著者
伊藤 明美
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-14, 2004

共感は、異文化コミュニケーション研究において一般的に使用される概念の1つとなったが、その理解については研究者の個人的判断にまかせられることが多い。本論では、これまで共感研究の中心であった心理学での発見と日本および英語文化圏での日常的理解を参考にしながら、異文化コミュニケーションで求められる共感について「互恵的関係構築を目的とし、他者の視点や立場からそれらが埋め込まれた文化文脈の中で他者感情や体験を共有する認知的・情緒的能力」と定義し、その上で、こうした共感には非二元論的な自己理解が重要となることについて論じる。共感には他者との同一性を求める感性や態度が少なからず必要と考えるが、このような意味で仏教における無我の概念は多くの洞察を与えてくれる。なぜなら、無我の根底には二元論を超えた自己理解が存在するからである。しかも、無我は無自己を意味するのではなく、むしろ自己追求のプロセスであり、共感が自己喪失を招くとする米国人的な不安もない。異文化コミュニケーションで目指されるべき建設的な人間関係の構築は、こうした東洋的自己理解を前提とした共感によって、大きな一歩を踏み出しうるのではないかと考える。
著者
伊藤 康宏 深尾 英臣 海江田 章 石田 沙織 藤原 麻未 山本 賢 豊崎 正人 山城 知明 石川 隆志 川井 薫 渡邊 孝 日比谷 信
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.11-14, 2014 (Released:2014-04-01)
参考文献数
12

補助循環中の症例から、連続する2週間に尿中に排泄された必須アミノ酸のトリプトファンの代謝産物のうち、キヌレニン経路からの代謝産物を測定した。比較対照として肝機能指標である総アルブミン、AST、肝臓で産生される腎機能指標BUNおよび炎症性ストレス反応物質であるCRP、プロカルシトニン、尿中コルチゾールを測定した。トリプトファン代謝は肝臓で行われるため、肝機能指標との関係が示された。また、トリプトファン代謝産物の経日的な動態から補助循環回路などに使われる可塑剤の影響が示唆された。更に、肝臓の重要な機能である栄養代謝のうち、エネルギー賦活源であるNADや解糖系への代謝障害が示唆され、栄養学的な観点からも重要な課題と考えられる。また、トリプトファン代謝産物と炎症性ストレス反応物質との間に高い相関係数が得られ、抗ストレス性、炎症反応との関連なども示された。
著者
中山 浩太郎 伊藤 雅弘 Maike ERDMANN 白川 真澄 道下 智之 原 隆浩 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.549-557, 2009 (Released:2009-10-20)
参考文献数
25
被引用文献数
5 4 2

Wikipedia, a collaborative Wiki-based encyclopedia, has become a huge phenomenon among Internet users. It covers a huge number of concepts of various fields such as arts, geography, history, science, sports and games. As a corpus for knowledge extraction, Wikipedia's impressive characteristics are not limited to the scale, but also include the dense link structure, URL based word sense disambiguation, and brief anchor texts. Because of these characteristics, Wikipedia has become a promising corpus and a new frontier for research. In the past few years, a considerable number of researches have been conducted in various areas such as semantic relatedness measurement, bilingual dictionary construction, and ontology construction. Extracting machine understandable knowledge from Wikipedia to enhance the intelligence on computational systems is the main goal of "Wikipedia Mining," a project on CREP (Challenge for Realizing Early Profits) in JSAI. In this paper, we take a comprehensive, panoramic view of Wikipedia Mining research and the current status of our challenge. After that, we will discuss about the future vision of this challenge.
著者
伊藤 真理 栗原 早苗 榑松 久美子 多田 昌代 戸田 美和子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.11-21, 2014-10-01 (Released:2014-10-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,集中治療室で終末期に至った患者に対し,急性・重症患者看護専門看護師(以下,CCNS )が,どのような倫理調整を行っているかを明らかにすることである.10 名のCCNS を対象に半構造化面接を行い,質的帰納的手法で分析した.分析した結果,【終末期に至る予測と積極的治療の限界を見極める】【患者の意思確認が難しい状況でもあきらめずに意思をくみ取る】【一人で意思決定しなければならない家族の重荷を分かち合う】【代理意思決定をする家族の後悔を最小限にする】【患者の命をあきらめきれない家族の苦悩を引き受ける】【集中治療の延長線上で可能な限り望ましい看取りを行う】【困難な決断をしなければならない医師の重責を理解し対立を避ける】【患者を失う医療者のやるせない気持ちに対処する】など,13 カテゴリーが抽出された. CCNS は,患者を対象とした権利擁護,家族を対象とした代理意思決定支援と悲嘆ケア,患者と家族を対象とした望ましい死への援助,医療チームを対象とした終末期ケアにチームで取り組む土壌作りを担っていたと考えられる.
著者
伊藤 正子
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.258-286, 2018-03-31 (Released:2018-05-12)
参考文献数
21

