著者
澤根 美加 大田 正弘 山西 治代 本山 晃 高倉 伸幸 加治屋 健太朗
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.188-196, 2012-09-20 (Released:2014-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

皮膚には血管・リンパ管からなる微小循環系がはりめぐらされており,皮膚は全身の臓器と同様に,血管から栄養や酸素を供給され,リンパ管から過剰な水分や老廃物を排出されることで恒常性を維持している。皮膚の恒常性維持に微小循環系は重要と考えられるが,皮膚老化への関わりとその分子メカニズムについては未知な部分が多かった。本研究では,加齢による皮膚老化が循環系機能の低下によって引き起こされ,さらにその循環系機能を血管安定化にかかわる受容体Tie2 (endotheliumspecific receptor tyrosine kinase 2) が制御することを明らかにした。まず,ヒト皮膚組織を用いて循環系変化を解析したところ,加齢で血管およびリンパ管の構造が不安定化し,機能が低下していた。さらに,そのメカニズムはTie2の活性化の低下に起因していた。Tie2は血管と同様,リンパ管機能や成熟化にも寄与しており,Tie2の活性化が血管・リンパ管の安定化に重要であった。そこで,Tie2を活性化する薬剤を網羅的に探索した結果,ケイヒエキスを同定した。
著者
中谷 謙 倉澤 茂樹 森 尚彫 不破 真也 酒井 希代江 森岡 悦子 中俣 恵美 大歳 太郎
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.77-84, 2018-10-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
18

特別支援学校における専門職種の就業状況を把握することを目的として,全国の特別支援学校を対象に質問紙法による調査を実施し,言語聴覚士の就業状況に焦点をあてて検討した.就業状況,実働時間,学校の区分や特性等との関連性について解析した結果,言語聴覚士は,常勤数・非常勤数,実働時間数ともに少なく,就業状況は,生徒数が多い学校,聴覚障害,小学部において有意に多く,病弱,視覚障害では有意に少なかった.言語聴覚士が特定の学校や区分に集中して実働している状況が推察された.本検討の結果,連携促進のために,言語聴覚士の認知度の向上や言語聴覚療法の対象領域と専門性の理解を促す取り組みが必要と考えられた.
著者
竹味 利晃 岩瀬 正泰 上條 竜太郎 倉地 洋一 水野 隆 南雲 正男
出版者
JAPANESE SOCIETY OF ORAL THERAPEUTICS AND PHARMACOLOGY
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.8-11, 1996-04-01 (Released:2010-06-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

A study was carried out to evaluate the efficacy of allopurinol mouthwash on mucositis induced by chemotherapy or/and radiotherapy in patients with oral cancer. The effect of allopurinol mouthwash was judged according to the World Health Organization grading system. Eight of the nine patients (89%) were reduced clinical status on mucositis. Treatment with allopurinol mouthwash was well tolerated in all patients. There were no adverse effects in trial of allopurinol mouthwash. Allopurinol mouthwash was considerably effective against mucositis induced by chemo- and radiotherapy.
著者
倉田 稔
出版者
小樽商科大学
雑誌
小樽商科大学人文研究 (ISSN:0482458X)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.51-87, 1995-03
著者
上田 渉 大川 清孝 宮野 正人 藤井 英樹 大庭 宏子 山口 誓子 青木 哲哉 倉井 修 小野寺 正征
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.2161-2168, 2016

<p>潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)患者に合併するサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染症の大部分は,ステロイドや免疫抑制薬の治療歴がある.今回ステロイド投与歴がないにも関わらずCMV再活性化を生じ,治療経過でCMV感染症を発症したため抗ウイルス治療を要したUC患者2例を経験した.1例目は66歳で,再燃時大腸内視鏡検査では発赤,浮腫,びらんのみだが,既にCMVの再活性化を呈していた.ステロイド治療で一旦軽快したが,その後CMV感染症を合併し抗ウイルス治療を要した.2例目は75歳で,再燃時大腸内視鏡検査で浮腫,びらん,小潰瘍のみであったが既にCMV再活性化を生じていた.ステロイドとタクロリムスで一旦軽快したが,CMV感染症を合併し抗ウイルス療法を要した.ステロイド投与歴にとらわれず,高齢者UC患者の再燃時には典型的な内視鏡画像を欠いてもCMVの再活性化を疑いステロイド以外の治療を考慮すべきである.</p>
著者
藤崎 亜由子 倉田 直美 麻生 武
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.67-77, 2007
被引用文献数
3

