲
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.349-353, 2013-09-01

【目的】重症心身障害児 (者) (重症児) の身長測定における信頼性検討を目的とした. 【方法】重症児73名の中から層化抽出した12名を対象に脛骨長測定法ならびに分割法による身長測定を実施した. 3名の検者が同一の対象者について両測定法を行い, 測定結果について級内相関係数を用いて検者内信頼性・検者間信頼性を検討した. さらに両測定法間の相関を求めた. 【結果】脛骨長測定法・分割法ともに良好な検者内信頼性・検者間信頼性を示した (ICC>0.90). 両測定法による測定値は強い相関を示した. 【結論】脛骨長測定法・分割法ともに良好な信頼性を示した. 臨床場面ではより簡便な脛骨長測定法が有用と考えた.
著者
土井 元章 陳 忠英 斉藤 香里 住友 恵美 稲本 勝彦 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.160-167, 1999-01-15
参考文献数
15
被引用文献数
4 1

アルストロメリアの地中冷却栽培における秋季収量および切り花品質の向上を図ることを目的として, 温度処理および地温制御法について検討した.1. 冬季最低10℃で育苗して自然の低温に引き続いて地中冷却(夜間14℃に設定)を施す場合, 'レジナ'では5月21日, 'カルメン'('カナ')では6月20日までに冷却ベッドに植え付けると, 開花シュートの発生が継続した.この地中冷却ベッドへの植付け限界は, それぞれの品種の開花に有効な低温('レジナ'15℃以下, 'カルメン'17℃以下)が出現しなくなる時期とほぼ一致した.ただし, この方法では秋季に切り花は得られたものの, 初秋の収量および切り花品質が劣っていた.2. 'レジナ'に2℃10週間の低温を処理し6月10日に14℃を目標に冷却したベッドに植付けると, 秋季に採花することができた.この際, 最低20℃で育苗してきた苗を用いると, 最低10℃で育苗してきた苗を用いた場合に比べて, 植付け後栄養シュートの発生が多く, 初秋の収量が増加して切り花品質が向上した.3. 'カルメン'に対して, 冷却液の循環時間を夜間に制限して17℃以下の経過時間が1日6時間となるように地温制御を行うと, 連続冷却した場合に比べて, 栄養シュートの発生が促され, 秋季の切り花品質が向上した.4. 'カルメン'の据え置き株に対して, 6月12日からの地中冷却に先立つ8∿20週間を地温20℃に設定して地中加温を施したところ, 夏季から秋季にかけて栄養シュートの発生が促され, 初秋の収量が増加するとともに切り花品質が改善された.
著者
今西 孝至 髙松 千世 髙山 明
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.640-647, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
5
被引用文献数
2

Pictograms can be used to transmit information to anyone all over the world. In Japan, pictograms regarding interaction, usage, and dosage are developed by the RAD-AR Council Japan; however, pictograms indicating the pharmacological effect remain to be developed. In this study, we created seven kinds of pictograms regarding pharmacological effect: antiarrhythmic drugs, hypnotics, hypoglycemic drugs, antibiotics, diuretics, antihypertensive drugs, and antidementia drugs, and researched the necessity and evaluation of the created pictograms using a questionnaire survey for pharmacists and the general public. Overall, 89.6% of the pharmacists and 86.8% of the general public answered “necessary” regarding pictograms on pharmacological effects. Regarding the usefulness of these pictograms, pharmacists responded “understanding the efficacy of medicine” and “emergencies such as natural disasters.” On the other hand, the general public responded, “distinguish the medicine by myself” and “emergencies such as natural disasters.” The pharmacists had a significantly higher rate of giving correct answers than the general public for all pictograms. In the general public, the rates of correct answers for these pictograms decreased with age. However, the rates of correct answers for pictograms on diuretics and hypotensive drugs were > 90% in the elderly aged ≥ 70 years. In conclusion, although the necessity for pictograms regarding pharmacological effects was proved, the correct answer rate differed significantly between the pharmacists and the general public. Therefore, it is necessary to improve these pictograms so that anyone can understand them more accurately, with or without medical knowledge.
著者
島田 有紀子 森 源治郎 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.617-623, 1995-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

