著者
小田 淳一 OEHLER Susan Elizabeth
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は大西洋黒人コミュニティー内の文化的つながりにおいて,アフリカ系アメリカ人の伝統(本研究においてはブルースという音楽ジャンル)の歴史=地理的な位置づけを民族誌によって試みることである。民族誌は文化活動をそのコンテクストにおいて探求する一つの方法であることから,アフリカ系アメリカ人のブルース伝統をアフリカの人々との関連において文脈化する有用なツールであると共に,アメリカ,アフリカ両大陸にまたがる音楽所産の理解に寄与するものでもある。具体的には,西アフリカのガーナ南東部エヴェ族の葬祭礼における歌唱の文脈化とアフリカ系アメリカ人によるブルースとの文化的共鳴,つまり「フィーリングで」表演を行うことが,エヴェ族の伝統的な葬祭礼の歌い手たちの間で広く共有されているかどうかを探るために現地において約一ヶ月の参与調査を行った。事前にエヴェ族の社会や伝統芸術,また西アフリカ全般の伝統的表演芸術についての文献資料を収集・検討した後,ガーナ・ラゴン大学アフリカ音楽舞踊国際センター(ICAMD)のサポートにより,幾つかの演奏集団の表演を調査した。取材した映像資料や音楽資料,またインタヴュー記録などのコピーはICAMDの要請によって同センターのアーカイヴに所蔵され,現地における研究資料としても活用される予定である。参与調査の結果,ブルースとエヴェ族葬祭礼歌唱との間の共鳴にとって,「フィーリング」概念が文化的源泉として捉えられるという結論が得られた。また,より実体的な事例としては,表演グループの統率者の役割が表演全体を通して特徴的であるということが付加され得る。なお,これらの参与調査の報告に関して11月に広島市立大学国際学部にて招待講演を行った。
著者
小田 民美 秋山 蘭 生野 佐織 上田 香織 丸山 夏輝 佐伯 香織 森 昭博 左向 敏紀
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.Suppl, pp.Suppl_30-Suppl_31, 2013-07-03 (Released:2013-09-27)

朝7時から夜7時までと夜7時から朝7時までの12時間、各種ホルモンと糖代謝、脂質代謝に関連する項目の変動を検討した。朝試験は夜試験に比べて、食後1時間のインスリン濃度が有意に低値を示し、遊離脂肪酸 (NEFA) は食後12時間で有意に高値を示した。またGLP-1曲線化下面積 (GLP-1 AUC) は夜試験において有意に高値であった。夜試験の血糖値、インスリン濃度変動から、夜間は犬においてもインスリン抵抗性が若干上昇していて、インスリンによる血糖低下が昼間に比べると低いことが考えられた。
著者
森 瑛子 及川 哲郎 小田口 浩 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.121-126, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
15
被引用文献数
1

女神散は「血の道症」に対して使用される処方であるが,婦人科三大処方と呼ばれる当帰芍薬散,加味逍遙散,桂枝茯苓丸と比較すると使用頻度は低く,多数例における使用経験をまとめた報告は少ない。そこで今回女神散の臨床応用に役立つ使用目標を明らかにするため,当施設で過去5年間に女神散を処方された症例のカルテを後方視的に検討した。その結果,女神散が有効な患者は身体的・精神的ストレスを背景とする気の異常と瘀血を伴う一方,水滞の兆候は認めないことが多かった。これらの所見は,女神散の効果的運用に役立つと考えられた。
著者
小田嶋哲哉 李珍泌 朴泰祐 佐藤三久 塙敏博 児玉祐悦 RaymondNamyst SamuelThibault OlivierAumage
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2013-HPC-138, no.25, pp.1-9, 2013-02-14

GPU クラスタ上でのプログラミングは,様々なプログラミングモデルが直交しており,複雑になってしまうことが多い.本稿では,分散メモリ環境向け高水準並列プログラミング言語である XMP を GPU クラスタ等のアクセラレータを持つ並列計算機向けに拡張した言語仕様 XMP-dev において,GPU と CPU によるハイブリッド協調計算を実現する XMP-dev/StarPU を提案,実装を行った.XMP-dev は,ノード間通信をベースとし,データの分散や GPU へのオフローディングが可能な並列言語である.しかし,CPU を計算リソースとして GPU と並行して用いるには複雑なプログラミングが必要である.これに対し,StarPU をバックエンドのスケジューラとすることで,計算をタスクという単位で GPU や CPU へスケジューリングすることによりワークシェアリングが可能になる.本稿では,実際のアプリケーションに XMP-dev/StarPU を適用することで,GPU のみを計算に利用するときよりも 1.1~1.2 倍ほどの高速化が可能であることを示した.また,指示文ベースのプログラミングモデルである XMP-dev/StarPU は,通常のプログラミングよりもコストが大幅に削減できることも示した.
著者
伊藤 信輔 小田原 修一 山口 勝矢 平野 実
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1719-1725, 1989-12-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
15

The relationship between the direction of rotation and the leg supporting the body in figure-skating was thought to be based on the cristo-spinal reflex. Skaters stand or jump with the leg of the same side as the rotation when turning around a vertical axis. This suggests that the movement of endolymphatic fluid towards the ampulla of the ipsilateral horizontal semicircular canal as the direction of rotation exerts a facilitatory action on the extensor neurons. On the other hand, they land on the ice with the opposite leg after turning in the air. This can be interpreted as a phenomenon similar to postrotatory nystagmus; that is, the ampullopetal flow takes place in the semicircular canal opposite to the rotation after cessation of turning, resulting in activation of this canal.
著者
小田 竜樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.35-39, 2005-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
18

