著者
山口 賀大 佐久間 重光 遠渡 将輝 坂口 晃平 田口 慧 小林 里奈 足立 充 伊藤 裕 田口 望 日比 英晴
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.126-134, 2016-08-20 (Released:2016-10-14)
参考文献数
34

運動療法は,施術直後より関節可動域を増大し,疼痛を早期に軽減させ病悩期間を短縮するものの,その効果について定量的な評価を行った研究は少ない。本研究では,術者が行う顎関節可動化療法と患者が行う自己牽引療法を1つの運動療法プログラムとして捉え,非復位性関節円板前方転位症例に実施した際の短期的治療効果を検討した。顎関節機能に中等度以上の障害が認められた45例を対象として運動療法を施行し,初診時とその約2週間後の初回再来時における臨床症状(最大開口域,安静時痛,開閉口時痛,咀嚼時痛および日常生活支障度)について評価した。その結果,最大開口域,開閉口時痛,咀嚼時痛および日常生活支障度において有意な改善を認めた(p<0.001)。これら症状の改善は,運動療法により関節可動域が改善され,関節腔が拡大されることで下顎頭の動きが改善したものと考える。したがって,本運動療法プログラムは,非復位性関節円板前方転位に伴う諸症状を短期間に軽減させる有効な保存療法になる可能性が示唆された。
著者
松本 哲一 小林 武彦
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-12, 1999-03-05 (Released:2017-03-20)
参考文献数
12
被引用文献数
4

A systematic K-Ar age determination has been made on thirty-seven samples from the Older Ontake volcanic products, Ontake Volcano, central Japan, with analytical uncertainties mostly within ±5% (1σ level). The “Kuragoehara Lava”, which the previous researchers used as a key bed for stratigraphic correlation, gives significantly different eruption ages in each disthbution area, and some lavas classified into the same stratigraphic units among each area also show quite diffrent K-Ar ages. Hence, a revised volcano-stratigraphy is proposed based on the radiometric data obtained in the present study. The Older Ontake Volcano may be a compound volcano consisting of more than four stratovolcanoes with different vents. The first one, “;Tobu Volcano Group”, erupted at around 750-650 ka on the wide eastern side. The second one, “Tsuchiurazawa Volcano”, erupted at around 680-570 ka mainly in the western area. The third one, “Uetawarayama Volcano”, produced lavas at around 540-520 ka, and the products filled along valleys in the western area. The last one, “Mikasayama Volcano” erupted at around 440-420 ka in the southeastern area. The inactive period between the Older and Younger Ontake volcanic products continued for more than three hundred thousand years. The present study has revealed that the K-Ar age determination is effective for estimating a time gap between the Quatermary volcanic products whose stratigraphic relation can not be well defined in field.
著者
谷口 明日香 丸山 里菜 京極 奈美 渡辺 裕子 飯村(久松) 裕子 長尾 慶子 小林 理恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.157, 2017 (Released:2017-07-08)

【目的】近年、雑穀粉の健康機能性に注目が集まっているが、これらはグルテンを形成しないため、調理への利用用途は限定的である。しかし、小麦粉のグルテン形成を抑制しながら揚げ加熱する天ぷら衣には利用の可能性が高い。そこで、小麦粉以外に天ぷら衣として利用例がみられる主穀のうるち米粉・もち米粉と共に、雑穀の大麦粉・ソバ粉・ハトムギ粉を用いた天ぷら衣の力学特性並びに外観及び吸油量とから客観的に嗜好性を評価した。【方法】各穀物粉15 gに、小麦粉の粘度と同程度となるよう加水し、バッターを調製した。これを直径30㎜×高さ10㎜のシリコンカップに2.0mLずつ分注し180±5℃に熱したキャノーラ油600 mLにカップごと投入して140秒間揚げ加熱した。各揚げ衣は1分放冷後、重量、表面色(L*, a*, b*値)、破断強度を測定した。また、各揚げ衣5 gに付着した油を石油エーテルで抽出後、40℃で蒸留して吸油量を測定比較した。【結果】揚げ衣の圧縮初期の応力及び微分値を比較すると、その硬さはうるち米粉・ハトムギ粉>大麦粉>ソバ粉となり、うるち米粉、ハトムギ粉、ソバ粉は小麦粉に比べて吸油量が少なかった。雑穀粉の揚げ衣の色は、主穀粉に比べて暗褐色であったが、特にソバ粉では濃い灰褐色を呈していた。天ぷら衣は淡黄色でもろく軽い仕上がりが望ましいことから、雑穀の大麦粉及びハトムギ粉は天ぷらの衣として小麦粉と代替えできる可能性が高い。
著者
安住 薫 小林 祥子 岸 玲子
出版者
北海道公衆衛生学会
雑誌
北海道公衆衛生学雑誌 (ISSN:09142630)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.29-38, 2012

