著者
大津 奈央 倉持 好 佐々木 淳 落合 謙爾 御領 政信
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.357-362, 2017 (Released:2018-01-15)

ブロイラーの浅胸筋変性症の発生要因及び病変形成プロセス解明のため,浅胸筋に肉眼的異常のある32日齢及び48~50日齢のブロイラーの浅胸筋と深胸筋を病理学的に検索した。肉眼的に32日齢では浅胸筋は軽度の退色,筋線維の走行に一致する白色線条病変が観察され,組織学的には散在性の筋線維の硝子様変性,絮状変性,大小不同,マクロファージによる筋貪食像が認められた。48~50日齢では,32日齢の病変より重度かつ広範で,肉眼的に浅胸筋の扁平化や,退色,水腫,白色線条病変が認められ,組織学的には筋線維の再生性変化や線維芽細胞の増殖を伴う膠原線維の増生が顕著であった。重症例では筋膜が肥厚し,膠原線維の増生及び血管新生が認められた。深胸筋ではどの日齢でも筋線維の硝子様変性がわずかに認められるのみであった。全症例で浅胸筋浅層の病変が最も重度で深部になるほど軽度であり,局所的な循環障害に起因することが示唆された。
著者
佐々木 系 長谷川 功 八谷 三和
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.1005-1007, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
22

2016年8月30日,台風に伴う河川増水により,岩手県の某河川沿いにある養魚場が冠水し,ギンザケ当歳魚(0+)(推定50万個体)が逸出した。このため,種間関係(競争・交雑等)を通じた生物多様性への影響が懸念され,駆除等の対策を要する。そこで,対策を講ずる基礎的知見を収集するために,ギンザケ逸出後の河川で魚類相調査を行った。ギンザケの生息個体数は6,387個体と推定され,逸出から100日後では逸出時の1.3%に減少していたが,在来種と同所的に存在し,0+で成熟する雄個体がいることが明らかになった。
著者
馬上 修一 加藤 光恵 坪井 永保 加藤 悠介 八木田 裕治 佐々木 貴義 遠藤 正範 安齋 明子 須藤 美和 本内 陽子 アロマクラブ 部員
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】卵巣癌でホスピス病棟に転棟された患者の機能面だけでなく,生きがいの「アロマ教室開催」を病院全体でサポートし,当院職員構成のアロマクラブに講師として招きQOL向上に繋げたため報告する。</p><p></p><p>【方法】<b><u>症例</u></b> 55歳女性,卵巣癌,心拍数94回/min,ROM制限無し,MMT4-,BI 15点(介護依存あり)。2011年11月当院で卵巣癌の手術施行。短期入院を繰り返していたが状態悪化し当院一般病棟を経てホスピス病棟へ転棟。後にリハビリテーション(以下リハ)依頼。介入当初の希望は「車椅子に乗ってどこか行きたい。なるべく出来ることは自分でやりたい」である。<u><b>経過</b></u> ADL向上目指し下肢筋力増強運動を中心にリハ継続していたが,介入8日目に「もっとアロマを教えたい」と熱望あり。患者はアロマトレーナー有資格者で,入院前はアロマ教室を開催していたため,リハ目標を「アロマ教室開催」,リハ内容をリラクゼーション中心に行い身体調整を行った。同時にアロマクラブに依頼し承諾を得た。患者には低負担で行える様に環境調整を行い,介入12日目に1回目開催。翌日状態悪化が見られたが,「またやりたい」と熱望があり,症状改善したため介入19日目に2回目開催。その3日後に逝去される。</p><p></p><p>【結果】開催日の患者は身支度し,活気に溢れていた。生きがいを達成し,患者や参加者から好評を得た。途中リハ内容を変更し,身体的ストレス軽減を図りアロマ教室を2回開催した。そのため患者は生きがいを達成し満足感を得たためQOLが向上したと考えられる。</p><p></p><p>【結論】終末期患者のQOL向上のため,優先順位の選択の難しさを実感した。また患者の要望を叶えるにはスタッフ間の連携及び迅速な対応が必要なため,チーム医療の重要性を実感した。今後もチームとしての連携を図り,要望に対し身体や環境調整を行い,QOLの向上及び患者満足度に対し客観的評価も検討していきたいと考える。</p>
著者
佐藤 陽彦 佐々木 司 杉本 洋介
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.223-229, 1992-08-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
3

“いらいら”の実態と構造を明らかにするために, 2種類の質問紙調査を行った. その結果, イライラの頻度では週2~3回が, イライラの対象では人間関係が, イライラの状況としては時間因子が関与しているときが最も多かった. イライラの構成要素は自分と状況である. イライラを生じさせる状況は, 自分がある目標に向かって計画に沿って行動している過程で, 自分の思いどおりにならないときである. しかも, その状況がある程度持続し, 自分の努力によってその状況を変えることができず, 目標が達成できるかどうかまだ不明なときである. そして, イライラの感じ方は本人の身体的・精神的状態によって大きく左右される.
著者
佐々木 憲介
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.241-253, 2010-12

1870年代から20世紀初頭にかけて, イギリスにおいても歴史学派と称される一群の経済学者が現われ経済学上の有力な潮流となった。歴史学派は古典派の理論的・演繹的方法に対して歴史的方法を対置し, 古典派の方法論をさまざまな角度から批判した。しかし, 古典派を代表する経済学者の一人であったJ.S.ミルは, その『論理学体系』においてすでに歴史的方法について語っており, それ以外にも歴史学派のものとされる主張を展開していた。はたして, ミルの経済学方法論はイギリス歴史学派とどのような関係にあったのか。クリフ・レズリーは, ミルとリカードウとの違いを強調したが, 歴史学派の多くはむしろ両者の共通性に注目した。ミルは, 経済学の原理に関してはリカードウ派の立場を堅持しており, 新しく示された観点は観点の提示に留まっていて歴史研究の先駆的な業績があったわけではなかった。そのような意味で, 歴史学派にとってのミルは旧学派の一員であった。しかし, 実践的な意味では, ミルの学説は社会改良主義への突破口の一つになった。何人かの歴史学派がミルを評価したのはむしろこの点であった。
著者
黒田 聡史 佐々木 伸雄 伊藤 直之 村岡 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.923-927, 2014-12-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
14

