著者
児玉 聡
出版者
PHP研究所
雑誌
Voice (ISSN:03873552)
巻号頁・発行日
no.523, pp.216-223, 2021-07
著者
児玉 聡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.172-176, 2019-03-15

はじめに 近年,公衆衛生の分野では,公衆衛生の倫理に関する実践と研究の重要性がうたわれるようになっている.本稿では公衆衛生の倫理学の動向を概観する.最初に,公衆衛生の射程の問題を説明する.次に,なぜ今,公衆衛生の倫理学が問題となっているのか,そして,主要な倫理的課題にはどのようなものがあるのか,主要な倫理的アプローチはどのようなものかについて論じる.
著者
盛永 審一郎 加藤 尚武 秋葉 悦子 浅見 昇吾 甲斐 克則 香川 知晶 忽那 敬三 久保田 顕二 蔵田 伸雄 小出 泰士 児玉 聡 小林 真紀 品川 哲彦 本田 まり 松田 純 飯田 亘之 水野 俊誠
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

終末期の意思決定に関する法制度・ガイドライン等を批判的に検討した結果、以下のことが明らかとなった。①医師ー患者関係に信頼性があり、透明性が担保されていれば、すべり坂の仮説はおこらないこと、②緩和ケアと安楽死は、相互に排他的なものではなくて、よき生の終結ケアの不可欠の要素であること、③それにもかかわらず、「すべり坂の仮説」を完全に払拭しえないのは、通常の医療である治療の差し控えや中止、緩和医療を施行するとき、患者の同意を医師が必ずしもとらないことにあること。したがって、通常の治療を含むすべての終末期ケアを透明にする仕組みの構築こそが『死の質の良さを』を保証する最上の道であると、我々は結論した。
著者
田中 美穂 児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.96-106, 2014-09-26 (Released:2017-04-27)

高齢化に伴い、世界的にも認知症患者は増加傾向にある。世界各国は、能力の無い人の終末期医療の意思決定に関する諸問題の解決策を模索しているのが現状である。そうした試みの一つが、英国のMental Capacity Act (MCA,意思能力法)2005である。特徴的なのが、能力が無くなった場合に備えて代理人を設定する「永続的代理権」と、さまざまな権限を有した代弁人が、身寄りのない人の最善の利益に基づいて本人を代弁する「独立意思能力代弁人制度」である。本稿では、この2つの制度に焦点をあてて、MCA2005の実態を把握し、終末期医療に及ぼす影響を明らかにするため、国の公式文書や報告書、学術論文などを使って文献調査を行った。そのうえで、司法が抱える課題を指摘した。日本国内においても認知症の増加によって、能力が無い人の終末期医療の決定が大きな問題となるであろう。事前指示のみならず、代理決定も含めた行政ガイドライン、法的枠組みの必要性について議論する必要がある。
著者
齋藤 信也 児玉 聡 安倍 里美 白岩 健 下妻 晃二郎[翻訳]
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.667-678, 2013-12

本報告書は,ガイダンス(推奨)作成に用いるプロセスを設計する際,およびガイダンスの各項目を作成する際にNICEが従うべき諸原則についてまとめたものである.これは主として,介入の効果と費用対効果に関する決定を行う際,とくにそれらの決定がNHSの資源配分に影響を与える場合に,NICEおよびNICEの諮問機関(advisory body)が適用すべき判断に関するものである.本報告書はNICE理事会によって作成された.これは2005年に作成された「社会的価値判断(Social value judgements)」第一版に基づいている.すべてのNICEガイダンスおよびガイダンスの作成にNICEが用いるプロセスは,本研究所の法的義務,および本報告書で記述された社会的価値の諸原則と一致していなければならない.NICEガイダンスのいずれかの部分がこれらの諸原則に従っていない場合,NICEと諮問機関はそれらを特定し,その理由を説明しなければならない.
著者
田中 美穂 児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.96-106, 2014-09-26

