著者
木村 光孝 西田 郁子 牧 憲司 高橋 宙丈 渡辺 博文 野沢 典央 堤 隆夫 岡 裕美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.291-298, 1991-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本研究は食物の硬軟による咀嚼機能の変化が下顎骨にどのような変化を及ぼすかを明かにした.3週齢のWistar系雄ラットにそれぞれ固型飼料群,練飼料群-I,練飼料群-IIおよび粉末飼料群の飼料を与え,飼育6週間後に下顎骨に及ぼす影響を検索し,次のような結果を得た.1.飼料の平均圧縮強さは固型飼料群で94.32kg/cm2,練飼料群-I 45.23kg/cm2,練飼料群-II 14.20kg/cm2,粉末飼料群0であった.2.写真濃度所見は,固型飼料群が最も濃度が高く練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に歯槽骨骨濃度は減少した.3.下顎骨計測所見は,固型飼料群と練飼料群-Iおよび練飼料群-IIの下顎骨長および下顎枝高はほぼ同程度の値を示したが,粉末飼料群の値は減少した.4.X線マイクロアナライザーによる分析所見では,歯槽骨のCa,Pの点分析による定量分析を対照群と比較した相対Ca量比(Ca/[Ca]c)およびP量比(P/[P]c)を求めた結果,固型飼料群および練飼料群-Iはほぼ同程度の値を示し,練飼料群-IIおよび粉末飼料群に比べ高い値を示した.5.下顎骨破砕強度は固型飼料群が最も強く,練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に低値を示した.以上のことから食物の硬軟の変化によって歯槽骨の内部構造に影響を及ぼすことが明らかになった.
著者
片岡 裕美 村松 泰余 福井 貞夫 峯 孝則 西川 淳一 扇間 昌規
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.49-53, 2012-04-23 (Released:2017-01-27)
参考文献数
6

The water level of PET bottle mineral waters sold on hot summer days seem to vary. This led us to simulate the high temperature condition (37℃) and examine the change in the quantity and quality of natural mineral water in unopened PET bottles. The results showed that approximately 1 g of water was lost per week when the bottle was kept unopened at 37℃. There was also a change in quality, due to precipitation of calcium carbonate, decline of hardness, and decrease of pH.
著者
福岡 裕美子 駒井 裕子 林 成蔚
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.57-63, 2016-03-18

社会的なつながりがほとんどない中高年化したニートを支える高齢の親の心配事を高齢者ケアに携わる専門職への実態調査から把握することを目的とした。S市社会福祉協議会が運営する介護保険サービス事業所で働くケアワーカーを対象にアンケート調査を実施した。調査期間は平成27年1月末から2月末。調査対象者数は146名。アンケート調査の内容は、①65歳以上の親(両親あるいは父親あるいは母親)と中高年化したニートが同居しているケースの担当の有無、②担当ケース数、③担当ケースの概要(自由記載)、④65歳以上の親の心配事(自由記載)の自記式質問紙にて実施した。倫理的配慮は、ケアワーカーが所属する事業所長への同意を得て、各ケアワーカーへのアンケート調査は回収をもって同意とみなした。倫理申請はT 大学研究倫理審査の承認を得た。アンケート調査の結果は、ここ1年で中高年化したニートがいるお宅を担当したことがあるケアワーカーは32名(43.8%)だった。担当ケースの概要が記載されていたのは23件だった。自由記載の内容は意味内容を変えずに1文節化してコード化し類似性のあるものにまとめた。その結果、親の心配事の内容は【親の年金に依存した生活】【ニートの病気の心配】【心理的負担感】【親の死後の生活の心配】【親戚への負い目】【親の過剰な保護】【助けてもらえる存在】【日常生活の不自由さ】というカテゴリに分類された。ケース概要の中にはニートから受けた相談の内容も含まれていた。内容は【親の介護の負担】【生活費の工面】というカテゴリに分類された。親以外の家族からの相談内容は【妹の行く末の心配】というカテゴリに分類された。ニートを支える高齢の親の心配事を把握することができた。また、親の心配事に関する調査であったが、ニート本人から受けた相談の内容も含まれていた。その内容から、親の介護のために離職し、そのまま社会との接点を失ってしまったケースがほとんどであると推察された。
著者
張替 直美 原田 秀子 岡 裕美 若松 真紀 金子 五和
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.29-33, 2007-03

