著者
伊藤 慶一郎 菅野 重樹 岩田 浩康
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.43-53, 2012 (Released:2017-02-15)
参考文献数
15

内出血を呈した高緊急度外傷患者の救命には, 出血性ショックの原因となる血液貯留を探索する迅速簡易超音波検査 (通称 : FAST) が重要となる. さらに救急搬送下あるいは現場において, 医師による遠隔操作のもと, FASTを施せる小型でポータブルな診断システムがあれば, 外傷患者の死亡率は飛躍的に低減できると考えられる. そこで本研究では, 内出血患者の早期診療を支援すべく, FASTが可能で, 患者の体幹に直接装着できるロボットシステムを開発したので報告する. 本稿で提案する新たな救急医療シナリオ, および体幹装着技術, 超音波プローブの駆動メカニズム, 小型・軽量化技術は, 場所を限定しない超音波診断の実現に寄与しえ, 救急医療の限界を大きく変革し得る新たな救命支援ツールとして普及する可能性を, 社会に強く訴えるものになると考えられる.
著者
神農 悠聖 岩田 三千子
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.79, 2003

本報では無彩色を対象とし、色票面の照度や色票と背景の対比が色彩の面積効果に及ぼす影響について明らかにするため、実験した結果を報告する。視標面照度は1000lxと100lxの2条件、背景はN2.0、N3.5、N5.5、N7.5、N9.5の5条件で、提示環境条件は計10条件である。実験色票はN3、N5、N7の3色、視角は2_から_10°の1°刻みと20°、30°の11種の円形色票を用いた。参照色票は、無彩色N1.5_から_N9.5の円形色票を、0.5間隔で明度順に並べた。実験方法として、実験色票と同じ色に見える色票を参照色票の中から選択させた。その結果、100lx、1000lxともに背景明度が実験色票の明度以上である場合、面積効果は認めにくく、逆に、背景明度が実験色票より低い場合面積効果が認められた。また1000lxに比べて、100lxの方がやや面積効果が低いことが分かった。
著者
山室 匡史 宮本 重彦 立入 直紀 石井 歩 松田 駿太朗 岩田 祐子 瀬川 尋貴 桑山 健次 辻川 健治 金森 達之 井上 博之
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
pp.786, (Released:2020-09-14)
参考文献数
31
被引用文献数
1

The forensic identification of cannabis is performed by a combination of chemical analysis and morphological examination. Recently, molecular biological analysis using cannabis DNA information has been noticed as a new approach. In this study, the cannabis DNA detection kit using a DNA chromatography chip was developed, and the demonstration evaluation in the forensic chemical laboratory was carried out. The DNA detection kit of a “four-line version” which had the function to distinguish fiber-type from drug-type cannabis showed as high accuracy (98.3%) as the current identification method on cannabis identification. However, there was a tendency to mistake a part of the drug-type samples as “fiber-type cannabis”. In the kit of a “three-line version” which was specialized for the cannabis DNA detection, the accuracy of 99.0% was confirmed on the cannabis identification. There were no false positives throughout all evaluations. In addition, some of the combustion residues that could not be identified as cannabis by the current identification method were classified to be “cannabis positive” by the DNA detection kit, indicating the effectiveness of a new approach. As a result of this study, it was shown that the quick and accurate cannabis DNA analysis could be carried out by the DNA detection kit even by analytical chemists who didn't have expertise in molecular biology.
著者
岩田 敏
出版者
ヴァン メディカル
巻号頁・発行日
pp.9-16, 2021-03-10

新型コロナウイルスワクチンのうちファイザー社/ビオンテック社,モデルナ社,アストラゼネカ社,ジョンソン&ジョンソン社/ヤンセン社などのワクチンは既に海外で承認され,国内にも導入あるいは導入されようとしている。接種に当たっては,被接種者との十分なリスクコミュニケーションをとり,各施設や地域では安全・円滑に接種できる体制を確保した上で,適切な方法で筋肉内に接種する必要がある。いずれのワクチンも長期的な有効性・安全性については明らかでないことから,注意深いフォローアップが必要である。
著者
岩田 顕 井貫 晋輔 大石 真也 藤井 信孝 大野 浩章
出版者
日本薬学会化学系薬学部会
雑誌
反応と合成の進歩シンポジウム 発表要旨概要
巻号頁・発行日
vol.37, pp.164, 2011

