著者
岩田 圭一
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.54, pp.154-166,236, 2003-04-01 (Released:2009-07-23)

The aim of this paper is to clarify what the word hekaston signifies in Aristotle's theory of essence, as it is developed in his Metaphysics Z4-6 and 10-12. In Z4, Aristotle refers to "you, " an individual substance, as an example of hekaston, in order to explain the essence of hekaston. However, if we interpret the word hekaston to signify individual substance, it becomes difficult to understand the claim in Z6 that hekaston is to be identified with its essence. For the individual substance has essence as its essential aspect and accidents as its non-essential aspects. The alternative interpretation is that the word hekaston signifies form. But this interpretation is not appropriate to the context of Z4-6, where Aristotle does not take hylomorphism into consideration. So I suggest a third interpretation, according to which the word hekaston signifies an individual substance that is tentatively treated as that which has no accident. The advantage of this interpretation is that the word signifies such an individual substance throughout Z4-6. Furthermore, this interpretation helps us to understand the difference between the viewpoint of the first half of the theory of essence and that of the latter half.
著者
鈴木 勝昭 武井 教使 土屋 賢治 宮地 泰士 中村 和彦 岩田 泰秀 竹林 淳和 吉原 雄二郎 須田 史朗 尾内 康臣 辻井 正次
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、自閉症の病態において脳内コリン系の果たす役割を明らかにすることにある。自閉症者脳内のアセチルコリンエステラーゼ活性を陽電子断層法(PET)により計測したところ、顔認知に重要な紡錘状回において有意に低下していた。さらに、この低下は社会性の障害の重症度と逆相関していた。すなわち、紡錘状回におけるコリン系の障害が強いほど、社会性の障害が強いという相関関係が示唆された。この結果は、自閉症のコリン系の障害は発達の早期に既に起こっており、顔認知の障害がもたらされ、もって社会性の障害の基盤となっていることを示唆している。そこで、認知の障害を注視点分布によって検出し、早期診断に役立てるために、乳幼児でもストレスなく注視点を測定可能な機器の開発を産学連携で行い、現在も継続中である。
著者
大図 岳 山田 亜紀 岩田 洋夫
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.187-194, 2019 (Released:2019-06-30)
参考文献数
14

In this article, we discuss the artwork about the device which has a furniture appearance and physical input and output functions. Since the chairs has most direct and frequent interaction “sitting” with the users in their daily life, we decided to shape a new interaction between them by making the furniture-shaped device “Escaping Chair”, which has a box stool appearance and interacts with the bystanders by trying to move away from nearby people. By doing this, the device tries to make a person unable to sit on it, stimulating their perception toward their sitting action, while also making the person consider the Chair’s “personality.” We exhibited the chair and collected feedback via conversation and observation. During exhibition, it succeeded in making subjects perceive their own movements and to feel a semblance of will in the chair during their interactions, as we planned, and even making them think alive. Also, they found its playfulness, which indicates a new capability of the device. Exhibition also raised further challenges to explore user interaction.
著者
近藤 美緒 岩田 康弘 飯田 有輝 古閑 寛 高橋 徹至
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11091, (Released:2016-11-22)
参考文献数
38

【目的】本研究の目的は,軽症から中等症までのPD 患者のバランス障害の関連因子を検討すること。【方法】対象は修正版Hoehn&Yahr 重症度分類1 -3 のPD 患者32 名。評価項目はBerg Balance Scale(以下,BBS),MMSE,UPDRS 合計点,UPDRS part Ⅱ13–15,Ⅲ27–30(振戦,固縮,動作緩慢,軸症状),BMI,握力,等尺性膝伸展筋力,過去1 ヵ月転倒頻度,レボドパ一日換算量とし,重回帰分析にて検討した。【結果】重回帰分析の結果,BBS の得点と握力,UPDRS part Ⅲ–28(姿勢異常)との関連を認めた(R2 =0.30,p <0.05)。【結論】軽症から中等症までのPD のBBS には全身筋量を表す握力と姿勢異常の関与が示唆された。この結果は早期から予防的に運動介入することでPD のバランス障害を予防できる可能性があることを示しているのかもしれない。
著者
岩田 文昭
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.375-399, 2011-09-30 (Released:2017-07-14)