近年登場したロボットという新たな存在と我々はどのようにつきあっていくのだろうか。本研究では,子どもたちがロボットをどう理解しているかを調べるために,5〜6歳児(106名)を対象に,2人1組で5分間ロボット犬と遊ぶ課題を行った。あわせて,ロボット犬に対する生命認識と心的機能の付与を調べるためにインタビュー調査を行った。ロボット犬は2種類用意した(AIBOとDOG.COM)。DOG.COMは人間語を話し,AIBOは電子音となめらかな動きを特徴とするロボットである。その結果,幼児は言葉をかけたりなでたりと極めてコミュニカティブにロボット犬に働きかけることが明らかになった。年齢群で比較した結果,6歳児のほうが頻繁にロボット犬に話しかけた。また,AIBOの心的状態に言及した人数も6歳児で多かった。ロボット犬の種類で比較した結果,子どもたちはDOG.COMに対しては言葉で,AIBOに対しては動きのレベルで働きかけるというように,ロボット犬の特性に合わせてコミュニケーションを行っていた。その一方で,ロボット犬の種類によってインタビュー調査の結果に違いは見られなかった。インタビュー調査では5割の子どもたちがロボット犬を「生きている」と答え,質問によっては9割を超える子どもたちがロボット犬に心的機能を付与していた。以上の結果から,動物とも無生物とも異なる新たな存在としてのロボットの可能性を議論した。
著者
吉倉 真 城田 五郎 近藤 照義
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.27, no.Specialnumber, pp.199-208, 1977 (Released:2007-03-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

1. 産卵後一両日中にウヅキコモリグモの持っている卵嚢を取り除いたら, 3週間ほどで再び産卵した. 初回の産卵数は平均約50個, 次回のそれは約33個であった.2. 卵嚢保持個体における肥大卵母細胞の大きさは, 産卵後約4週間で直径約184μに達したものもあったが, 排卵したものはなかった. 産卵後一両日中に卵嚢を除去したものでは, 産卵後約4週間で肥大卵母細胞は直径約476μに達したものがあり, 直径450μ以上のものは排卵されていた.3. 卵核胞は卵細胞の成長とともに大きくなる. 直径約40μの卵細胞において直径約33μであるが, 排卵までに直径約67μに達する.4. 卵黄核も卵細胞の成長とともにある程度大きくなる. 卵細胞の直径70-90μで, その直径平均約23μであるが, それ以後排卵までその大きさにとどまる.5. 卵黄粒は卵細胞の直径約150μ以上で形成され, 卵細胞の成長とともに大きさを増す. 排卵時, 最大のものの直径約35μ, 産出卵において最大のものの直径約56μであった.6. 卵巣には初回産卵後, なお平均150個ほどの卵緒を有する卵細胞が残されている. 卵嚢が除去されると, それらのうちあるものが急速に成長し成熟する.7. 退化卵細胞は産卵直後には十数個あるも, 次第に吸収され, 3-4週間後にはほとんどなくなる.
著者
小倉
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.19, no.226, 1912-07-20
著者
高倉 健太郎 吉川 大弘 古橋 武
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.43-50, 2017-07-19

