著者
隈元 庸夫 伊藤 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0243, 2004

【はじめに】<BR> 大腿四頭筋の中で内側広筋は特に萎縮しやすく,筋力増強運動に対する反応も遅く,回復しにくい筋といわれている.このため,内側広筋の選択的なトレーニング法確立のため様々な検討がなされており,大内転筋活動を伴った股関節内転運動を行うことが重要とされている.下肢疾患者や臥床者に対する大腿四頭筋の簡便なトレーニング法として,patella setting(PS)は臨床で広く行われている. PSについては多くの報告があり,股関節回旋位に関する検討も散見されるが,いずれも股関節屈曲位や長座位での報告であり,一般に臨床で行われることが多い背臥位でのPS施行における,股関節回旋位の違いによる内側広筋の筋活動を検討した報告はない.<BR> 本報告の目的は,背臥位PS時の股関節回旋位の違いが内側広筋の筋活動に及ぼす影響を筋電図学的に検討し,内側広筋のより効果的トレーニング法確立のための一助を得ることである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,下肢に整形外科的疾患の既往のない健常者20名とした.測定肢位は背臥位とし,PSは測定下肢のみ施行させた.PSの施行は,股関節内外旋中間位,内旋位,外旋位の3肢位とした.筋電測定には,アニマ社製ホルター筋電計MM-1100を用いた.導出筋は,内側広筋(VM),外側広筋(VL),大腿直筋,大内転筋(AM)とした.各筋の筋活動量は,股関節内外旋中間位でのPS施行時の平均積分筋電値を100%とし,外旋位と内旋位での値を各々正規化し%平均積分筋電値を算出し,これを筋活動量とした.検討項目は,(1)各導出筋の筋活動量,(2)VMとVLの筋活動量の比率値(VM/VL),(3)VMとAMの筋活動量の相関,(4)AMの筋活動量変化によるVMの筋活動量変化に関して,各々外旋位と内旋位について比較検討した.統計学的処理は(1)(2)はWilcoxon t-test,(3)はSpearmanの相関係数,(4)Kruskal-Wallis H-test 後post hoc testとして,Mann-Whitney U-test with Bonferroni correctionにて検定し,有意水準を5%未満とした.<BR>【結果と考察】<BR> 内旋位と比較し,外旋位においてVMの筋活動量の有意な増加を認めた.VM/VLに関しては,股関節内旋位・外旋位の違いによる有意差は認められなかった.VMとAMの筋活動量の相関については,外旋位では正の相関を認めたのに対し,内旋位では相関を認めなかった.AMの筋活動量変化によるVMの筋活動量変化は,外旋位でAMの筋活動量が増加した群が最も,VMの筋活動量が増加した.<BR> Cernyは長座位におけるPSの筋活動を検討し,筋活動もVM/VLも股関節回旋位による有意な差はなかったとしている.しかし,今回の結果から背臥位でのPS時には股関節外旋位で内転筋の収縮を意識することが,VMの筋活動に対してより有効となると考えられた.
著者
住友 伸一郎 笠井 唯克 本橋 征之 足立 誠 江原 雄一 太田 貴久 稲垣(伊藤) 友里 渡邉 一弘 安村 真一 榑沼 歩 村木 智則 大橋 たみえ 村松 泰徳
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.27-32, 2016-07

亜鉛イオンを含む製品である GZ-08の口腔内噴霧により、その口臭抑制作用および抗菌効果を検討した。健康な成人ボランティア30人をランダムに GZ-08噴霧群(20人)と対照群(10人)の2群に分け、GZ-08あるいは生理食塩水を口腔内に噴霧し、その前後で口臭の原因である口腔気中の揮発性硫黄化合物(VSC)濃度および舌背の細菌数を測定した。さらに、GZ-08使用後にその味や使用感、今後の使用希望についてアンケートを行った。噴霧前の両群および生理食塩水噴霧前後の対照群においてはVSC濃度および細菌数の有意差は認めなかった。GZ-08口腔内噴霧後では噴霧前と比較してVSC濃度および細菌数の有意な低下(P <0.05)を認めた。アンケート結果においてGZ-08は酸味と苦味が強く、総合的な味や使用感は悪いとの結果であった。これらの結果はGZ-08の口臭除去、口腔内の抗菌における有用性を示すものであり、GZ-08に含まれる亜鉛イオンとグルコン酸の作用と考えられる。しかし、実際に口臭予防スプレーとして使用する場合には、その味や使用感が問題となるために、酸味や苦味を低減する工夫が必要であろうと考えられた。
著者
伊藤 千夏 高橋 史
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-11, 2019-06-01

