著者
槌野 正裕 荒川 広宣 小林 道弘 清田 大喜 岩下 知裕 堀内 大嗣 中島 みどり 高野 正太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌 九州理学療法士学術大会2019 (ISSN:24343889)
巻号頁・発行日
pp.45, 2019 (Released:2019-12-11)

【はじめに】当院は大腸肛門病センターとして、大腸、肛門の器質的疾患や直腸肛門の機能障害に対しての診断・治療を行おり、リハビリテーション科は、便秘や便失禁症例に対する直腸肛門機能訓練に取り組んでいる。便失禁症は、2017年に発刊された便失禁診療ガイドラインによると、65歳以上の有症率は男性8.7%、女性6.6%とされており、専門的な保存治療の一つに骨盤底筋群に対するバイオフィードバック(biofeedback:BF)療法が行われ、治療の有効率は70%前後と報告されている。当院でも便失禁症例に対しては筋電図BF療法を用いているが、収縮方法を獲得できない症例を経験する。このように通常のBF療法では骨盤底筋群の収縮を獲得できない症例に対して、内閉鎖筋膜は肛門挙筋に起始を与えると報告されていることから、股関節外旋筋の収縮をさせることで骨盤底筋群の一つである外肛門括約筋の収縮を得ることが出来るのではないかと考え、検討を開始(第6回運動器理学療法学会で報告)した。今回、外旋筋を用いた骨盤底筋収縮に関する検討を継続した結果を報告する。【対象と方法】2018年5月から12月に当院で骨盤底筋群に対するBF療法を行った症例の中で無作為に選出した26例(男性4例、女性22例、平均年齢66.7±17.0歳)を対象とした。対象者の受診動機は、便秘14例、便失禁18例、その他3例(重複あり)であった。方法は、対象者をシムス体位(左側臥位)とさせ、検査者が外肛門括約筋に電極(幅5mm)が密着するように棒型双極電極を肛門に挿入する。筋電図(日本光電社製 MEB-9400シリーズ)を用いて外肛門括約筋収縮時の積分値(S:squeeze)を安静時の積分値(R:rest)で除した値(S/R)を外肛門括約筋の収縮力とした。次に対象者を腹臥位とし、股関節中間位、膝関節90°屈曲位から両側の踵部を合わせるように股関節外旋筋の収縮を促し、外肛門括約筋のS/Rを求めてシムス体位との収縮力の違いを比較した。統計学的処理にはWilcoxsonの符号順位検定を用いて検討した。【結果】外肛門括約筋の収縮力S/Rは、シムス体位の2.95(1.68~7.67)に対して腹臥位での股関節外旋筋収縮では4.80(2.32~7.70)と有意(p < 0.01)に収縮力は強くなった。しかし、外旋筋の収縮よりもシムス体位での収縮力が強い症例を4例に認めた。3例は外旋筋の収縮を行わせた方がシムス体位よりも持続収縮が可能であり、1例は安静時の活動電位も高まっていたため、収縮力としては低下していた。【考察】内閉鎖筋と肛門挙筋の関係に関しては様々な報告が散見されるが、臨床的には股関節外旋筋の収縮を促すと、肛門は腹側へ引き込まれるように動くのが確認される。内閉鎖筋膜は肛門挙筋に起始を与えており、内閉鎖筋は骨盤底において肛門挙筋と密接な関係にあるとの報告(田巻ら)から、骨盤底筋群に対するBF療法の効果を高める事が期待できると考えられる。【倫理的配慮,説明と同意】【倫理的配慮、説明と同意】当研究は、大腸肛門病センター高野病院倫理委員会の許可(第18-03番)を得て、充分な倫理的な配慮を行い実施した。
著者
小林 道夫