In Vietnam, people must belong to one of the 54 ethnic groups recognized by the state. In the agricultural hilly area in the north, nearly 100,000 people are self-proclaimed Ngai, who speak a kind of Hakka language. Though the state accommodated the new category ‘Ngai’ to pull them apart from China during the Chinese-Vietnamese War in 1979, the cadres in the rural area compelled the Ngai people to register themselves as Hoa, as they regard the people with Chinese-origin as Hoa. According to the Statistics Bureau of Vietnam, only around 1,000 people are recognized as Ngai. In this study, I consider the difficulty faced by one ethnic group to live in country A, which conflicts with country B, to which they originally belong. To this end, I clarify the life histories of the self-proclaiming Ngai. They are publicly regarded as reactionary in nature, but many Ngai cooperated with the Viet Minh and did not leave Vietnam even in 1978-79. As discriminatory policies were implemented without public knowledge, the Ngai faced severe hardships in the 20th century. Recently, however, the young Ngai are pioneering their way to a better life by going to work in China, using the new network that was established during the war.
著者
伊藤 重剛
出版者
建築史学会
雑誌
建築史学 (ISSN:02892839)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.130-133, 2009
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 吉田 大輔 阿南 祐也 伊藤 忠 土井 剛彦 堤本 広大 上村 一貴 Jennifer S. BRACH 鈴木 隆雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.87-95, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
41

【目的】日本語版-改訂Gait Efficacy Scale(mGES)の信頼性と妥当性を検証することを目的とした。【方法】地域在住高齢者240名を対象とした。そのうちの31名については,自記式による日本語版mGESの評価を2回実施した(評価間隔14〜20日間)。日本語版mGESの妥当性を検証するために,運動機能(chair-stand test,片脚立位時間,通常歩行速度,6分間歩行距離),生活空間,転倒恐怖感との関連を調べた。【結果】日本語版mGESは高い再検査信頼性を示し(級内相関係数[2,1]=0.945,95%信頼区間0.891〜0.973),すべての運動機能および生活空間と有意な相関関係を認めた。従属変数を転倒恐怖感の有無,独立変数を性別,各運動機能,生活空間,日本語版mGES得点としたロジスティック回帰分析の結果,転倒恐怖感と有意な関連を認めた項目は,性別(女性),通常歩行速度,日本語版mGES得点であった。【結論】高齢者における歩行状態の自信の程度を把握する指標として,日本語版mGESは良好な信頼性および妥当性を有する評価であることが確認された。
著者
伊藤 良作 長谷川 真紀子 一澤 圭 古野 勝久 須摩 靖彦 田中 真悟 長谷川 元洋 新島 溪子
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.99-156, 2012-12-28 (Released:2017-07-20)
参考文献数
86

日本産ミジントビムシ亜目1科2属2種およびマルトビムシ亜目6科(2亜科を含む)19属63種1亜種について,同定に必要な形質について説明するとともに,検索図と形質識別表を示し,種類別の特徴を解説した.識別のための主な形質は体の色と模様,体形,特殊な体毛,小眼の数,触角の長さと各節の比率,触角第3,4節の分節数,雄の触角把握器,触角後毛の有無,雄の顔面毛,脛〓節の先の広がった粘毛の方向と,各肢の粘毛の数,脛〓節器官の有無とその形態,爪(外被,偽外被,側歯,内歯の有無)や保体(歯や毛の数)の形態,跳躍器茎節の毛の形質,端節の形態,雌の肛門節付属器,胴感毛の数と配置などである.
著者
田口 敦子 村山 洋史 竹田 香織 伊藤 海 藤内 修二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.712-722, 2019-11-15 (Released:2019-11-26)
参考文献数
25

目的 地域保健に関わる住民組織には食生活改善推進員,健康づくり推進員,母子保健推進員,愛育班等がある。これらの住民組織は,行政によって育成・支援され,住民の身近な存在として,住民への健康情報の提供や意識啓発を行っている。その活動効果が報告されている一方で,成り手の減少等の課題がある。そこで,本研究では,全国調査により地域保健に関わる4つの住民組織の特徴と課題を明らかにすることを目的とした。これにより,住民組織の養成・支援の方策を立てるのに有益な資料となり得ることを目指す。方法 対象は,全国の市町村1,873か所であった。全国の市町村のうち政令指定都市は行政区ごとを対象とし,特別区は除外した。市町村自治体の健康増進担当者を対象に,メールまたは郵送にて調査を実施した。調査期間は2017年2月~3月末であった。食生活改善推進員,健康づくり推進員等,母子保健推進員等,愛育班について,それぞれ住民組織の設置の有無,組織の設立年,会員数,最も多くを占める年代,メンバーの主な選出方法,等について尋ねた。組織の現在の課題は12項目を6件法(1=全くそう思わない~6=非常にそう思う)で尋ねた。活発に活動しているメンバーの割合を0~10割の範囲で尋ねた。結果 全国の市町村808件の回答を得た(有効回答数805件,有効回答率43.0%)。設置の有無は,食生活改善推進員が最も多く全対象市町村の84.7%であり,続いて健康づくり推進員等(64.3%),母子保健推進員等(26.4%),愛育班(10.1%)であった。組織の課題について「非常にそう思う」,「そう思う」,「まあそう思う」の回答を合計した割合は,「新しいメンバーがなかなかみつからない」,「活動の対象者が固定化している」等で4組織共に50%以上であった。また,4つの組織に共通して「活動を楽しめていないメンバーが多い」,「仕事や介護等の理由により活動への関わり方に制約があるメンバーが多い」,「活動の目的がメンバー全体で共有されていない」の課題は,組織の中で活発に活動しているメンバーの割合と,中程度または弱い負の相関がみられた。結論 4つの住民組織の特徴には違いもみられたが,組織の課題は全国的に共通するものが多いことが明らかになった。