インターネットやSNSの利用については過剰利用をはじめとして有害な側面が注目されてきたが,近年ではSNS相談窓口による援助要請促進の取り組みが進められている。しかし,援助要請機能を含め, SNSの有益な側面についてはいまだに検証が十分ではない。そこで本研究は,インフォーマルな援助要請におけるSNSの利用方法とその効果を記述することを目的として,面接調査による質的検討を行った。その結果, SNSを利用した援助要請行動では,発信の際の自己表現によって得られるサポートの種類が異なることがわかった。SNSはこれまで過剰利用や対人関係の阻害といった点で、問題視されてきたが,本研究は援助資源としての可能性を見出したものである。
著者
伊藤 雅章
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.221-228, 2007-04-15 (Released:2009-03-13)
参考文献数
34

生下時から思春期までにヒト毛髪は次第に発達するが、以後、男女差や個人差はあるものの、加齢による形態変化を示す。はじめに、毛器官の構造、毛周期のメカニズム、毛髪色の仕組みについて解説した。続いて、毛髪の加齢現象として、壮年性・老人性脱毛症、老人性多毛症および白髪を紹介した。壮年性・老人性脱毛症は男性型脱毛症と同様のものとされ、頭頂~前頭の軟毛化が起こり、男性ホルモンと毛乳頭細胞の働きが重要とみられている。一方、とくに男性では、逆に、加齢とともに眉毛、髭、耳毛、鼻毛が多毛になる。白髪は、毛母メラノサイトの機能低下ないし脱落によるが、近年、メラノサイト幹細胞の分化・増殖の問題が議論されている。(オンラインのみ掲載)
著者
伊藤桂一著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1967
著者
伊藤 士郎
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.388-395, 1982-05-20 (Released:2011-03-14)
参考文献数
14

ここ一両年, 外国電波によるわが国テレビの受ける混信が顕著になってきた. これはスポラディックE層によるVHF電波の伝搬に伴う現象であり, ここでは, 混信妨害対策を検討する際に必要となるこの種伝搬の諸特性, 近隣諸国における関連周波数送信局の配置および混信の実情について述べる.
著者
佐藤 圭汰 小俣 純一 遠藤 達矢 三浦 拓也 岩渕 真澄 白土 修 伊藤 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0183, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】肩こりは平成22年および25年の厚生労働省国民生活基礎調査において,男女ともに高い有訴率で,改善が急務とされる病態の一つである。その中でも,肩こり患者の僧帽筋の筋硬度は健常者と比較して有意に高値を示すという報告があり,理学療法介入による改善が期待できる一つの因子である。鎮痛効果を目的とした電気刺激療法は,一般的に経皮的神経電気刺激法(TENS)が用いられるが,今回はTENSと比較し皮膚抵抗が少ない高電圧電気刺激法(HVS)に着目した。HVSは鎮痛効果に加え,筋ポンプ作用による血液循環増大効果を持つことが報告されており,肩こり患者における僧帽筋の筋硬度を改善させる可能性がある。しかし,肩こり患者に対するHVSの効果は検討されていない。そこで本研究の目的は,肩こり患者に対するHVSの即時的効果と筋硬度に対する介入の意義を検証することである。【対象と方法】対象は同意を得た肩こりを有する成人女性15名(40.3±8.4歳,155.4±2.6cm,58.7±10.5kg)。HVSはPHYSIO ACTIVE HV(酒井医療社製)を用い,設定を周波数50Hz・パルス持続時間50μsecとして,対象者が不快に感じない電流強度で10分間実施した。筋硬度の測定は超音波画像診断装置Aixplorer(SuperSonic Imagine社製)を用いた。測定肢位は両上肢を体側につけた腹臥位として,僧帽筋上部線維の筋硬度を測定した。筋硬度はHVS前・直後・5分後,疼痛(VAS)はHVS前後に評価を実施した。統計的解析は治療前後の筋硬度変化に多重比較法,治療前後のVASに対応のあるt検定を用いた。有意水準は全て5%とした。【結果】僧帽筋の平均筋硬度はHVS前32.9±14.0kPa,直後30.0±11.2 kPa,5分後23.8±6.6 kPaで,HVS前・直後に比べて5分後に有意な低下を示した(p<0.05)。平均VASはHVS前52.6±22.8mm,HVS後31.8±21.3mmで,HVS前に比べHVS後に有意な低下を示した(p<0.01)。また,筋硬度の改善が疼痛の改善に寄与した者10名(66.7%)で,筋硬度の改善が疼痛の改善に寄与しない者2名(13.3%)であった。【結論】結果からHVSは筋硬度を低下させる効果を有し,肩こり患者の疼痛を改善する方法のひとつとなり得ることが示された。疼痛改善に用いる筋収縮後の弛緩期を利用した動的ストレッチは,血流改善による筋痛の緩和が報告されている。土井らは動的ストレッチ効果の持続時間を検証し,血液量が増加し筋温が上昇していくことで筋硬度の低下,筋伸張性が向上すると述べ,介入前に比べ直後,10分後と有意に効果が向上することを報告した。今回,HVSにより筋収縮が繰り返され,動的ストレッチと類似した効果が得られたため,筋硬度の改善,疼痛改善につながったと考える。しかし,筋硬度の改善が疼痛の改善に寄与しない者もみられた。肩こりの原因は多岐に渡るため,筋硬度に対するアプローチはあくまで肩こり患者の疼痛を改善させる方法の一つと考え,実施することが重要と考える。
著者
西田 智裕 伊藤 孝紀 福島 大地 仙石 晃久 伊藤 孝行
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1_1-1_10, 2019-07-31 (Released:2019-11-15)
参考文献数
16