炭酸泉入浴剤を用いた足浴(バブ浴)が生体に与える影響と効果について調べるために、健康な女子学生11名を対象に、足浴前後の足背の末梢皮膚血流量と末梢皮膚温度の測定を実施し、さら湯浴と人工炭酸泉浴との比較検討を行った。その結果、バブ浴と人工炭酸泉浴ともに足浴による下肢の浸責部位である足背の末梢皮膚血流量は、足浴直前に比べ足浴10分後に有意に増加した。しかし、さら湯浴ではこれらの両足浴よりも有意に血流量の増加率は低かった。また、足背の末梢皮膚温度は、人工炭酸泉浴とバブ浴では、足浴直前に比べ足浴後15分に有意な上昇が認められたが、さら湯浴のみ有意な皮膚温度の上昇は認められなかった。これらのことから、バブ浴は人工炭酸泉浴に準じる足浴中の皮膚血流量増加作用と足浴終了後の皮膚温度保持効果、ひいては、循環促進効果が示唆された。
著者
上岡 裕美子 篠崎 真枝 橘 香織 山本 哲 宮田 一弘 青山 敏之 富田 美加
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.97-101, 2021-04-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
13

背景 : 理学療法学生において効果的な臨床参加型実習に向けた実習前の客観的臨床能力試験 (OSCE) のあり方を検討するため, 実習前OSCEと実習到達度との関連を明らかにすることを目的とした. 方法 : 理学療法学科4年生79人を対象に, OSCEと知識試験成績, 実習中の経験症例種類数, 実習到達度を分析した. 結果 : OSCE成績は知識試験成績, 経験症例種類数, 実習到達度と有意な相関関係にあった. 特にOSCEの実施技術要素は実習到達度の診療補助および評価分野と有意な相関を認めた. 考察 : OSCEは臨床ではない状況で能力を評価するものであるが, 実習終了時点での臨床実践力と関連性があることが示唆された.
著者
松岡 裕美 岡村 眞
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

宝永南海地震(西暦1707年)のように南海地震と東南海地震が連動する巨大型南海地震の再来周期を明らかにすること目的として、土佐湾沿岸域の津波堆積物の調査を行った。その結果、土佐市蟹ヶ池において過去2000年間の履歴を解明することができた。この結果は日向灘沿岸域で明らかにされている履歴と良い一致を示し、巨大型南海地震は300-350年程度の周期で発生していることが明らかになった。
著者
上岡 裕美子 吉野 貴子 菅谷 公美子 大橋 ゆかり 飯島 節
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.239-247, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

29組の脳卒中後遺症者(患者)と担当理学療法士(PT)を対象に,それぞれが認識している理学療法目標の相違を,発症からの時期別に検討した。その結果,患者は回復期後期群では運動機能改善を目標と認識していた。維持期群は歩行・運動機能の改善と認識する者と,現状維持と認識する者の両方が認められた。一方,PTは回復期後期の患者に対して社会的役割取得および歩行改善を,維持期の患者に対しては運動機能・活動の維持および社会参加の促進を目標と認識していることが示された。いずれの時期においてもそれぞれ患者とPTが認識している目標には相違が認められ,今後,両者が確実に目標を共有するための目標設定方法について検討することが必要であると考えられた。
著者
澤 俊二 南雲 直二 嶋本 喬 磯 博康 伊佐地 隆 大仲 功一 安岡 利一 上岡 裕美子 岩井 浩一 大田 仁史 園田 茂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.325-338, 2003

