著者
菅原 ますみ 八木下 暁子 詫摩 紀子 小泉 智恵 瀬地山 葉矢 菅原 健介 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-140, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
57
被引用文献数
25 16

本研究は, 夫婦間の愛情関係が家族機能と親の養育態度を媒介として児童期の子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。313世帯の父親, 母親および子ども (平均10.25歳) を対象に郵送による質問紙調査を実施し, 両親回答による夫婦関係と養育態度, および家庭の雰囲気と家族の凝集性, 子どもの自己記入による抑うつ傾向を測定した。配偶者間の愛情関係と子どもの抑うつ傾向との間に相関は見られなかったが, 家庭の雰囲気や家族の凝集性といった家族機能変数を媒介として投入した結果, 両親間の愛情の強固さと家族機能の良好さが, また家族機能の良好さと子どもの抑うつ傾向とが関連することが明らかになった。また同時に, 配偶者間の愛情関係は親自身の養育態度とも関連し, 相手への愛情の強さと子どもに対する態度の暖かさや過干渉的態度との間に有意な関係が見られた。しかし, こうした養育態度のうち, 子どもの抑うつの低さと関連が認められたのは, 母親の養育の暖かさのみであり, 父親の養育態度は子どもの抑うつ傾向とは関連しなかった。
著者
林 大悟 藤田 和之 高嶋 和毅 Robert W. Lindeman 北村 喜文
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.341-350, 2019 (Released:2019-12-31)
参考文献数
25

We explore Redirected Jumping, a novel redirection technique which enables us to purposefully manipulate the mapping of the user’s physical jumping movements (e.g. distance and direction) to movements in the virtual space, allowing richer and more active physical VR experiences within a limited tracking area. To demonstrate the possibilities provided by Redirected Jumping, we implemented jumping redirection methods for three basic jumping actions (i.e., horizontal, vertical, and rotational jumps) using common VR devices. We conducted three user studies to investigate the effective manipulation ranges, and the results revealed that our methods can manipulate a user’s jumping movements without them noticing, similar to redirected walking.
著者
原口 公子 北村 江理 山下 俊郎 貴戸 東
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.323-331, 1994-11-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
28

北九州市における大気中の農薬の濃度を, 市街地および農業地域に近接した地域で, 農薬を大量に使用する時期 (1992年6月, 8月) とそれ以外の時期 (11月, 1993年2月) について, 石英ろ紙とXAD-2樹脂を装着したハイボリュームエアサンプラーを用いて試料を採取し, GC/MS-SIM法により測定した。調査対象とした36種類の農薬のうち35種類が検出され, それらの農薬の検出濃度範囲は0.01から70ng/m3であった。最も高い濃度を示したのはFlutoluanilの70ng/m3であったが, 35種類のうち30種類の農薬の平均濃度は1ng/m3以下であり極めて低濃度であった。農薬の濃度は, すべての測定地点で8月が他の月に比べ最も高く, 特に農業地域に近接した地点でその傾向は顕著であったが, 市街地でも同様の傾向がみられた。この現象は, 使用された農薬からみて農業地域からの影響が最も大きく, その他の地域で用いられた農薬がこれに加わり各地点に影響を与えていることが推察された。また, 6, 11, 2月では数種類の高沸点の農薬以外は, ほとんどの農薬がガス状物質としてXAD-2樹脂上に検出されたが, 8月では, 石英ろ紙上に粒子状として捕集されるFlutoluanilが大量に検出されたため, ガス状物質より粒子状物質の検出量が高い値を示した。
著者
ASKEW David 金丸 裕一 北村 稔
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトの最終年度に、歴史としての南京事件を検討した。まず英・中・邦語文献で書かれている南京事件史の分析を行い、それぞれの異同、特に方法論の相違点などを明らかにすると同時に、それぞれの言語で書かれている南京事件史の長所・短所を明らかにすることを試みてきた。一次史料がどのように駆使されているか、歴史学方法の異同、神話としての南京事件との距離などといったテーマを考察した。なお、既に出版されたものなどに加え、以下の単著や編著を含む数々の研究の完成に取り組んできた。David Askew ed.,Buried Bodies,Cultural Treasure and Government Propaganda:Historical Footprints in Nanjing,1937-38,New York and Oxford:Berghahn Books(forthcoming).David Askew ed.,H.J.Timperley and the Nanjing Atocities,New York and Oxford:Berghahn(forthcoming).David Askew ed.,Documenting a Massacre:Smythe and Bates in and Around Nanjing,1937-38,New York and Oxford:Berghahn Books(forthcoming).これらの単著や編著に加え、英語や日本語などによる数々の学術研究論文が公にされており、また複数の共著が出されている。
著者
北村 四郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.118-129, 1933-03-01

