著者
菊池 友和 山口 智 荒木 信夫
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.253-256, 2019

<p>日本の慢性頭痛のガイドライン2013では,一次性頭痛の急性期治療および予防に対する鍼治療は有効とされている.コクランレビューでは,片頭痛の予防に対する鍼治療は,予防薬物と比較し効果に差がないが,偽鍼と比較しても効果に差がない.しかし,episodicな片頭痛に限定すると偽鍼と真の鍼に効果の差が認められる.一方,本邦の報告でも,慢性片頭痛よりepisodicな片頭痛の方が効果が高いことが報告されている.鍼の作用機序については,片頭痛患者では,脳イメージングを用いた手法により,予防効果や発作期に対し,鍼刺激を行うことにより,主に脳の疼痛関連領域に影響がある可能性が示されている.</p>
著者
山口 智
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.445-449, 2018 (Released:2019-04-22)
参考文献数
13

Acupuncture and moxibustion therapy are part of traditional oriental medicine, which has a history of more than 2000 years, and can have effects on many diseases and symptoms.Our department was established in 1984, and has been engaged in medical treatment and research/education in our university. We have received requests for acupuncture and moxibustion therapy from many departments, and have demonstrated the great effectiveness of acupuncture and moxibustion therapy in patients with intractable pain, paralysis or a series of unidentified complaints. Acupuncture treatment has also contributed to improvement in the physical and mental QOL of these patients, and it has objectively supported the idea of oriental medicine described in classic textbooks.Our department has also investigated the effects of acupuncture treatment on various organs, and has initiated the scientification of traditional medicine. As a result, it was suggested that acupuncture treatment contributed to alleviation of symptoms not only by mere local reactions but also through the central nervous system. Furthermore, the responses of the body to acupuncture treatment differ between individuals with diseases and symptoms and healthy people, suggesting the possibility of acupuncture treatment being involved in the recovery of the body's homeostasis. We believe that these normalizing effects of acupuncture treatment are characteristics of traditional medicine.Thus, the clinical practice and the research on the effect and mechanisms of acupuncture treatment on neurological disorder such as the primary headaches and stroke have been promoted in cooperation with neurology.From these results, we believe that traditional medicine, acupuncture and moxibustion therapy will be established as a new era of medicine by fusing with modern Western medicine by further developing medical collaboration.
著者