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-15, 1997-12-25
参考文献数
6

デカルトは現在の (特に英米系の) 心の哲学においてはたいへん奇妙な扱いを受けている。デカルトの心の哲学の第一の特質はその二元論であるが (ただし, あとで触れるように二元論に尽きるのではない), この二元論のゆえにデカルトの哲学は, しばしば, 反科学の扱いをうけるのである。J.サールは最近の著書で, 現代の心の哲学での (科学主義的的) 唯物論の動向を難じて, その要因の筆頭に,「 (人々は) デカルトの二元論に陥るのが怖いのだ」という点を挙げている。現代の科学の時代にあって, 実在とはすべて客観的なものであり究極的には物理的存在であると思われるにかかわらず, 物理的存在以外に心的実体なるものを認めるデカルトの二元論に同調することは, 科学的知性を脅かす不条理を引き受けることだと見られるというのである(1)。しかし, 改めていうまでもなく, 自然科学の対象から心的性質や目的論的な概念を一切除外して, 近現代の数理科学を方向づけたのは他ならぬデカルトである。彼はまた, 動物や人間の身体をも機械論的に説明しようとして近代の生理学の見地をも設定したのである (デカルトの生理学的な「人間論」はのちの唯物論的な「人間機械論」の一つの有力なソースであった)。デカルトにとっては自分の哲学こそが, 人間の身体をも含む自然全体の科学的探究を推進するものであったのである。しかし, 問題はもちろん, デカルトが科学的探究の対象となる物理的生理学的対象以外に, それとは独立のものとして思惟や意志という心的存在を認めたことである。現代の言葉でいえば, デカルトは, 科学的生理学的探究を推進しながら, それとは独立に「常識心理学」の領域があるとはっきりと認めたということになる。私見によれば, 現代の心の哲学の状況に身を置いて, いわゆる「消去的唯物論」に与するのでなしに, 自然や人間の身体に対する科学的生理学的探究の見地を堅持しながら, 常識心理学が表す心的性質や心的存在に独自の身分を認める方向の哲学を立てようとした場合には, デカルトの心の哲学はなおも極めて有力で説得的な見地と評価しうる。以下で私は, 現代の心の哲学の問題, とくに「心的性質の実在性」や「心的因果性」の問題を念頭におき,「デカルトの心の哲学」からはそれらの問題に対してどのような解答が与えられるか, という点を考えてみたい。
著者
岩下 知裕 清田 大喜 小林 道弘 荒川 広宣 槌野 正裕 高野 正太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-149_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】 便秘とは,「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態(慢性便秘症診療ガイドライン2017)」と定義されている.また,慢性便秘症患者の6割程度にうつ,不安などの心的異常を認め,心理検査では心理的異常を示すスコアが健康対照者に対して有意に高いことが報告されている.厚生労働省の平成28年度国民基礎調査による便秘の有訴者数は65歳以上の男性で6.50%,女性で8.05%となっており,80歳以上では男女平均にて約10.8%と高齢になるにつれ増加する傾向にあることが分かる.これらの報告より,便秘は身体機能の障害のみならず二次的に心的な障害を受け、QOLが低下する疾患であり,適切な介入が必要であると考えられる.