<b>目的</b>&emsp;慢性期脳血管障害者における種々の障害の長期間にわたる変化の実態を明らかにする目的で,心身の評価を入院から発病 5 年までの定期的追跡調査として実施した。調査は継続中であり,今回,慢性脳血管障害者における入院時(発病後平均2.5か月目)および退院時(発病後平均 6 か月目)の心身の障害特性について述べる。<br/><b>対象および方法</b>&emsp;対象は,リハビリテーション専門病院である茨城県立医療大学附属病院に,平成11年 9 月から平成12年11月までに初発の脳血管障害で入院した障害が比較的軽度な87人である。その内訳は,男64人,女性23人であり,年齢は42歳から79歳,平均59歳であった。方法は,入院時を起点とした,退院時,発病 1 年時,2 年時,3 年時,4 年時,5 年時の発病 5 年間の前向きコホート調査である。<br/><b>結果</b>&emsp;入院から退院にかけて運動麻痺機能,一般的知能,痴呆が有意に改善した。また,ADL(日常生活活動)と作業遂行度・作業満足度が有意に改善した。一方,明らかな変化を認めなかったのは,うつ状態であり入退院時とも40%と高かった。また,麻痺手の障害受容度も変化がなく,QOL は低いままであった。逆に,対象者を精神的に支える情緒的支援ネットワークが有意に低下していた。<br/><b>考察</b>&emsp;発病後平均 6 か月目である退院時における慢性脳血管障害者の特徴として,機能障害,能力低下の改善が認められたものの,うつ状態,QOL は変化がみられず推移し,また,情緒的支援ネットワークは低下したことが挙げられる。したがって,退院後に閉じこもりにつながる可能性が高く,閉じこもりに対する入院中の予防的対策の重要性が示唆された。
著者
松田 智行 上岡 裕美子 木下 由美子 鈴木 孝治 伊藤 文香 浅野 祐子 富岡 実穂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P3204, 2010

