著者
小松原 宏子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
no.12, pp.9-24, 2020-03-31

2014 年と2015 年、学研の「10 歳までに読みたい世界名作」『若草物語』『あしながおじさん』の編訳をする機会に恵まれた。それに際し完訳版および原書を読むなかで気づいたこと、この2作品を初めて読んだ子ども時代から心に留めていた、あるいは疑問に思っていたことをここで整理してみたい。今回は脇役ながら物語中で重要な役割を果たしている脇役たち---『若草物語』のハンナ、『あしながおじさん』の視察委員プリチャード---に関しての考察をまとめる。
著者
水内 俊雄 福原 宏幸 花野 孝史 若松 司 原口 剛
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.7, pp.17-37, 2002
被引用文献数
1

1. 差別と偏見の心象地理 : 1996年3月, 大阪市西成区の中学生たちが, 愛読していた少女向け漫画雑誌「別冊フレンド」の大阪を舞台設定とした連載で, あるコマ外に西成に対してコメントがあり, これは問題であると教師に訴える出来事があった。そのコメントは, 兄が高校を中退して家を出てからずっと西成に住んでいるという弟の台詞に対して, 「西成*大阪の地名, 気の弱い人は近づかないほうが無難なトコロ」と, 副編集長はわざわざこの西成のことを補足するために, 枠外にこのような注をつけたのである。その中学生の先生への相談は, 同和地区でもあり, こうした生徒への対応が敏速におこなわれ, 結局は西成区民全体が見逃すことのできない問題として, 雑誌社への謝罪などを訴える大きな動きへとつながっていった。……
著者
石川 和江 藤原 宏子 鍵谷 方子
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.14-27, 2022 (Released:2022-02-25)
参考文献数
48

慢性ストレスによる負の情動はテロメアの短縮(細胞老化の指標)と関連する.健常な女子学生を対象に,コーヒーの香りによるストレス緩和効果をテロメア長に注目して検討した.心理社会的ストレス負荷実験では,負荷時にコーヒーの香りを呈示した群(n=15)としなかった群(n=15)の両群において,負荷前に比べ,負荷後に不安得点が有意に増加したが,両群の間に有意な差は認められなかった.一方,コーヒー呈示群でのみ,コーヒーの香りの主観評定と不安得点に負の相関がみられた.さらに,コーヒー習慣のある17名で,テロメア長を目的変数として重回帰分析を行ったところ,関連を示した項目はコーヒーの香りの快・不快度と覚醒度であった.以上により,コーヒーの香りの主観評定と不安には関連があること,習慣的にコーヒーを飲む人において,香りによる快や覚醒とテロメア長に関連があることが示された.
著者
小松原 宏子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
no.13, pp.31-52, 2021-03-31

2014 年、学研の「10 歳までに読みたい世界名作」シリーズ出版において、19 世紀米文学の名作『若草物語』(ルイザ・メイ・オルコット作)の編訳をする機会に恵まれた。Little Women という原題のこの物語は、日本ではA tale of young grass という意味の、『若草物語』というタイトルで翻訳されている。1934 年の矢田津世子の抄訳出版と、キャサリン・ヘップバーン主演のキューカー監督作品である映画(1933 年アメリカ)の公開時に吉屋信子によって選ばれた、と言われるこの邦題について考察し、命名の理由についての仮説を立ててみた。
著者
勝部 駿 佐原 宏典
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-6, 2022 (Released:2022-02-05)
参考文献数
5

In spacecraft systems, it is important to quickly detect and deal with anomalies. However, the increasing complexity of spacecraft systems makes it difficult to avoid failures using previous anomaly detection methods. In recent years, anomaly detection methods based on machine learning have been studied. But it is difficult for a spacecraft to detect anomalies autonomously in orbit. In this study, we propose an anomaly detection method that defines and monitors a single variable representing the health status of a spacecraft system, instead of monitoring a huge amount of telemetry data. We have confirmed that the single variable can represent the health status of a spacecraft system and can be applied to the anomaly detection method.
著者
樫原 宏 末宗 洋 常広 菜穂美 酒井 浄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.2581-2582, 1990-09-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

The enones (II), which were obtained from dimethyl 4, 5-isopropylidenedioxy-2-oxopentylphosphonate (Ia) and various aldehydes, were easily converted to 2-alkenylfurans (III) by treatment with p-TsOH in MeOH. In a similar manner, the furfuryl phosphonate (IVa) and the 3-methylfurfuryl phosphonate (IVb) were obtained from Ia and its 3-methylated analogue (Ib), respectively.
著者
樫原 宏 末宗 洋 藤本 勝彦 酒井 浄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.2610-2614, 1989-10-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
7 9

