著者
小嶋 知幸 宇野 彰 加藤 正弘
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.360-370, 1991-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

22例の失語症者に対して, 実用的なコミュニケーション補助手段として, 日常生活上重要性が高いと考えられる事物の写真, 絵, 文字をカテゴリー別に貼付したノート (以下コミュニケーションノート) を作成し, 活用の状況を調査, 検討した.その結果, 1.コミュニケーションノートを自発的に活用するためには, 知的機能, コミュニケーションへの積極性, 社会的関心, コミュニケーション環境などの条件を良好に満たしている必要がある, 2.ノートは, 比較的発症初期から実用的なコミュニケーション補助手段となりうる, 3.ノートが有効でない話題もあり, 話題に応じたコミュニケーション手段の使い分けが必要である, 4.ノートの活用に際しては, 患者のみならず, 日常生活上患者と身近に関わる家族や介護者を含めた総合的な指導が必要である, と考えられた.
著者
加藤 正文
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.25-38, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
9

アスベスト(石綿)は他に類を見ない有用性から産業革命以降,各国で大量使用されてきた.その用途は3千種類に及んだ.しかし,髪の毛の5千分の1の微細な石綿繊維は,吸引すると長い潜伏期間をへて中皮腫や石綿肺などの病気を引き起こす.生産・流通・消費・廃棄の経済活動の全局面で被害を起こす「複合型ストック災害」(大阪市大名誉教授・宮本憲一)とされる. 微細な死の棘が一気に拡散されるのが,大震災のときだ.激しい揺れで倒壊した建物からは,建材などに内在していた石綿が周囲に飛散する.1995年の阪神・淡路大震災では大量の建物が倒壊し,粉じんが舞いあがった.20年あまりが過ぎ,がれき処理に携わった労働者の間で発症が相次いでいる.震災で家族や自宅,工場などを失い,さらに時をへて石綿の病気にかかってしまう.この不条理こそが震災アスベストの特徴である.この教訓は2011年の東日本大震災の被災地できちんと生かされているのだろうか.宮城県石巻市や仙台市などでは飛散対策の不備やマスクの装着の不徹底など飛散・吸引のリスクを各所で感じた. アスベスト被害は使われた範囲が広い分,被害の形もまた多様である.有害と知りつつも「管理して使えば安全」として十分な規制を怠る.その結果,大勢の市民が犠牲となり,いまも危険にさらされ続ける.その姿は,東京電力福島第一原発事故を引き起こし,迷走したままの原子力政策とも重なる.
著者
石元 優々 高見 正成 平 一裕 中田 朋紀 山田 宏 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.751-755, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
10

コロナ時代を迎え初めての夏に,飲酒後河川に飛び込み頸髄損傷を発症した2症例を経験した。近年プールには監視員がおり,飛び込みも禁止されているためプールでの飛び込み損傷は減少していると思われるが,海や河川ではその限りではない。コロナ禍で人々の行動に変化がもたらされ,外傷について発生率やまたその原因に変化が起きている。河川への飛び込み損傷は頸髄損傷の原因としてまれであり,その疫学的実態を知ることは困難である。河川への飛び込みによる頸髄損傷の手術は,当科では過去10年間行っていなかったものの,2020年夏季に続けて2例経験した。頸髄損傷は回復が困難であり一生不自由を強いる不幸な外傷であるが,飛び込みによる頸髄損傷の危険性について周知されているとはいい難い。人々の行動が変容した本時代に改めて本事故について啓発が必要であると考える。
著者
松本 和浩 加藤 正浩 竹村 圭弘 田辺 賢二 田村 文男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.339-344, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
21
被引用文献数
6 8

秋季の窒素施肥量の違いがニホンナシ‘二十世紀’と‘豊水’の耐寒性と脂質含量に及ぼす影響を調査した.‘豊水’は‘二十世紀’に比べ,多肥による影響を受けやすく,施肥後,樹体内窒素の増加が著しく,耐寒性の上昇が抑制され,春季の生長も阻害された.脂質およびPC含量は‘二十世紀’に比べ‘豊水’で少なかった.両品種とも多肥処理により,脂質およびPC含量の増加が抑制され,脂質の不飽和度の上昇も抑制された.このように,窒素多肥による脂質含量や脂質不飽和度の低下が,耐寒性の低下に影響を及ぼしていると考えられた.
著者
加藤正宏 西井瑞季 田中美穂 平瀬詩織 牛若菜月 東畑知真 田端優貴
雑誌
サイエンスキャッスル2014
巻号頁・発行日
2014-12-19