【目的】安心できる在宅療養を送るためには、在宅療養者と家族に対する被災予防と災害時の対処方法の準備が必要である。災害時の対処については、在宅療養者と家族、住民の自助と共助だけではなく、訪問看護ステーション(以下、訪問看護)、市町村、保健所を中心とした地域ケアシステムによる支援が必要である。そこで、本研究は、訪問看護師の協力を得て、地震時要援護者(以下、要援護者)となる在宅療養者の避難方法を検討した。今回は、避難方法を検討した5例のうち1例について報告する。なお、避難方法とは、被災予防への準備と、自宅から避難所までの避難練習とした。<BR>【方法】対象は、要援護者、避難を支援する家族と協力可能な近隣者(以下、支援者)、訪問看護師とした。本例の要援護者は、在宅療養期間が9年間の30歳代半ばの男性であった。主な疾患は、交通事故による脳挫傷であった。支援者は、母親と叔母であった。<BR>方法は、要援護者の避難方法の実施にあたり、自宅を訪問し、1)から3)の手続きに基づき実施した。<BR>1)事前調査<BR>要援護者の生活機能を把握するため、調査票を作成した。調査項目は、支援状況、居宅環境(主な生活の場所、自宅から避難所までの距離、移動と移乗機能、住宅環境)、療養状況(医療用器具の装着の有無、コミュニケーション)、身体運動機能(筋力、関節可動域、姿勢保持と体位変換能力)、希望する避難方法とした。<BR>2)避難方法計画の立案<BR>事前調査を基に、要援護者と支援者、訪問看護師、研究者(理学療法士、作業療法士、保健師各1名)が、避難方法計画を立案した。<BR>3)被災予防の説明と避難練習の実施<BR>避難方法計画を基に、要援護者と支援者に対して、被災予防への準備を説明し、避難練習を実施した。なお、避難練習経路は、自宅から避難所へ向かい、片道5分程度で移動できる範囲とし、避難練習の様子は、ビデオで撮影した。<BR>【説明と同意】対象者に対して、研究の内容を書面にて説明し、同意を得た。なお、本研究は、茨城県立医療大学倫理委員会の承認を受け、実施された。<BR>【結果】要援護者の支援状況に関して、訪問看護週3回、訪問診療週1回、短期入所月10日間を利用していた。居宅環境に関して、主な生活の場所は、寝室であった。自宅から避難所までの距離は、約2.5kmであった。移動と移乗機能は、ベッド移乗全介助であった。3年前は、移動式リフターを使用し、ティルトアンドリクライニング式車椅子(以下、車椅子)に乗車していた。住宅環境は、寝室から玄関までは段差がなかった。玄関は、幅が150cmであり、戸外まで既設スロープが設置されていた。療養状況に関して、医療用器具は、気管カニューレ、腸ろう、膀胱ろうを装着していた。コミュニケーションは、痛みに対する表出は可能であったが、言語理解は、困難であった。身体運動機能に関して、頸部と四肢の随意運動は困難であり、肩、股、膝関節可動域は、45度以上の屈曲は困難であった。姿勢保持は、座位は困難であり、体位交換は、自力では行えなかった。<BR>避難方法計画の立案過程において、母親は、地震時、要援護者をベッドに臥床させ、ベッドを押して移動する方法を考えていた。理学療法士が、背もたれを最大限に傾斜させた車椅子に乗車させ、戸外に移動する方法を提案し、母親の賛同を得た。この方法を、避難方法計画とし、実際に支援者が避難練習を行い、戸外まで安全に避難をすることができた。さらに、被災予防への準備として、日常品の備蓄、家具の転倒防止と落下物の防止による身体保護と避難経路の確保について説明した。<BR>支援者の地震時の避難に対する認識は、避難練習実施前は、「地震時には避難ができるか心配である。」であったが、実施後は、「避難が可能であることを知り、自信がついた。」と変化した。<BR>【考察】本例では、支援者が、実施可能な避難方法を考え難い状況であった。その中で、理学療法士が避難方法を提案し、避難練習を行い、安全に実施することができた。その結果、支援者は、避難をすることが可能であることを認識し、避難に対する自信を得ることができたと考える。安心できる在宅療養を送るためには、被災時の避難方法について検討し、実施することが、有効な手段であると考える。本研究は、訪問看護師の協力により実施したが、より広範囲な地域ケアシステムによる支援も含めた避難方法を検討する必要がある。そのため、今後は、訪問看護、市町村、保健所に、避難練習の記録映像を貸出ができるようにする予定である。<BR>本研究は、科研費(20659364)の助成を受けたものである。<BR>【理学療法学研究としての意義】地震時の理学療法士の関与は、避難所における活動に関する報告があるが、自宅から避難所までの避難方法に関する報告は少ない。在宅療養者の要援護者に対する避難方法を検討することは意義がある。
著者
松田 智行 上岡 裕美子 伊藤 文香 鈴木 孝治 富岡 実穂 木下 由美子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.449-459, 2011
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】地震を想定した災害時要援護者(以下,要援護者)に対する避難支援の地域ケアシステムを構築することを目的に,移動に障害を有する要援護者の避難訓練を報告し,避難支援に対する理学療法士の必要性を提言する。また,避難訓練の事例集(以下,事例集)を作成し,事例集が地域の保健医療専門職にどのような点で有用であるのかを検討する。【方法】要援護者5名に対して,研究者らが独自に作成した調査票と実施手順をもとに避難訓練を実施した。さらに,茨城県内の市町村と保健所,訪問看護ステーションの149名に,5事例の事例集を配布し,郵送にて利用方法に関する質問紙調査を行った。【結果】5事例のうち,自力での避難が困難な2事例について詳細な報告を行う。2事例に対して,停電を考慮した避難方法を指導し,屋外への避難訓練が実施できた。質問紙調査は,22件(回答率14.9%)の回答があり,事例集の主な活用方法は,要援護者とその家族,専門職種への避難支援教育の教材であった。【結論】地域ケアシステム構築に向けて,避難を可能にするために地震発生前からの理学療法士の関与は重要である。さらに,事例集は,避難支援教育の教材として有用である可能性が示された。
著者
城戸 克己 廣瀬 恵美 片岡 裕美 増田 寿伸 田鶴谷(村山) 惠子
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.68-76, 2019 (Released:2019-04-26)
参考文献数
18