山口 智子 大樌 春菜 小谷 スミ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.101, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】小麦粉の代替品として米粉に注目が集まる中、昨今、米粉パンから製造した米パン粉が開発されている。縁者らはこれまでに、市販されている種々の米パン粉と小麦パン粉について、フライ調理過程における吸油率の比較を行い、米パン粉の吸油率が小麦パン粉に比べて低いことを明らかにしている。本研究では、パン粉の粒度による吸油率や着色度の相違を明らかにすることを目的とした。【方法】試料として、米パン粉(生)、小麦パン粉(生)、市販小麦パン粉(乾燥)2種を用いた。米パン粉(生)と小麦パン粉(生)は、原材料とその配合割合ができるだけ同じになるようにパンを焼成し、常温で72時間経過後にフードプロセッサーで粉砕、粒度2、3、4mmのパン粉を作成した。水分は常圧乾燥法で、吸油率は全国パン粉工業協同連合会2008による簡易測定法で、着色度は色彩色差計で測定した。また、米パン粉と小麦パン粉を用いたハムカツについて、5段階評点法による官能評価を行なった。【結果】米パン粉(生)の吸油率は約30%であり、小麦パン粉(生)より吸油率に低い傾向がみられた。米パン粉(生)では粒度によって吸油率に相違はみられなかったが、小麦パン粉では粒度の小さい方が吸油率が低かった。フライ調理後の着色度については、米パン粉(生)は小麦パン粉より明度L*が低く、赤味a*が強く、黄味b*が弱くなる傾向があった。また、全パン粉において粒度の小さい方が明度L*が高く、黄味b*が強い傾向がみられた。粒度3mmのパン粉を用いたハムカツの官能評価の結果、米パン粉のフライは小麦パン粉のフライに比べて衣の色が濃く、衣がかたく、口当たりがやや悪いものの、味が良く総合評価も高かった。
著者
山口 智子 石田 晴香 小谷 スミ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.50, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】近年、日本人は脂肪の取り過ぎの傾向にあり、揚げ物などの摂取を避ける人が増加している。揚げ物は、衣の適度な焦げと独特の香りが食欲をそそり、旨味成分やビタミン類などの損失が少ない利点があり、健康を考えた揚げ物への関心が高まっている。そこで本研究では、近年開発された米粉パンから製造した米パン粉のフライ調理過程におけると吸油率と物性変化を測定することで健康志向にかなった製品となりうるのかどうかを検討することを目的とした。 【方法】試料は市販の米パン粉(生2種、乾燥2種)と小麦パン粉(生4種、乾燥4種)を用いた。水分は常圧乾燥法(105℃)で、吸油率は全国パン粉工業協同連合会2008による簡易測定法で、テクスチャーは(株)山電製卓上型物性測定器TPU-2S(B)を用いて測定した。また、米パン粉と小麦パン粉を用いたエビフライについて、5段階評点法による官能評価を行なった。 【結果】180℃で2分間の揚げ調理操作をしたパン粉の吸油率は米パン粉29.3~50.9%、小麦パン粉47.3~81.9%となり製品により大きく異なったが、米パン粉の吸油率は小麦パン粉より低いことが明らかとなった。硬さは製品により差が大きく、米パン粉と小麦パン粉の相違は認められなかった。吸油率の低い米パン粉と有意に高い小麦パン粉を選んで揚げたエビフライの官能評価では、総合的に有意差は認められなかった。以上の結果から米パン粉は小麦パン粉より吸油率が低く健康志向にかなった製品と考えられる。
著者
山口 智子 小谷 スミ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】新潟県では米粉の消費拡大による食糧自給率の向上を図っており、米粉パンや麺類、クッキーなど米粉を使った食品が数多く開発されている。これまでに演者らは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いたアレルゲンフリー米粉パンの製造方法を確立している。本研究では、このHPMCの膨化作用を米粉ドーナツの製造に応用し、玄米粉を配合した米粉ドーナツの吸油率、硬さ、おいしさについて検討を行った。<br>【方法】白米粉はH21年度新潟県産コシヒカリDKタイプ(新潟製粉(株))を、玄米粉はH21年度新潟県産コシヒカリ((株)新生バイオにて製粉)を、増粘剤HPMCはSFE-4000(信越化学工業(株))を使用し、白米粉に対して玄米粉0、25、50、75、100%配合したドーナツを製造した。比較対象として小麦粉ドーナツも製造した。ドーナツメーカーで成形後、180℃のサラダ油で4分間揚げ、吸油率の測定と官能評価を行った。さらに、常温保存および冷凍保存したドーナツの硬さを、卓上型物性測定器(TPU-2S(B)、(株)山電)にて測定した。<br>【結果】吸油率は米粉ドーナツで約18%、小麦粉ドーナツで約26%となり、米粉ドーナツの方が有意に吸油率は低かった。玄米粉の配合割合の違いによる有意差は吸油率にはみられなかったが、硬さに関しては、玄米粉の配合割合が50%以上になると有意に硬くなった。官能評価において、外観の色は玄米粉の配合割合が高いほど悪いと評価され、総合的なおいしさでは玄米粉を25%配合した米粉ドーナツが好まれる傾向にあった。米粉ドーナツは常温で保存すると硬化が進むが、冷凍保存することにより硬化が抑制される傾向がみられた。
著者
山口 智子
出版者
The Japan Society of English Language Education
雑誌
全国英語教育学会紀要 (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.83-91, 1999 (Released:2017-05-01)
被引用文献数
1