本研究では,オンライン上のワークショップによる家具の商品開発を事例として、オンライン議論システムにおける配色・素材・フェイズについて可視化することを提案し,その有効性および課題を明らかにすることを目的とする。可視化に向けて,参加者が配色・素材を選択しやすい表現について評価調査をおこない,投稿への添付機能を作成した。また,配色・素材・フェイズの可視化による有効性について評価調査した。これらを踏まえ,オンライン議論システムへ添付機能と可視化を実装し,議論実験をおこなった。議論実験より,配色・素材・フェイズの可視化は,議論内容の把握を支援するため,投稿を促したり,構造的な議論を促したりする効果があることを明らかにした。
著者
伊藤 彰則
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2016-SLP-112, no.10, pp.1-6, 2016-07-21

音声認識の特徴量抽出では,まず入力音声に時間窓をかけて局所的な信号を切り出し,音声信号の局所的な周波数情報を取り出す.この時間窓の位置を少しずつずらしながら分析を行うことで,音声の持つ周波数成分の時間変化を捉えることができる.このとき時間窓をずらす時間間隔がフレームシフトであり,典型的には 5ms~10ms に設定される.本稿では,このフレームシフトを 2 つの点から再考する.一つ目の視点は 「フレームシフトは 10ms で十分なのか?」 という点である.フレームに基づく処理は,音声信号が短い時間で大きく変化しないことを前提としているが,破裂子音などではこの前提がそもそも成立していない.そこで,10ms ごとのフレームの先頭位置のずれによって,抽出される特徴量が大きく変化することを実験的に示す.また,偶然によるフレーム位置の変動に起因する特徴量変動に対応するため,フレーム位置をずらした学習サンプルを学習に用いる方法を提案する.二つ目の視点は,「フレーム位置のずれが学習によって吸収できるのであれば,フレームシフトはもっと長くてもよいのではないか?」 という点である.フレームシフトを実験的に 60ms 程度まで長くして実験を行ったところ,フレームシフト 40ms ではフレームシフト 10ms を越える認識性能が得られ,50ms でも 10ms と同程度の認識性能が得られた.これらの条件では 1 状態 HMM (すなわち GMM) が使われており,認識のための計算量の大幅な削減が期待できる.
著者
長谷川 聡 市橋 則明 松村 葵 宮坂 淳介 伊藤 太祐 吉岡 佑二 新井 隆三 柿木 良介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.86-87, 2014-04-20 (Released:2017-06-28)