高齢化に伴い、世界的にも認知症患者は増加傾向にある。世界各国は、能力の無い人の終末期医療の意思決定に関する諸問題の解決策を模索しているのが現状である。そうした試みの一つが、英国のMental Capacity Act (MCA,意思能力法)2005である。特徴的なのが、能力が無くなった場合に備えて代理人を設定する「永続的代理権」と、さまざまな権限を有した代弁人が、身寄りのない人の最善の利益に基づいて本人を代弁する「独立意思能力代弁人制度」である。本稿では、この2つの制度に焦点をあてて、MCA2005の実態を把握し、終末期医療に及ぼす影響を明らかにするため、国の公式文書や報告書、学術論文などを使って文献調査を行った。そのうえで、司法が抱える課題を指摘した。日本国内においても認知症の増加によって、能力が無い人の終末期医療の決定が大きな問題となるであろう。事前指示のみならず、代理決定も含めた行政ガイドライン、法的枠組みの必要性について議論する必要がある。
著者
水谷 雅彦 芦名 定道 出口 康夫 八代 嘉美 海田 大輔 伊勢田 哲治 児玉 聡
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日本の教育・研究の風土をふまえた上で、研究倫理・研究公正について根本的な問いかけに基づく基本理念を検討し、不正の起きない研究の制度設計、効果的な研究公正教育の枠組みの提案を行った。具体的には、倫理学や宗教学などの価値論的側面および科学論的側面からみた関連分野のサーベイ研究、構築した研究ネットワークを基に、当該分野の研究者の招へい、国際学会への研究者派遣、定期的な研究討議を通じた共同研究体制の強化を図った。その研究成果として、国内外の研究者を交えたシンポジウムの開催、複数の学会発表、関連論文の出版を行った。
著者
児玉 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では「進化論は倫理に対してどのような含意を持つのか」というテーマについて、規範理論の一つである功利主義を擁護する論者のこのテーマへの取り組みという観点から検討を行った。具体的には、J.S.ミルやシジウィックといった19世紀イギリスの古典的功利主義者たちが進化論を受け入れなかった理由に関する歴史的、理論的な研究を行うと同時に、現代の功利主義者であるP.シンガーが進化論をどれだけ正確に理解し、自らの規範理論に組み込んでいるかを検討した。以上の研究成果について国内外の研究者と意見交換、討議を繰り返し行った。また進化倫理学の概要を日本語の読者に伝えるため入門書の日本語訳を出版した。
著者
下妻 晃二郎 能登 真一 齋藤 信也 五十嵐 中 白岩 健 福田 敬 坂巻 弘之 石田 博 後藤 玲子 児玉 聡 赤沢 学 池田 俊也 國澤 進 田倉 智之 冨田 奈穂子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

経済状況の低迷が続く多くの先進国においては、公的医療資源の適切な配分は、費用対効果などの合理的な社会的価値判断に基づいて行われている。日本では従来そのような仕組みがなかったが、2016年度から、高額な医療用製品を対象に政策への施行的導入が予定されている。本研究では費用対効果分析による効率性の向上にむけて技術的課題の解決を図り、同時に、効率性の追求だけでは疎かになりがちな公平性の確保を図るために考慮すべき、倫理社会的要素の明確化とそれを政策において考慮する仕組み作りを検討した。
著者
田中 美穂 児玉 聡 藤田 みさお 赤林 朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.462-470, 2013 (Released:2013-10-11)
参考文献数
53