It is generally thought that it is difficult for Japanese EFL learners to comprehend language information only by auditory input because their priority in learning is written English, and so they depend more on visual language than auditory language. By examining the word translation latency of an English word presented by a computer as auditory stimulus, it was evident that good listeners can answer more rapidly and exactly than poor listeners in conditions of both high frequency words and low frequency words (Yamaguchi 1997). Therefore, the effects of training given to poor listeners for two months were measured in order to examine whether listening comprehension would be improved or not if the speed of word recognition becomes rapid. The results were that their speed became more rapid, and furthermore their listening comprehension also increased. The importance of increasing the speed of word recognition in listening instruction for poor learners was therefore supported.
著者
森田 とわ 山口 智史 小宅 一彰 井上 靖悟 菅澤 昌史 藤本 修平 飯倉 大貴 田辺 茂雄 横山 明正 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0348, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝蓋骨骨折や膝蓋腱断裂,大腿四頭筋断裂などでは,膝伸展筋の機能不全によって歩行時に膝折れを呈し,膝伸展位保持が困難になる.この膝折れを防止するために,膝伸展位保持装具(以下,膝装具)が使用されることがある.支持性の良い膝装具は膝伸展筋力を代償するだけでなく,他の関節周囲筋の筋活動を変化させる可能性がある.しかしながら,膝装具使用時の歩行時筋活動量について言及された報告はない.本研究では,膝装具が歩行時の下肢筋活動量へ及ぼす影響を検討した.【方法】 対象は健常成人9名(年齢:24.4±2.8歳,身長:1.73±0.04m,体重61.2±6.3kg)とした.課題は20m/minに設定したトレッドミル上での膝装具装着および非装着の2条件の歩行とした。膝装具は,両側支柱付きのニーブレース(アルケア株式会社)を使用し,十分な練習後に装着非装着での歩行,装具装着での歩行の順番で課題を行った. 表面筋電図の測定には,筋電図記録用システム(Delsys社)を使用した.記録筋は,両側下肢の大殿筋(GM),内側ハムストリングス(MH),大腿直筋(RF),ヒラメ筋(SOL),前脛骨筋(TA)とした.電極は,筋腹上に能動筋電を貼付し,サンプリング周波数は1kHzで記録した.また,両側の母趾球部と踵部にフットスイッチを貼付し,歩行周期の特定および時間距離因子(重複歩幅,歩行率,立脚期割合)の算出をした.得られた筋電図波形は、全波整流後30歩行周期分を加算平均して平滑化した後,フットスイッチの情報から,立脚相と遊脚相に分け,それぞれの積分値(μVs)を算出した.また歩行時の重心動揺を計測するため,小型加速度計(ワイヤレステクノロジー社)を使用した.加速度計は,第三腰椎棘突起部に伸縮ベルトで固定し,サンプリング周波数60Hzで記録した.加速度データは,10歩行周期分のデータを加算平均し平滑化した後,時間で2回積分し変位を算出した.その変位から1歩行周期における左右移動幅を算出した.統計解析は,装具の有無による各筋活動量と時間距離因子,重心動揺の違いを検討するため,対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属機関の倫理審査会により認可され,事前に全ての対象者に研究内容を説明し,同意を得た.【結果】 装具着用により,装着下肢の立脚相においてGM,MH,RF,TAの筋活動量が有意に減少した.装具着用側の立脚相における各筋の平均積分値は(装具あり条件、装具なし条件)で,GM(6.33μVs,7.98μVs),MH(4.22μVs,5.39μVs),RF(1.43μVs,1.80μVs),TA(2.71μVs,3.53μVs)であった.一方,SOLについては,装具あり条件7.79μVs,装具なし条件7.88μVsで統計的有意な差を認めなかった(p=0.783).遊脚相においては,いずれの筋でも筋活動量に有意な差を認めなかった.また,装具非装着側の立脚相および遊脚相においては,いずれの筋でも装具着用の有無による有意な筋活動量の差を認めなかった.時間距離因子については,装具着用の有無による有意な差を認めなかった.重心の左右移動幅は,裸足歩行17.7cm,装具歩行23.8cmで装具装着により有意に増加した.【考察】 膝装具は,膝伸展筋以外の筋活動量も減少させることが示された.GM,MH,RFの筋活動量の減少は,膝装具によって体重支持に必要な筋活動が代償されたためだと考えられる.重心の左右移動幅が増大したが,これは膝関節を伸展位に保持したことにより,下肢を振り出すために生じた体幹側屈や分回し歩行などの代償動作が影響していると推察される.分回し歩行では,初期接地において通常より底屈位での接地になり,このことが,荷重応答期におけるTAの筋活動量が減少につながった可能性がある.また,立脚相のSOLにおいては,有意な変化を認めなかったことから,SOLの役割である下腿が前方へ倒れていく速度の制御に必要な筋活動は,膝装具によって影響をうけないと考えられた.しかしながら,本研究においては各関節の関節運動に言及することはできないため,今後,三次元動作解析装置などを用い検討する必要があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 膝装具を使用することにより,膝関節周囲筋だけでなく股関節や足関節の筋活動量も減少することが示唆された.膝装具を適用する際には,他の下肢筋の負荷をも軽減できる一方で,筋力低下の誘引にもなると考えられ,十分な配慮が必要である.