当院では,排便障害患者に対して必要であれば直腸肛門機能訓練を実施している.日々の診療のなかで排便障害を有する患者の中には,体幹や骨盤,股関節機能に問題がある症例がみられることがある.今回,両股関節内旋可動域制限が生じている排便障害(機能性便排出障害)の症例に対して,股関節へのアプローチを行い,骨盤底機能が改善したことで主訴が軽減した症例を経験したため以下に報告する.【症例紹介】 80歳代の男性.既往歴はS状結腸癌術後,狭心症(カテーテル留置),前立腺癌.主訴は便意があるが排便しにくい,いつもウォシュレットを強く当てて排便を行っていた.患者のニードはウォシュレットを使用せずに排便出来るようになりたい.【評価とリーズニング】 入院初期評価時には両股関節内旋可動域5°,徒手筋力検査(MMT)にて両股関節内外旋筋力3,直腸肛門機能検査の直腸肛門内圧検査では最大静止圧(Maximum Resting Pressure:MRP)43mmHg,最大随意収縮圧(Maximum Squeeze Pressure:MSP)242mmHg.便秘の評価であるConstipation Scoring System(CSS)は16点.【介入内容と結果】本症例に対して,最初に排便姿勢の評価を行った.理学療法プログラムは1.両股関節内旋可動域訓練,2.体幹筋筋力増強訓練(腹部引き込み運動),3.腸の蠕動運動促進を目的とした体幹回旋訓練,4.トレッドミル歩行訓練を実施した.また,5.バルーン排出訓練を2回/週の頻度で初回を含め計5回介入した.バルーン排出訓練は伸展性の高いバルーンを肛門より挿入し,50mlの空気を挿気し,偽便に見立てて排出する.その際に肛門の弛緩や息み方を学習出来るように指導したが,肛門の収縮・弛緩の動きが不良であった.理学療法開始2週間後,両股関節内旋可動域は30°,両股関節内外旋筋力は4に改善.MRP:50mmHg,MSP:352mmHgで肛門の収縮が可能, 50mlのバルーン排出可能,CSSは8点と改善し,ウォシュレットを使用せずに排便が可能となった.【結論】 慢性便秘症診療ガイドライン2017によると,便秘の発生リスクとしてはBMIや生活習慣,腸管の長さ,関連疾患の有無(逆流性食道炎,過敏性腸症候群,機能性ディスペプシア,下痢症),加齢などが挙げられるが,本症例では,原因の一つとして骨盤と股関節の可動性低下が考えられた.股関節内旋可動域を拡大したことで,外旋筋の柔軟性が向上し,肛門挙筋の起始部と連結している内閉鎖筋の柔軟性が向上したと考えられる.解剖学的に肛門挙筋は恥骨直腸筋,恥骨尾骨筋,腸骨尾骨筋の3筋から構成され,恥骨直腸筋の一部は外肛門括約筋と連結している.恥骨直腸筋は肛門直腸角を構成し,外肛門括約筋は収縮することにより遠位で肛門を閉鎖・固定する.骨盤底筋群の柔軟性が向上したことにより,排便時の恥骨直腸筋と外肛門括約筋の随意的な弛緩が可能となった.恥骨直腸筋が弛緩することで,肛門直腸角は鈍角し,外肛門括約筋が弛緩することで,排便時に肛門が緩み,機能性便排出障害が改善したと考えられる. 今回,機能性便排出障害を主訴とする症例を経験した.理学療法士として,股関節内旋可動域の図ったことで直腸肛門機能の改善につながったと考えている.今回は1症例の経験を報告したが,今後も継続して機能性便排出障害の症例に対して,股関節や骨盤の運動機能の改善に伴う排便障害の改善効果について検討していきたい.【倫理的配慮,説明と同意】臨床研究指針に則り同意を得,個人が特定されないように配慮した.なお,利益相反に関する開示はない.
