著者
小林 政広 小野寺 真一 加藤 正樹
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.287-294, 2000-08-16
参考文献数
22
被引用文献数
6

年間を通じて地下水面が存在する平地林において, ヒノキ樹幹近傍の土層中のマトリックポテンシャルの測定を行い, 雨水浸透過程における樹木の存在の影響を, 土壌の乾湿条件と降雨条件との関係から検討した。湿潤な先行水分条件下では, 樹幹流として供給された多量の雨水が鉛直下方へ集中的に浸透し, この雨水は樹幹直下の地下水をかん養した。乾燥した先行水分条件下では, 樹幹流による集中的な雨水インプットが生じても, 雨水の大部分は樹木根系の吸水による土湿不足を解消することに消費され, 樹幹直下における集中的な浸透は発生せず, 樹幹から離れた部分でのみ地下水がかん養された。また, 湿潤時, 乾燥時ともに特定の場所においてバイパス流の発生によると考えられる局所的なマトリックポテンシャルの上昇が観測された。このようなバイパス流は, 総降水量が多く強度の強い降雨イベントで発生しやすい傾向が認められた。しかし, 土層が乾燥しているときには, より少ない雨で発生する傾向が認められ, これは表層土壌の撥水性のためと考えられる。
著者
岩﨑 安博 川嶋 秀治 柴田 尚明 田中 真生 中島 強 國立 晃成 置塩 裕子 中田 朋紀 米満 尚史 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.37.3_01, (Released:2023-02-15)
参考文献数
13

症例は50代の男性. 罠にかかったイノシシを捕獲しようとした際に, イノシシに胸部に突進された. さらに転倒後両下肢を複数回咬まれた. 救急隊により開放性気胸と判断されドクターヘリが要請された. 現場で胸腔ドレナージを実施した. 両下肢にも多発切創を認め圧迫止血を行い病院へ搬送した. 第4病日に胸腔ドレーンを抜去し, 第28病日に退院となった. イノシシの犬歯は非常に鋭く大きく, それによる外傷は単なる咬傷でなく, 深部に達する刺創, 切創となり致死的な外傷を来たしうる. また攻撃性が強く多発外傷ともなりうる. イノシシによる外傷を診療する場合には, これらの特徴を踏まえて重症外傷の可能性も念頭に置いて対応する必要がある.
著者
加藤 正人 黒澤 伸
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-8, 2006 (Released:2006-01-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

大侵襲手術によって, Interleukin (IL) -6をはじめとする各種の炎症性および抗炎症性サイトカインが誘導されることが知られている. また, それらのサイトカインに加えて, 好中球を遊走させるIL-8に代表されるケモカインと呼ばれる一群の炎症因子も手術侵襲により産生が増強され, 炎症細胞を局所に集積させる. これらの生体反応は適度な範囲であれば, 周術期の生体防御に有利に働くと考えられる. しかしながら, こうした反応がまったく制御されないままに過剰な生体反応として放置されると仮定すれば, むしろ免疫能をはじめとする生体防御能を抑制する方向に働き始める可能性がある.   これらの知見を含めて手術侵襲により惹起される炎症反応について概説し, さらには揮発性吸入麻酔薬による免疫抑制作用の機序についての当教室の研究を紹介するとともに, injury-induced immunosuppressionについても展望する.
著者
加藤 昌志 加藤 正史 大神 信孝 矢嶋 伊知朗
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研医工連携研究では、まず、単波長の低周波音の曝露装置(低周波音刺激装置)を作製した。次に、実験研究により、低周波音が健康障害(平衡・運動機能障害)を誘発する閾値を提案するとともに、作用機序と内耳前庭にある標的部位(耳石・耳石膜)を特定した。また、内耳前庭の培養組織を用いて、迅速に低周波音の健康リスクを評価する技術を開発した。一方、疫学研究により、低周波音の健康影響をヒト(ヤングアダルト)で評価した。最後に、耳石膜のHeat Shock protein 70分子の発現を高めることで低周波音に由来する平衡・運動機能障害を予防できる可能性を、動物レベルで提案した。
著者
山本 敦子 橋本 健志 森本 優香 加藤 正樹 木下 利彦 四本 かやの
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.213-221, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者の社交不安症状に対する作業療法の効果を検討することである.ケースシリーズ研究で,3症例に対する6ヵ月間の作業療法介入前後の社交不安障害尺度得点,陽性・陰性症状評価尺度得点,日常生活場面での対人交流の状態を比較した.結果,6ヵ月間の作業療法介入によって,統合失調症患者の社交不安症状に改善がみられ,対象者全員に精神症状の改善も認められた.社交不安症状が中等度の患者は,重度の患者と比較し,より大きな改善がみられた.作業療法介入が,統合失調症患者の社交不安症状の改善に寄与できる可能性が示唆された.
著者
加藤 正晴
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.253-258, 2016 (Released:2018-02-06)
参考文献数
39