環境化学物質の胎児期の曝露が、児の発育・発達、疾病に影響を及ぼすことが明らかになりつつある。その作用機序の解明に、最近、エピジェネティクスが注目されている。2012 年までに報告された、胎児期環境化学物質曝露が児ゲノムDNA のメチル化に与える影響を調べた疫学研究の文献レビューを行った結果、喫煙由来や多環芳香族炭化水素などの環境化学物質の曝露により、児ゲノムDNA のメチル化状態が変化することが確認された。曝露要因の中では、妊娠中の母親の喫煙がDNA メチル化に与える影響を調べた報告が最も多かった。DNA メチル化の変化は蓄積することによって遺伝子発現を変化させるため、胎児期の化学物質曝露によって生じる児ゲノムDNA メチル化の変化は、胎児の発育・発達への影響のみならず、出生後の児の健康リスクに影響を及ぼすことが示唆された。
著者
小林 信吾 岡本 健佑 北口 拓也 佐野 佑樹 和中 秀行 山原 純 稲場 仁樹 小西 佑弥 岩田 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0092, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】日本人工関節学会によると本邦における2015年度の人工膝関節全置換術(以下TKA)件数は約54,000件とされ,その約87%が変形性膝関節症(以下膝OA)と診断されている。肥満は膝OAの危険因子とされており,Heatherらは肥満群は非肥満群と比べTKA術後のFIM運動スコアの改善率が有意に低いことを報告しているが,体格差や肥満基準の違いといった制限があり,術後早期の筋力やROM,歩行能力と肥満との関連については明らかにされていない。本邦では森本らがTKA術前と術後4週の膝機能や歩行能力,Timed Up & Go test(以下TUG)には肥満群(BMI>25.0)と非肥満群(BMI<25.0)を比較し有意差がないことを報告しているが,単施設研究でサンプル数が少ない等の制限がある。今回,我々は多施設共同研究によって集められたデータを基に,肥満の有無がTKA術前,術後3週の膝機能や歩行能力に影響をもたらすかを調査したので報告する。【方法】多施設共同による前向き観察研究に参加した4つの施設にて,2015年6月から2016年9月までに片側のTKAを施行した60歳以上の男女153名を対象とした。術前,術後3週における術側の膝伸展筋力,膝屈曲ROM,歩行速度,TUGを計測した。筋力測定は端座位・膝屈曲60°にて等尺性膝伸展筋力を測定し最大値を体重で除した値を算出した。歩行速度は8m歩行路の中央5mの歩行に要した時間を計測し速度(m/s)に変換した。TUGは椅子から起立し3m先のマークを回って帰り椅子に着座するまでに要した時間を計測した。術前のBMIが25.0未満を非肥満群,25.0以上を肥満群とし,各時期における測定値の群間比較を対応のないt検定を用いて検討し,有意水準を5%未満とした。【結果】非肥満群は63名(男性17名,女性46名,平均年齢74.9±7.1歳,身長152.1±8.2cm,体重52.3±6.7kg,BMI22.5±2.0kg/m2),肥満群は90名(男性17名,女性63名,平均年齢75.2±6.7歳,身長151.6±7.7cm,体重64.7±8.3kg,BMI28.1±2.3kg/m2)であった。以下,全項目の結果について非肥満群,肥満群の順に示す。術前の膝伸展筋力は0.26±0.1kgf/kg,0.23±0.05kgf/kg,膝屈曲ROMは125.0±15.1°,119.0±17.6°,歩行速度は1.20±0.37m/s,1.15±0.36m/s,TUGは13.0±5.4秒,12.9±4.3秒であった。術後3週の膝伸展筋力は0.17±0.06kgf/kg,0.15±0.06kgf/kg,膝屈曲ROMは119.2±11.3°,119.2±10.8°,歩行速度は1.18±0.34m/s,1.09±0.28m/s,TUGは12.4±3.9秒,12.7±3.6秒であった。群間の比較において有意差が認められた項目は術前の膝伸展筋力(p=0.03)と膝屈曲ROM(p=0.03)であり,その他の項目では有意差が認められなかった。【結論】術前の膝伸展筋力と膝屈曲ROMには肥満の有無によって有意差が認められたが,術後3週においては全ての項目で有意差は認められなかった。これらの結果から,肥満の有無はTKA術後の膝機能や歩行能力の改善には影響しないことが示唆された。
著者
有井 祥夫 冨田 直樹 前田 彰 小林 孝良 伊東 秀明 飛田 公一 山下 芳興
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.577-584, 1996-07-30 (Released:2009-04-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