著者
小林 道
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.126-133, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
21
被引用文献数
1

【目的】地域住民を対象として,中食の利用頻度と食品群別摂取量及び栄養素等摂取量の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】2018年7月~8月に,北海道江別市に在住する20~74歳の成人を対象として,自記式質問紙調査を行った。食品群別摂取量及び栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)により評価した。最終的な解析対象者は1,469名(男性:625名,女性:844名)であった。中食の利用頻度と食品群別摂取量及び栄養素等摂取量との関連は,共分散分析を用いて検討した。【結果】男性では,中食の利用頻度が週1回未満の群と比較して,週2回以上の群で,緑黄色野菜類,その他の野菜類,食物繊維,カリウム,カルシウム,マグネシウム,葉酸,ビタミンCの摂取量が有意に低く,女性では,これらの食品群と栄養素等に加えて,豆類,卵類,動物性たんぱく質,動物性脂質,鉄,亜鉛,銅,ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,ビタミンB6 の摂取量が有意に低かった。男女ともに中食の利用頻度が週2回以上の群では,ナトリウム・カリウム比(Na/K比)が有意に高かった。【結論】中食の利用頻度が週2回以上の群では,野菜類摂取量が低く,それに伴って食物繊維及び複数のビタミンなどの摂取量が低値を示し,Na/K比が高まる可能性を認めた。中食の利用頻度が高い場合には,Na/K比を低くするために野菜類摂取量の増加に留意する必要性が考えられた。
著者
小林 道夫
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-15, 1997-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
7

デカルトは現在の (特に英米系の) 心の哲学においてはたいへん奇妙な扱いを受けている。デカルトの心の哲学の第一の特質はその二元論であるが (ただし, あとで触れるように二元論に尽きるのではない), この二元論のゆえにデカルトの哲学は, しばしば, 反科学の扱いをうけるのである。J.サールは最近の著書で, 現代の心の哲学での (科学主義的的) 唯物論の動向を難じて, その要因の筆頭に,「 (人々は) デカルトの二元論に陥るのが怖いのだ」という点を挙げている。現代の科学の時代にあって, 実在とはすべて客観的なものであり究極的には物理的存在であると思われるにかかわらず, 物理的存在以外に心的実体なるものを認めるデカルトの二元論に同調することは, 科学的知性を脅かす不条理を引き受けることだと見られるというのである(1)。しかし, 改めていうまでもなく, 自然科学の対象から心的性質や目的論的な概念を一切除外して, 近現代の数理科学を方向づけたのは他ならぬデカルトである。彼はまた, 動物や人間の身体をも機械論的に説明しようとして近代の生理学の見地をも設定したのである (デカルトの生理学的な「人間論」はのちの唯物論的な「人間機械論」の一つの有力なソースであった)。デカルトにとっては自分の哲学こそが, 人間の身体をも含む自然全体の科学的探究を推進するものであったのである。しかし, 問題はもちろん, デカルトが科学的探究の対象となる物理的生理学的対象以外に, それとは独立のものとして思惟や意志という心的存在を認めたことである。現代の言葉でいえば, デカルトは, 科学的生理学的探究を推進しながら, それとは独立に「常識心理学」の領域があるとはっきりと認めたということになる。私見によれば, 現代の心の哲学の状況に身を置いて, いわゆる「消去的唯物論」に与するのでなしに, 自然や人間の身体に対する科学的生理学的探究の見地を堅持しながら, 常識心理学が表す心的性質や心的存在に独自の身分を認める方向の哲学を立てようとした場合には, デカルトの心の哲学はなおも極めて有力で説得的な見地と評価しうる。以下で私は, 現代の心の哲学の問題, とくに「心的性質の実在性」や「心的因果性」の問題を念頭におき,「デカルトの心の哲学」からはそれらの問題に対してどのような解答が与えられるか, という点を考えてみたい。
著者
小林 道夫
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.39-51, 1993-11-20 (Released:2009-05-29)
参考文献数
18
著者
小林 道夫
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.31-46, 1987-11-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
20
著者
木村 宣哉 小林 道
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.871-880, 2020-12-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
34