新規物質の探索,設計,物性解析に不可欠とされている第一原理分子動力学であるが,磁性物質への適用に一歩踏み込んだ研究手法,ノンコリニアー磁性の第一原理分子動力学を紹介する.許される磁気構造の範囲が,コリニアー構造からノンコリニアー構造へ拡大されたことで,磁性体への応用が進むであろう.本稿では,ノンコリニアー磁気構造の鉄クラスターと液体酸素のシミュレーンョン結果を通して,計算手法の特徴を述べる.
著者
柳沢 俊史 吉田 二美 伊藤 孝士 奥村 真一郎 小田 寛 池永 敏憲 吉川 真 樋口 有理可
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

これまでの近地球小天体の発見手法とは全く異なる新たな検出手法を開発し、実際に日本及び豪州でのサーベイ観測をとおして近地球小天体を9つ発見した。これにより小型の望遠鏡とFPGAを利用した高速解析による安価で効率的な近地球小天体の発見手法が確立され今後多くの近地球小天体、特にこれまでほとんど発見されてこなかった10m-数100m級の近地球小天体の発見に大きく貢献すると思われる。これにより太陽系進化に関するあらたな知見をもたらすことが期待されるとともに地球衝突天体の早期発見にも役立つはずである。
著者
重信 房子 小田 実
出版者
朝日新聞社
雑誌
朝日ジャ-ナル (ISSN:05712378)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.p89-93, 1987-03-13
著者
小田 幸伸 新見 泰之 小泉 勝彦 坪井 英夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.11-25, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
19

徳島県に所在する地方港湾撫養港の海岸保全施設において,南海トラフを震源とする地震による津波から背後地域を防護するため,既設の海岸保全施設を改良する事業を実施した.当該事業においては,様々な制約条件がある中で,適した既存の地盤改良工法を選定するだけではなく,地盤改良を行う作業船の改造,当時は開発中であった砂圧入式静的締固め工法の採用,及び,背後企業体の施設更新に併せた工事による作業用地の確保といった,主として地盤改良に関するマネジメントが効果を発揮した.本論文においては,厳しい施工条件下での既設護岸の耐震化にあたって,地盤改良工法の選定にかかるマネジメントによって対応した事例について述べる.
著者
貝沼 圭二 小田 恒郎 鈴木 繁男
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
澱粉工業学会誌 (ISSN:04169662)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.51-54, 1968-11-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

光源ランプの光を全域用いて,透光度変化を測定している従来の方法に比較して,フィルターを用い分光した本報の結果は,短波長域を用いることにより,透光度変化をかなり低温から把握することを可能にした。例えば,トウモロコシ澱粉についてみると,アミログラフの立上り温度が70℃ を示したサンプルの場合,本装置を用い,372mμ の波長で測定を行なうと,60℃ 附近から急激に,透光度が減少し,その後増加することを認めた。また同一サンプルを610mμ 或いは970mμ で測定するとこの変曲点は65℃ になっている。 本装置を用いれば,澱粉を加熱した場合におこる変化を,アミログラフィー,その他従来の方法で感知できる温度より更に5~10℃ 低い温度から測定することが可能である。以上を要約すると,(1) フィルターを用いて分光した短波長光線を使用して,従来のいかなる方法でも感知し得なかった低温における澱粉粒の変化を測定した。(2) 微分回路を導入したことにより,フォトペーストグラムの変曲点を明確に知ることを可能にした。(3)加熱中における澱粉粒の部分過熱を防止するため,マントルヒーターによる外部からの加熱方式をとった。
著者
松本 勲 小田 誠 渡邊 剛 田村 昌也
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ナノテクノロジーを応用して作成したキトサンナノ繊維チューブ(C-tube)による胸腔内自律神経再生効果について検討した。ビーグル犬を使用し、交感神経および横隔神経を切断し、神経の断端をそれぞれC-tubeの両端に縫合した。いずれの犬も合併症なく生存した。術後1年でC-tube内で神経が連結しており、神経障害症状が回復する犬もいた。C-tubeは交感神経および横隔神経の形態的再生を促し、神経機能の一部を再生させることを確認した。
著者
北小路 博司 寺崎 豊博 本城 久司 小田原 良誠 浮村 理 小島 宗門 渡辺 泱
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1514-1519, 1995-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
4
被引用文献数
10 10

(背景と目的) 過活動性膀胱に対して鍼治療を行い, その有効性について検討した.(対象と方法) 対象は尿流動態検査にて過活動性膀胱を呈した症例11例 (男性9例, 女性2例) で, 年齢は51歳から82歳 (平均71歳) であった. 主訴は切迫性尿失禁9例, 尿意切迫2例であった. 全例に対して, 鍼治療前後に自覚症状を評価し, さらに尿流動態検査を施行して鍼の効果判定を行った. 鍼治療部位は, 左右の中りょう穴 (BL-3) であり, ディスポーザブルの鍼 (直径0.3mm) を50~60mm刺入し, 10分間手による回旋刺激を行った. 鍼治療の回数は4回から12回 (平均7回) であった.(結果) 自覚症状では, 切迫性尿失禁は9例中5例に著明改善 (尿失禁の消失), 2例に改善 (尿失禁回数および量の減少) を認め, 尿意切迫を主訴とした2例の排尿症状は正常化した. その結果, 自覚症状の改善率は82%であった. また, 治療前の尿流動態検査にて11例全例に認められた無抑制収縮は, 治療後6例で消失し, 治療前後の比較では, 最大膀胱容量と膀胱コンプライアンスに有意な増加が認められ, 尿流動態検査でも改善が認められた.(結論) 以上より, 中りょう穴を用いた鍼治療は, 過活動性膀胱にともなう切迫性尿失禁と尿意切迫に対して有用であった.