著者
佐藤 陽 安藤 秀俊
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.13-16, 2022-12-03 (Released:2022-12-01)
参考文献数
5

ヒメチャマダラセセリは,鱗翅目セセリチョウ科の蝶である。日本では,北海道の特産種で日高山脈アポイ岳付近に産し,国の天然記念物(絶滅危惧ⅠA類)に指定されている。近年,生息環境の変化により個体数が急激に減少し,日本チョウ類保全協会などの調査では,調査地(計11カ所)における7月下旬の幼虫数の変化を見ると2013年には361頭であったが,2020年には70頭まで減少し絶滅の危機に瀕している。絶滅を避けるためには,生息域外保全による増殖などの対策が必要であるが,1973年の本種の発見から,2年という短い期間で天然記念物に指定されており,生息域外保全のための基礎的な飼育データがほとんどない。そこで今回,日本チョウ類保全協会から環境省と文化庁の許可を得て採集した母蝶から強制採卵した300卵の生息域外保全を委託され,温度,日長,2化の条件など,累代飼育のための基礎的データの収集を行った。
著者
佐藤 陽悦 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.92-94, 2006-12-20 (Released:2008-04-11)
参考文献数
4

近年, 3次元計測技術の向上により, デジタルアーカイブなどのコンテンツ作りのために, レンジセンサと呼ばれる主にレーザスキャン型の奥行き (デプス) 計測装置を活用した3次元形状モデル (3Dモデル) の獲得技術に関する研究が多数報告されてきている. 一方, CGの製作過程において, 建造物などは, 一般にモデラなどによりプリミティブ等で構築していくことが多い. その際, レンジセンサ計測データなどを元にCGモデルを構築することが有効である. その場合現状のCGコンテンツの制作では, クリエータが形状モデラを利用し, インタラクティブにモデリングを行うことが多い. 本論文では, このような実際的な形状モデリングを支援する技術として, 点群データへのプリミティブ当てはめツールの開発を目的として, 計測データのユーザによる指定領域に適合するプリミティブの最適なパラメタを求めるためのGA (遺伝的アルゴリズム) を用いた手法について基礎的な検討を行った.
著者
倉田 勉 小口 敦 本所 泰子 佐藤 陽介 松本 徹 矢内 宏二 笹原 潤 鮫島 康仁 小黒 賢二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P2224, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】アキレス腱断裂後は筋力低下を伴う機能不全が少なからず残るとする報告が多い。ただし運動復帰は多くの症例で可能なため、その詳細について未知の部分がある。また近年、腱断裂後、修復腱のelongationに関する報告があり、筋力や運動能力とelongationの関係については興味深い。我々はアキレス腱断裂後のリハビリテーションにおいて足関節底屈筋のゆるみを感じることがあり、治療経過で変動するものであると考えている。そこで研究目的は術後長期経過したアキレス腱断裂患者における足関節底屈筋の受動伸張性を明らかにし、筋力、可動域、筋腱形態、歩行との関係を検討することとした。【方法】対象は当院にてアキレス腱縫合術を施行した患者30名(平均44.3歳)、術後経過観察期間は平均27ヶ月である。なお術後1年以上経過した患者を対象とした。性別は男性19名、女性11名、受傷側は左足21名、右足9名であった。受傷から手術までの待機期間は平均5.5日、全例1週間のギプス固定後、機能的装具を術後平均8.7週(6-10週)まで装着した。後療法については縫合法により若干異なるが、半年以降のスポーツ復帰を目標としてリハビリを行った。リハ通院期間は平均179.1日である。検査項目は足関節底屈筋の受動伸張性と足関節背屈可動域(膝伸展位/屈曲位)、下腿周径(腓骨頭下5、10cm)、アキレス腱幅(付着部から5cm近位)、足関節最大底屈筋力(等尺性のみ)、片脚踵上げ反復回数と最挙上高、歩行分析である。計測は受動伸張性、腱幅、最大筋力は腹臥位、可動域、周径が仰臥位、踵上げは立位で行った。また腱幅は電子ノギス(シンワ社製)、最大底屈筋力は等速性筋力測定機Con-Trex(CMV-AG社製)を用い、踵上げ最挙上高は床面から踵部足底面までの高さを曲尺定規で計測した。歩行分析は足底圧分布測定(F-scan)にて自由歩行時の前足部ピーク体重比を患健側各3歩分、平均し求めた。受動伸張性計測の詳細はHand held dynamometer(以下HHD;Micro FET)を用い、ベッド上で腹臥位、膝伸展位となり、伸張反射が起きない程度のゆっくりとした速度で、中足頭足底部を自然下垂位から足関節底背屈中間位まで背屈方向に押し込み行った。なお腱幅、踵上げ最挙上高、受動伸張性はいずれも3回測定の平均値を検討に用いた。統計分析には各測定値の患健差を対応のないT検定、また患側受動伸張性と他項目の関係は相関分析を用い検討した。いずれの分析も有意確率は5%とした。なお統計分析にはR version 2.8.1(コマンダー1.4-8)を用いた。【説明と同意】本調査は事前にハガキで参加希望の有無を確認後、対象者に研究の趣旨・内容を説明し、書面にて同意を得てから検査をおこなった。【結果】患/健側の順に、受動伸張性は28.7/42.1N、可動域は膝伸展位23.9/21.6°、膝屈曲位31.1/30.7°、周径は腓骨下5cmで36.2/36.9cm、10cmで35.6/36.5cm、腱幅22.3/13.4mm、最大底屈筋力80.7/97.4Nm、踵上げは反復回数11.5/16.7回、最挙上高9.5/11.2cm、歩行体重比は94.1/96.2%であった。有意な患健差を認めたのは受動抵抗性、最大底屈筋力、片脚踵上げ反復回数・最挙上高、腱幅の5項目であった。相関分析の結果は患側受動伸張性が同側の腱幅、歩行以外の全項目と有意な相関関係を認め、中でも可動域(膝伸展位/屈曲位)とは負の相関、最大底屈筋力、片脚踵上げ反復回数・最挙上高とは正の相関を認めた。【考察】術後長期経過でも、底屈筋力はいずれも患健差が残存したままで、運動復帰可能な症例が大部分(本研究では88.8%が運動復帰可能)であっても、過去の知見と同様に完全な筋力回復に至るのは難しいと考えられた。また受動伸張性と他因子との関係では、先に我々が行った健常者による検討で受動伸張性は最大筋力と強い相関(r=0.81)、背屈可動域、下腿周径と中等度の相関(r=-0.50、0.45)を認めており、アキレス腱患者においても同様の結果を示したと考えている。底屈筋力と受動伸張性の関係については、先行研究にダイナモメーターで計測した受動トルクが筋のタイプや量と関係があると考察した過去の報告がある。本結果からも筋腱複合体の硬さと筋力には密接な関係が窺え、アキレス腱断裂後では筋腱複合体のゆるみと筋力低下の両者は共通する機能不全を表している可能性があると推察する。なお本研究で計測した受動伸張性は、修復腱の特性を含めた筋腱複合体全体の質を表現するものとして捉えるべきである。【理学療法学研究としての意義】アキレス腱断裂後は極めて深刻な筋力低下が起こり、その回復は長期間に及ぶか、回復途上で機能的安定となることも少なくない。今後、受動伸張性計測による個別的、段階的な運動処方の提供、また筋腱複合体のゆるみが運動能力に及ぼす影響を明確にすることがアキレス腱断裂後の機能不全を解決する糸口になると考える。
著者
中川 憲之 井原 和彦 島田 信治 別府 達也 竹下 都多夫 佐藤 陽昨 保利 俊雄 石橋 正二郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.555-556, 2013-09-25 (Released:2013-11-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

