著者
信田 裕 北村 謙 大井 衣里 西尾 利樹
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.375-379, 2021 (Released:2021-07-28)
参考文献数
29

症例1は78歳男性.回転性めまいを主訴に来院し,著明な腎機能障害を認めた.入院後に会話の辻褄があわなくなり,不穏が出現した.症例2は72歳女性.両側下肢の脱力と構音障害を主訴に来院し,症例1と同様に腎機能障害を認めた.2症例ともに腎機能障害の既往はなく,来院数日前に近医でバラシクロビル3,000 mgと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方されていた.頭部CT,MRIでは明らかな頭蓋内病変を認めず,これらはアシクロビル脳症であると考えた.バラシクロビル,NSAIDsを中止し補液を行ったが,2症例ともに腎機能障害および神経症状の改善を得られず第2病日に血液透析を開始した.その後,腎機能は改善し神経症状も消失したため透析を離脱した.腎機能が正常であっても高齢者ではバラシクロビルによって腎障害や神経症状が出現する場合があり注意が必要である.
著者
阿部 恒之 北村 英哉 原 塑
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.6, no.Si, pp.31-41, 2021-03-22 (Released:2021-03-25)
参考文献数
8

This article is a modified record of “Philosophy and Psychology III: Contrastive approaches to the COVID-19 problems,” a public symposium held at the 84th annual convention of the Japanese Psychological Association on September 9, 2020 via webinar. Before this symposium, philosophers and psychologists joined and discussed emotions (2018) and justice (2019) to stimulate psychologists to have greater interest in and to devote more attention to philosophy. It had been noted that psychologists tend to be quite indifferent to philosophy despite the fact that historical origins of psychology as an established discipline can be traced back to philosophy and physiology. In the last symposium, we, two psychologists and a philosopher, discussed COVID-19 as a problem, particularly addressing topics of “freedom and publicness” and “the future of embodiment.” Through that discussion, results showed that philosophy and psychology can be complementary and productive for both.
著者
北村 直子
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.35-67, 2014-06-30

16世紀から18世紀にかけて書かれたユートピア文学では,大航海時代末期から重商主義・啓蒙主義時代にいたるヨーロッパ人の視野拡大を反映し,架空世界と既知の空間との落差をふたつの要素によって強調した。(a) 空間的距離: ヨーロッパからの遠さ。主人公の遭難の地点が実在の固有名 (地名・緯度経度) を使って表現される。(b) 意味論的落差:身体的・文化的・政治的な違い。空間的距離によって説得力を保証され,語りの視点の設定を工夫することによって強調される。(a) のような既知の固有名の使用はユートピア文学が次代のリアリズム小説と共有する要素である。いっぽう (b) の特徴はユートピア文学の「報告」としての性質を支える要素であり,ユートピア文学の報告者 (語り手,視点人物) は当時のヨーロッパ人を代表してヨーロッパと架空世界との落差に驚いてみせ,読者にその違いを強調してみせることによって読者の反応を先導しようとする。読者を誘導するこの仕掛けを物語論では「評価」と呼ぶ。「評価」のマーカーは物語一般に見られる自然なふるまいである。なお,20世紀に書かれた架空旅行記においては,語り手の「評価」のマーカーがときに欠如しており,読者が視点人物と容易に同一化できない。本稿では,こういった物語装置の分析を通じて,報告体物語の機構を検証し,トマス・モアからシラノ・ド・ベルジュラック,スウィフトを経てサドにいたる空想旅行記の暗黙の前提を可視化することをめざす。いかなる物語も,多かれ少なかれ「出来事の報告」という側面を持っている。本稿は,さまざまな物語ジャンルのなかでも,とりわけこの報告というコミュニケーション様式に特化したユートピア文学を分析的に特徴づけることによって,報告という言語行為がもつ小説史上の意味を考察する。視点操作や物語行為の本質を解明するためには,物語作品の意味内容以上に,物語の暗黙の前提を研究することが有効と考えるからである。De Thomas More au Marquis de Sade, en passant par Cyrano de Bergerac et Swift, la litt?rature utopique s'attacha ? figurer l'?cart entre ses contr?es imaginaires et lar?a lit? de l'Europe en l'inscrivant dans une distance spatiale, pa r le recours ? des toponymes authentiques pour nommer les lieux o? les h?ros font naufrage. Cette distance spatiale garantit l'existence synchronique de l'utopie, ce qui distingue les voyages imaginaires d'avec les r?cits qui installent les lieux de leurs fictions dans le pass? mythique (l'?ge d'or ou le paradis perdu), le futur (le roman d'anticipation) ou le r?ve (Le Roman de la Rose). Ce genre de texte met ainsi l'accent a ussi sur les diff?rences culturelles entre l'utopie et le monde europ?en : le narrateur s'?tonne de tout ce qu'il voit et entend dans l'utopie, et ses r?actions d?terminent l'attitude du lecteur en lui sugg?rant une r?ponse appropri?e aux ?v?nements narr?s. Ce dispositif discursif, que la narratologie nomme ? ?valuation ?, est un ?l?ment fondamental de tous les r?cits de cette nature, y compris les romans et les nouvelles. Seuls certains textes ?crits au vingti?me si?cle l'abandonnent, en interdisant l'identification du lecteur aux personnages. L'int?r?t d'une analyse th?orique de ce type de strat?gies narratives ne se limite pas ? l'?tude des m?canismes romanesques. Elle permet, plus g?n?ralement, une approche narratologique des modes de communication, ad?quate ? toute forme de discours destin? ? rapporter une exp?rience.
著者
北村 育子
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.138, pp.1-13, 2018-03-31

