著者
井上 道雄 本橋 裕子 竹下 絵里 石山 昭彦 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.231, 2015

はじめに経鼻胃管を利用する重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では、骨格変形や嚥下障害等により、適切な胃管留置ならびに胃内に管があることの確認がときに困難である。当院では、管の胃内留置を確認するため、pHチェッカーを用いて逆流物が胃酸と同等のpH5.5以下であることを確認している。一方で、重症児(者)の胃酸分泌抑制薬使用者へのpHチェッカーの有用性を検討した報告は乏しい。目的経鼻胃管を使用する重症児(者)において、胃酸分泌抑制薬の内服がpHチェッカーの結果に与える影響について検証する。対象当院重症児(者)病棟に入院中で経鼻胃管を利用している17人。方法カルテ診療録を調査し、胃管の留置位置が適正であると確認できた例の、注入前と胃管交換時に用いたpHチェッカー5.5 (JMS)の値と内服情報を収集し、その関係について検討した。経鼻胃管内腔の容量が最低1.6mlであるため、胃内容物が1.6ml以下は除外した。結果対象者の使用薬剤数は平均7.8剤、16人が胃酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬)あるいは制酸剤(酸化マグネシウム)を内服していた。46機会の計測を行った。そのうち、胃内容物が1.6ml以下は25機会(全体の54%)であった。残りの21機会分のpH値で検討を行った。21機会中、胃酸分泌抑制薬もしくは制酸薬内服ありの19機会でpH 5.5以下は14機会(74%)だった。考察胃残が十分引けない機会が相当数あり、重症心身障害児の胃酸分泌抑制薬・制酸薬内服者で、pHチェッカーで逆流物を胃内容物であると同定できた割合は半数以下であった。胃残が十分量引けない例での内服薬の間接的影響の有無は今回は検討できていない。胃残が十分量引ければ、pHチェッカーは74%の感度で呼吸器分泌物と胃内溶液が鑑別できる。今後、胃酸分泌抑制薬・制酸薬の非内服者における、胃逆流物量、pHチェッカー値のデータが蓄積し、今回のデータと比較を行うことが必要である。
著者
阿萬 裕久 天嵜 聡介 佐々木 隆志 川原 稔
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.69-76, 2015-08-31

ソフトウェア開発において,潜在フォールトの早期検出と除去は重要な課題であり,そのための支援技術の一つとしてプログラム中のコメントに着目する手法が研究されている.コメントはプログラムの理解容易性を高める上で有用な要素であるが,複雑で分かりにくい部分に対してその可読性の低さを補う目的で追記されることもある.これまでにJavaプログラムを対象とした調査がいくつか行われ,メソッドの中にコメントが書かれている場合にそのメソッドのフォールト潜在性は他のメソッドに比べて高いという傾向が確認されている.本論文では,コメントに着目したフォールト潜在予測の精度向上に向け,新たな視点としてメソッドにおけるローカル変数の名前とスコープの長さに着目した調査(データ収集と分析)を行っている.三つの著名なオープンソースソフトウェアを対象とした調査の結果,コメントのみならず変数の名前の長さとスコープの長さも考慮した分類を行うことの有効性が確認されている.
著者
佐々木 明
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.115-137, 2003-03-14

This paper describes the global culture adaptation, regionally resulting in the ancient civilizations, to the late Holocene or modern environment under the unparalleled palaeotemprature stability during the 3.0-2.5k. cal. yr. B.C. period. The construction of petty city states around the Black Sea, and of small town settlements in Iran, southwest Central Asia and western continental South Asia attracts our attention, as well as the development and militarization of the Mesopotamian city states and the political and cultural establishment of the Egyptian Old Kingdom. Chinese cultures were attaining one of the highest levels realized by the neolithic people, but metallurgy was not invented there. Other areas were experiencing mostly their neolithic adaptations, although epipalaeolithic populations were scattered especially in the southern hemisphere. At the end of this paper three themes are discussed. (9.7) The city states' economic growth caused their violent struggle. The dispatch of the high nobles of a victory city state to the defeated cities and the disarmament of non-capital cities brought a territory state to completion. (9.8) Metallurgy was invented in the dry areas of abundant mineral resources, not in soil-botanically covered region (e.g. in the coastal China mainland). (9.9) Stone circles and other (mega-) lithic structures found at neolithic and early metal culture sites were stone coral or domesticated plant-animal protection where densely inhabited wild animals would have damaged agriculture and husdandry but where insufficient wood work technology prevented effective legneous fencing.
著者
田中 勲 小林 麻子 冨田 桂 竹内 善信 山岸 真澄 矢野 昌裕 佐々木 卓治 堀内 久満
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 = Breeding research (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.39-47, 2006-06-01
参考文献数
31
被引用文献数
18