1. <I>Ornithogalum arabicum</I>の自然条件下における花芽の発育経過を観察するとともに, 花芽の発育および開花に及ぼす温度の影響について調べた.<BR>2. 花芽形成は9月上旬に始まり, 10月下旬には第1小花が外花被形成期から内花被形成期の般階にまで進み, 12月下旬に雌ずい形成期に達した. その後, 花芽の発育は緩慢となり, 4月中旬に四分子形成期に達し, 5月中旬に開花した.<BR>3. 花芽の発達, 開花には10月下旬以降の低温経過を必要としなかった. 花茎伸長のためには低温が必要で, 花茎の長い切り花を得るためには, 1月下旬頃まで自然低温に遭遇させる必要があった.<BR>4. 5&deg;~13&deg;Cの低温は後作用して開花および花茎伸長を促進し, その効果はりん茎を処理する際の乾湿条件に関係なく認められた. さらに, 9&deg;~13&deg;Cは直接的に作用して雌ずい形成期までの花芽の発育を促した. また, この低温は茎頂が生殖生長に転換した初期段階から有効に作用した.<BR>5. 6月中旬入手のハウス栽培球を用いた場合, 100%の開花率を得るためには, 花芽形成に先立って30&deg;C12週間の高温遭遇が必要であった.
著者
今西 裕人 西口 慎吾
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.841-845, 2014 (Released:2018-01-25)
参考文献数
5

電動車両用モータの信頼性向上を目的として,直接温度の計測が困難な,磁石温度の推定技術を開発している.本報告では,熱解析モデルのリアルタイム計算に基づく磁石温度推定技術,熱解析モデルに対するオブザーバ補償の有効性,及び磁石温度推定に適したオブザーバの設計方法について報告する.
著者
今西 平 梅林 薫
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.27-35, 2008-03

本研究は、期分けトレーニングとして典型的なモデルとされる線状期分けモデル(LP)と波状期分けモデル(UP)を競技選手(大学テニス選手)に適用し、トレーニング効果を身体組成、筋力、筋肉痛・疲労感を測定・調査してその特徴を比較した。その結果、身体組成では両部で体脂肪率が有意に低下したが、その要因にはLPでは除脂肪体重の増加、UPでは体重(除脂肪体重以外の体組織)の減少が考えられ、それぞれのトレーニング方式で特徴がみられた。トレーニング期間中の筋肉痛や疲労感の調査では、LPの方がUPよりも心的影響が小さいことが示された。筋力測定では、動的・静的筋力の改善に両部で違いはなかったが、筋パワーの改善はUPの方がLPよりも効果的であることが示された。これらのことから、短期間での筋力改善のためにはUPの方がLPよりも望ましいトレーニング方式であることが示唆された。
著者
今西 一
出版者
小樽商科大学
雑誌
商学討究 (ISSN:04748638)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.85-126, 2010-07-28
著者
上村 祥平 今西 悦二郎
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.861, pp.17-00468-17-00468, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
13

This paper presents a dynamic simulation technique for the rigid body system coupled with the hydraulic system considering the digging behavior of the soil. The rigid body system and hydraulic system is modeled based on the Newton-Euler formulation, while the soil is modeled by the discrete element method (DEM) using the cohesive model proposed by Utili and Nova(2008). The co-simulation is carried out for the rigid body/hydraulic coupling system and the soil. Firstly, the digging simulation of the soil for the bucket of the hydraulic excavator is carried out for the cohesive soil and the sandy soil. The digging behavior of the soil and the digging force are discussed. Secondly, the co-simulation technique for the rigid body/hydraulic coupling system and the soil is presented. Finally, the dynamic simulation of the hydraulic excavator is carried out for the digging operation, the behavior of the hydraulic system and the soil is discussed for the cohesive soil and the sandy soil. It is shown that the digging power of the arm driving system for the sandy soil can be reduced by considering the cohesive force. It is clarified that the present technique can evaluate the hydraulic system of the hydraulic excavator for any characteristics of the soil.
著者
今西 良輔
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and social Services, Health Sciences University of Hokkaido (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-34, 2013-03-31

本研究は,発達障害児を家庭の中で育児する父親が,子どもに向き合う中でどのような経験を積み上げているのかを明らかにすることを目的とした.研究結果より『子どもへ関わりたいが上手くいかない良くわからない』『育児は母親頼りから,父親なりに協力していく』『障害はよくわからないが,ありのまま受ける』『仕事重視の生活に葛藤し,調整を図る』『父親自身の模索と変化』『仲間や信頼できる人との出会い」『子どもを社会に出したい』『子どもの将来が不安になる』の8つの体験が導かれた.父親は,育児姿勢の変化だけでなく,父親自身を柔軟的に変化させ成長していた.父親は,自ら子どもに関わろうと努力もしているが上手くいかない.家庭に関わる時間が乏しいため子どもに違和感を感じたとしても具体的かつ深刻な状態を直接目にすることが難しい.父親自身が発達障害について理解しやすい体験やきっかけを求めているのではないかと考えられた.
著者
今西祐行 著
出版者
あかね書房
巻号頁・発行日
1965
著者
今西 康二
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.984-991, 1981

