著者
池上 幸江 山田 和彦 池本 真二 倉田 澄子 清水 俊雄 藤澤 由美子 由田 克士 和田 政裕 坂本 元子
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.285-302, 2008-12-10
被引用文献数
3 7

食品成分表示・栄養教育検討委員会ではこれまで栄養成分表示に関する調査を行い,報告書として発表し,また栄養成分表示や健康強調表示に関するシンポジウムなどを開催してきた。前期の委員会では栄養成分表示と健康強調表示に関する意識調査を多様な対象者について行った。今期はこの調査結果を以前の調査と比較しながら,報告書としてまとめることとした。また,今後は新たな調査も加えて,栄養教育の観点から栄養成分表示や健康強調表示のあり方について,一定の見解をまとめた。本調査では,栄養成分表示,健康強調表示については,特定保健用食品や栄養機能食品,「いわゆる健康食品」について,認知,利用,情報源などについて調査した。その結果,<br>(1) 栄養成分表示は広く見られており,健康維持や増進のために利用されている。しかし,現状の表示は分かりにくく,また対象食品が限られていることから,消費者は改善を望んでいる。これらの結果は前回調査と同様であった。<br>(2) 特定保健用食品の認知度はきわめて高く,利用もされていた。とくに若い世代,学生での認知や利用が高いが,高齢者や生活雑誌読者での利用は低かった。他方,関心のある保健の用途は「体に脂肪が付きにくい」や「お腹の調子を整える」,「腸内環境を整える」などであった。しかし,保健の用途の関心と成分の関連には十分な認識がなく,消費者への情報提供が十分ではないと思われた。<br>(3) 栄養機能食品に対する認知や利用は特定保健用食品に比べると低かったが,世代間の傾向は(2)の特定保健用食品と同様であった。<br>(4)「いわゆる健康食品」の利用については特定保健用食品の利用とは異なる傾向を示した。すなわち年齢階層による差異が少なく,高齢者による利用も高く,特定保健用食品とは異なっていた。<br> 「いわゆる健康食品」に関する情報源はテレビや知人・友人からのものが多く,科学的な根拠の入手が困難な状況にあることを反映している。今後「いわゆる健康食品」の有用性や安全性の確保についてどのような制度を作るかが課題と思われる。
著者
高澤 秀人 末永 陽一 宮下 岳士 平田 耕志郎 若林 海人 高橋 裕介 永田 靖典 山田 和彦 TAKASAWA Hideto SUENAGA Yoichi MIYASHITA Takashi HIRATA Koshiro WAKABAYASHI Kaito TAKAHASHI Yusuke NAGATA Yasunori YAMADA Kazuhiko
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 大気球研究報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:24332216)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-22-008, pp.37-50, 2023-02-17

深宇宙探査を対象とした新しいサンプルリターンミッションに向けて薄殻エアロシェル型カプセルが提案されている.本カプセルのコンセプトにおける一番の特徴は,軽量・大面積エアロシェルを用いることで空力加熱を避けることである.本カプセルはパラシュートレスでの帰還が想定されていることから全速度域で空力的に安定に飛行することが求められている.実機は,直径0.8m,総質量10kg, 機軸周りの慣性モーメント0.58kg m2, 機軸垂直周りの慣性モーメント0.32kg m2のカプセルを想定している.薄殻エアロシェル型カプセルの低速域における動的不安定性を評価するために,2022年7月1日にゴム気球を用いた自由飛行実験RERA(Rubber balloon Experiment for Reentry capsule with thin Aeroshell) を実施した.気球実験機として,直径0.8m,総質量1.56kg,機軸周りの慣性モーメント0.033kg m2, 機軸垂直周りの慣性モーメント0.020kg m2のカプセルを使用した.カプセルは高度25kmにおいてゴム気球から切り離され,自由飛行を開始し,海上着水した.実験中のオンボードセンサーによる計測データとカメラによる撮影画像は地上局へ送信された.自由飛行においてカプセルは姿勢振動していたもののピッチ方向に縦回転することはなかった.自由飛行時のカプセル周りの流れ場はマッハ数0.15以下,レイノルズ数10(exp 5) オーダーであった.このことから再突入時と同オーダーのレイノルズ数環境下で試験を実施できた.実験機は低速域においてピッチ・ヨー方向の振動運動が発散しないことが示唆された.
著者
山田 和彦 田中 弘之 石見 佳子 梅垣 敬三 井出 留美
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.91-99, 2017
被引用文献数
2