二〇〇六年十二月に改正施行された教育基本法や、二〇〇八年度に告示された小中学校の学習指導要領の登場とともに、日本の学校での宗教教育を巡る状況はいま新たな段階に入っている。このような状況を踏まえながら、本稿では国公立学校での宗教教育の現状を分析し、その教育の課題を探究したい。まず、これまで論じられてきた宗教的情操の内容と、戦前・戦後の宗教的情操教育をめぐる状況を考察する。その考察によって、国公立の学校では、宗教的情操の涵養を直接に目指す教育は、原理的にも歴史的にも実際的にも困難であることを示す。と同時に、宗教的情操教育に代わりうる教育が実際になされていることを明らかにする。そして、この代替教育は、二つの局面で宗教と関わりえるが、それは従来の宗教教育という枠に収まらないことを示す。最後に、教科における知識教育、とくに社会科における宗教知識教育の内実について検討する。そこから、宗教知識教育と価値形成との問題連関を指摘し、この連関の探究を深めるという課題が横たわっていることを示す。
著者
越智 敦彦 直井 牧人 江夏 徳寿 藤崎 明 船田 哲 鈴木 康一郎 志賀 直樹 太田 智則 久慈 弘士 細川 直登 岩田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.644-648, 2011 (Released:2012-08-09)
参考文献数
7

連鎖球菌感染の内,特にA群溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎は短時間に敗血症性ショック,多臓器不全から死に至る可能性がある重症感染疾患であり,救命には早期かつ適切な治療(壊死組織のデブリードマンと抗菌薬加療)が要求される.デブリードマンされた組織の鏡検にて連鎖球菌を認めた場合,それがA群溶血性連鎖球菌であるかどうかは,培養結果を待つことなく咽頭用の迅速A群溶血性連鎖球菌抗原検出キット(ストレップA)を用いることで予想することができる. 今回我々は,この検査キットを使用することで早期にA群溶血性連鎖球菌感染症と判断し得た,61歳男性の陰部に発症した壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)の1例を経験した.その起炎菌の早期同定が,適切な外科的処置と抗菌薬の選択を可能とし,救命に繋がったと考えられたため報告する.
著者
伊東 卓爾 岩田 隆 緒方 邦安
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.223-230, 1972
被引用文献数
3

前報で, むきエンドウおよびソラマメが, 外観的にも食味の点でも低温要求度が強く, 収穫当日から0&deg;C付近の低温下で貯蔵する必要のあることが判明した. 本実験は, 食味からみた品質変化の実態と品質低下に関する成分的要因について調査したものである.<br>エンドウおよびソラマメは収穫後, ただちに, 有孔ポリエチレン袋詰めとし貯蔵した. 温度処理区は, 1&deg;C, 6&deg;C, および20&deg;Cを基本とし, 冷蔵遅延区, 冷蔵解除区, 変温区などを設けた.<br>1. エンドウの食味について対比較嗜好試験を行なつたところ, 20&deg;Cでは1日で明らかな食味の低下がみられた. 6&deg;Cでも食味低下はかなり急速であつた. 冷蔵遅延区, 1&deg;C貯蔵から20&deg;Cへの昇温, 変温 (1&deg;C〓6&deg;C) などはいずれも食味の低下を早めた. ソラマメでもほぼ同様の傾向を示した.<br>2. エンドウおよびソラマメともに1&deg;C貯蔵では, 貯蔵前半において全糖含量の増加の傾向がみられた. これに対して20&deg;Cでは貯蔵後1日で1/4~1/2に激減し, 6&deg;C, 10&deg;Cでも数日のうちに急減した. 初期の低温を少し緩和した区 (6&deg;C2日&rarr;1&deg;C), 冷蔵を遅らせた区 (20&deg;C1日, 2日&rarr;1&deg;C) では一たん減少した糖が, 1&deg;Cに変温されると漸次回復した. 冷蔵を中断した区 (1&deg;C11日&rarr;20&deg;C, 25&deg;C) では昇温後1日で急激に減少した. 変温区 (1&deg;C〓6&deg;C) では初期は1&deg;Cと6&deg;Cの中間の値を示したが漸次6&deg;Cに近づいた.<br>3. 中性および酸性アミノ酸含量を測定したところ, エンドウおよびソラマメともに, アラニン&bull;グルタミン酸区分&bull;パリンなどが多く含まれていた. 20&deg;C区ではほとんどのアミノ酸に急激な減少がみられた. アラニンの例では, 20&deg;C2日でエンドウでは1/12, ソラマメでは1/5となつた. 1&deg;Cでは減少の速度はかなり抑制されたが, 6&deg;Cでは不十分であつた.<br>4. ソラマメ切片に, Sucrose-U-<sup>14</sup>C および Alanine-U-<sup>14</sup>C を吸収させ20&deg;Cに保つと, アルコール不溶残さに急速にとり込まれた. 前者はでん粉, 後者はたんぱく質に変わるものと思われる. この変化の速度は, 前述の全糖, アラニンの減少とほぼ一致した. アルコール可溶性区分にもある程度とり込みがみられた.<br>2. 20&deg;Cでは急速に硬化が起こり, 食味の低下を招いた. 1&deg;Cではかなり長期にわたつて硬化を押えることができる. カード&bull;メーターによる測定値は, エンドウでは食味とかなり平行した結果が得られたが, ソラマメでの相関性はよくなかつた.<br>6. エンドウおよびソラマメの急激な食味の低下は, 糖およびアミノ酸含量の減少ならびに硬化の三要因によるところが大きいと思われる. これを防ぐには, 収穫直後からできうる限りの低温処理が必要である.
著者
岩田 あきほ 川島 寛乃 大越 匡 中澤 仁
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2020-UBI-67, no.27, pp.1-8, 2020-09-22