目的 イングランドの小児緩和ケアの実態を法政策•統計データ•資金体制•提供される医療の四つに分類して整理することである。方法 保健省(Department of Health, DH)アーカイブ,総合学術文献データベース Web of Knowledge,医学系文献データベース PubMed,医中誌を使ってイングランドの小児緩和ケアに関する文献を調査した。そのうえで,調査で得られた文献の引用•参照文献などから,関連資料を抽出するハンドサーチ調査を実施した。調査の枠組みとして,「1. 政策の状況」,「2. 小児緩和ケアに関するデータ」,「3. 資金と持続可能性」,「4. 提供される医療サービス」を用いた。結果 イングランドでは,1. がん対策を起源に児童法•国の医療計画•財政的裏付けによって政策を構築していること,2. 国の統計調査により緩和ケアが必要な子どもの数を約 1 万8,000人と推定していること,3. ホスピスや宝くじ基金など政府助成以外の経済基盤と保健省や教育省による政府助成の経済基盤との両方に支えられており,小児ホスピスの運営費における政府助成の割合が15%であったこと,4. 6 人の小児緩和ケア顧問医や192の小児訪問看護チーム,41か所の小児ホスピスなどによる地域ネットワークが構築されている現状が確認された。イングランドにおける小児緩和ケアの課題として,保健省やプライマリケアトラスト(Primary Care Trust, PCT)など各行政組織や公益事業体の政策評価が十分ではないこと,病院死が在宅死の 3 倍以上あること,財源が 3 年間の期限付き基金や政府の予算計上も 3 か年に限定していること,推定で 1 万8,000人のニーズがあるのに対して,小児緩和ケア顧問医が 6 人に過ぎないことなどが指摘された。結論 イングランドでは全国的な利用実態の把握が行われていないため,サービスを利用する子どもやその家族を対象に,全国的な小児緩和ケアの利用実態調査を実施する必要がある。また,現状では詳細な政策分析が行われていないため,政策を講じる行政部局や公益事業体ごとに,政策を講じる目的や,政策を実施したことによる効果とデメリットを明らかにした国家戦略を作成する必要がある。
著者
児玉 聡
出版者
実践哲学研究会
雑誌
実践哲学研究 (ISSN:02876582)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.33-52, 1999
著者
盛永 審一郎 加藤 尚武 秋葉 悦子 磯部 哲 今井 道夫 香川 知晶 忽那 敬三 蔵田 伸雄 小出 泰士 児玉 聡 小林 真紀 坂井 昭宏 品川 哲彦 松田 純 山内 廣隆 山本 達 飯田 亘之 水野 俊誠
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

1)20世紀に外延的に同値された神学的-哲学的概念としての「尊厳」と政治的概念としての「権利」は内包的に同一ではないということ。また、「価値」は比較考量可能であるのに対し、「尊厳」は比較考量不可であるということ。2)倫理的に中立であるとされたiPS細胞研究も結局は共犯可能性を逃れ得ないこと、学際的学問としてのバイオエシックスは、生命技術を押し進める装置でしかなかったということ。3)20世紀末に登場した「身体の倫理」と「生-資本主義」の精神の間には何らかの選択的親和関係があるということ。
著者
児玉 聡
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

今年度は、ジェレミー・ベンタムの功利主義に基づく政治思想を中心に研究し、それを口頭で発表したものをベースにした論文を現在校正中である(『公共性の哲学を学ぶ人のために』に収録)。また、功利主義的立場から生命倫理における臓器移植の問題について学会発表を行ない、発表に基づいた論文を現在執筆中である。1.ベンタムの政治思想に関しては、口頭発表に基づき、「何のための政治参加か--19世紀英国の政治哲学に即して--」という論文を現在校正中である。これは、ベンタムやジェームズ・ミル、ジョン・ステュアート・ミルの政治思想をもとにして、デモクラシーにおける二つの政治観(経済学的な理解と、参加や討議を通じた公共心の育成を強調する理解)を対比的に描き出し、政治参加における公共精神の役割を検討するものである。2.ベンタムの功利主義思想の応用として、生命倫理学の分野で、「慢性的な臓器不足問題についてのささやかな提案」という口頭発表を学会で行なった。これは、富の再配分の問題に関するベンタムの議論を参考にして、現在見直しが喫緊の課題となっている脳死・臓器移植法に関する提案を行なうものである。とくに、今日の英米圏で問題になっている限定的市場化や臓器提供の義務化の議論を検討し、提供臓器の慢性的不足を解決するために提案されている臓器移植に関する推定同意制、報償制度、市場化、義務化の持つ倫理的問題について、比較検討を行なった。現在、この発表に基づいた論文を執筆中である。
著者
児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.183-189, 2007-09-20

デッド・ドナー・ルール(以下DDR)とは、「臓器を得るためにドナーが殺されてはならないことを要求する倫理的・法的規則」のことであり、1988年に法学者のJohn Robertsonが、それまで不文律であった規則を定式化したものとされている。この規則によれば、心臓や肺など、vital organ(生死に関わる臓器)を生体から摘出することは、たとえドナー本人の自発的な同意があっても許されない。本論文では主に英米圏の文献の調査に基づき、DDR見直しをめぐる議論の論点を、DDR例外許容論、DDR堅持論(死の定義の変更あり)、DDR堅持論(死の定義の変更なし)の三つの立場に分けて整理した。また、この議論が、脳死臓器移植をめぐる日本の議論にどのような示唆を与えることができるのかについて考察し、DDR例外許容論と違法性阻却論の類似性を指摘し、この立場を改めて議論すべき必要性を示唆した。