バナナの成熟に伴いその皮は斑点状に黒色化する。ドーパミンの重合による黒色化である。この現象に興味を持ち研究を始めた。特に、①なぜ、斑点状に黒色化するのか(生物学的意味)、②斑点状に黒色化する仕組みはどうなっているのか、③なぜ、ドーパミンが存在するのか(生物学的意味)、これらの点に疑問を持ち、その解明を目的とした。今回は、②について知見を得るべく、「バナナの皮の変化の温度依存性(‐8℃~200℃)」を調べた。その結果、20℃および30℃で保存した場合のみ、明確な斑点状の黒色化が観察された。また、細胞レベルでの黒色化を確認するために、表皮の顕微鏡観察も行った。これら以外に、得られた知見を紹介する。
著者
中川 真海 加藤 正人 トウ ソウキュウ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>広葉樹の価値は、川下の需要の状況により大きく変化するため、広葉樹林業では需要と供給のマッチングが重要であるが、現状は、マッチングがうまくいかず国産広葉樹の約9割は価値の低いチップ材となっている。樹高や胸高直径で樹形が把握でき価値が決められる針葉樹と違い、広葉樹は枝分かれや曲がりが多くあるため、需要と供給のマッチングにはレーザー計測などで得られる、より詳細な情報が必要である。しかし、レーザー計測機器は高価であり、普及が難しく、これが、広葉樹林業が伸び悩んでいる原因の一つとなっている。</p><p>本研究では、安価かつ簡便に立体モデルを作成する方法を試行し、モデルの精度を検証した。iPhone SEを用いて樹木の連続写真または動画を、角度や枚数など撮影条件を変えて撮影し、それぞれの撮影条件ごとにSfM解析を用いて立体モデルを作成した。これらの精度を検証した結果について報告する。</p>
著者
森田 明理 新谷 洋一 長谷川 正規 加藤 正也 西尾 栄一 細川 裕子 辻 卓夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.8, pp.1229-1236, 2001-07-20 (Released:2014-12-27)

Narrow-band UVBは,311 nmにピークを持つきわめて狭い波長(311±2 nm)の紫外線光源であり,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎などにヨーロッパでは一般的に用いられている.乾癬でbroad-band UVB療法より優れ,PUVA療法とはほぼ同等とされる.今回,明らかにステロイド外用,ビタミンD外用で皮疹のコントロールのできない難治な尋常性乾癬23名(平均PASI 28.6)を対象としてnarrow-band UVB療法を行った.Narrow-bandUVB療法には,TL 01ランプ10本装着したM-DMR-LH型を使用した.照射率の測定はIL 1700を用いた.照射方法は,ヨーロッパで一般的に用いられているstandard regimenを用い,入院では週に5回,外来では週に3回の照射を行った.治療終了時の皮疹評価は,寛解15例,改善4例,やや軽快1例であり,寛解導入率65.2%,改善以上は82.6%であった.また,3例では,増量に伴うケブネル現象がみられたため,増量が難しく,不変もしくは悪化し中止とした.それ以外,水疱などの高度の急性副作用を起こすことなく照射が可能であった.
著者
加藤 正世
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.42, no.502, pp.281-306, 1930-08-15
著者
中川 良尚 佐野 洋子 北條 具仁 木嶋 幸子 加藤 正弘
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.373-383, 2011-12-31 (Released:2013-01-04)
参考文献数
20
被引用文献数
4 2

失語症状の長期経過を明らかにする研究の一環として, 失語症例の超長期的言語機能回復後の経過, および言語機能に低下を示した症例の特徴について検討した。対象は, 右利きの左大脳半球一側損傷後に失語症を呈した 270 例中, 2 年以上経過を追跡することができ, かつフォローアップの最終評価時年齢が 70 歳以下であった 151 例。言語機能回復訓練実施中あるいは訓練終了後に, SLTA 総合評価法合計得点が低下した症例が 151 例中 37 例 (24.5%) 存在した。内訳は, 最高到達点から 1 点低下した症例が 19 例, 2 点以上低下した症例が 18 例であった。     SLTA 総合評価法得点を合成項目別に検討すると, 約 90% の症例で訓練によって回復した合成項目に低下を認めたことから, 訓練により回復した機能は必ずしも保持されるのではなく, 脆弱であるとことが示唆された。
著者
軽部 大蔵 加藤 正司 浜田 耕一 本田 道識
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.535, pp.83-92, 1996-03-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
15
被引用文献数
22 17

不飽和細粒土の力学的挙動を水分特性曲線を拠り所として考察した. すなわち, 間隙水を吸着水, メニスカス水, バルク水から成るとし, これらの量と力学的作用を求める方法を提案した. 提案法によっていくつかの理論値を算定して, 実測力学挙動と比較した. 本論文は不飽和細粒土の三軸圧縮特性を論じる三部作の第1論文であり, 順次, 圧密挙動, 軸圧縮挙動を詳論する予定である. 研究の対象とした試験は飽和供試体を三軸試験機に設置して, 先ずサクションを与えて不飽和化し, 次に等方圧密し, 最後に排水軸圧縮するものである. 供試体はサクション過程を種々に設定して, 同一のサクションを持ちながら, 相異なる飽和度を示すようにした.
著者
松本 和浩 加藤 正浩 竹村 圭弘 田辺 賢二 田村 文男
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.339-344, 2010 (Released:2011-05-27)