フィギュアスケートでは,全ての演技の採点は一つ一つの技の出来栄えの判定結果を複雑に組み合わせて行う.そのため採点に審判の主観が含まれる可能性が問題視されている.そこで本研究では,採点の適正化を支援する取り組みのはじめの段階として深層学習モデルを使って技(エレメント)の認識を行う.本論文ではフィギュアスケートの演技構成要素の一つであるステップシークエンスに着目し,動画からエレメントの判別を行うモデル SkateNet を提案する.また,独自に収集したフィギュアスケートの動画よりスケートデータセットを作成する.実験ではフレームごとにエレメントの認識を行い精度で評価する.その結果,背景などの余分な情報が含まれていると元動画からエレメントを推定し識別することは難しいことから,そのようなノイズをできるだけ除去することが重要であることがわかった.また,より詳細な下半身の関節座標の使用により精度が向上するであろうことが示された.
著者
吉田 瑞人 岩田 佳雄 三枝 宏 小松﨑 俊彦
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.C-5, 2018

<p>We prepared 7 cavity-backed disk plates which were same to baseline calibration plate used in COR test. Their membrane thickness increased by 0.2mm from 1.8mm to 3.0mm. CT(Characteristic Time)s were tested by a pendulum test instrument and CORs were measured through COR test using an air gun. The relation between CT and COR agreed with their linear characteristic described in "Technical Description of the Pendulum Test" by R&A and USGA for the thickness of 2.6mm or more. On the other hand, COR was constant and CT only increased for 2.4mm or less. Finally estimation of CT of the plates was simulated. As a result, we show that it is possible.</p>
著者
吉川 真 吉光 徹雄 高木 靖彦 出村 裕英 野口 高明 宮本 英昭 川口 淳一郎 藤原 顕 安部 正真 岩田 隆浩 川勝 康弘 田中 智 森 治 矢野 創
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.7, 2006

小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星イトカワの観測で、500m程度の小さなS型小惑星についての理解が深まったが、我々は、さらに次の小天体探査ミッションについての検討を行っている。次のミッションとしては、S型と同様に小惑星帯で主要なタイプとなっているC型小惑星の探査を行いたい。このタイプでは、有機物や水をより多く含んでいると思われており、生命前駆物質の科学としても重要である。ここでは、これまでのミッション検討結果をまとめて報告する。また、是非、多くの研究者に小天体探査に参加してもらうことを呼びかけたい。
著者
岩田 秀平 水野 篤
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.2148-2150, 2019-12-10

Point◎心不全を悪化させる可能性のある薬物を確認し,減量・中止する必要がある.◎慢性心不全患者にACP(advance care planning)の導入を検討し,そのなかでの薬剤中止という考え方は必要な選択肢である.◎標準治療を理解したうえで,十分な情報提供と医療従事者-患者間における信頼構築のなかで一つひとつ議論していってほしい.
著者
山内 正仁 山崎 順一 渡辺 敏英 三橋 政次 安藤 孝 横田 明俊 久保山 智司 油谷 崇志 鈴木 崇弘 岩田 佳之 村上 健
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 25.75 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.27-32, 2001-11-16 (Released:2017-06-23)
参考文献数
10