高速実験炉「常陽」は,燃料・材料の照射施設として,多種多様な照射試験が要求されており,これに対応すべく,炉心の高中性子束化,照射運転時間の増大および照射技術の高度化によって照射性能を向上させる「常陽」の高度化計画の検討を進めてきた。本稿では,計画の概要と炉心,冷却系設備等の設計結果について述べる。なお,設備の改造は,稼働中のプラントであるという制約条件を踏まえて行うものであり,その内容についても紹介する。
著者
小林 重人 吉田 昌幸 橋本 敬
出版者
日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-11, 2013-12

地域経済とコミュニティ活性化のための手段として地域通貨が再注目されているが,地域通貨が特定の箇所に滞留して広く流通せず,当初の目的を達せないまま終わる事例が多い.我々は,地域通貨が有する言語的機能から,地域を重視する価値観や地域通貨の使用習慣といった地域住民の内部ルールに着目してきた.本論文では,内部ルールの影響も含めた地域通貨の流通メカニズムを,ゲーミングとマルチエージェントシミュレーションの2つの手法を組み合わせることで明らかにする.ゲーミングの結果から,地域通貨導入によってゲーム参加者の売買行動および地域に対する愛着や助け合いの高まりといった価値観の変容が確認された.こうした変容を実装したマルチエージェントシミュレーションの実施により,地域重視の価値観,有償ボランティア,地域通貨残高の間にフィードバックループが形成され,地域内での購入割合が上昇するという地域通貨の流通メカニズムを示した.
著者
萩野谷 俊平 倉石 宏樹 花山 愛子 小林 正和 細川 豊治 杉本 貴史
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究
巻号頁・発行日
2018
被引用文献数
2

<p>Studies of geographic profiling (GP) have generally investigated the efficacy of two categories of GP strategies for predicting an offender's base. These strategies can be classified as follows: (a) spatial distribution strategies, assessed by center of the circle hypothesis, mean center, median center, and the center of minimum distance, and (b) probability distance strategies, assessed by linear, negative exponential, logarithmic, and lognormal distributions. GP strategies were compared based on the data of 333 residential burglars who had committed at least three offenses in the Tohoku region during the years 2004-2013. Search area (total area that is searched before locating the offender's base) was utilized as an index for accuracy measure. The results demonstrated that probability distance strategies are more accurate than spatial distribution strategies. We conclude that this is because probability distance strategies captured crime patterns of residential burglars more precisely than spatial distribution strategies.</p>
著者
藤原 佑貴 宮寺 貴之 久原 恵理子 小林 寿一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究
巻号頁・発行日
2018
被引用文献数
1

<p>The effects of two introductory styles on substantive information provided by Japanese children were investigated. Children aged 5–6 years (<i>n</i> = 42) and 7–8 years (<i>n</i> = 40) took a simulated physical examination. One week later, the participants were interviewed about the examination in a narrative introductory condition using open-ended questions, or a non-narrative introductory condition using directive and yes/no questions. Substantive information provided by the children in the two conditions was compared. Results indicated that in the narrative condition, the participants provided more accurate information about the examination in response to open-ended questions. Additionally, the 7–8 year-old children in the narrative condition provided a wider range of critical information. These findings suggest that an open-ended introductory style is effective in eliciting more accurate information from children, including preschoolers, and more varied information from school-age children.</p>
著者
鈴木 哲也 熊谷 宏 内田 達郎 吉富 信幸 渡邊 竜登美 石鍋 聡 水口 俊介 関田 俊明 平野 滋三 宮下 健吾 小林 賢一 長尾 正憲
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.476-484, 1994-04-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
40
被引用文献数
2 4