7カ月齢の日本猫が,左前肢の跛行と掌球部の石灰沈着に伴う白斑を主訴に来院した.血液検査では持続的な高リン血症がみられたが,血漿カルシウム値は正常範囲内であった.また,腎不全,甲状腺機能亢進症及び原発性上皮小体機能低下症は認められず,当初は血清中のビタミンD値が高値を示した.リン制限食給与並びにリン吸着剤の投与により,血漿無機リン(iP)値は有意に減少し,カルシウム・リン溶解度積も減少した.また,ビタミンD値は正常値に復した.しかし,血漿iP値は依然正常範囲より高値であった.跛行は改善したものの,掌球の石灰沈着症は初診から2年半以上にわたり観察された.本例の高リン血症の原因は明らかにできなかった.
著者
大久保 翔太 正田 純 ゴン 志豪 佐々木 健
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2017年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.549-550, 2017-03-01 (Released:2017-09-01)

非音声である環境音の認識技術はセキュリティシステムやビデオのシーン解析などにおいて需要が高まっている.本研究では認識対象として定常的に流れる水の音を選び,スペクトログラムに現れるパワーの大きい領域を抽出し, その出現頻度と分布を音の特徴量として分析した.その結果、スペクトルの強い領域の周波数帯、間隔において他の音との差異がみつかった.
著者
桑野 泰光 佐々木 重行 廣田 篤彦 猪上 信義
出版者
福岡県森林林業技術センター
雑誌
福岡県森林林業技術センタ-研究報告 (ISSN:13418092)
巻号頁・発行日
no.11, pp.11-15, 2010-03

福岡県における再造林放棄地の実態を把握するために,時系列衛星データを用いた再造林放棄地の抽出および現地調査による再造林放棄地の現況について調査を行った。福岡県において時系列衛星データより抽出された抽出伐採地は596点で,その内実際に森林が伐採されていた森林変化点は459点であった。森林変化点の約55%は転用地であり,44%が人工林伐採跡地であった。人工林伐採跡地の約10%が放棄地であることが確認され,英彦山周辺に多かった。九州全体では,人工林伐採跡地の約24%が放棄地となっており,福岡県は九州の他県と比較すると放棄地の割合は少なかった。調査したすべての放棄地が,未立木地化することなく植生が回復していた。しかし,一部の林地についてはシカやタケ類といった植生回復阻害要因が認められ,今後注意が必要だと考えられた。放棄地の土壌浸食・崩壊状況は未立木地化した放棄地がなかったこともあり,現時点では特に問題はみられなかった。
著者
稲垣 郁哉 中村 祐太 佐々木 隆紘 柴 伸昌
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.643-646, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
7

〔目的〕術後に長引く母趾痛を呈した舞踊家に対して,足袋へ入谷式足底板を応用した結果について報告する.〔対象と方法〕リスフラン関節固定術の術後1年半以上しゃがみ込み時に右母趾MP関節痛を有する50代女性である.足底板処方前後のNumerical Rating Scale(NRS),Brief Pain Inventory(BPI),しゃがみ込み動作,足部足関節評価質問票(SAFE-Q),Pain Catastropllizing Scale(PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を評価した.〔結果〕NRS,BPI,しゃがみ込み動作,SAFE-Qは改善し,PCS,HADSは軽度改善した.〔結語〕足袋に応用した入谷式足底板の処方は有効であり,舞踊など靴を使用しない活動における足部の症状改善に有用であると考えられた.
著者
税所 玲子 広塚 洋子 小笠原 晶子 塩﨑 隆敏 杉内 有介 吉村 寿郎 佐々木 英基 青木 紀美子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.22-39, 2021 (Released:2021-04-20)

2021年、世界各国で新型コロナウイルスの予防接種が始まったが、感染力が強い変異ウイルスの出現もあり、感染の拡大は止まっていない。WHOによると感染者の数は1月末までに1億人に近づき、死者は200万人を超えた。世界のメディアは新型コロナやその感染予防策についてどのような発信をしたのか。報道を継続するために組織としてどのような対応をとったのか。浮かび上がった課題は何か。 2月号に続き、コロナ禍に対する海外のメディアの対応を報告する。ヨーロッパ、中東、アフリカの国ごとの動きに加え、メディアが直面した問題をテーマ別にまとめる。
著者
佐々木 英基 柳澤 秀夫 太田 昌克 西土 彰一郎
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.32-47, 2021

メディアにとって、国家が指定する“機密”にどう向き合うかは重要なテーマである。なぜなら、国民が“知る権利”を行使する場合、その権利は、メディアの取材および発表行為によって充足されることが多いからである。本稿は、2021年3月に開催したNHK文研フォーラム「メディアは“機密の壁”にどう向き合うか~豪公共放送への家宅捜索を手がかりに~」と題したシンポジウムの抄録を基本に、議論の内容をより深く理解するための情報を加筆したものである。このシンポジウムには、ジャーナリストと学者が参加し、国内外のメディアが“機密の壁”に直面した事例を題材に議論を展開した。議論の中では、“知る権利”、“国益”、“公益”、そして“国民の利益”等がキーワードとなり、メディアが直面する課題や、進むべき方向性が提示された。