これまでに、ハイビジョンカメラを宇宙で使用した場合、CCD上に白傷が多数発生することが確認され、映像劣化の観点から、映像素材や科学的データの取得に際して障害となることが報告されている。本報告では、CCDの耐放射線特性を調べる目的で、ハイビジョン用のCCDに対して地上照射実験を実施したので、その結果を報告する。
著者
近藤 義典 松本 秀一 岩田 隆敬 佐藤 直樹 今田 高峰 山本 一二三 小林 聡 本山 昇
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp._S191022-1-_S191022-5, 2012

We are now studying high accuracy reentry guidance algorithms for reentry capsule. In this paper, we propose a real-time prediction guidance using numerical integration. The real-time prediction guidance is an explicit guidance law using numerical integration for range prediction during reentry flight. One of technical issues of the real-time prediction guidance using numerical integration is that navigation error and wind error lessens the navigation accuracy. Especially, errors in the last phase of reentry flight affects the navigation accuracy. So we researched that mechanism by investigating the navigation ability (ability of range adjustment) of several navigation segments.
著者
岩田 幸雄 惠良 勝治 山﨑 浩介 貝嶋 誠 河野 憲治 岩下 裕孝 樫尾 朋宏 岩木 昌三 上田 大一朗
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.736-742, 2020 (Released:2020-06-26)
参考文献数
3

FM補完放送の開始にあたり従来は困難とされていたFM同期放送による放送網の実現を目的として,最新のディジタル回路設計技術を用いた高精度のディジタル型のFM変調器を開発し取り組んだ.新局を順次開局しながら同期放送の各種課題をフィールドで調査しその解決策をシステムに取り入れて改良しながら検証を進めた.2018年12月に周防大島局を開局し当初予定した13局の中継局の設置を完了した.FM補完放送の構築においては県内の瀬戸内海側の8局をすべて92.3 MHzで,日本海側の5局を86.4 MHzで構成した同期放送ネットワークにより従来にないエリア確保と良好なサービス品質を提供している.
著者
岩田 惠理
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.92-95, 2014-09-30 (Released:2014-11-26)
参考文献数
6

Fish is the vertebrate that first appeared on the earth. While it has been found that many fish species are highly social, their brain has less complex organization than mammals. Thus, studying social behavior in fish has a great advantage in understanding of emotion, which is common to all the vertebrates. Among all, Anemonefishes live symbiotically with sea anemones and form a social unit that consists of a breeding pair and several sexually immature individuals. The hierarchy of the social rank is strictly maintained in a group. Agonistic behaviors are observed frequently among the members of a group, which are essential for maintenance of the social structure, as well as for their sex determination. The differences in agonistic behavior according to social status were also detected directed at conspecific intruders. The aggressive behaviors were specifically directed at intruders of the same sexual status, not at those of the opposite sex. These results suggest that sexually mature resident anemonefish perceive intruders of the same sexual status as competitors for reproductive status.
著者
岩田 聡
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1000, pp.45-52, 2009-03-23

─DSやWiiの成功は,岩田さんが社長に就任して掲げた「ゲーム人口の拡大」というスローガンに負う部分が大きいと思います。このスローガンは,社長就任前から考えていたものでしょうか。 社長に就任した瞬間から考えていたわけではありません。最初から分かっていたと言えればカッコいいけれど,そんなことはないんです。就任当初は本当にどうしていいのか分からなかった。
著者
久永 晃資 岩田 剛敏 池内 隆 五十嵐 章紀 足立 邦明 林谷 秀樹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.54-57, 2004-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9

生活空間を共有する人と犬が快適に生活するために, どのくらいの頻度で犬を洗浄したらよいかを検討するために, 犬の被毛の脂質の成分や量を調べるとともに, これらが洗浄前後でどのように変化するかを経時的に観察した. その結果, 犬被毛の脂質は脂肪酸, コレステロールおよびステロールエステル, ワックスエステル, グリセロールエステルなどのエステル類で構成されており, 特にエステル類は脂質の80%以上を占めていた. また, 犬被毛の脂質量は洗浄直後に洗浄前の約60%にまで減少したが, 72時間後には洗浄前のレベルまで回復した. そして, 洗浄後72時間が過ぎる頃から動物臭が感じられるようになった. これらの結果から, 衛生的な観点からみると, 室内犬の洗浄は3~4日に1回くらいの割合で行うことが適当と考えられる.