The family of ergot alkaloids produced by the fungus <I>Claviceps purpurea</I> is one of the most intriguing classes of natural products because of their broad biological and pharmacological activities. Despite intensive synthetic investigations, most synthetic studies of the ergot alkaloids, particularly (+)-lysergic acid, (+)-lysergol and (+)-isolysergol, have relied on a stepwise linear approach for the construction of the C/D ring system. Recently, we developed a palladium-catalyzed domino cyclization of the racemic allenic amide to provide the tetracyclic core of ergot alkaloids. In this study, we constructed the chiral allenic amide via the two synthetic routes using aldehyde alkynylation/asymmetric hydrogenation or asymmetric epoxidation/regioselective reductive ring-opening reaction. Using the resulting chiral allenic amide , enantioselective total syntheses of (+)-lysergic acid, (+)-lysergol and (+)-isolysergol were accomplished.
著者
中司 敦子 神崎 資子 高木 章乃夫 岩田 康義 池田 弘 福島 正樹
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.163-168, 2004
被引用文献数
2

慢性腎不全患者の意識障害として尿毒症性脳症が知られているが, 透析療法が普及した昨今ではこの病態を経験することはまれである. 今回われわれは緩下剤の連用中に高マグネシウム (Mg) 血症による意識障害をきたした慢性腎不全の2症例を経験したので報告する.<br>症例1は77歳, 男性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全で加療中, 食欲不振と意識混濁が出現し入院. 血清Cr 4.31mg/dL, BUN 64mg/dL, 血清Mg 7.3mg/dLと上昇. 血清カルシウム値は5.8mg/dLと低下. 皮膚の潮紅, 肺炎および呼吸抑制による呼吸不全を認めた. 血液透析で血清Mg値は低下したが, 翌日再分布によると考えられる再上昇をきたしたため血液透析を再度行い軽快した.<br>症例2は78歳, 女性. 慢性関節リウマチ, 腎機能低下で加療中に尿路感染症により腎機能が増悪し, 全身倦怠感, 見当識障害が出現したため入院. 血清Cr 6.56mg/dL, BUN 96mg/dL, 血清Mg 7.1mg/dLと上昇. 血液透析を3日間連続して行い軽快した.<br>いずれの症例もMg製剤の服用歴を有し, 高度な高窒素血症が存在しないにもかかわらず意識障害を呈した. 当院で2年間に血液透析導入時に血清Mgを測定した78例中, 中毒域の高Mg血症をきたしたのは今回提示した2例のみであった. その他に, 意識障害をきたした症例は低血糖の1例のみで, 尿毒症性脳症による意識障害はなかった. 今回の症例では緩下剤の連用および感染による慢性腎不全の急性増悪が重篤な高Mg血症の原因と考えられた. 治療として血液透析が有効であったが, 再分布による血清Mg値の再上昇に注意が必要である.
著者
安部 明 岩田 博武 石川 正夫 西川 誠
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.29-50, 1971-03-01 (Released:2010-02-23)
参考文献数
6

昭和45年7月1日の集中豪雨によって, 千葉県の南部では, 山地の崩壊と流出土砂によるダムアップがもたらす河川災害が発生した。この報告においては, 山地の崩壊についての発生機構を現地における地形・地質の関連からあきらかにするとともに, 河川災害が河川の中~上流域に集中するにいたった, 河川災害の発生機構について推論するものである。
著者
岩佐 健吾 延藤 遵 杉田 裕 兵藤 英明 松田 武 白土 博司 岩田 裕美子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.769, 2007

海水系地下水環境下におけるベントナイト材料の基本特性への影響(膨潤性や低透水性の低下等)を把握するとともに,その影響を考慮して人工バリア設計における対応策として緩衝材・埋め戻し材の仕様(材料,配合等)変更を検討する。
著者
佐藤 佳子 熊谷 英憲 岩田 尚能 柴田 智郎 丸岡 照幸 山本 順司 鈴木 勝彦 西尾 嘉朗
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.72, 2011

3.11の巨大地震の後、福島第一原発の事故により放射性希ガス放出が予想された。そこで、放射性希ガスを四重極質量分析計で測定し、希ガス存在度の変化の検証を試みた。Ar-41, Ar-39, Kr-85, Xe-133などの希ガスが安定な希ガス同位体に対して10倍以上に増加したことが地震後の測定で明らかになりつつある。地震による安定な希ガス同位体の放出を差し引いて、放射性希ガス存在度の変化について報告する。
著者
渡邉 瑞貴 領田 優太 浅野 理沙 Khamb Bilon 薄田 晃佑 飯田 圭介 岩田 淳 佐藤 慎一 酒井 寿郎 長澤 和夫 上杉 志成
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral15, 2014 (Released:2018-07-19)