介護保険のサービスが質の高いものでなければならないことは言うまでもないが,地域密着型サービスには,加えて,地域に根差した透明性の高いサービスであることが求められている.運営推進会議の開催は,これを実践するための重要な方法であり,その責任を担うのは主に事業所の管理者である.運営推進会議がその目的を果たすためには,コミュニティワークと運営管理の知識と技術が必要となる.メンバーの選任,適切な議事の選定,メンバー間のパワーバランス等に配慮した議事進行,などを通して運営推進会議を参加者にとって意味のあるものとすることができる.この過程で管理者には,優れたリーダーシップを発揮することが求められる.その結果,事業所内のサービスの質的向上と地域社会の福祉ニーズの充足という二つの目的が同時に達成され,事業所が地域の重要な福祉資源・地域社会の実質的な構成員として認識されるようになる.
著者
北村 三子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.268-277,366, 1999-09-30 (Released:2007-12-27)

教養主義とは、明治の末(ほぼ1910年代)に日本の知識人たちの間に成立した、人間性の発達に関する信条(あるいは「主義」)である。ドイツの教養(ビルドゥンク)概念の影響の下に、若いエリートたちは、人類の文化、ことに、西洋の哲学、芸術、科学などを継承することを通して人格者になりたいと思った。彼らはそれらの偉大な作品に触れることによって強められた理性と意志が人間の行動を制御すると期待した。彼らはある程度それに成功したが、同時に、大地や他者から切り離されてしまったと感じ、不安に悩まされるようになった。 教養主義は主に旧制高校生や大学生の間に普及したが、かれら若きエリートたちは、深層意識では、自分を高等教育には手が届かない若者たちと区別したかったのだ。その意味で、教養主義はかなりスノビッシュなものである。 この教養主義の欠点は、第二次大戦後、日本の教育関係者たちによって批判された。批判者の一人で、新時代のリーダーの一人であった勝田守一は、新しい教養の概念を提案した。それは、高く評価された人類の労働を基盤にしたものであった。勝田によれば、労働は人間の諸感覚、思考能力、コミュニケーション能力を発達させてきた。その中でも、近代に著しく発達した科学的思考法は、私たちにとって最も大切なものなのである。そこで勝田は、教養のある人間は、人類が発達させてきた諸能力を偏ることなしに身に付けていなければならならず、そうすることによって、教養人は社会を進歩させるであろうと主張した。人類の能力は無限に発達すると勝田は信じた。なぜなら、近代科学技術の発展には限界がないように見えたからである。 私たちはもはやこのような楽観的な見解には同意できない。なぜなら、近代の科学技術が自然に対して攻撃的であり、地球の生態系に重大なダメージを与えうることを、私たちは知ってしまったからだ。勝田の教養概念や教養主義をこの観点からもう一度振り返るならば、それらには、思考方法において共通の欠陥があることに気が付く。それは、近代思想一般に見られる欠点と同じものである。 近代的知性は生産的である。それは物を作り出すだけではなく、表象や概念や推論を用いて事物のリアリティを生み出すのだ。その思考法は、利用という観点からだけ事物と関わるものであり、人間中心的で、事物に耳を傾け対話することはない。鮮明に意識に表象されない事物は、意味がないとみなされ、無視される。あの若き教養主義者たちの心の葛藤も、おそらく、この近代の知性の産物である。 教養が再構築されねばならないとしたら、それは、これまでとは異なる思考やコミュニケーションの方法を基盤とするものでなければならないだろう。また、近代的な労働や社会の中でおそらくは失われてきた諸感覚や能力を回復できるものでなければならない。
著者
丸目 雅浩 南角 吉彦 酒向慎司 徳田 恵一 北村 正
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.129, pp.247-252, 2007-12-21