セイタカタンポポ(Taraxacun elatum KITAMURA). 関西の山地に生ずるこのタンポポは,総苞の外片が長楕円形なる事はカンサイタンポポに似るが,総苞はより大きく,丈高く,果実が細長く,花梗は花後頗る長く,種々の点で異なるので別種とする.クシバタンポポ(Taraxacum pectinatum KITAMURA). 備中阿哲郡野馳村大野部で,田代善太郎氏の採取された植物である.葉が櫛歯状に分裂せる点が目立つ,花梗は葉よりも短く,総苞の外片は廣卯形で,内片の1/3長に達する.花は濃黄色である.コタンポポ(Taraxacum Kojimae KITAMURA). 千島幌莚島の産,小型のもので,葉は葉柄殆どなく開出し,花梗は一本,総苞外片は被針形なるを特徴とする.ヒロハタンポポ(Taraxacum latifolium KITAMURA). 朝鮮咸鏡北道の産,大井次三郎氏が延岩洞一上村間で採集された植物である.葉は特に幅廣く,総苞は長楕円形で,内片の1/2長を越す,先端に明瞭に小角を持っている,花は黄色.カラフトタンポポ(Taraxacum sachalinense KITAMURA). 従来ミヤマタンポポなる名称の下に,多くの種類が一括されていた.これもその中の一部分で樺太幌登山の産である.葉は舌状をなし,通常分裂せず,総苞は〓葉では黒緑色である点はタテヤマタンポポに似ているが,総苞はずっと小さく,外片には明瞭に小角を具えている.
著者
前田 奈穂 大坊 郁夫 前田 貴司 岸野 文郎 北村 喜文 高嶋 和毅 横山 ひとみ 藤原 健 林 良彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.457, pp.49-54, 2010-03-01
参考文献数
17
被引用文献数
3

本研究の目的は,非言語手がかりと関係開始スキルの関連について,話者,会話相手,第3者のそれぞれの観点から検討することである.初対面の大学生で同性同士の66人(男性51人,女性15人)を対象に行った会話実験データを以下のように検討した.関係開始スキルについて自己評定,他者評定,第3者評定を測定することで,非言語手がかり(腕の動き,対人距離,相手に顔を向けている割合,単独発言時間,単独発言頻度,単独発言平均時間)との関連について,レンズモデル(Brunswik, 1956)を用いて検討した.その結果,自己評定,他者評定,第3者評定,いずれにおいても,腕の動きと関係開始スキルの間に正の関連がみられた.
著者
吉田 愛 伊藤 雄一 尾崎 麻耶 菊川 哲也 深澤 遼 藤田 和之 北村 喜文 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.75, pp.65-68, 2009-06-01
被引用文献数
1

雨は時間や場所に依存してさまざまな様相を呈し,独特の印象を人に与える.そこで,雨を情報として他者と共有することができれば,今までにはない情報共有の手法となると考えられる.本研究では,雨と人をつなぐインタフェースである傘に注目し,雨を再現して体験できる装置の実現を目指す.具体的には,ダイナミック・スピーカの構造を利用して,実際の雨が傘に当たることで傘軸に発生する振動を記録,再生できるシステム「アソブレラ」を実現する.また,アソブレラを用い,雨だけでなくビー玉や蛇など様々な物を傘で受け止める感覚を体験できるアプリケーションや,雨をリアルタイムに伝達し合うアプリケーションを実装する.
著者
戸村 九月 川﨑 怜子 北村 美月 中山 貴博 今福 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.cr.2020-0015, (Released:2020-11-24)
参考文献数
20