中枢神経感染症の髄液細胞の形態と機能について検索し,疾病の病態および鑑別診断に役立つか否かについて検討した.独自に考案した浮遊細胞収集法は細胞の回収率,形態保存ともに良好であつた.細胞組成では小リンパ球はウイルス性髄膜炎で,マクロファージは非感染性神経疾患で,多核球は化膿性髄膜炎で,髄膜剥離細胞は結核性髄膜炎でそれぞれ優位であつた. lysosomal enzyme (acid-phosphatase, β-galactosidase)はマクロファージ系細胞で活性がみられ,種々の疾患で陽性であつたが,特に化膿性および結核性髄膜炎で高活性を示し臨床経過とよく相関していて補助診断価値があつた.また非感染性神経疾患にも活性がみられ, lysosomal enzymeは感染症に特異的なものではなかつた. nitroblue tetrazolium還元はマクロファージ系細胞および多核球でみられた.髄液細胞ではむしろマクロファージ系細胞により還元能の亢進を認め,その還元能の程度は中枢神経感染症の病勢とよく相関していた.また髄液細胞のNBT還元能は定量的にも測定可能であつた.多核球よりマクロファージ系細胞にこより還元能があることから,多核球が多く出現する病態の少ない中枢神経疾患においてマクロファージ系細胞でのNBT還元能の解析は,疾病の病態を知る上で重要と思われた.
著者
今西 泰一郎 吉田 晶子 奥野 昌代 平沼 豊一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.94-98, 2005-08-01
参考文献数
28
被引用文献数
3 1

マウスのガラス玉覆い隠し行動(marble-burying behavior)は,敷き詰めた床敷(オガクズ)上に配したガラス玉をマウスが床敷内に埋めてしまう行動であり,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor: SSRI)により行動抑制を伴うことなく抑制される.無害なガラス玉を床敷で覆い隠そうとするマウスの行動が不合理と認識しつつ繰り返される強迫性障害患者の強迫行為と見かけ上類似していること,SSRIがうつ病のみならず強迫性障害の治療薬としても有用であること,不安の代表的な動物モデルであるコンフリクト試験や高架式十字迷路試験ではSSRIは効果を示さないことから,ガラス玉覆い隠し行動は強迫性障害の動物モデルとして位置付けられつつある.反面,ガラス玉覆い隠し行動は,強迫性障害には無効とされているベンゾジアゼピン系やセロトニン5-HT<sub>1A</sub>受容体作動性の抗不安薬によっても抑制されることから,強迫性障害に対する治療効果のみを反映するモデルとは言い切れない側面を併せ持つ.ガラス玉覆い隠し行動に関連する研究は充分に行われているとはいえず,今後の研究課題の一つと考えられる.<br>
著者
今西 錦司
出版者
京都帝国大学
巻号頁・発行日
1939

博士論文
著者
松原 健一/稲本 勝彦/土井 元章/森 源治郎/今西 英雄
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学大学院農学生命科学研究科学術報告 (ISSN:13461575)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.33-40, 2002-03-31
被引用文献数
1

景観形成のための利用を想定して, 秋植え球根37種類, 春植え球根16種類について, ケヤキZelkova serrata Mak.を主体とする落葉樹林下における植栽適性を調査・評価した。夏季の樹林下区の樹冠開空率は15%程度, 冬季は80%程度となった。夏季の樹林下での光合成有効光量子束は無遮蔽区の5%程度となり, 日平均地温は無遮蔽区と比較して3〜5℃低かった。1年間の据置栽培後, 供試した1/4近くの種類の植物が無遮蔽区, 樹林下区の両条件下で生存していなかった。生存していた種類の多くで, 2年目の出芽率は, 秋植え, 春植え球根とも無遮蔽区と樹林下区でほぼ同様に高かったが, アリウム, クロッカス, フリージアなどいくつかの種類では無遮蔽区で低く樹林下区で高くなった。秋植え球根類の開花率は無遮蔽区で高く樹林下区で低くなったものが多く, 両区とも同様に高かったものも相当数認められた。また, 一部の種類では樹林下区における開花が無遮蔽区と比べて遅れた。春植え球根類の多くは樹林下区の据置き栽培で生存はしていたものの, 旺盛な生育はみられず, 開花率が低かった。これらの結果より, 秋植え球根のうち, ロドフィアラ, リコリス, ニホンスイセンなど, 出葉時期が樹冠に葉がない時期と重なる冬季出葉型の10種類の球根植物が落葉樹林下への植栽に適するものと考えられた。