ALS患者のコミュニケーション手段として,P300 spellerの利用が注目されている.このP300 spellerのインタフェースには主に,行列型と高速逐次視覚刺激呈示(RSVP)がある.特にRSVPインタフェースについては,注視点の移動の必要がないため,より実用的であるといわれている.しかしRSVPインタフェースには,行列型インタフェースと比較して文字入力性能が悪いという特徴がある.この問題を解決するため,河合らにより,部分強調手法が提案されている.しかし,従来手法では,部分強調に用いる図形の形,図形の色の根拠が不明瞭であった.そこで本論文では,RSVPにおける呈示候補の弁別性能を向上させるため,部分強調方法について検討を行う.これにより,部分強調の構造的特徴について,図形の形として方形を,図形の色としてマゼンダを用い,また,文字の背面に強調図形を配置して部分的な強調を施した部分強調手法を提案する.文字入力実験を行い,従来手法と比較して,文字の正答率と文字入力速度を考慮した指標である文字入力性能ITRの有意な向上が確認された.P300 speller is expected to help ALS patients. Rapid Serial Visual Presentation (RSVP) and matrix interface are famous interface used in P300 speller. The advantage of RSVP is that all choices are presented on the same place. Thus, the movement of gazing point is not needed. However, RSVP shows lower performance of inputting than matrix interface. To solve this problem, Kawai et. al. proposed partial highlight method. However, this conventional method did not consider the shape, color and layer of highlight well. Then in this paper, we consider them to improve discrimination performance and propose a new partial highlight method that uses square as the shape, magenta as the color and place highlight on the back face of character. The experiment of inputting character shows that the information transfer rate (ITR) is significantly improved from the conventional method.
著者
佐藤 邦裕 吉田 一郎 支倉 千賀子
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.18-29, 1987-03-25 (Released:2009-05-22)
参考文献数
35

(1) 父島列島(父島,兄島,弟島),母島列島(母島,平島,向島)において1984年7月6~31日にシロアリ総合調査を行ったほか,'86年3月までにあわせて37日間シロアリの調査を行った。(2) 父島ではイエシロアリのほか,過去に例のないナカジマシロアリ,ヤマトシロアリの生息を確認した。また,兄島,弟島においてもイエシロアリの生息を確認した。(3) 父島における建築物調査として全戸の聞き込み調査を行った。イエシロアリの被害が甚大であり,特に古い木造家屋に激しいものがみられた。また,防除施工後も被害が起こることが多く,住民が施工に対する不信感を持っているように思えた。加えて施工コスト(本土からの運賃等によるコストの高騰)の問題があり,個人住宅の施工率は公共建築物に比べて低く,コスト低減のための何らかの対策が必要である。(4) 母島,向島ではナカジマシロアリ,ダイコクシロアリをまた,平島でナカジマシロアリを確認した。(5) 母島では野外でナカジマシロアリが,建築物ではダイコクシロアリの加害が多くみられた。(6) 母島の建築物の調査は,父島同様に全戸の聞き込み調査を行った。母島では父島に比べ,住民のシロアリに対する認識が不足しており,特に小笠原で問題となるイエシロアリ,ダイコクシロアリ,ナカジマシロアリの生態等の正確な情報を村民が得る場を作る必要がある。
著者
大城 諒士 塩塚 大志 原田 繁実 金子 英治 井上 喜乃 倉田 智成 横倉 邦夫
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌E(センサ・マイクロマシン部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.138, no.9, pp.791-798, 2018
被引用文献数
2

<p>Surge voltages often have much higher value and changing rate than those of power frequency voltages, and might cause damages to apparatuses or equipment not only on near a surge source, for example lightning struck point, but also on far points from it due to propagating. In addition, surge phenomena often become complex due to the reflections and the superpositions on a point where surge impedances having different value are connected. The surge phenomenon occurring on a power cables connected with a transmission tower is one of these cases. This research's goal is to propose the EMTP model for surge phenomenon occurring on cables arranged through a transmission tower. The proposed model simulates such cable by using a cable model through a pipe conductor. The results calculated by the proposed model ware compared with the results by VSTLrev (Virtual Surge Test Lab. Restructured and Extended Version) which is a surge analysis program based on FDTD (Finite Difference Time Domain) method to verify the accuracy of the proposed model. As a result, the proposed model is reasonable for analysis of a surge phenomenon occurring on a cable through a transmission tower.</p>
著者
金城 春野 小倉 暢之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.83, no.750, pp.1533-1542, 2018