The distribution of occlusal support of 366 aged patients of over 70 years was surveyed and analyzed in this study. Their masticatory abilities were also evaluated by the questionnaire on the masticatory aspects of 20 kinds of foods, and their maximum occlusal forces were measured with the pressure sensitive foil. The relations among masticatory ability, maximum occlusal forces and the distribution of occlusal support were analyzed.The results were as follows.1. 52.8% of the upper and lower dentulous patients had less than 5 occlusal tooth contacts.2. Posterior tooth contacts were less than anterior ones, and even in posterior areas, occlusal contacts tended to be less from the second molar to the first premolar.3. 61.2% of the upper and lower dentulous patients had no occlusal support or only unilateral occlusal support. It is evident that occlusal support is extremely ill-conditioned in elderly patients.4. It was found that if the aged have more occlusal tooth contacts and wider occlusal support areas, they would show better masticatory ability and greater maximum occlusal forces.5. In thier initial visits to our clinic they had poor occlusal support with their dentures.6. It is suggested that occlusal tooth contacts and occlusal support areas should be important for maintaining a healthy oral function in elderly people.
著者
小林 忠雄
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.371-410, 1995-01

本稿は日本の民俗的な色彩感覚が,明治末期から昭和初期の間に変容したという問題意識を前提に論じたものである。それは,主として新たに近代化された都市社会の出現と呼応しており,その背景には西洋文化や知識の移入による影響があるものと考えられる。ちなみに,まず日本の民俗感覚としての色彩認識については,一つには色名などを使った言語文化における認識と,もう一つは多様な色彩の材料を駆使して表現された物質文化における認識のあり方が考えられ,そのなかで基層感覚と覚しき部分について概説し,感覚の近代化とは何かについて問題提起した。つづいて,都市における色彩を具体的に示した文献として,『近代庶民生活誌』全10巻,および今和次郎『モデルノロジオ(考現学)』をとりあげ,そのなかから色彩語彙に関係した箇所,約400項目を抽出し,色彩ごとに分類し並べてみた。その結果,1930年前後において,東京や大阪といった大都市における人々の色彩の捉え方が微妙に変容していることが分かった。その変容については,とりあえず赤・青・白・黒・紫の各色についてのみ,何がどのように変わったのかについて分析してみた。同じく,変容には都市のなかで新たに出現した色彩傾向がある。それは黄・緑・ピンクといった人工色であって,さらに赤・青・紫の色の組合せ現象にも注目された。そして,近世まで都市において顕著であった五色のハレ(晴れ)感覚から,近代においては七色という,これまで識別されていなかった光のスペクトル感覚による色の認識が立ち表れ,庶民の色彩認識に大きな変革がなされたとみられる。本稿は,そのような変容の要素を,都市が生成した民俗という視点から捉え,次に何かが言えないだろうかという,今後の民俗研究への指針を求めた,あくまで実験的な試みである。In this paper, I have worked on the assumption that we have come to recognize a change in Japanese feeling for colors in our folk customs between the end of the Meiji period and the beginning of Shōwa period. This period of change mainly corresponds to the appearance of the first modernized urban societies; and behind it, there seems to be influences introduced from Western culture and knowledge.For example, in connection with the Japanese awareness of colors in our folk customs, we can see that one reaction to our awareness of colors is shown in the use of color names in our linguistic culture, and another is shown in the use of various color materials in our material culture. I have outlined the basic feeling of awareness and so raise the question "what is the modernization of feelings?"Next, I introduce two books: "Living Record of Modern Common People" (ten volumes) published by San-ichi Shobō and "Modernology" written by Wajirō Kon, as the reference materials which clearly indicate the colors in urban communities. Then, from them, I have extracted about 400 items which related to the color terms and listed them classified under different colors.As a result, the people's taste of colors in big cities such as Tokyo and Osaka changed slightly around 1930. I analyzed about what and how it changed, taking a selection from each of 5 colors: red, blue, white, black and purple.In this change, there are, moreover, new tendencies for colors to appear in urban communities. They are artificial colors such as yellow, green and pink, and color combinations of red, blue and purple were also to be seen.A great change might occur in the common people's awareness of colors because the ceremonial color responses with 5 colors which were noticeable in towns until the end of Edo period, were replaced by new responses with 7 colors divided by spectrum of light in the Meiji and the Taisho periods, which had not been found before.In this paper, I introduced an empirical survey to show the essence of the change from the viewpoint of folk customs created by urban communities, and to indicate a direction for future folk custom study of what to expect next.