<p>食品の機能性に関する表示は, 消費者が食品を選択する際の一つの有効な手段となる。保健機能食品は, 食品表示法に基づく食品表示基準に規定されており, 特定保健用食品, 機能性表示食品および栄養機能食品からなる。特定保健用食品は, 健康増進法においても規定されており, 特定の保健の用途に適する旨を表示するもので, 販売に当たり国の許可が必要である。機能性表示食品は, 2015年に新しく創設された制度であり, 事業者の責任において体の構造と機能に関する機能性表示をすることができる。販売前に機能性と安全性に関する科学的根拠資料を国に届出る。栄養機能食品は, 規格基準型の食品で, 国の許可を受けることなく栄養素の機能表示をすることができる。2015年の特定保健用食品の市場規模は約6,400億円, 栄養機能食品といわゆる健康食品を合わせて1兆5千億円と試算されている。これらの食品の機能性に関する表示は消費者に正しく理解される必要があり, 普及・啓発が重要である。これにより, 人びとの健康の維持・増進が期待される。</p>
著者
谷中 かおる 東泉 裕子 松本 輝樹 竹林 純 卓 興鋼 山田 和彦 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.234-241, 2010-06-01
参考文献数
13
被引用文献数
2

大豆中のイソフラボンは構造的にエストロゲンと類似しており,弱いエストロゲン様作用を発揮する.2006年に,内閣府食品安全員会は特定保健用食品から摂取する大豆イソフラボンの上限量を,通常の食事に上乗せして30mg/日と設定した.しかしながら,大豆イソフラボンや大豆たんぱく質が含まれている,いわゆる健康食品には イソフラボンの許容上限量が設定されなかった.そこで我々は,大豆が原料となっている加工食品,特定保健用食品を5品目含む健康食品10品目について,大豆たんぱく質と大豆イソフラボン含有量をそれぞれ酵素免疫測定法(ELISA)と高速液体クロマトグラフ(HPLC)法で測定した。8品目における大豆たんぱく質量は表示の90-118%が確認され,ジュニア選手用のプロテインパウダー2品目においては表示の約半分量が定量された.大豆たんぱく質を含む特定保健用食品中には表示の90-122%の大豆イソフラボンが検出された。一方,表示のない大豆たんぱく質強化食品2品目には一回摂取目安量当たり30mgを超える大豆イソフラボンが検出された。このような食品をジュニア選手が過剰に摂取しないよう注意する必要があると考えられた。<br>(オンラインのみ掲載)
著者
永田 靖典 山田 和彦 鈴木 宏二郎 今村 宰
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-8, 2019 (Released:2019-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The satellite communication system without ground antennas is highly beneficial to ease construction and maintenance of the ground station. To realize it, the Iridium communication service which is consisted of 66 satellites on the LEO (Low-Earth Orbit) is focused. The telemeter and command data are transmitted and received through the Internet, Iridium ground station, and Iridium satellites. Then, only a PC connecting to the Internet is required for the present telecommunication system. To demonstrate this concept, the EGG (re-Entry satellite with Gossamer aeroshell and GPS/iridium) nanosatellite mission was conducted in 2017, which is the first satellite operated via only the Iridium SBD (Short Burst Data) communication. In this paper, the communication performance of the Iridium communication applied to LEO satellite is investigated and the EGG mission result is described. Trajectory-based simulation shows that the present system will function well even under the Doppler shift criteria, though the available time rate will be degraded. Actually, it worked successfully on the EGG mission regardless of the satellite location. Moreover, the telemeter data was acquired in semi-real time manner on the atmospheric-entry phase, which is very difficult for the ordinary ground antenna system. This should be the important feature of the present system.
著者
福田 泰久 荒谷 貴洋 小柳 潤 山田 和彦
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<p>The reentry capsule is one of the key technologies to support the sample return mission from deep space. The optimization of heat shield design is essential to meet to the weight limit of a reentry capsule, and one of approach to reduce its weight includes an exact predction of the aerodynamic heating environment at the rear heat shield. As an observation of the rear heat shield of "Hayabusa" reentry capsule, overlapped part of single side aluminized polyimide tape remained after the capsule returned to the earth. This fact shows that the actual heat flux during reentry on the rear was much lower than the assumption for heat shield design. In this paper, the heat flux on the rear was identified by the heating tests of the polyimide tape on the ablators using ICP heater. The result indicates that the heat flux on the rear heat shield is less than 20% of the assumption in the design of "Hayabusa" capsule. Furthermore, one dimensional thermal conduction analysis on the similar structure of the rear heat shield was carried out on the basis of its experimental estimation. The results of this analysis show the possibility that the thickness of ablator material for the rear heat shield may be reduced to half at the maximum.</p>
著者
吉原 圭介 山田 哲哉 山田 和彦 下田 孝幸 Yoshihara Keisuke Yamada Tetsuya Yamada Kazuhiko Shimoda Takayuki
出版者
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所(JAXA)(ISAS)
雑誌
第15回宇宙科学シンポジウム 講演集 = Proceedings of the 15th Space Science Symposium
巻号頁・発行日
2015-01