1 0 0 0 OA がんと鍼灸3

著者
小川 卓良 金井 正博 黒川 胤臣 福田 文彦 真柄 俊一 山口 智 小内 愛 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.693-706, 2010 (Released:2011-01-20)
参考文献数
19

今回が3回目の 「がんと鍼灸」 のパネルディスカッションである。 西洋医学のがん或いはがん患者に対しての攻撃的で深刻な副作用を伴い、 かつ免疫能を減退させる医療が適切か否か多くの医師・識者より疑問視されている現状がある。 それに対し副作用が無く、 QOLを高め、 免疫能を賦活する鍼灸治療はがん患者の予防から緩和ケア・再発防止までのあらゆる場において有用性は高いとの期待があり、 その成果は蓄積されつつある。 第1回で緩和ケアでの有用性を、 第2回では内外の文献調査結果を報告した明治国際医療大学の福田氏は今回がん化学療法による末梢神経障害に対し鍼治療の安全性と有効性について報告した。 防衛医科大学校の黒川氏は大学病院での補完療法としてがん患者の身体・精神症状の改善、 QOLの改善、 副作用の軽減、 術前・術後の障害対策等に鍼治療を行いその有効性について述べた。 埼玉医科大学の小内氏は、 大学病院での併療治療としての鍼治療の有効性と有効性の背景因子に言及された。 森ノ宮医療大学の中村氏は非摘出のがん患者の化学療法の副作用に対し長期に灸治療を行い、 その有効性について報告した。 以上は、 化学療法と放射線療法を併用した状態での鍼灸治療の有効性、 特に副作用の軽減とQOLの改善に鍼灸治療は有効であるという報告であったが、 第1回より一貫して主に術後の再発予防を目的とした西洋医学的治療を一切含まない鍼治療を含む自律神経免疫療法で報告された素問八王子クリニックの真柄氏は、 免疫に関わる種々のサイトカインの増加等による免疫力の改善や、 時に非摘出の進行癌でさえ縮小が可能であること、 今回は特に自身の臨床例における再発率を現代医学のそれと比較して数段再発率が低いことを報告し、 癌の再発予防に自然治癒力に関する研究に、 今迄以上の関心を持つべきであると強調した。 今回は更に今迄以上がんの鍼灸治療の大規模研究が望まれた結果になった。

1 0 0 0 OA がんと鍼灸2

著者
小川 卓良 金井 正博 福田 文彦 山口 智 真柄 俊一 津嘉山 洋 幸崎 裕次郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.587-599, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
26

第53回大会において初めて『癌と鍼灸』をテーマにしたシンポジウムが本学会において開催され、がん (及びがん患者) に対する鍼灸の有用性や可能性が示唆され、本セミナーはその続編である。近年本邦及び世界中でがんの鍼灸治療の関心は高まりその有用性や適応などについて多数報告されているが、エビデンスのある適応範囲は限られており、治癒並びに予防、再発予防などの分野ではまだまだ信頼性に乏しい報告しかなく、症例集積を積み上げていく必要がある。病院内で医療との併療では鍼灸は症状緩和や延命に有用性があり、なるべく早期に頻回治療を行う方が有効性は高く、リンパ球数は鍼治療継続中には上昇するが、治療終了後には元に戻る傾向という報告があった。自律神経免疫療法を行った報告では、長期的に見ると治療継続によりリンパ球数には変化はないものの、リンパ球機能が活性化されIL12, IFNγ, TNFα等のサイトカイン産生能力が高まると同時に、Th1、Th1/Th2値が上昇し、免疫機能が賦活され、かつ腫瘍マーカーも正常になるか正常に近づき、未手術例においてもがんの縮小 (中には消失) や再発が防止され、症状が緩和しQOLも改善して延命になるとのことであった。本セミナーでは前回以上にがん (及びがん患者) に対する鍼灸治療の有用性や治療の可能性が示唆され、益々この方面での研究が必要との認識が高まった。

1 0 0 0 OA 癌と鍼灸

著者
小川 卓良 金井 正博 永田 勝太郎 福田 文彦 真柄 俊一 山口 智 大串 重吉 齋藤 晴香 鈴木 昌子 半田 由美子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.672-685, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)