&nbsp;Hisao Nakaza was one of a handful of architects who contributed to building activities in Okinawa before, during, and after the Second World War. He engaged in the post-war recovery construction in the forefront immediately after the war, and later served as the first president of the Okinawa Society of Architects & Building Engineers (O.S.A.B.E.). Nakaza was a pioneer who represented Okinawan architectural society in the early post-war period.<br>&nbsp;This study defines the period before 1960 as the dawn of concrete house popularization in Okinawa and aims to clarify the aspects of the development of architecture in Okinawa during this period, examining the architectural activity of Hisao Nakaza, who played a leading role in laying the foundation for the spread of concrete buildings. Results obtained from each section are as follows:<br>&nbsp;1) Nakaza was engaged in the public construction work in Okinawa before the war. That experience correlated to his active involvement of public work of American Army immediately after the war and he obtained advanced technologies. He employed masonry construction methods, utilizing local materials from 1950 to 1953 when material procurement and factory equipment were incomplete for the Reinforced-Concrete (RC) building. After 1954, he made the most of the properties of RC building, which made free form possible and also designs were changed. He was also devoted to designing activities and writing activities for magazines and newspapers and enlightened people on the dissemination of non-wooden buildings.<br>&nbsp;2) During his tenure as the President of the O.S.A.B.E., Nakaza organized discussion meetings of engineers and competitions of farm house design. Discussion meetings promoted the common consciousness of the dissemination of concrete housing among the engineers. Competitions nurtured young architects and at the same time offered the opportunities to make people known a new image of farmers' housing. Furthermore, interactions between Japanese and American engineers staying in Okinawa through meeting led to the publication of booklets about rural houses. In addition, requirements for concrete housing suitable for the land and climate were presented. Furthermore, financing facilities and tax system revisions for the establishment of concrete buildings were requested to government.<br>&nbsp;3) In the development of housing design, starting from 1949, masonry construction was performed for two years. After stone building and brick building were examined, non-wooden building was fulfilled. Concrete block (CB) building was introduced to build plumbing water parts of wooden houses around 1955, which improves durability, sanitation and handiness. CB building was frequently employed between 1952 and the beginning of 1955, which were designed by taking into consideration the climate features of the region from the beginning of the first introduction. The farmer house model of CB building was opened to the public and earned a great response. Finally, RC building entered the mainstream in 1956. At the same time, screen blocks were created and frequently utilized. The shape of screen blocks was contrived where both usability and exquisite design were found for the subtropical climate of Okinawa.<br>&nbsp;As stated above, Hisao Nakaza was dedicated to the activities of the dissemination of concrete housing in diversified fields such as technical aspect (design), publicity (writing to enlighten people) finance (request for the support of financial policies) and education (cultivate architect at O.S.A.B.E).<br>&nbsp;This study examined the process of Okinawan architecture after the war and revealed that the history of modernization was based on not only the unilateral receiving of advanced technology under military occupation but also the initiative struggle of the local architect, Nakaza, with roots in the region of Okinawa.
著者
椿 俊和 岩崎 郁美 小田島 優子 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.331-334, 1993

麦飯石は無水珪酸を主成分とする火成岩類中の石英斑岩に属する岩石であるが, 古くから腫れ物・皮膚病に効果のある漢方薬として普及してきた. そこで我々は, 麦飯石の接触性皮膚炎に対する効果をみる目的で,モルモットに用いて検討を行った.<br>方法は, 生後6週のハートレイ系モルモットの雌8匹の背中の毛を刈り, そこに0.1%漆溶液0.5mlを毎日10回同じ力で塗布し接触性皮膚炎を作製し, その後背中の左半分は治療せず, 右半分に麦飯石水溶液またはワセリンを塗布した.<br>肉眼的には両群とも3日目に発赤・浮腫・糜爛が認められたが, 麦飯石水溶液塗布群の程度が一番弱かった. 組織学的には表皮の肥厚と過角化, 血管周囲性の炎症性小円形細胞の浸潤が共通した所見であったが, 麦飯石群の表皮肥厚が最も軽度で, また炎症性小円形細胞の浸潤もわずかであった.<br>以上より, 麦飯石は接触性皮膚炎に対して抗炎症効果を持ち, 皮膚炎の改善に有効であると考えられた.
著者
朝倉 槙人
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.16-37, 2014 (Released:2018-01-27)
参考文献数
60
被引用文献数
3