大転子骨折単独は稀とされている.初診時の単純X線で大転子のみの骨折であった20例を対象とし評価した.20例のうちMRIを16例に施行し,2例は大転子骨折のみ.14例が大腿骨転子部骨折を認めた.大転子骨折単独の報告はいくつかあるが,MRIを行っていないものが多く,実際は不顕性の大腿骨転子部骨折であった可能性もあるのではないか?
著者
佐藤 陽彦 佐々木 司 杉本 洋介
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.223-229, 1992-08-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
3

“いらいら”の実態と構造を明らかにするために, 2種類の質問紙調査を行った. その結果, イライラの頻度では週2~3回が, イライラの対象では人間関係が, イライラの状況としては時間因子が関与しているときが最も多かった. イライラの構成要素は自分と状況である. イライラを生じさせる状況は, 自分がある目標に向かって計画に沿って行動している過程で, 自分の思いどおりにならないときである. しかも, その状況がある程度持続し, 自分の努力によってその状況を変えることができず, 目標が達成できるかどうかまだ不明なときである. そして, イライラの感じ方は本人の身体的・精神的状態によって大きく左右される.
著者
上原 利夫 佐藤 陽一 泊 久次
出版者
日本経営倫理学会
雑誌
日本経営倫理学会誌 (ISSN:13436627)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.71-81, 2003-03-31 (Released:2017-08-01)