近年、癌治療における西洋医学の発展は喧伝されるが、癌死は増加の一途で成果は実際にはあまり現れてない。鍼灸においては癌は不適応とされてきたが、緩和ケアやQOLの改善などに有効、そして癌の消滅症例も報告されるようになってきた。このため本テーマについて検討することが求められシンポジウムが企画された。指定発言者からは、癌の治療に一喜一憂し、とまどう鍼灸師の心うちや、ともに肺癌で亡くなったご両親の治療体験報告、西洋医学で不治か治療拒否した患者を鍼灸治療で回復させた症例報告などがあった。病院内で鍼灸治療を行うシンポジストの報告では、終末期癌患者に対し現代医学的治療と併用しての鍼灸治療の有効性やその適応についての報告、有効率と治療期間・回数との相関や、進行度や罹病期間と有効性には相関が無く、末期でも鍼治療を施行する環境が整っていれば十分効果が期待できるとの報告があった。また、鍼治療が自律神経機能に及ぼす影響として、副交感神経機能の方進が若干あることも報告された。安保理論に基づいた鍼治療を実践しているシンポジストは、安保氏の主張より劣るがQOLの改善、延命に有効であること、特に末期スキルス胃癌患者が長期延命している実態と、癌三大療法のうち、放射線治療が一番患者の抵抗力をそぐ治療であることを報告した。健康創成論を唱えるシンポジストは、鍼治療により疼痛緩和や生体の修復力の増強が有意に高いことなどから、鍼が癌に対して直接的効果を有している可能性があることを実証した。病因追求論の限界と健康創生論の重要性を述べ、鍼灸治療のみならず補剤を用いるとともに、患者の心のあり方へのアプローチの必要性を述べた。本シンポジウムでは、鍼灸治療の緩和ケアの有効性が示唆され、現時点では確実なエビデンスはないものの、癌に対する治療の一環としての鍼灸治療の有効性が示唆されたといえよう。今後、癌に対する鍼灸治療の本格的な研究が望まれたシンポジウムであった。
著者
鈴木 秀典 山口 智 宗岡 寛子 佐々木 達也 田中 良明 中澤 昌彦 陣川 雅樹 図子 光太郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>フォワーダの積載性能が長尺材の集材生産性に与える影響を明らかにするため、大型(最大積載量6,000kg)と中型(同4,800kg)のフォワーダを対象として、材長ごとの生産性を調査した。長尺材として6mと8m材を集材し、比較のために4m材も集材した。集材作業は、13tクラスのグラップルによるフォワーダへの積込み、実走行、グラップルによる荷おろし、空走行の各要素作業に区分した。先山と土場の各グラップル操作も含め、1人作業として生産性を比較した。その結果、大・中型機とも4m材を生産したときに最も生産性が高く、6m、8mと材が長くなるにつれ低下した。しかし、大型機では8m材の生産性が4m材の約7割だったのに対し、中型機では約6割と積載性能によって低下率が異なった。各作業における材長の影響は積込み作業で大きく、長尺材になるほど時間がかかる傾向がみられたが、走行や荷おろし作業への影響はそれほど大きくなかった。長尺材の生産性は大型機の方が高く、また、長尺材になったときの生産性低下率も大型機の方が小さいため、長尺材の集材には大型機の方が適しているといえる。</p>
著者
山口 智也 足立 憲保 加賀 智之 大桑 芳宏
雑誌
組込みシステムシンポジウム2012論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.188-196, 2012-10-10

近年、自動車制御システムに対する要求は益々高くなってきており、それを実現する制御ソフトウェアの大規模・複雑化が避けられない状況である。一方で、制御ソフトウェアの開発期間の短縮が望まれており、高い品質を維持しつつ、これに対応する為には、開発プロセスの効率化が必須である。筆者らはソフトウェア要求の検証にモデル検査を導入し、網羅的な検査を実施することで、開発プロセスを効率化することを目指している。本稿では、自動車制御ソフトウェア開発プロセスへのモデル検査の適用に向けて、検証ツール開発の取り組み、モデル検査の自動車制御ソフトウェアへの適用事例とツールによるモデル検査の実施時間の低減効果について述べる。
著者
野呂 志津子 山口 智子 佐藤 奈津美 猪股 里美 成田 全 松江 聖乃 川崎 くみ子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.59-63, 2013-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究は,ボックスシーツのずれやしわの発生状況を従来のシーツ (以下,基準シーツ) と比較検証することにより,ボックスシーツのほうがしわやずれが少なく使用していくことができるかを明らかにすることを目的とした.健康成人女性22名 (平均年齢24.0±3.0歳) を対象に,ずれ測定部位に印をつけたボックスシーツと基準シーツを用い,60分臥床と30分ヘッドアップを行い,おのおのずれとしわを測定した.結果,両シーツともベッドに対し横方向にくらべ,縦方向のずれが大きく,シーツ中央のしわは他のエリアよりも有意に多かった (p <0.05).ヘッドアップ時はシーツ下方より上方のしわが有意に多く (p <0.05),上方より下方のずれが有意に多かった (p <0.05).臥床時のしわはシーツ中央と下方でボックスシーツが有意に少なかった (p <0.05).以上より,頭側が袋状になりベッドメーキング時足元を適度な力で牽引できるボックスシーツは基準シーツにくらべ,外観上しわが少なく,ずれは同様であり,患者が療養生活を行ううえでボックスシーツも活用できると確認できた.
著者
小川 卓良 金井 正博 福田 文彦 山口 智 真柄 俊一 津嘉山 洋 幸崎 裕次郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.587-599, 2007-11-01
参考文献数
26
被引用文献数
1