Many crude drug products elicit a bitter taste, because there are a variety of bitter components in them. However, there are no good methods of masking their bitter taste. Therefore, new masking methods are widely required. As a general method to administer crude drug products to patients, they are dissolved in hot water or mixed in food or juice. However, there is a risk that patients may not want to eat the food if the crude drug products alter the taste of the food. In this study, we conducted a sensory evaluation including a questionnaire in order to examine the improvement effect on swallowing a crude drug product in food. The screening tests were carried out to reveal what kinds of foods could improve the taste and texture of the crude drug product by mixing them with 30 kinds of foods. In the screening test, a statistically significant effect was observed on masking bitter taste. Based on this screening test, the bitterness masking tests were carried out with 6 kinds of foods. As a result, a commercially available swallowing aid jelly, vanilla ice cream, chocolate ice cream, condensed milk, peanut cream, and seaweed tsukudani significantly reduced the bitterness of the crude drug product. The tastes of these foods are strong, so it is necessary for patients with sugar and salinity limitations to consider the usage of these foods. These foods are relatively inexpensive and easy to obtain. Therefore, they might be useful for patients to take medicines such as bitter crude drug products following the instructions of a physician.
著者
澤 俊二 磯 博康 伊佐地 隆 大仲 功一 安岡 利一 上岡 裕美子 岩井 浩一 大田 仁史 園田 茂 南雲 直二 嶋本 喬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.325-338, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
41
被引用文献数
3

目的 慢性期脳血管障害者における種々の障害の長期間にわたる変化の実態を明らかにする目的で,心身の評価を入院から発病 5 年までの定期的追跡調査として実施した。調査は継続中であり,今回,慢性脳血管障害者における入院時(発病後平均2.5か月目)および退院時(発病後平均 6 か月目)の心身の障害特性について述べる。対象および方法 対象は,リハビリテーション専門病院である茨城県立医療大学附属病院に,平成11年 9 月から平成12年11月までに初発の脳血管障害で入院した障害が比較的軽度な87人である。その内訳は,男64人,女性23人であり,年齢は42歳から79歳,平均59歳であった。方法は,入院時を起点とした,退院時,発病 1 年時,2 年時,3 年時,4 年時,5 年時の発病 5 年間の前向きコホート調査である。結果 入院から退院にかけて運動麻痺機能,一般的知能,痴呆が有意に改善した。また,ADL(日常生活活動)と作業遂行度・作業満足度が有意に改善した。一方,明らかな変化を認めなかったのは,うつ状態であり入退院時とも40%と高かった。また,麻痺手の障害受容度も変化がなく,QOL は低いままであった。逆に,対象者を精神的に支える情緒的支援ネットワークが有意に低下していた。考察 発病後平均 6 か月目である退院時における慢性脳血管障害者の特徴として,機能障害,能力低下の改善が認められたものの,うつ状態,QOL は変化がみられず推移し,また,情緒的支援ネットワークは低下したことが挙げられる。したがって,退院後に閉じこもりにつながる可能性が高く,閉じこもりに対する入院中の予防的対策の重要性が示唆された。
著者
松岡 裕美 高木 直 大森 桂
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.77, 2003