目的 地域から層化無作為抽出した集団において,相互作用的・批判的ヘルスリテラシー(CCHL,Communicative and Critical Health Literacy)と高血圧・糖尿病・脂質異常症の関連を横断的に明らかにすることを目的とした。方法 2018年7~8月,北海道江別市の3,000人(20~75歳未満)を対象に自記式質問紙調査を実施した。江別市は大きく3地区に分かれており,参加者は各地区から1,000人を層化無作為抽出した。調査票は,市の職員によって配付・回収が行われた。調査終了後,市から匿名化されたデータを受け取り,分析を実施した。解析に当たって,結果が返送された1,630人から調査票のCCHLの項目が未記入の8人,疾患の有無の項目が未記入の43人を除外し,男性692人と女性887人でそれぞれ解析を行った。CCHLは,疾患および生活習慣等の要因の傾向性を観察するために四分位で群分けした。高血圧,糖尿病,脂質異常症の有無を目的変数とし,CCHLを説明変数とした。年代,世帯構成,配偶者,最終学歴,仕事の有無,肥満区分,定期的な運動,喫煙,朝食欠食を調整変数として,男女別に多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 全体のCCHLスコアは3.58±0.67(平均値±標準偏差)だった。単変量回帰の結果では,CCHLスコアの第一分位群を参照群とした場合に第四分位群で,男性の高血圧の割合が有意に低下した(OR=0.49; 95%CI: 0.28-0.84)。一方で,調整変数を含めた多重ロジスティック回帰の結果では,男性の高血圧の調整済みオッズ比は0.62(95%CI: 0.32-1.22)となった。CCHLと疾患の関連について,男女ともすべての項目で有意差は認められなかった。結論 男性では,CCHLが高いほど高血圧の有病率が有意に低い傾向が認められたが,多変量解析による調整後では関連性が弱まり,その他の疾患についても関連は認められなかった。HLと生活習慣病の関連をより明確にするためには,縦断研究による検討を実施する必要がある。
著者
髙橋 誠 猪俣 雅之 福井 美規子 渡辺 祐子 佐々木 佳子 鈴木 直哉 徳村 麻衣子 川原 昇平 吉嶋 抄苗 地主 隆文 青田 忠博 小林 道也
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.19-26, 2013 (Released:2018-04-02)
参考文献数
9

血清シスタチンC 濃度(CysC)は血清クレアチニン(Cre)と比較して優れた腎機能の指標である。近年、Cre 値から換算される推定クレアチニンクリアランス(CCr)や推定糸球体濾過量(eGFRcreat)に代わってCysC から換算される推定糸球体濾過量(eGFRcys)が用いられることが多くなってきている。しかしながら、多くの患者におけるこれらのパラメータの比較を行った報告は少ない。そこで本研究では、北海道消化器科病院の入院患者1163 名を対象に、eGFRcys に対してeGFRcreat ならびにCCr の比較を行うとともに、それぞれの指標間の差異の原因を明らかにし、腎機能評価に影響を及ぼす要因を特定することを目的とした。 まず、各患者の腎機能評価指標の平均値について比較したところ、CCr とeGFRcreat はほぼ同じ値であったが、eGFRcys はこれらの値よりも大きく、eGFRcys とeGFRcreat ならびにeGFRcys とCCr の差の平均は、それぞれ27.6、21.4 であった。また、eGFRcys とeGFRcreat またはCCr の差が平均値(27.6、21.4)を上回るあるいは下回る患者に分け、患者の腎機能評価に影響を及ぼす因子を多変量ロジスティック回帰分析により解析した。その結果、[eGFRcys ‐ CCr] と血清アルブミン値の間には有意な相関性が認められた。さらに、[eGFRcys ‐ eGFRcreat] では性別、肥満度ならびに血清アルブミン値に有意な関連性が認められた。以上の結果より、eGFRcreat やCCr は eGFRcys に比べて低値を示し、その程度は腎機能の評価に影響を与えるものであった。また、その差に影響を与える因子は、筋肉量ではなく、栄養状態であると考えられる。
著者
張 岩 今井 清博 小林 道頼
出版者
一般社団法人日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.167-173, 2007-05-25
参考文献数
13

The slope of the oxygen equilibrium curve (OEC) of mammalian-hemoglobin (Hb) is maximized at <i>S</i> (oxygen saturation) value of 0.38, and the slope of the <i>S</i> vs. <i>P</i>/<i>P</i><sub>50</sub> (<i>P</i> is partial oxygen pressure; <i>P</i><sub>50</sub> is <i>P</i> at <i>S</i> = 1/2) plot at a <i>P</i>/<i>P</i><sub>50</sub> value of 1 is one-forth that of the Hill-coefficient (<i>n</i>). OECs of mammalian Hbs are designed to have an identical optimal <i>P</i><sub>50</sub> value for O<sub>2</sub> delivery and the effectiveness of the Bohr shift (shift of OEC upon pH changes) at O<sub>2</sub> loading site. This fact is favorable for uptake and delivery of maximum amount of O<sub>2</sub> for fetal blood. To have the identical optimal <i>P</i><sub>50</sub> value for O<sub>2</sub> delivery and for the efficiency of the Bohr shift, the relationship, <i>P</i>aO<sub>2</sub>/<i>P</i>vO<sub>2</sub> = ((<i>n</i> + 1)/(<i>n</i> &minus; 1))<sup>2/n</sup>, is required to hold, where <i>P</i>aO<sub>2</sub> and <i>P</i>vO<sub>2</sub> are <i>P</i> for arterial and venous bloods, respectively.<br>