イネ日本型品種コシヒカリとアキヒカリの交雑F<sub>1</sub>の葯培養に由来する半数体倍加系統群を用いて,食味に関与する量的形質遺伝子座(quantitative trait loci: QTLs)の検出を試みた.食味は食味官能試験による「外観」と「粘り」,アミロース含量およびビーカー法による炊飯光沢によって評価した.その結果,第2染色体のDNAマーカーC370近傍,OPAJ13および第6染色体のR2171近傍に,コシヒカリの対立遺伝子が食味官能試験の「粘り」を増加させるQTLが検出された.また,第2染色体のOPAJ13近傍にコシヒカリの対立遺伝子がアミロース含量を低下させるQTL,第2染色体のC1137近傍にコシヒカリの対立遺伝子が炊飯光沢を増加させるQTLが検出され,「粘り」を増加させるQTLとの関連が示唆された.以上の結果から,コシヒカリの良食味には,第2染色体に見いだされる一連のQTLが大きく影響していると推察された.<br>
著者
宮田 遼 松宮 弘 佐々木 彩花 吉岡 巌
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.565-571, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
25

リン酸塩尿性間葉系腫瘍(phosphaturic mesenchymal tumor: PMT)は,線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)を分泌し,腫瘍性骨軟化症(tumor-induced osteomalacia: TIO)の原因となる稀な腫瘍である。FGF23は腎尿細管におけるリンの再吸収および腸管におけるリンの吸収を抑制する機能を有するため,過剰なFGF23は低リン血症を来し,骨軟化症を引き起こす。症例は73歳男性で,主訴は胸と足の痛みであった。高アルカリフォスファターゼ(ALP)血症,低リン血症が認められ,骨シンチグラフィーでは肋骨,胸腰椎,腸骨,足根骨に集積を認め,骨軟化症が疑われた。全身CTで左鼻腔に異常な腫瘤陰影を認められた。鼻外からの前頭洞開放を併用して内視鏡下に腫瘍を切除した。病理学的診断はphosphaturic mesenchymal tumor, mixed connective tissue variant(PMT-MCT)であった。手術後,血清リンおよび血清FGF23は速やかに正常化した。胸と足の痛みは手術の5ヶ月後に改善した。手術3年後,血清ALPは正常化し,腫瘍の再発は認めていない。
著者
勝田 隆 友添 秀則 竹村 瑞穂 佐々木 康
出版者
日本スポーツ教育学会
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.31-48, 2016
被引用文献数
1

<p>本研究の目的は、現在のスポーツ界において、スポーツ・インテグリティという用語がどのように捉えられているのかを明らかにすること、また、その用語のもとに展開される実践的取り組みにについて、とくに教育的観点から、問題点を指摘することである。<br>そのために、まず、現在のスポーツ界において、スポーツ・インテグリティという用語がどのように捉えられているかを整理し、その上で問題点を見出した。<br>次に、スポーツ・インテグリティを保護・強化をする上で脅威となる要因について整理した。そして、複数のスポーツ団体が実践的に取り組むスポーツ・インテグリティに関するプログラムを、教育的観点から6 つに分類し、問題点について精査した。<br>考察の結果、本研究において以下の問題点が見出された。<br> a) スポーツ・インテグリティは、スポーツの文脈だけでなく、教育的・社会的文脈においても語られること。<br>b) 日本のスポーツ関係者は、大規模イベントの開催国の責任として、この問題に対する教育を啓蒙する必要性について認識し、共有すること。<br>c) 各組織のリーダーは、スポーツ・インテグリティの脅威に関する共通理解を持ち、これまで以上に共に対処していくことが求められていること。<br>d)「スポーツ ・インテグリティ」を自分自身に、そして組織や社会に対して問う姿勢として、スポーツそのものを守るための行動変容に不可欠なものと捉えること。<br>本稿におけるスポーツ・インテグリティに関する考察はまだ序説に位置づくものであり、今後、教育的観点以外の考察を含め、更なる研究が求められる。</p>
著者
三浦 康次郎 木野 孔司 渋谷 寿久 平田 康 渋谷 智明 佐々木 英一郎 小宮山 高之 吉増 秀實 天笠 光雄
出版者
口腔病学会
雑誌
口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-5, 1998-03-31 (Released:2010-10-08)
参考文献数
18
被引用文献数
10 8