A new synthetic route to optically active α, β-, β', γ'-unsaturated alcohols was established. The chiral enones (6 and 8), prepared from dimethyl malate via chiral phosphonates (4 and 5), were diastereoselectively reduced with Zn(BH4)2 to afford the 1, 3-syn derivatives (9 and 11). As an application of this 1, 3-asymmetric induction, the fungitoxic C-18 hydroxy unsaturated fatty acid isolated from stromata of Epichloe typhina was synthesized.
著者
須磨 幸蔵 円治 康浩 堀 原一 種谷 節郎 堺 裕 小笠原 長康 谷口 堯 榊原 宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.59-64, 1974-01-15

植込式心臓ペースメーカーが諸外国6)10),わが国28)で用いられるようになってから約10年を経過する。この間,以前カエルやイヌなどの動物において認められていた電気生理学上の諸現象,たとえば絶対不応期,相対不応期,細動受攻期(vulnerable period),過常期1),Wedensky現象17)32)などが,ヒトの心臓でも実際に確められるようになってきた。 過常期(supernormal phase)は相対不応期の終りにおける一過性に興奮性の高まる時期をさす。興奮性にはexcitability (被刺激性)とconductivity (伝導性)の2つの面がある。より弱い刺激で反応が起これば被刺激性が高いとされる。より容易に,またはより早く興奮が伝導されれば伝導性がよいとされる。両者とも興奮性が高まった状態である。過常期にも,この両者に相当する場合があり,この時期においてその前後の時期にくらべて弱い刺激で反応する過常期興奮(supernormal excita—bility)の場合と興奮の伝導が速く容易になる過常期伝導(supernormal conductivity)の場合とがあり,両者を含めて過常性(supernormality)と呼ぶこともできる。
著者
王 才林 宇田津 徹朗 湯 陵華 鄒 江石 鄭 雲飛 佐々木 章 柳沢 一男 藤原 宏志
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.387-394, 1998-12-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

1992年から,プラント・オパール分析による中国長江中・下流域における稲作の起源およびその伝播に関する日中共同研究が開始され,太湖流域に所在する草鞋全山遺跡における古代水田趾の発掘調査が行われた。調査の結果,遺跡の堆積土層が10層確認され,5層からlO層までは馬家浜中期(B.P.5900〜6200年)の文化層であることが判った。また,プラント・オパールの分析により,春秋,綾沢,馬家浜時期の水田土層が確認された。さらに,馬家浜中期の土層から40面余りの水田遺構が検出された。本論文では,検出された水田遺構の一部および各土層から採取した土壌試料について行ったプラント・オパールの定量分析および形状分析の結果を報告し,当該遺跡における古代イネの品種群およびその歴史的変遷について検討を加えたものである。プラント・オパールの定量分析より,各遺構および各土層からイネのプラント・オパールが多量に検出された。この結果から,草革全山遺跡周辺では,B.P.6000年の馬家浜中期からイネが継続して栽培されてきたと推測される。
著者
小原 宏基 川合 悟
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.214-226, 2020-03-31 (Released:2020-06-09)
参考文献数
106

Despite numerous Vertical–Horizontal Illusion (VHI) studies conducted since that of Adolf Fick in 1851, VHI has yet to attain a uniformly accepted consensus due to conflicting conclusions. As a result, a re-examination of VHI was undertaken focusing on contact position of a vertical (mast) line on a horizontal (base) line, orientation of the VHI stimulus, and viewing conditions, i.e., monocular vs. binocular-vision. In pseudorandom fashion on a computer, 35 adults adjusted mast lines of varying length and contact position in reference to a 50-mm base line to the same perceived length as the base line. The Point of Subjective Equality (PSE) was measured over 168 trials (two trials of 7 contact positions×4 orientations×3 viewing conditions). Perceived lengths were significantly affected by contact position in an M-shaped manner (Marma et al., 2015) rather than V-shaped (Künnapas, 1955a), and PSE was shorter when the baseline was horizontal rather than vertical, confirming the anisotropy in vertical–horizontal axis (Künnapas, 1955a).
著者
宇田津 徹朗 藤原 宏志
出版者
日本作物学会九州支部
雑誌
日本作物学会九州支部会報
巻号頁・発行日
no.58, pp.70-72, 1991

吉野ケ里遺跡,桑田遺跡においてプラント・オパール分析による水田針探査および検出されたプラント・オパールの形状解析を行った結果以下のことが明かとなった。
著者
簗 麻理子 岩崎 優子 篠原 宏成 大野 京子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.509-514, 2019-04-15