秋季の窒素施肥量の違いがニホンナシ‘二十世紀’と‘豊水’の耐寒性と脂質含量に及ぼす影響を調査した。‘豊水’は‘二十世紀’に比べ、多肥による影響を受けやすく、施肥後、樹体内窒素の増加が著しく、耐寒性の上昇が抑制され、春季の生長も阻害された。脂質およびPC含量は‘二十世紀’に比べ‘豊水’で少なかった。両品種とも多肥処理により、脂質およびPC含量の増加が抑制され、脂質の不飽和度の上昇も抑制された。このように、窒素多肥による脂質含量や脂質不飽和度の低下が、耐寒性の低下に影響を及ぼしていると考えられた。
著者
徳増 智 加藤 正弘 矢野 文香
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.269-276, 1974
被引用文献数
3 2

(1)Pelargonium属植物の栽培種は観賞用および香料用に用いられているが,一般に不稔性が高く,種間交雑は困難である。本論文ではPelargoniumの数種を用いて相互に交雑を行ない,鐙光顕微鏡を用いて雌蕊における花粉管の行動を観察し,また結莢,結実の状態を調査しその結果から種間の交雑親和関係を推定した。(2)用いた材料はゼラニウム P.hortorumの2倍体(2n=18)と4倍体(2n=36)各1品種,ペラルゴニウム P.domesticum(2n=44)2品種,アイビーゼラニウム P.peltatum(2n=18)1品種,匂いゼラニウムのうち P.crispum(2n=22)3品種,P.quercifolium(2n=44)1品種,ブルボン P.roseumの2倍体(2n=77),3倍体(2n=115)および4倍体(2n=154)である。(3)交配の結果との組合せにおいても花粉は柱頭上でよく発芽した。発芽した花粉管は多くの組合せで柱頭または花柱組織内に侵入し,あるものはそこで伸長を停止した。また自家受粉,同一種内の品種問交配,および匂いゼラニウム内の種間交配では花粉管は子房に侵入した。花粉管が子房に到達したもののなかで多くのものが結莢したが,種子の得られたのは P.crispum の3品種間交配のほかは自家受粉によるもののみであった。
著者
加藤 正明
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.99-103, 1980-06-15 (Released:2010-03-11)
被引用文献数
1 1
著者
土井 光則 岩城 久弥 柴田 尚明 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.522-526, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
3

和歌山県立医科大学附属病院では2003年1月からドクターヘリを運行しており,一般的な救急医薬品のみを携行し,現場で処置を行った後に医療機関へ搬送していた。しかし出動先で,迅速な気管挿管や救急処置を要する場合,麻薬や筋弛緩薬の投与ができればより効率的な救急診療が可能であるとのフライトドクターの要望により,救急担当薬剤師という立場でこれらの薬剤の管理方法や運用方法を考えた。薬剤の特性に基づいて携帯ケースを用意したり,持ち出し管理表を作成するなど,救急医療の現場において救急に特化した薬剤師が関与することで,救急医療の質の向上につながったと考える。
著者
加藤 正吾 細井 和也 川窪 伸光 小見山 章
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.123-128, 2011 (Released:2011-08-31)
参考文献数
21
被引用文献数
4 5

付着根型つる植物であるキヅタ (ウコギ科) の匍匐シュートの伸長方向と光環境の関係を実験的に解析した。匍匐シュートに傾度のある光環境条件を与えた場合, 10 mm以上伸長したすべてのシュートで, キヅタは負の光屈性を示した。また, その負の光屈性は, シュートの先端が水平方向と垂直方向の光強度が均一に低下するような空間をめざして伸長するように生じていた。シュートの伸長量は光量の減少にしたがって低下したが, 20 μmol/m2/sという弱光環境においても負の光屈性は生じていた。つまり, キヅタの匍匐シュートの負の光屈性は, 単なる強光を避ける反応ではなく, 三次元空間的な光環境で暗所方向へ伸長する反応であった。この負の光屈性は, つる植物が林床の不均一な光環境下で, 支持体として有効な樹木を匍匐シュートによって探索する際に, シュート先端が登攀開始点となる暗い樹木の根元に到達する有効な生態的特性であると考えられる。

1 0 0 0 OA カビと写真

著者
加藤 正博 今田 勝美
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.312-316, 1988-08-28 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11