This paper described the incidence of inferior alveolar nerve paralysis following surgical removal of impacted third molars. The investigated cases were 789 patients with 1, 299 teeth that were surgically extracted. Eight (0.6%) patients had the inferior alveolar nerve paralysis and one (0.08%) had lingual nerve paralysis. As for the patients with inferior alveolar nerve paralysis, the incidence was 0.4% in those aged 20 to 29 years, 0.6% in those aged 30 to 39 years, and 3.5% in those aged over 40 years. This study showed that the incidence of inferior alveolar nerve paralysis occurred more frequently in older age cases and in the cases in which the root splitting or the removing the surrounding bone was needed.
著者
根本 美里 谷口 綾子 佐々木 邦明 小菅 英恵
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.1-9, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
19

本研究では、認知機能検査が受検者にもたらす心理的影響の効果・副作用を検証するため、インタビ ュー調査と認知機能検査によるメッセージ効果検証実験を実施した。インタビュー調査の結果、認知機能検査結果に関わらず多くの対象者が、検査を難しいと感じていることや過去の検査結果と比較して結果を解釈していることが明らかになった。認知機能検査によるメッセージ効果検証実験の結果、認知機能の低下のおそれがない第3分類の人は、クルマ利用抑制意図・運転免許返納行動意図など4項目の値が、検査実施後に有意に低くなり、検査による副作用の存在が示唆された。認知機能の低下のおそれがある第2分類の人は、運転免許返納行動意図が事後に有意に高くなった。以上より認知機能検査による心理的効果・副作用の両面が存在する可能性が明らかになった。
著者
佐々木 学
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.606, pp.93-98, 2006

The purpose of this research paper is to discuss the characteristics of the modifications carried out on the Piazza Mattei fountain during 1584-1658. The results of my research were as follows: in accordance with the bloom of baroque art and the shift in the role of fountains in Rome, it became evident that there were fountain restorations carried out before 1658, and that a great number of the forms of the constitutive components of fountains, and the pathways of water flow, were transformed.
著者
佐々木 久郎 スサント ベリー アンガラ フェリアン ヨセフサザビィ アミン 菅井 裕一 川村 太郎 児玉 孝雄 松嶋 慶祐
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
日本鑛業會誌 (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.131, no.8, pp.503-508, 2015
被引用文献数
2

The development and advancement of new technologies have been considered for carbon fixation and its effective utilization as being indispensable for the achievement of greenhouse gas emissions reduction targets without adversely impacting economic growth in the world. Among such technologies, the one considered to present the greatest potential in terms of both of feasibility and CO<sub>2</sub> reduction, as well as offering a relatively low cost burden, is CO<sub>2</sub> capture, usage and geological storage (CCUS). The costs of CO<sub>2</sub> recovery present a barrier to carry the CCS and CCUS project. Large-scale project models for carbon sequestration, recovery and underground storage that involve the construction of long-distance pipelines have been either implemented or planned in North America and Australia, etc., but such projects are not well matched to the land conditions of Japan. The development of Japanese-style CO<sub>2</sub> sequestration, recovery and underground storage technologies is required that ensures linkage in a compact and high economical way among local area-based CO<sub>2</sub> recovery, storage or fixation processes and also energy supply. In this article, the concept<tt>"</tt> Low-Carbon Smart Cities<tt>"</tt> have been proposed with some technical challenges that can be solved by research developments with including environmental monitoring. This concept is targeted for areas with relatively high population density and where land use constraints are in place. By applying the resulting model to the situation in Southeast Asian countries, which have similar land conditions and also possess coal resources, the aim is to combine and integrate the local environment with the provision of carbon-free energy and realize CO<sub>2</sub> reduction with greater economic efficiency.