第53回大会において初めて『癌と鍼灸』をテーマにしたシンポジウムが本学会において開催され、がん (及びがん患者) に対する鍼灸の有用性や可能性が示唆され、本セミナーはその続編である。近年本邦及び世界中でがんの鍼灸治療の関心は高まりその有用性や適応などについて多数報告されているが、エビデンスのある適応範囲は限られており、治癒並びに予防、再発予防などの分野ではまだまだ信頼性に乏しい報告しかなく、症例集積を積み上げていく必要がある。病院内で医療との併療では鍼灸は症状緩和や延命に有用性があり、なるべく早期に頻回治療を行う方が有効性は高く、リンパ球数は鍼治療継続中には上昇するが、治療終了後には元に戻る傾向という報告があった。自律神経免疫療法を行った報告では、長期的に見ると治療継続によりリンパ球数には変化はないものの、リンパ球機能が活性化されIL12, IFN&gamma;, TNF&alpha;等のサイトカイン産生能力が高まると同時に、Th1、Th1/Th2値が上昇し、免疫機能が賦活され、かつ腫瘍マーカーも正常になるか正常に近づき、未手術例においてもがんの縮小 (中には消失) や再発が防止され、症状が緩和しQOLも改善して延命になるとのことであった。本セミナーでは前回以上にがん (及びがん患者) に対する鍼灸治療の有用性や治療の可能性が示唆され、益々この方面での研究が必要との認識が高まった。
著者
山口 智子 田村 麻美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】いもジェンヌは、新潟市西区で栽培されているさつまいもで、品種は甘みが強くしっとりした食感が特徴の「べにはるか」である。2012年から新潟の砂丘地域における耕作放棄地解消のために栽培が導入され、ブランド化を目指した取り組みが行われている。ペーストを使った菓子の商品化や給食での利用も進んでいる。本研究では、さらなる普及を図るために、いもジェンヌの特性を明らかにし、家庭でおいしく食するための調理法を検討することを目的とした。<br><br>【方法】試料として、JA新潟みらいで栽培された平成29年産いもジェンヌ、市販品のべにはるか(新潟県産)、紅まさり(茨城県産)、紅あずま(茨城県産)、鳴門金時(徳島県産)、シルクスイート(茨城県産)、安納芋(新潟県産)を使用した。Brix糖度、還元糖量、β-アミラーゼ活性、抗酸化性の評価としてDPPHラジカル捕捉活性と総ポリフェノール量を測定した。加熱調理には、オーブン、電子レンジ、炊飯器を用い、加熱時間の異なるいもジェンヌの官能評価を行った。<br><br>【結果】生芋の糖度、還元糖量、β-アミラーゼ活性を測定した結果、いもジェンヌの糖度は、べにはるかに次いで高く、紅まさり、鳴門金時、シルクスイートよりも有意に高かった。還元糖量は安納芋に次いで高く、その他の品種より有意に高かった。β-アミラーゼ活性では、べにはるか、紅まさり、鳴門金時、シルクスイートよりも有意に高い値を示した。DPPHラジカル捕捉活性と総ポリフェノール量は、べにはるか及び他品種に比べてやや低い傾向にあった。3種類の加熱調理法の中で、いもジェンヌの甘さとしっとり感を最も引き出す調理法はオーブン加熱であり、抗酸化性も高かった。