The recent corporate scandals were brought to light by whistle-blowing. Whistleblowing is an effective means to obtain a tip-off, but legal measures have to be put in place to prevent the whistle-blower's suffering. The Sarbanes-Oxley Act of 2002 is a U.S. version of the measure addressed to the window-dressed accounts to jack up the stock prices. Japanese corporate wrongdoings are often the outcome of the cozy relationship among politics, bureaucracy, and industry that is peculiar in Japan. Insider's accusation is effective to expose the injustice, but it should be deemed abnormal if there is no alternative. We want to answer to this problem by way of "Comprehensive Auditing". This scheme is meant for an NPO corporation to act as the auditing principal "providing an auditing firm or company's auditor with information obtained through own investigation and participating together in analyzing and making public after evaluating it from citizens' perspective". This article intends to promote the "disclosure of corporate information and its fair evaluation" in such a unique way and safeguard the interest of corporate stakeholders. The upshot will be a favorable stock market and it will also bring about the revitalization of Japanese economy.
著者
小松﨑 記妃子 山田 真実子 福宮 智子 佐藤 陽子 山﨑 あや 渡辺 純子 福地本 晴美
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.499-507, 2020 (Released:2021-01-28)
参考文献数
7

看護学生による臨地実習に関する評価尺度の動向を明らかにする.本研究は,臨地実習での教授者の教育能力および学生の看護実践能力の両側面の能力を評価するための資料とする.医中誌Web Ver.  5を用いて,検索対象年は2005年1月〜2015年9月,検索式は「臨地実習」and「看護学生」and「評価」とし原著論文に限定した.その中から看護学実習に関して尺度を用いた評価を行っている文献(独自質問紙のみを使用した文献は除外)を分析対象とした.検索の結果,1,132件が抽出された.このうち本研究の条件に該当する文献は73文献あった.使用されている評価尺度は55種類あり,1文献に対し1〜11の尺度を用いるなど多岐にわたっていた.評価者は,教員,指導者,学生の3つに分類でき,評価対象は,教員,指導者,学生,実習過程(実習全般),実習環境の5種類に分類できた.人を評価対象とした文献のなかで,教員を評価した文献は4件で最も少なく全て2011年以降に確認された.指導者を評価した文献は20件,学生を評価した文献は45件あり,2005年から確認できた.教員を評価対象とした文献のうち,その評価者は,学生3件,教員(自己評価)1件であり,評価尺度は,前者は全て日本語版Effective Clinical Teaching Behaviors(以下ECTB),後者は教授活動自己評価尺度―看護学実習用―が用いられていた.指導者を評価対象とした文献における評価者は,学生14件,指導者(自己評価)6件であった.評価尺度は,前者のうち11件がECTB,3件が授業過程評価スケール―看護学実習用―であり,後者は全てECTBが用いられていた.近年の看護学実習における教育評価に関する研究では,教授者の教育実践能力を評価する尺度には,授業過程評価スケール―看護学実習用―やECTBの共通性が確認されたが,教員を評価対象とした研究は僅かであった.また,評価の時期は,基礎実習後と領域実習の前後などで2時点から3時点で実施されており,基礎看護実習から全ての実習終了後までなど一連の過程を通じた学生の評価に関する研究は見当たらなかった.看護実践能力における要素別の評価尺度を組み合わせて実習を評価していることが明らかになった.
著者
安藤 明伸 潟岡 冴子 鈴木 哲朗 橋渡 憲明 佐藤 陽 村松 浩幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.65-68, 2016

近年,SNSの使用に関わる問題が増加し,大きな課題となっている.情報教育の観点からも,中学生がSNS使用のメリット・デメリットを踏まえて,適切に活用できる判断力を持つことが重要であると考えられる.そこで本研究は,中学生を対象に,SNS使用に関わる判断力を育成するシナリオゲーム型教材の開発を目的とした.開発したシナリオゲーム型教材は,中学生を主人公に,SNSのトラブルをテーマにしたシナリオブックおよびカードで構成し,27種類の展開を設定してサイコロによる偶然性も組みこんだ.中学校2学年220名を対象に1時限の実践をした結果,SNS使用に関わる判断力の向上について,一定の教育的効果を確認できた.
著者
渡辺 純子 福宮 智子 山田 真実子 小松﨑 記妃子 佐藤 陽子 山﨑 あや 福地 本晴美 大﨑 千恵子
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.82-91, 2019 (Released:2019-12-19)
参考文献数
11