著者
岩尾 一生 小林 道也 及川 孝司 中駄 優作 藤崎 博子 室谷 光治 伊藤 昭英 辻 昌宏 井出 肇 遠藤 泰 関川 彬 齊藤 浩司
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.112-117, 2008 (Released:2009-09-04)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

A questionnaire survey was conducted to investigate the use of health foods among outpatients with diabetes mellitus (DM) at the Health Sciences University of Hokkaido Hospital.Responses were obtained from 69.2% of the patients (180 out of 260).The proportions of patients who had used health foods previously or were using them at the time of the survey were 16.7 and 37.2%,respectively,indicating that more than half of the patients had experience of taking health foods and this was irrespective of sex and age.The most frequently consumed health foods were Aojiru (n=25)followed by Kurozu (n=24)and blueberry extract (n=17).Among the health foods taken,those that influence blood sugar considerably were guava leaves polyphenol (n=16),Gymnema sylvestre extract (n=1),Gymnema sylvestre tea (n=1),and Aloe Vera (n=1).One patient was taking a Chinese health food that contained glibenclamide.Many patients took health foods to keep healthy and as a nutritional supplement,and most of them had not consulted their doctors or pharmacists about the use of health foods.More than 70% of the patients targeted by this study had complications such as hypertension.Since there is a possibility of health foods aggravating DM and its complications and of interactions between them and drugs used to treat DM,doctors,pharmacists and other co-medical workers should provide patients with information on the ingredients of health foods as well the adverse effects that they could have.
著者
小林 道
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.501-506, 2018 (Released:2018-08-28)
参考文献数
15

本研究は大学生を対象として、学童期に栄養教諭による授業を受けた経験が現在の食習慣に与える影響について明らかにすることを目的とした。平成29年11月に北海道のA大学の食品科学または管理栄養士養成課程を専攻する1学科の2・3年生335人を研究対象者とした。最終的な解析対象者は288人(有効回答率:86.0%)であった。質問内容は、性・年齢、居住形態等の基本属性、睡眠時間、運動、喫煙、飲酒等の生活習慣、食習慣に関する項目は朝食の欠食状況および簡易型自記式食事歴法質問票(Brief type self-administered Diet History Questionnaire;BDHQ)による食品群別摂取量とした。栄養教諭 による授業を受けた経験有り群と無し群の2群に分類して食品群別摂取量との関連を検討した。多変量ロジスティック回帰分析の結果、栄養教諭による授業を受けた経験有り群では授業経験無し群と比較して野菜類および卵類の摂取量の高摂取群の割合が有意に高かった。学童期に栄養教諭による授業を受けた経験は青年期の食習慣を良好にする可能性がある。
著者
下野 洋 市川 智史 梅埜 国夫 小椋 郁夫 恩藤 知典 河原 富夫 小島 繁男 小林 道正 五島 政一 佐藤 俊一 猿田 祐嗣 下畑 五夫 浜中 正男 藤田 郁男 松田 義章 三宅 征夫 山下 浩之 山田 正昭 渡辺 享
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.315-316, 1995

理科の野外学習指導法の体系化を図るために、野外学習の有効性、必要性、児童・生徒の環境認識の実態、野外学習の目標、カリキュラム上の位置付け、野外学習の指導の型、観察対象の類型化、野外学習の指導法などについての検討を行った中間報告である。