要約 目的:正常眼圧緑内障の片眼に網膜分離と黄斑部の網膜剝離が併発した症例の報告。 症例:71歳の女性が右眼の視力低下で紹介され受診した。15年前から両眼の緑内障として他医で加療中であり,当初の矯正視力は左右とも1.2であったという。 所見と経過:矯正視力は右0.3,左0.7であった。光干渉断層計で右眼の黄斑部に網膜剝離と,乳頭周囲に網膜分離があった。網膜の内層分離は,視神経線維層欠損部位から鼻側に広がり,網膜外層分離の範囲は乳頭の下方を中心に鼻側と耳側に均等に広がっていた。Optic disc pit maculopathyに類似する疾患と考え,硝子体手術を実施した。術後に黄斑円孔が生じたが,内境界膜の自家移植とガスタンポナーデにより円孔は閉鎖し,右眼視力は0.5に改善した。 結論:乳頭にpitがなくても,正常眼圧緑内障では,経過中にoptic disc pit maculopathy様の網膜分離や網膜剝離が生じうることを本症例は示している。
著者
原 宏和
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.127, no.8, pp.1199-1205, 2007-08-01 (Released:2007-08-01)
参考文献数
27
被引用文献数
4 4

NF-E2-related factor-2 (Nrf2), a basic leucine zipper transcription factor, is involved in the expression of numerous detoxifying and antioxidant genes via the antioxidant response element (ARE). Keap1, a cytoplasmic protein, sequesters Nrf2 in the cytoplasm under normal conditions. Various stimuli, including electrophiles and oxidative stress, liberate Nrf2 from Keap1, allowing Nrf2 to translocate into the nucleus and to bind to the ARE. Recently, there is increasing evidence that compounds that stimulate the activation of the Nrf2-ARE pathway may become useful therapeutic drugs for neurodegenerative diseases associated with oxidative stress. Apomorphine (Apo), a dopamine D1/D2 receptor agonist, is used for clinical therapy of Parkinson's disease. On the other hand, Apo is a potent radical scavenger and has protective effects on oxidative stress-induced cell death. We previously reported that pretreatment of human neuroblastoma SH-SY5Y cells with Apo enhanced the protective effects. In addition, we have recently demonstrated that Apo stimulates the translocation of Nrf2 into the nucleus and the transactivation of the ARE. Our findings suggest that not only the function as a radical scavenger, but also the function as an Nrf2-ARE pathway activator may be involved in the neuroprotective effects of Apo on oxidative stress-induced neuronal cell death. In this review, our recent studies on the mechanism underlying Apo-induced neuroprotection are summarized.
著者
二宮 敬虔 小川 原嘉明 橋本 樹明 広川 英治 村中 昇 前田 健 藤原 宏悦 飯田 浩 河原 哲雄 木村 雅文 高安 星子 NINOMIYA Keiken OGAWARA Yoshiaki HASHIMOTO Tatsuaki HIROKAWA Eiji MURANAKA Noboru MAEDA Ken FUJIWARA Kouetsu IIDA Hiroshi KAWAHARA Tetsuo KIMURA Masabumi TAKAYASU Hoshiko
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.1-92, 1995-03

本報告では, 1991年8月30日に M-3S II-6 号ロケットにより打ち上げられた"ようこう"の姿勢制御系に関する詳細な説明を行う。"ようこう"は近地点高度約500km, 遠地点高度約800km, 軌道傾斜角約31゜の軌道に投入され, そのミッションとして軟 X 線帯及び硬 X 線帯の各高分解能望遠鏡を使用して, 太陽の精密な X 線画像を日々撮り続けている。 "ようこう"にはこれまでにない高分解能の X 線太陽望遠鏡が搭載されているため, 撮像された太陽像にブレが生じないように非常に高い安定度の姿勢制御が要求されている。このため姿勢制御系はバイアスモーメンタム方式に基づく姿勢安定化を図った上で, アクチュエータとして2台の強力なモーメンタムホイールと高速応答の小型コントロールモーメントジャイロを使用することによって精密で安定な太陽指向姿勢を保持し, この制御要求に応えている。本報告書の構成は以下のとおりである。第1章で衛星の形状, 地上支援系を含む姿勢制御系の概要を, 第2章で姿勢制御モード構成と各モードの制御方式概要を, 第3章で機体の力学特性と姿勢擾乱特性を, 第4章で"ようこう"に搭載した姿勢制御系機器の性能を, 第5章で地上支援系の構成, 機能を, 第6章で打ち上げ前に地上において確認してきた姿勢制御系の動作確認試験の目的と概要を, 第7章で飛翔結果に基づく姿勢制御系搭載機器の動作, 姿勢制御性能, 及び衛星に働く空力外乱トルクの推定結果について記述している。
著者
笠松 美歩 上原 宏 宇津呂 武仁 齋藤 有
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.581-590, 2018-06-15 (Released:2018-06-15)
参考文献数
38

本論文では,絵本に対する子どもの認知発達的反応が描写された絵本レビューに対してテキストマイニング技術を適用し,絵本に対する子どもの認知発達的反応事例を網羅的に収集した.特に,典型的な5種類の反応の事例に対して,反応の詳細および絵本の特徴に基づき,合計13種類の下位分類を設定することができた.さらに,以上の結果と,既存の発達心理学文献における知見との間の比較分析を行った結果,発達心理学文献での報告事例の規模・種類とも上回る子どもの認知発達的事例を収集・類型化できることが分かった.