第15回宇宙科学シンポジウム (2015年1月6日-7日. 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所(JAXA)(ISAS)相模原キャンパス), 相模原市, 神奈川県
著者
井筒 直樹 福家 英之 山田 和彦 飯嶋 一征 松坂 幸彦 鳥海 道彦 野中 直樹 秋田 大輔 河田 二朗 水田 栄一 並木 道義 瀬尾 基治 太田 茂雄 斎藤 芳隆 吉田 哲也 山上 隆正 中田 孝 松嶋 清穂
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-22, 2008-02

科学観測用に使用されているゼロプレッシャー気球には,昼夜のガス温度差により夜間に浮遊高度が低下するという根本的な問題がある.これに対して,排気口がなく体積変化がほとんどないスーパープレッシャー気球は,バラストの必要がないため浮遊時間を大きく延ばすことが可能となる.しかし,皮膜に要求される強度が大きいため,小型の球形スーパープレッシャー気球を除いては実用化ができていなかった.我々は,この問題を解決することができるLobed-pumpkin 型気球を考案し,試験開発を行ってきた.多くの地上膨張試験,実際の飛翔環境における加圧破壊試験を繰り返した結果,設計上および製造上に多様な問題があることがわかり,順次これらの解決を図った.その結果,要求される性能を有するスーパープレッシャー気球の設計および製造方法が確立された.
著者
井筒 直樹 福家 英之 山田 和彦 飯嶋 一征 松坂 幸彦 鳥海 道彦 野中 直樹 秋田 大輔 河田 二朗 水田 栄一 Izutsu Naoki Fuke Hideyuki Yamada Kazuhiko Iijima Issei Matsuzaka Yukihiko Toriumi Michihiko Nonaka Naoki Akita Daisuke Kawada Jiro Mizuta Eiichi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 大気球研究報告 = JAXA Research and Development Report: Research Reports on High Altitude Balloons (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-07-009, pp.1-22, 2008-02-29

科学観測用に使用されているゼロプレッシャー気球には、昼夜のガス温度差により夜間に浮遊高度が低下するという根本的な問題がある。これに対して、排気口がなく体積変化がほとんどないスーパープレッシャー気球は、バラストの必要がないため浮遊時間を大きく延ばすことが可能となる。しかし、皮膜に要求される強度が大きいため、小型の球形スーパープレッシャー気球を除いては実用化ができていなかった。我々は、この問題を解決することができるLobed-pumpkin型気球を考案し、試験開発を行ってきた。多くの地上膨張試験、実際の飛翔環境における加圧破壊試験を繰り返した結果、設計上および製造上に多様な問題があることがわかり、順次これらの解決を図った。その結果、要求される性能を有するスーパープレッシャー気球の設計および製造方法が確立された。
著者
尾形 隆 今井 大 市毛 明彦 山川 光徳 山田 和彦 大類 広 柘植 通 新野 恵司 鈴木 明彦 角田 卓哉 湯田 文朗
出版者
日本リンパ網内系学会
雑誌
日本網内系学会会誌 (ISSN:03869725)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.319-331, 1995