本研究では健常者と肩関節拘縮症例における上肢拳上時の肩甲帯の運動パターンとリハビリテーションによる変化を検証した。健常肩においては,多少のばらつきはみられるものの,肩甲骨の運動パターン,肩甲骨周囲筋の筋活動パターンは一定の傾向が得られた。上肢拳上30°〜120°の区間では,肩甲骨の上方回旋運動はほぼ直線的な角度増大を示すことがわかった。そのスムーズな角度変化を導くためには,僧帽筋上部,僧帽筋下部,前鋸筋の筋活動量のバランスが必要で,上肢拳上初期から約110°付近までは3筋がパラレルに活動量を増加させ,拳上終盤においては僧帽筋上部の活動量増加が止まり,僧帽筋下部と前鋸筋の活動量を増加させる必要があることが明らかとなった。肩関節拘縮症例では,上肢拳上による肩甲骨の運動パターンは多様であり,一定の傾向はみられなかったため,代表的な症例の経過を示した。
著者
赤羽 義章 伊藤 光史
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.117-128, 2007-08

日本海側の広い地域に種々の水産発酵食品が存在しているが、福井県の沿岸や周辺の内陸部ではマサバのへしこやなれずしが伝統的に作られてきた。へしこはマサバを塩漬にした後、これを米糠と合わせて漬け込み、6ヶ月以上発酵させて作る。この地方のなれずしには2種類あり、塩出ししたへしこを原料に用いるものと、生マサバを原料に用いるものがある。後者は、マサバを塩漬けした後、米飯と合わせて、夏期を経て4ヶ月以上発酵させて作る。近年、これらの発酵食品の生産量は増加の傾向にある。へしことなれずしとは製造法が違うだけでなく、呈味の点でもかなり大きく異なる。なれずしは比較的低塩分であり、へしこはかなり高塩分で作られる食品であるが、へしこを多く消費するこれらの地域に高血圧その他の健康障害が多いという報告はない。これらの発酵食品が長年存在してきた背景には、なんらかの食品機能が関係しているのではないかと考えた。生マサバを用いてへしこと後者タイプのなれずしを調製し、一般成分やエキス成分などの変化を調べた。その結果、製品中に多量の遊離アミノ酸や有機酸などの呈味成分に加えて、ペプチドが多量に蓄積することが分かったので、これら食品のエキスを高血圧自然発症ラット(SHR)に投与し、血圧に対する影響についても検討した。
著者
飯島 裕子 伊藤 直之 木村 祐哉
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.83-87, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
11

犬ニキビダニ症の6例(汎発性5例,局所性1例)に,アフォキソラネル2.7–5.6 mg/kgを初診時に経口投与し,その後は3–6週間隔で投与して効果を評価した。ニキビダニの陰転に必要な投与回数は,2例が1回,3例が2回,1例が3回だった。皮膚病変は,初診から4–12週間で全症例が回復した。飼育者への聞き取りと再診時の身体検査で,有害事象はなかった。全症例が最終診察から6ヶ月以上経過し,臨床症状の再発は認めていない。アフォキソラネルの投与は,犬ニキビダニ症の治療に有効であることが確認された。
著者
村田 安哲 板本 和仁 磯崎 恒洋 原口 友也 西川 晋平 檜山 雅人 谷 健二 井芹 俊恵 伊藤 晴倫 中市 統三 田浦 保穂
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1+2, pp.10-14, 2019 (Released:2020-05-08)
参考文献数
12

我々は膀胱から尿道に渡る移行上皮癌と診断された症例に遭遇した。症例に対し、膀胱と尿道の全摘出術を適用し、排尿機能維持のために小腸の一部を用いて導管を作成、腹壁への尿路変更を実施した。術直後から良好な尿流出を認め、造影X線CT検査では小腸導管は造影効果が認められ、血流は良好であることと良好な尿の排出が確認された。術後397日の定期検査では全身状態は良好に維持されていたが、術後495日目に斃死した。下部尿路系の移行上皮癌に対し、獣医学領域における新たな治療法が示唆された。
著者
高垣 マユミ 田爪 宏二 中谷 素之 伊藤 崇達 小林 洋一郎 三島 一洋
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.111-122, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