本研究は,臨床教員の教授活動および臨床教員制度導入の成果と課題を明かにすることを目的とした.臨床教員の指導により実習を行った学生56名,臨床教員とともに実習指導をした実習指導者25名,臨床教員が実習指導を行う部署の師長13名の3群に無記名質問紙調査を行った.調査項目は,日本語版Effective Clinical Teaching Behaviors評価スケールを適用した.また,臨床教員制度および臨床教員の教授活動に関する自由記述を求めた.その結果,臨床教員の教授活動については,3群いずれも肯定的に評価をしており,特に学生に対する教育環境の整備を高く評価していた.学生は,実践的な学びや看護の探求心に関連する内容を高く評価する一方で,緊張感を緩和するというニーズが高く,課題のひとつとして示された.実習指導者は,学生の学びの質向上を目的に学内と臨床の架け橋となる存在への期待をもっていた.師長は実習指導者の育成,部署の臨床レベルの向上,新人の適応支援に関する期待が認められた.また,臨床教員制度については,臨床教員の役割の明示や人員配置の問題が見出された.これらのことにより,今後,臨床教員はさらなる臨地実習の充実を図るとともに,卒後教育や臨床の質向上などに対し幅広い役割を果たしていくことや臨床教員活動の可視化が必要であると考えられた.
著者
近藤 誠 佐藤 陽祐 稲津 將 勝山 祐太
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

This study evaluated microphysical schemes implemented in a meteorological model SCALE (Nishizawa et al. 2015; Sato et al. 2015) targeting midwinter snowfall events in Hokkaido. Cloud microphysical schemes of a 2-moment bulk scheme (Seiki and Nakajima 2014: SN14), a 1-moment bulk scheme of Roh and Satoh (2014: RS14), and that of Tomita (2008: T08) were evaluated with the simulation for events, based on ground-based measurement by disdrometer. Our analysis elucidated that SN14 successfully simulated the measured relationship between the particle size and terminal velocity distribution (PVSD). On the other hand, T08 overestimated the frequency of graupel with fast fall velocity, and underestimated particle diameters. RS14 also overestimated the frequency of the graupel, but reproduced the fall velocity of graupel particles. Sensitivity experiments indicated that RS14 scheme can be improved by the modification for the slope parameter, mass-diameter(m-D) relationship, and PVSD relationship of graupel.ReferencesNishizawa, S., H. Yashiro, Y. Sato, Y. Miyamoto, and H. Tomita, 2015: Influence of grid aspect ratio on planetary boundary layer turbulence in large-eddy simulations. Geosci. Model Dev., 8, 3393–3419, https://doi.org/10.5194/gmd-8-3393-2015.Roh, W., and M. Satoh, 2014: Evaluation of precipitating hydrometeor parameterizations in a single-moment bulk microphysics scheme for deep convective systems over the tropical central pacific. J. Atmos. Sci., 71, 2654–2673, https://doi.org/10.1175/JAS-D-13-0252.1.Sato, Y., S. Nishizawa, H. Yashiro, Y. Miyamoto, Y. Kajikawa, and H. Tomita, 2015: Impacts of cloud microphysics on trade wind cumulus: which cloud microphysics processes contribute to the diversity in a large eddy simulation? Prog. Earth Planet. Sci., 2, https://doi.org/10.1186/s40645-015-0053-6.Seiki, T., and T. Nakajima, 2014: Aerosol effects of the condensation process on a convective cloud simulation. J. Atmos. Sci., 71, 833–853, https://doi.org/10.1175/JAS-D-12-0195.1.Tomita, H., 2008: New microphysical schemes with five and six categories by diagnostic generation of cloud ice. J. Meteorol. Soc. Japan, 86A, 121–142, https://doi.org/10.2151/jmsj.86A.121.
著者
眞竹 昭宏 佐藤 広徳 三浦 朗 佐藤 陽彦 福場 良之
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.16-21, 2003-02-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
29
被引用文献数
6 5

咬合力の低下は顎顔面領域の成長を抑制し, その顎顔面領域の疾病のみならず, 全身の身体健康や機能障害を招く一因となっていることが憂慮されている. そこで本研究では, 咬合力を発揮する咀嚼筋の中で最も形態的に大きく, 強大な力を発揮するといわれる咬筋に着目し, 超音波法を用いた左右咬筋の弛緩時および緊張時における横断面積と, ストレインゲージによる一歯間の咬合力測定を行い, 咬筋の筋横断面と咬合力との関係について検討した. 咬筋が咬合力を発揮する緊張時の形態的変化として, 筋厚, 筋横断面積が増加し, 筋幅が減少するといった特徴がみられた. また, 最大咬合力は右側で683.7±204.9N (CV=0.299), 左側で693.6±208.7N (CV=0.300) であり, 有意な左右差はみられなかったものの, 左右ともにその標準偏差および変動係数から, 個人差の大きいことがうかがえた. さらに, 咬合力と左右全ての咬筋形態計測値との間で有意な正の相関がみられ, 咬合力の発現には咬筋形態の大きさが影響していることが示された.