The expression of adhesion molecules on human tonsillar follicular dendritic cells (FDCs) <i>in vivo</i> on cryostat sections and <i>in vitro</i> on isolated FDCs on cytospin preparations was studied. Isolation of FDCs was performed using a magnetic cell sorter (MACS). Immunochemically, FDCs were positive for Mac-1 (CD11b), sialyl-Le<sup>x</sup> (CD15s), CD22, integrin &beta;1 (CD29), CD40, VLA-&alpha;3 (CD49c), VLA-&alpha;5 (CD49e), VLA-&alpha;6 (CD49f), ICAM-3 (CD50), ICAM-1 (CD54), B7 (CD80), and VCAM-1 (CD106). These adhesion molecules, except ICAM-3 (CD50) which was weakly positive only in the light zone (LZ), were positive with a lacy pattern in all zones of secondary lymphoid follicle, especially strong in the LZ. ICAM-3 (CD50) was positive on more than half of isolated FDCs, but other molecules were positive on almost all isolated FDCs. Concerning the ligands on B cells for these adhesion molecules, the Mac-1 (CD11b)-ICAM-1 (CD54), the ICAM-3 (CD50)-LFA-1 (CD11a/18), and the VCAM-1 (CD106)-VLA-4 (CD29/49d) interactions in the LZ, the sialy-Le<sup>x</sup> (CD15s)-L-selectin (CD62L) and the VCAM-1 (CD106)-VLA-4 (CD29/49d) interactions in the mantle zone, and the ICAM-1 (CD54)-LFA-1 (CD11a/18) interaction in the entire lymphoid follicle may participate in FDC-B cell adhesion. Furthermore, above mentioned immunohistochemical evidence that FDCs were positive for fibronectin-receptor (CD29/CD49e) and laminin-receptor (CD29/CD49f), was confirmed with a frozen-section binding assay, using isolated FDCs and cryostat sections of tonsils. The numbers of FDCs binding to germinal centers (GCs) were reduced remarkably by pretreatment with monoclonal antibodies for CD29 (32.8&plusmn;4.1% of the control), CD49e (29.7&plusmn;2.5%), and CD49f (18.8&plusmn;0.8%). These data clearly indicated that FDCs bind to the reticulin or laminin fiber in GCs via either receptor.
著者
山田 和彦 鈴木 宏二郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.227-235, 2017

<p>近年,柔軟な展開構造物を大気圏突入機のエアロシェルとして利用する技術が注目を集めており,世界各国で盛んに研究開発が行われている.ロシアでは火星突入プローブとして,欧州ではISSからの帰還システムとして,米国では火星表面への大量輸送システムへの応用を想定した開発が行われているなど,多くのプロジェクトが進められている.一方,国内では,小型の惑星プローブや地球帰還システムへの応用を想定し,欧米とは一線を画した独自の展開型柔軟エアロシェル技術を成熟させてきた.展開型柔軟エアロシェルのメリットは,軽量かつ大型のエアロシェルを大気圏突入機に取り付け,機体の弾道係数を下げることで,空気力を効率よく利用し,低密度環境でも減速が可能になることである.そのため,大気圏突入機の最大の技術課題である空力加熱を低減することができ,同時に,終端速度も下げることができるため,軟着陸用のパラシュートを兼ねたシステムを実現できる.本稿では,国内における大気圏突入用の展開型柔軟エアロシェルの開発の経緯,および,その展開構造物としての技術的課題に対する取り組みについて報告する.</p>
著者
米田 雅裕 泉 利雄 鈴木 奈央 内藤 徹 山田 和彦 岡田 一三 岩元 知之 桝尾 陽介 小島 寛 阿南 壽 廣藤 卓雄
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.168-175, 2009-04-30
参考文献数
24
被引用文献数
2

歯科医療では観血処置の頻度が高く,注射針や鋭利な器具の使用により針刺し・切創の危険もある.血液媒介感染の危険のある針刺し・切創等を効果的に防止するためには,施設における現状把握とその対策の評価を行う必要がある.今回,福岡歯科大学医科歯科総合病院の感染制御チーム(ICT)が中心となって,本院の針刺し・切創等の事故状況を分析し,さらに改善策を検討してその効果を確認した.平成14年から平成19年に本院で提出された感染事故報告書を基に集計を行った.6年間で計80件の針刺し・切創が報告され,月別では11月,曜日別では火曜日,時間帯では午前11時台に多く発生していることが明らかになった.事故に関連した器材では注射針が最も多く,縫合針,スケーラーチップ・バー類がこれに続いた.受傷者の職種別割合では医師・歯科医師が最も多く,臨床実習に参加している短期大学学生,歯学部学生がこれに続いた.事故時の作業内容では片づけ中が最も多かったが,これは実習生が片づけに参加していることも原因の一つだと考えられる.これらの現状を踏まえ,本学では医療安全に関するマニュアルの整備を行い,針刺し・切創防止のための講義や講演会を実施している.さらに平成17年からは注射針の取り扱いを職員に限定し,実習生の注射針の取り扱いを禁止した.その結果,平成18年から平成19年にかけて針刺し・切創が減少し,特に短期大学学生による事故が減少した.一方,事故が発生しても未報告のケースもあると考えられるので,今後は,事故が発生したときには迅速な報告を促す必要があると思われる.また,ヒューマンエラーはゼロにできないことから安全装置の開発や導入も必要であると考えられる.
著者
奥恒行 山田和彦編集
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
2014