<b><目的></b> 現在、高齢社会の担い手である若者が家庭や地域で高齢者と関わる機会は大変少なくなっている。しかし、若者が生活していく上で、他世代との共生は不可欠である。現行の学習指導要領では、高等学校家庭科においては、高齢者学習が位置づけられているが、中学校は選択領域であり明確には位置づけられていない。しかし、高齢者理解は中学生にとっても重要であり、著者らは、病床にある介護の必要な高齢者と関わるよりも、健康な高齢者と一緒に活動したり、高齢者の知恵や技に触れたりすることが高齢者理解により有効だと考えている。そこで、本研究では、中学生を対象に高齢者との直接体験等を通して、高齢者に対する感想の変化をとらえ高齢者理解を分析することを目的とする。 <br><b><方法></b> 対象は、山形大学教育学部附属中学校3年生であり、選択家庭科履修1クラス35名(男子 9名・女子26名)である。授業実践時期は2003年5月~7月である。具体的な方法は、? 単元導入時に高齢者に対するイメージ調査をする。 ? 高齢者と直接かかわる機会を持ち、感想文を書かせる。? 高齢者が活躍するビデオ(番組「鉄腕DASH」)の鑑賞後に感想文を書かせる。 以上の活動から得られたイメージ調査結果及び二つの感想文の分析をおこなった。なお、イメージ調査のカテゴリー分類は、山形大学教育学部3・4年生40名を被験者として2003年7月に実施した。 <br><b><結果></b> <b>(1)高齢者に対するイメージ</b> 「おとしより」をキーワードとして与え、このことばからイメージすることばを自由に書かせた。そのことばを大学生に判定させ、プラスイメージ・ニュートラルイメージ・マイナスイメージに分類した。「お茶」「早寝早起き」「物知り」「やさしい」などはプラスイメージに判定され、「白髪」「めがね」「つえ」などはニュートラルイメージに判定され、「ボケ」「入れ歯」「病院」などはマイ ナスイメージに判定された。各生徒について、その生徒がイメージしたことばを3つのイメージ群に分類し、各イメージ群のことば数の多い者をグルーピングした。プラスイメージの多い群をA群、ニュートラルイメージの多い群をB群、マイナスイメージの多い群をC群とした。その結果、A群は13人、B群は11人、C群は10人であった。<br><b>(2)高齢者と直接かかわる機会後の感想文</b> 「活動内容」だけを書いている生徒はC群に多く、「高齢者」について書いている生徒はA群に多かった。また、「活動の感想」について肯定的な感想を書いた生徒はA群に多く、特に「高齢者と会話をして楽しかった」という内容の感想を書いた生徒はC、B、A群の順に人数が増加した。<br><b>(3)高齢者が活躍するビデオ鑑賞後の感想文</b> 感想文中、高齢者に言及している字数は、A・B群に多く、C群が少なかった。感動を表わした感想を書いた生徒はA群に多く、消極的な感想を書いた生徒はC 群に多かった。しかし、「今後の展望」についての感想はC群が多かった。「高齢者」そのものに言及している生徒はA群に最も多く、次いでB群、C群の順であった。全体的に、A群は肯定的な感想や高齢者自身に着目している生徒が多く、C群は高齢者には着目せず活動内容のみの記述が多くみられた。しかし、C群のみの感想文の変化をみれば肯定的な感想や「今後の展望」への言及が増加し、健康な高齢者と直接かかわることの有効性が示唆された。
著者
上岡 裕美子 斉藤 秀之 大橋 ゆかり 飯島 節
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.97-108, 2010-03

脳卒中者(以下患者)への理学療法の目標設定方法としてチェックリスト式患者参加型目標設定法(Patient Participation Goal-setting Method using Checklist: PPGMC)を用い、また目標達成度の測定にGoal Attainment Scaling (GAS) を用いて、その臨床有用性を検討した。3組の患者と担当理学療法士(以下PT)を対象に事例検討を行った。PPGMCは生活機能目標チェックリストと目標共有シートからなり、患者とPTが一緒に利用する。手順は、1)生活機能目標チェックリストに希望する目標をチェックする、2)目標を話し合う、3)決定した目標を目標共有シート記入する、4)理学療法を実施しGASで定期的に評価する、とした。最後にPTへ質問紙調査を行った。その結果、どの事例もPPGMCを用いることで各患者独自の生活機能目標を設定できた。質問紙から、PPGMCは活動・参加に関する患者の希望を把握しやすい、GASを用いて目標を段階的に達成し共通の認識を持つことで患者の意欲向上につながった、との意見が得られた。これらより脳卒中者への理学療法においてPPGMCとGASの使用が臨床的に有用であることが示唆された。
著者
福山 勝彦 福山 ゆき江 丸岡 裕美 原田 悦子 鎌田 幸恵 細木 一成 矢作 毅 丸山 仁司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ca0213-Ca0213, 2012
被引用文献数
2