本研究では, コンフリクトマップ(Tsai, 2000)の理論的枠組みを, 中学校2年地理「世界から見た日本のすがた」の学習内容に適用した授業を考案した。授業実践を通して, コンフリクトマップのいかなる教授方略が, 「認知的な側面」及び「動機づけ的な側面」の変化に対してどのような影響を及ぼすのかを, 探索的に検討することを目的とした。単元前後, 及び授業後の質問紙調査に基づく数量的分析と, 自由記述に基づく解釈的分析の結果, 以下に示すような変化が明らかになった。1)コンフリクトマップの「決定的な事象」において, 「先行概念(日本と世界の地理的事象の非一貫性=ミクロな理解)」と「科学的概念(地理的事象の世界規模的規則性=マクロな理解)」を関連づける教授方略によって, 「知識活用への動機づけ」が高められる。2)コンフリクトマップの「知覚的な事象」において, ITを活用し地形をシミュレーションする教授方略によって, 「合科動機づけ」が高められる。3)知識活用への動機づけ, 及び合科動機づけが促される過程で, 表面的な知識の暗記ではなく地理学習の意味を追求する「状態的興味」が高まっていく可能性が示唆された。
著者
工藤 由紀 伊藤 郁乃 新藤 直子 永井 英明 辻 哲也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.217-222, 2015 (Released:2015-10-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】最期までトイレで排泄を希望する患者は多くみられるが,トイレ歩行が行えた最終時期や影響因子についての報告は少ない.【方法】緩和ケア病棟で2010年1月~2011年12月に死亡退院した154名(中央値75.0±11.6歳)のがん患者について,死亡1カ月前・2週前・1週前のトイレ歩行の可否を後方視的に調査した.加えて6項目(①疼痛②呼吸苦③傾眠④せん妄⑤オピオイド投与⑥酸素吸入)の有無を調査し,トイレ歩行/非トイレ歩行の2群間で比較した.【結果】トイレ歩行症例は死亡1カ月前79名(51.3%),2週前54名(35.1%),1週前33名(21.4%)であった.傾眠・せん妄は非歩行群に,呼吸苦は歩行群に有意に高い頻度で認められた.【考察】がん終末期において①トイレ歩行の実態を示した②リハ介入の余地があると思われたが,意識障害の発現と労作時呼吸苦への対策が必要である.
著者
伊藤 孝行
雑誌
人工知能
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, 2016-09-01
著者
伊藤 隆 田中 哲朗 胡振江 武市 正人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.3012-3020, 2002-10-15

``しりとり''を完全情報ゲームとして数学的に定義した``しりとりゲーム''を考えると,グラフ上のゲームとしてモデル化することができる.これは完全情報ゲームであるため理論上は解けることになるが,問題のサイズが大きくなるにつれ全探索は困難となる.本論文では,しりとりゲームに関する解析を行い,ゲームを効率的に探索する手法を提案する.この手法は数理的解析,探索の効率化の2つの部分から成っており,数理的解析としてグラフのより簡単な形への変形を行っている.加えて,しりとりゲームにおける先手の勝率に関して実験,考察を行う.
著者
青木 仁志 伊藤 太乙 長谷川 雄二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.491-498, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
8

目的:近年,救急医療においては,頭部外傷に対して頭部CTのみで診断している例が散見される。頭蓋内出血の検出に対して頭部CT が第一選択であることは論を待たないが,頭蓋骨骨折を考慮した場合,頭部CTのみの診断で良いのか,その適否について検証を行った。方法:当院(東京都指定二次救急医療機関)を受診した頭部外傷7,126例を対象に後ろ向き研究を行った。頭部X線と頭部CTの頭蓋骨骨折に対する感度を求め,加えて,頭部CTでは検出されにくい頭蓋骨骨折の形態的特徴の分析と,頭部X線を併せて施行した際の被曝量,検査から診断に要する時間の比較検討を行った。さらに,頭部X線を施行せず頭部CTのみで診断する場合の頭蓋骨骨折を見逃す危険度を求めた。結果:頭蓋骨骨折に対する感度は頭部X線が0.99,頭部CTは0.46であった。頭部CTでは骨折の幅と角度によって検出されない形態的特徴が存在した。頭部X 線の被曝線量は頭部CTに比べて低く,検査から診断までに要する時間の延長はみられなかった(CT画像再構成時と比較)。頭部CTのみの場合と頭部X線も併せて施行した場合の頭蓋骨骨折の見逃しの相対危険度は128であった。結論:頭部CTの頭蓋骨骨折の診断能は極めて低く,骨折の幅と角度によっては検出されないことが判明し,頭部外傷をCTのみで診断することの危険性が示唆された。