Collaboration is an important social activity, but it is not known how collaboration develops. Furuhata and Itakura (2016) argues that emergent coordination, a key idea explaining interpersonal interactive bodily movements, proposed by Knoblich, Butterfill, and Sebanz (2012), is a gateway to the development of collaboration. In this comment paper, this idea is reviewed favorably from previous adult behavioral studies. The need for integration of shared intention for collaboration is further discussed.
著者
平野 明日香 加藤 正樹 藤村 健太 早川 美和子 加賀谷 斉 向野 雅彦 才藤 栄一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.255-262, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2

【目的】急性期病院では高齢障害者が増加し,リハビリテーションの重要性が高まっている。当院急性期病棟に理学療法士を病棟配置した効果を検討した。【方法】疾患別リハビリテーション実施者を対象とし,病棟配置前の44例を対照群,病棟に専任配置後の79例を専任群,専従配置(ADL維持向上等体制加算算定)後の83 例を専従群とし,当院患者データベースより後方視的に調査した。【結果】専従群は他2 群よりリハビリテーション実施割合が有意に増加,リハビリテーション開始までの日数,在院日数は有意に短縮した。アンケート調査より,病棟医師・看護師は情報共有がしやすい,リハビリテーション専門職は病棟とのパイプ役として期待との回答が多かった。【結論】理学療法士の専従配置は病棟医師・看護師と情報共有を密に行え,治療の効率化が図れると示唆された。
著者
伊澤 幸洋 小嶋 知幸 加藤 正弘
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.9-16, 2002 (Released:2006-04-21)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

失語症が動作性知能検査におよぼす影響について検討した。対象は麻痺や失調などの運動障害を認めない流暢型失語 22 (ウェルニッケ失語 19,伝導失語2,健忘失語1) 名である。検査には,SLTAとWAIS-Rの動作性検査およびレーヴン色彩マトリックス検査を用いた。その結果,WAIS-Rの動作性検査は,失語症の影響を受けやすい下位検査と影響を受けにくい下位検査に二分された。失語症の影響を受けやすい下位検査は「絵画配列」と「符号」であった。「絵画配列」の成績低下の要因としては談話水準の言語表出能力,「符号」の成績低下の要因としては文字言語の音韻処理障害がそれぞれ関与していると考えられた。また,レーヴン色彩マトリックス検査においても,推理・思考力を要する検査項目は言語機能の影響を受けやすく,失語症の程度によっても少なからず検査成績が影響される可能性が示唆された。失語症例におけるWAIS-Rの動作性検査およびレーブン色彩マトリックス検査の結果を解釈する際には以上の点を考慮する必要があると考えられた。

2 0 0 0 OA これこれ草

著者
加藤正得//著
出版者
巻号頁・発行日
vol.二編巻下,
著者
加藤 正也 今高 城治 岡本 健太郎 谷 有希子 山口 岳史 荻野 恵 土岡 丘 加藤 広行 有阪 治 Masaya Kato George Imataka Kentaro Okamoto Yukiko Tani Takeshi Yamaguchi Kei Ogino Takashi Tuchioka Hiroyuki Kato Osamu Arisaka 獨協医科大学医学部 小児科学 獨協医科大学医学部 小児科学 獨協医科大学医学部 第一外科学 獨協医科大学医学部 第一外科学 獨協医科大学医学部 第一外科学 獨協医科大学医学部 第一外科学 獨協医科大学医学部 第一外科学 獨協医科大学医学部 第一外科学 獨協医科大学医学部 小児科学 Department Of Pediatrics Dokkyo Medical University Department Of Pediatrics Dokkyo Medical University First Department Of Surgery Dokkyo Medical University First Department Of Surgery Dokkyo Medical University First Department Of Surgery Dokkyo Medical University First Department Of Surgery Dokkyo Medical University First Department Of Surgery Dokkyo Medical University First Department Of Surgery Dokkyo Medical University Department Of Pediatrics Dokkyo Medical University
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.173-176, 2014-07-25