【目的】血栓回収後に過灌流症候群(CHS)と非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)が疑われた 1 例を経験したので報告する.【症例】68 歳女性,意識障害を主訴に救急搬送.左中大脳動脈(MCA)閉塞の診断で血栓回収療法を施行して完全再開通を得たが,意識障害の遷延を認めた.治療同日のMRI では DWI 所見は消失し,再開通を維持していたが,第 3 病日の MRI で虚血領域の皮質を中心とした高信号と同領域の脳血流上昇を認め,脳波所見と併せて CHS と NCSE の並存が疑われた.内科的加療により臨床症状は徐々に改善を認めたが,高次脳機能障害が残存した.【結論】血栓回収後に治療経過に見合わない意識障害の遷延や悪化を来す場合,CHS や NCSE を鑑別診断に挙げた精査を行う必要がある.
著者
森 俊文 松本 早代 井本 佳孝 四宮 寛彦 和田 哲 友成 哲 谷口 達哉 北村 晋志 六車 直樹 高山 哲治
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.254-258, 2014-05-20 (Released:2014-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

症例は21歳,フィリピン人女性.18歳までフィリピンにて生育,以降日本に在住.呼吸困難の精査目的で撮影したCT検査で肝臓内に網目状模様を認め,日本住血吸虫症を疑い血清抗体価を測定したところ高値であった.プラジカンテル40 mg/kg/日を投与し,6カ月後に抗体価は低下した.本邦では,新たな日本住血吸虫症はみられなくなったが,輸入症例や陳旧症例の報告が散見される.非流行地域において特徴的な肝画像所見を呈したことにより発見された本症の1例を報告する.
著者
北村 也寸志
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.166-180, 2002-10-31 (Released:2019-02-05)

日本の森林・林業は重い課題を背負っている。市場に出した木材は原価割れを起こし,管理放棄された人工林も目立ってきた。都市近郊の里山は,農業者などと森林との関係が希薄になり,「里山の自然」の維持を求める市民らによる保全運動が広がりつつある。このような中で,かつお節の生産地である枕崎市と山川町が位置する鹿児島県南薩地区の広葉樹林では,今なお採取林業である薪の生産が続いている。かつお節は,その製造工程のなかの「焙乾」において,燃料として広葉樹林から切り出された薪が使われる。景気に左右されることの少ない,安定したかつお節の生産には,この薪の安定供給が欠かせない。南薩地区の人々はかつお節加工を通して,海洋生物資源のカツオと森林資源である薪を結びつけて持続的に利用してきた。日本の多くの里山が存亡の危機にさらされているなかで,ここではなぜ,その持続が可能であったのだろうか。本稿では,それを明らかにするためにかつお節生産における焙乾の意義を簡潔に整理し,鹿児島県南薩地区における焙乾用薪材の伐採と供給の実態を,薪を切る人々の姿を通して考えてみた。結果として,かつお節製造と里山林利用(薪の伐採)が一体となって営まれている実態を明らかにしえた。また「海」(漁業)と「森」に視点をおくことで,これまで「里」(農業)と「森」との直接のつながりに焦点をおいてきた里山研究では見えにくかった,特産物加工業の介在という利用形態が,燃料革命後も里山の維持に重要な役割を果たしてきたことが明らかになった。
著者
北村 亜也 田中 啓 松島 実穂 松澤 由記子 谷垣 伸治 小林 陽一
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.101-105, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
13

産科出血は妊産褥婦死亡の主要な原因を占め,速やかな対応を必要とする.近年,子宮動脈塞栓術(UAE)は産科出血に対する治療法として頻用されているが,生殖能への影響は十分に評価されていない.産科出血に対するUAEが月経再開,妊孕性,妊娠合併症に与える影響について後方視的に調査した.産科出血に対してUAEを行った78例のうち,追跡できた53例の月経再開率は98.1%(52/53例)であった.月経再開した52例中,挙児希望があった15例のうち,11例が妊娠成立し,8例が分娩に至った.そのうち3例が前置胎盤となり,その全例で癒着胎盤を認め帝王切開同時子宮全摘術を実施した.本検討により,UAEは月経再開や妊孕性には概ね影響を与えないが,妊娠例では癒着胎盤の発生率を高める可能性があることが明らかになった.UAE後の妊娠については,ハイリスク妊娠としての慎重な管理と十分な患者説明が必要である.