This study examines the relationship between the tourist gaze and local residents whose life spaces have recently become valuable as tourism resources. A large number of studies have been done on the impact of tourism on the local host society by presupposing and applying two influential concepts: the tourist gaze of J. Urry and the objectification of culture of Y. Ohta. However, these concepts cannot necessarily be applied to local people, who themselves have come to be tourism resources, especially in modern-day “new tourism.” Although residents have become increasingly important and indispensable factors in tourism, they cannot always accommodate themselves to the tourist gaze because they are living their daily lives as well as engaging in tourism practices within their life spaces. Therefore, this paper aims to examine how local residents understand the tourist gaze and carry out their own tourism practices within their life spaces, with special reference to Higashi-Iya, Tokushima Prefecture. In considering these issues, it is important to analyze both the influence of the tourist gaze on the regional promotion plan in Higashi-Iya, and the meaning of tourism practices for local residents (mainly tourism actors).The findings are summarized as follows: First, the regional promotion plan in Higashi-Iya is closely related to an image of authenticity advocated by a chief consultant of the project, Alex Kerr, stemming from the atmosphere of Higashi-Iya in the early 1970s. Second, tourism practices by many local residents are based on their feelings toward and sense of daily life and sincerity rather than with the tourist gaze in mind. In other words, local residents, including active actors, do not necessarily directly accommodate themselves to the tourist gaze. Such a posture by the residents has led to the unique charm that is characteristic of Higashi-Iya, an unsophisticated and authentic rural area. It seems that the relationship is advantageous to both the local residents and the planning consultant in Higashi-Iya because it facilitates participation in tourism practices for the former and provides an authentic image of Higashi-Iya for the latter. However, some residents are not willing but are forced to engage in personal practices of tourism on the basis of their daily experiences and sincerity. That leads to the third point: why do they engage in such tourism practices ? It is clear that some regional factors, such as tourism being a key industry, depopulation, remoteness from cities, etc., are interrelated and have a causal influence on the relationship between local residents and the tourist gaze. In this context, many local residents in the region have a negative perception of tourism because of lower and uncertain income and difficulties with the increase in the number of tourists, especially compared with the neighboring tourism region of Nishi-Iya. It is concluded that how the tourist gaze affects the local society is closely related to its conditions; this kind of tourism practice within life space can presumably be seen in other rural areas, especially those suffering from severe economic conditions such as Higashi-Iya. In sum, the relationship between local residents and the tourist gaze is more complicated than has previously been assumed and is closely related to the local conditions.
著者
白倉 克之
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.301-308, 1998-06-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
13

近年わが国のアルコール依存症者数の増加傾向が指摘され, 依存症者およびアルコール関連問題を有する患者数は, 全国で約230万ないし250万人に達すると推定されている.事実アルコール依存症者像についても, 30数年前の中年ブルーカラー男性という固定したイメージは払拭され, 産業メンタルヘルス領域で問題とされる「職場の3A」の一つとして, ホワイトカラー族はいうに及ばず, キッチン・ドリンカーという造語にみられるように家庭婦人やOLなどの女性患者, 最近では未成年者や高齢者にもその急増が指摘されるなど, アルコール依存症ないしアルコール関連問題を抱える患者層の多様化が顕著となっている.一方では近年の国民医療費の急増, 高齢化・少子化現象に基づく就労人口の激減などに直面している事実に鑑み, アルコール問題は早急に解決されなければならない焦眉の社会問題の一つといっても過言ではない.厚生省も従来の成人病という概念を修正して, 1996年より生活習慣病という概念を導入し, がん・脳血管障害・高血圧症・糖尿病などとともにアルコール症についてその対策や予防に全力を傾けている状況である.以上のような状況に鑑み, 本稿では前半でアルコール医療について簡単に解説するとともに, 後半ではストレス・コーピングの立場から飲酒行動について述べてみたい.