音声合成の需要の高まりにより,多様な話者性や発話スタイルを持った音声の合成が望まれている.しかし,このような音声の合成には,話者や発話スタイルに応じてモデルを用意する必要があり現実的ではない.そこで,少量の学習データにより,多様な話者性を持つ音声の合成を可能とする混合ガウスモデル(GMM)に基づく声質変換が提案されている.しかし,従来の GMM に基づく声質変換では,尤度最大化(ML)基準によりモデルパラメータを点推定しているため,学習データが十分に得られない場合,モデルの推定精度が低下する可能性がある.そこで,GMM に基づく声質変換に変分ベイズ法を適用し,ベイズ基準による声質変換を行う.提案法では,ML 基準に比べて,声質変換の音質と話者性において,品質向上が確認でき,推定精度の高いモデルが得られることがわかった.It is desired a technique for synthesizing speech with various speaker characteristics and speaking styles, by increasing the demand of speech synthesis. However, a large amount of training data is required to construct the system for each characteristics and speaking styleVoice conversion based on Gaussian Mixture Model (GMM) is one of techniques which can solve this problem. GMM is estimated from a small amount of training data based on the Maximam Likelihood (ML) criterion. However, the GMM based voice conversion technique still suffers from the overfitting problem due to insufficient training data and a point estimation of the ML criterion. To improve this problem, we applied the varational Bayes method to the GMM based voice conversion. In experiments, it was confirmed that the proposed technique improves the quality of converted voice, because of its higher generalization ability than the conventional ML based approach.
著者
白岩 史 飛谷 謙介 下斗米 貴之 猪目 博也 藤澤 隆史 饗庭 絵里子 長田 典子 北村 泰彦
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1159-1164, 2013-11-05 (Released:2014-01-05)
参考文献数
25

Recently, the number of emergency vehicles equipped with light-emitting diode (LED) warning lights has increased. Unlike traditional beanie lights, LED warning lights can display various flickering patterns because these patterns are controlled by computers. The purpose of this study was to develop flickering patterns that had a high level of visibility. Lighting time (ON time), no-lighting time (OFF time), light intensity and rising time (UP time) were controlled by a microcomputer. Further, the visibility of each LED flickering pattern was evaluated quantitatively. Specifically, the visibility of the flickering patterns using the psychophysical measure of “conspicuity (easy to stand out)” from Bradley-Terry paired comparison model was identified. Results showed that OFF time had a significantly greater influence on visibility than ON time. Moreover, the flickering pattern with 66 msec of OFF time provided optimal visibility, regardless of the ON time, by making the visibility map, which represented the degree of visibility between ON time and OFF time. Therefore, the ideal combination between ON time and OFF time was determined.
著者
北村 英哉 下田 麻衣
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.91.19204, (Released:2020-01-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1

We propose that avoiding the resentment of others plays an important role in the maintenance of cooperation and harmony for Japanese people. In the present research, we developed a scale to measure the tendency of individuals to avoid the resentment of others (the Avoidance of Resentment Scale: ARS) and investigated the reliability and validity of the scale through two studies. In study 1, we constructed the scale and looked into the correlations between the ARS and a scale to measure rejection anxiety. The factor analysis revealed three factors. In addition, the scores from the ARS were moderately correlated with the scores from the rejection anxiety scale, which implied that the ARS was validated. In study 2, the ARS was compared to two scales measuring harmony and trust: the Multifaceted Cooperativeness Scale and the Trust Scale. The responses for the ARS and these two scales showed significant correlations, supporting the validity of the ARS.
著者
酒井 厚 菅原 ますみ 眞榮城 和美 菅原 健介 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.12-22, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
42
被引用文献数
9 9

本研究では, 中学生の学校適応の諸側面について, 親および親友との信頼関係との関連から検討した。学校適応は, 教室にいるときの気分 (反抗的・不安・リラックス) と学校での不適応傾向 (孤立傾向・反社会的傾向) について測定した。縦断研究に登録されている中学生270名 (13.7歳) とその両親 (母279名; 父241名) を対象に解析を行い以下の結果を得た。1) 親子相互の信頼感において, 子どもの学校適応に影響を与えているのは子が親に抱く信頼感の方であり, 親が子に抱く信頼感は関連が認められなかった。また, 子が親に抱く信頼感に関しては, 母親に対するものばかりではなく父親に対する信頼感も学校適応に重要な役割を担うことが示唆された。2) 親子間相互の信頼感得点の高低から分類した親子の信頼関係タイプによる結果では, 総じて親子相互信頼群の子どもの学校適応がほぼ良好であるのに対し, 親子相互不信群の子どもは学校に不適応な傾向が示された。3) 親友との信頼関係が学校適応に与える影響に関しては, 学校で不適応な傾向にある親子相互不信群において特徴が見られ,「孤立傾向」や「リラックスした気分」の変数では学校への適応を良くする防御要因として働く一方で,「反社会的傾向」の得点はより高めてしまうという促進要因ともなりうることが示された。

4 0 0 0 OA 徒然草文段抄

著者
北村季吟 抄
出版者
青山堂
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1894
著者
北村 昌幸 Masayuki Kitamura
出版者
関西学院大学人文学会
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.45-65, 2010-05