【はじめに、目的】 近年、足趾が床面に接地せず、歩行時に趾先まで体重移動が行われない「浮き趾」についての報告を散見する。これまで浮き趾例では足趾把持力の低下や前方重心移動能力低下、床面からの感覚入力の低下がみられることを報告してきた。また浮き趾の状態が継続されることで歩行時において体幹のアライメントの崩れや傍脊柱筋、大殿筋などの筋活動の乱れが生じ、腰痛の出現につながる可能性があることも示唆されている。我々はこの浮き趾の抽出、評価として、自作のPedoscope撮影による画像から「浮き趾スコア」による点数化を試み検討している。これは左右10本の足趾に対し,完全に接地しているものを2点,接地不十分なものを1点,まったく接地していないものを0点とし,20点満点で評価するものである。しかしこれらの方法による信頼性、再現性については検討されていない。本研究ではPedoscopeを使用し、浮き趾スコアの検者間、検者内の信頼性について確認することを目的とした。【方法】 下肢に整形外科疾患の既往のない健常成人98名を対象とした。男女の内訳は男性48名、女性50名、年齢は22.3±2.9歳であった。足底画像を自作のPedoscopeにて撮影した。Pedoscopeは、床面から30cmの高さのステージ上面に強化ガラスを固定し、この上に被検者を起立させる。ステージの側面に斜めに固定した鏡で足底を反映し、デジタルカメラで撮影する構造になっている。被検者をステージの強化ガラス上に、開眼で2m前方の目の高さに設定した目標点を注視した状態で起立させた。足幅は両足内縁が5cm開くように枠を用いて開脚した。趾先に力を入れたり重心を移動したりせず安楽な姿位を保持した上で、身体の動揺が落ち着いている状態での足底画像を撮影した。初回の撮影に引き続き、その1時間後、1週間後の同じ時間帯で同様の撮影を行なった。得られた画像を前述した方法で10本それぞれの足趾に対し、完全に接地しているものを2点、不完全なものを1点、接地していないものを0点とし20点を満点とする「浮き趾スコア」を求めた。初回時の画像に関しては3人の経験者(これまでの研究に参加し画像評価していた者)と3人の未経験者、計6人の評価者で評価した。3人の未経験者については、事前に評価の方法を説明、サンプルを用いて採点の練習を行なった。1時間後および1週間後の採点については筆者が行なった。初回時のデータから評価者6人全員による検者間信頼性ICC(2,1)、経験者3人、未経験者3人それぞれの検者間信頼性ICC(2,1)を求めた。また初回、1時間後、1週間後のデータから検者内信頼性ICC(1,1)を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に対し、事前に本研究の趣旨および方法を説明、また本研究への協力は自由意志であり辞退、途中棄権しても何ら不利益がないこと、得られたデータは個人が特定できないよう管理し本研究以外に用いないことを説明し同意を得た。【結果】 全評価者のICC(2,1)は0.858、経験者3人のICC(2,1)は0.895、未経験者3人のICC(2,1)は0.829であった。初回、1時間後、1週間後のICC(1,1)は0.927であった。【考察】 我々が用いている浮き趾スコアの評価者間における信頼性は、Landisの基準から経験による差は若干あるものの、Almost perfectの結果が得られた。不完全接地1点の評定にばらつきがあるのではないかと思われたが、完全接地趾、足根部、踵部との接地画像の比較により近似した値を得ることができると考える。また検者内信頼性についてはかなり高い信頼性を得ており、それぞれの被検者の足趾接地の再現性が確認できた。我々は本スコアをもとに、18点以上かつ両側第1趾とも2点のものを「正常群」,10点以下のものを「浮き趾群」と分類し、正常群と浮き趾群における機能の比較研究を行なっており、その基礎となる群間分類上の信頼性が得られたものと思われる。しかし接地画像の形やどの趾が接地していないかという分類はできず、今後検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 最近「浮き趾スコア」は、他の研究者の間にも導入されており、Pedoscopeでの撮影以外にフットプリントやフットスキャンなども使用されている。いずれも床面と足底の接地状態を反映するものであり、自作によるPedoscopeやフットプリントの使用は比較的安価で簡便なものである。この信頼性が得られたことは「浮き趾」の抽出、分類、理学療法の効果判定に役立つものと思われる。