1. 背景 現代人を悩ます生活習慣病の一つ、脂質異常症(高脂血症)は肥満など多くの疾病の起因となる。それら多数の疾病の予防・治療のためにも、脂質生合成機構の制御と解析は重要な課題である。 脂質生合成において、転写調節因子SREBP(Sterol regulatory element- binding protein)は中心的な役割を担う(図1)1。小胞体膜貫通型タンパク質として存在する前駆体SREBPは、キャリアータンパク質SCAP(SREBP cleavage-activating protein)と複合体を形成している。この複合体は、脂質レベルが低下すると小胞体からゴルジ体に輸送される。ゴルジ体において前駆体SREBPは酵素による二度の切断を受けて活性型となる。活性型SREBPは核に移行し、転写因子として脂質生合成に関する遺伝子群の発現を亢進する。ステロールや脂肪酸などの脂質類が産生される。 SREBPの活性化は内因性物質であるステロールによって厳密に制御されている。ステロール過多になると、ステロールはSCAPに直接作用し、SREBP/SCAP複合体の小胞体からゴルジ体への輸送を阻害する。脂質生合成は種々の複雑な制御を受けることが知られており、ステロール以外の内因性物質による直接的なSREBP活性化調節機構の存在が予想される。しかし、その詳細は未だ不明な点が残る。 私たちの研究室が化合物ライブラリーから見出した合成小分子ファトスタチン(1, 図2)は、ヒト細胞内でSREBPの活性化を選択的に阻害して脂質生合成を抑制する2,3。ファトスタチンは、SREBP活性化を阻害する初めての非ステロール合成化合物となった。さらに私たちの研究室は、ファトスタチンを誘導体展開し、ファトスタチンよりも10倍阻害活性に優れ、経口投与可能なFGH10019(2)も報告した4。一連のケミカルバイオロジー研究によって、ファトスタチンはステロールと同じSCAPを直接の生体内標的とするが、ステロールとは異なる部位に作用することを示した。この結果は、ファトスタチン様に作用する、ステロール以外の内因性物質の存在の可能性を示唆する。2. 新たなSREBP制御天然化合物の発見 以上をふまえ私たちは、SREBP活性化に関わる新規内因性物質の探索を目的に、280種の脂質化合物を新たにスクリーニングした。その結果、細胞内でSREBPの活性化を阻害する複数の内因性脂質化合物が見出された。これら見出された化合物類は、濃度依存的にSREBPの活性化を阻害することがわかった。さらに、ある一連の内因性天然脂質化合物類は、ステロールと同様にSREBPの小胞体からゴルジ体への輸送段階で活性化を阻害するが、その作用メカニズムはステロールと異なることが示唆された(図3)。CHO-K1細胞をステロールで処理すると活性型SREBPが消失し、前駆体SREBPが蓄積する。一方、内因性天然脂質化合物Aで処理すると、活性型および前駆体両方のSREBPが減少した。これら新たに見出した内因性脂質化合物類とSREBPとの直接的な関係について、現在のところ報告はない。これら脂質化合物はSREBP活性化を制御する新たな内因性物質の可能性がある。3. SREBP制御天然化合物の作用メカニズムの解明研究 スクリーニング(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
岩田 直子 小川 博之
出版者
社団法人 日本伝熱学会
雑誌
日本伝熱シンポジウム講演論文集 第47回日本伝熱シンポジウム
巻号頁・発行日
pp.27, 2010 (Released:2010-05-19)

木星以遠の外惑星では太陽光の減衰が激しいため,深宇宙探査機にはラジオアイソトープ(RI)発電が有用である.RI発電は,RIの崩壊熱を電気エネルギーに変換して一次電池として使用するものであり,米国及びロシアでは1960年代から宇宙用電源として用いられてきた,実績ある電源である.その熱電変換器として最も多用されているのが熱電変換素子であり,これを用いたRI発電をRTGと呼ぶ.日本では,民生用の熱電変換素子の開発は行われてきたが,RTGへの利用は検討例すらない.宇宙用と民生用では使用する熱環境条件が大きく異なる.本件では,RIの代用として擬似熱源を使用し,宇宙環境を模擬した条件での熱電変換素子の性能評価を行う.