症例1は6歳女児.インフルエンザ感染症初日に発熱しオセルタミビルを開始.第3病日,右下腹部に限局した圧痛が出現.腹部造影CTで糞石を認め急性虫垂炎と診断.保存的に加療し炎症反応と腹痛は改善した.症例2は5歳女児.第1病日に発熱と腹痛を認め,第3病日に鼻咽腔迅速検査でインフルエンザB型と診断しザナミビル吸入を開始.触診で右下腹部に反跳痛を認め,腹部単純CTで虫垂壁の肥厚と糞石を確認.急性虫垂炎の併発と診断し,第4病日に虫垂切除術を施行.切除虫垂に膿瘍を認め腹腔ドレーンを留置.第5病日に解熱し経過は順調であった.インフルエンザに伴う腹痛では感染に付随する腹痛と断定せず急性虫垂炎の可能性も考慮し腹部CTなどの画像検査を行うことが肝要である.
著者
小見山 章 加藤 正吾 伊藤 栄一 戸松 修
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

比較的若齢の造林地か豪雨等で崩壊すると、広葉樹に較べてヒノキやスギが浅根を示すことがその原因であるといわれることが多い。このことを再検討するために、岐阜県の岐阜大学農学部附属演習林において、48年生のヒノキ造林地でヒノキ主林木とそこに侵入したミズナラの根重の垂直分布を比較した。2本の試料木を選んで、地上部に関する調査を行った後に、深さ60cmまでに存在する根をトレンチ法により採取した。深さあたりの根重密度の垂直分布パターンを求めたところ、指数分布にしたがう減少パターンを示した。2本の試料木間で、深さ方向の根重密度の減少率に有意差は認められなかった。回帰式を積分して個体根重の垂直分布を計算した。地表から30cmまでの深さに含まれる根重の割合は、ミズナラ試料木で89%、ヒノキ試料木で94%となり、試料木間で根の垂直分布に極端な違いは認められなかった。また、傾斜地で、ヒノキ試料木は根を谷側に多く配置していたのに対して、ミズナラ試料木は山側に多く配置するという、根の水平分布上の違いがみられた。また、数種類の樹種の根量は、パイプモデルにしたがうことが確認された。さらに、一般に相対成長関係には樹種差が生じるが、相対成長関係式の作成に用いる変数を吟味することで、樹種差のない統一的な相対成長関係式の構築の可能性があることがわかった。これらの知見から、生物学的な根拠を元に、根の深さについて議論することができる。
著者
亀谷 富夫 森田 達志 田中 功 越田 英夫 五十嵐 豊 堀上 健幸 永井 忠之 加藤 正義
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.41-44, 1994

症例は56歳の男性。1975年頃よりアルコール依存症 (酒1升/日) 有り。1978年より糖尿病を指摘され, 1985年よりインスリン治療を受けたがHbA<SUB>1c</SUB>は9.2~12.8%とコントロール不良であった。1990年11月までに6回の低血糖昏睡をおこした。内因性インスリン分泌は著明に低下し, 糖尿病3徴を認めた。はっきりとした歩行障害, 痴呆, 尿失禁は認めなかったが, 頭部CTスキャンとMRIでは脳萎縮を伴わない著明な脳室拡大を認めた。しかし脳脊髄圧は正常であった。RI cisternographyにて48時間後にも脳室内停留を認めたことより, 特発性正常圧水頭症と診断された。本邦での報告例はなく, 低血糖と正常圧水頭症との関連性を示唆する興味深い症例と思われた。
著者
加藤 正人 内山 雅史 岡本 隆
出版者
中央水産研究所
雑誌
黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
巻号頁・発行日
no.4, pp.45-49, 2003-02

ハリセンボンは、浅海の珊瑚礁や岩礁域に生息し、津軽海峡以南の日本海沿岸、相模湾以南の太平洋岸に分布する。日本近海では南西諸島や台湾付近で産卵し、稚魚は黒潮域や対馬暖流域に出現するといわれている。房総半島沿岸では普段目にすることは希で、漁業の混獲物としてもほとんど出現しない。ところが、2002年1月、房総沿岸の定置網にハリセンボンが大量に入網し、以後4月頃まで断続的に入網が続いた。このような暖海性種の特異的な大量来遊の記録は、漁海況の変動やその要因を明らかにする上で、有益な情報になると考えられる。そこで、千葉県各定置網での入網状況と入網したハリセンボンの大きさ、他県における来遊状況を整理したので報告する。