著者
山下 尚志 高橋 岳浩 遠山 哲夫 谷口 隆志 吉崎 歩 Trojanowska Maria 佐藤 伸一 浅野 善英 赤股 要 宮川 卓也 平林 恵 中村 洸樹 三浦 俊介 三枝 良輔 市村 洋平
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.381b, 2016

<p>  全身性強皮症は免疫異常,血管障害,線維化を主要3病態とする原因不明の膠原病である.本症の病態理解・治療開発が遅れている理由の一つとして,その病態を忠実に再現した動物モデルが存在しなかったことが挙げられるが,最近我々は転写因子Fli1の恒常的発現低下により線維芽細胞,血管内皮細胞,マクロファージにおいて強皮症特有の形質が誘導できることを示し,さらに血管内皮細胞特異的<i>Fli1</i>欠失(<i>Fli1</i> ECKO)マウスでは強皮症の血管障害に特徴的な血管の構造異常と機能異常が再現できることを明らかにした.強皮症の血管障害に対しては肺動脈性肺高血圧症治療薬が有用であり,特にボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)は皮膚潰瘍の新規発症を予防する効果が2つの良質な臨床試験により証明されている.また,明確なエビデンスはないが,bFGF製剤は強皮症に伴う難治性皮膚潰瘍の治療に有用であり,実臨床において広く使用されている.しかしながら,これらの薬剤が強皮症の血管障害に及ぼす影響とその分子メカニズムは未だ不明な点が多い.そこで今回我々は,<i>Fli1</i> ECKOマウスの創傷治癒異常の分子メカニズム,およびボセンタンとbFGFがその異常に及ぼす影響について検討した.一連の研究結果により,<i>Fli1</i> ECKOマウスにおける創傷治癒異常の分子メカニズム,およびボセンタンとbFGFがFli1欠失血管内皮細胞の動態に及ぼす影響が明らかとなったので,その詳細を報告する.</p>
著者
井上 亮文 平石 絢子 柴 貞行 市村 哲 重野 寛 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.38-50, 2005-01-15

シナリオの存在するシーンを一般のユーザが撮影する場合,被写体の数が多かったり,撮影環境がそのつど異なったりするため,効果的なカメラワークを事前に計画することは困難である.そこで本論文ではシナリオ情報に基づいてカメラワークを自動的に計画する手法を提案する.撮影対象としてオーケストラ演奏を想定し,シナリオである楽譜から被写体の候補を決定する方法と,各カメラのショットを決定するための優先度の計算方法を定義している.実際にショットを接続して1 本の映像を編集する実験の結果,提案手法はシナリオや優先度を考慮しないショットで編集したものよりも変化に富んだ映像を制作できることが分かった.また,カメラの配置に適応したショットを提示できることが分かった.
著者
市村 高男 松田 直則
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

土佐国幡多荘は、16世紀末から約1世紀の間、京都下りの公家一条氏が支配していた。本研究では、一条氏が幡多へ下向した理由、そこでの役割を考えるため、文献史学と考古学の両面から基礎資料の収集と検討を進めた。今回、幡多地域出土の遺物については、あまり報告書に収録できなかったが、中世城郭跡を中心とした一条氏・幡多地域の考古学的考察の中で活用している。文書・記録などの文献史料については可能な限り報告書に収録し、研究者が共有できるようにした。これらの史料や遺跡・遺物の調査・検討を通じて、次のようなことが明らかになった。(1)一条氏は土佐に在住したまま公卿に列した希有な存在であり、恒常的に京都の公家社会と交流する一方、16世紀前半から地域の領主や地侍を家臣団に編成し、支配領域の拡大を試みるなど戦国大名化への動きを見せた。(2)一条氏は本願寺や堺の商人と結んで大船を建造し、遠隔地交易への強い関心を示していた。この事実は、一条氏の贈答品に南方の産物が多く見られること、幡多地域から多量の貿易陶磁器が出土すること、一条氏が加久見氏(海賊)と婚姻関係を結んでいたことなどと合わせて、同氏が対外交易に関与していたことを暗示する。一条氏が京都から幡多に下向し、そのままこの土地に住み着いた理由もこの辺にあると考えられる。(3)一条氏は戦国前半期から幡多地域に多くの城郭を築いているが、その技術がやがて長宗我部氏に継承・発展されるなど、想像以上に土佐の社会や文化に大きな影響を与えていた。以上のように、一条氏や幡多地域の役割は正しく評価されるべきであり、土佐国を越えた視点で見直していく必要がある。
著者
目良 和也 矢野 宏実 市村 匠
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第21回ファジィ システム シンポジウム
巻号頁・発行日
pp.6, 2005 (Released:2007-05-29)

現在,インターネット上には多様で膨大な量の情報が存在しており,それらの情報を元に,我々は自分の好みに合わせて購入商品や旅行先などを選定することが出来る.そのための手法としてAHPや多属性効用理論があるが,未知の対象の定性的な属性について評価することは難しい.本研究では,インターネット上から収集した意見に含まれる程度表現と信頼度表現を考慮した形で,属性の度合を求めるための手法を提案する.min-max法では,ある属性値に対して一人の人間が感じる印象を各程度のファジィ集合に対する帰属度で表し,そこから統合値を求めている.本研究ではこの手法を拡張し,複数の人間の意見から統合値を求める手法を提案する.このファジィ集合の帰属度は意見数の比率から求めるが,本手法ではその際に各意見に付随する信頼度表現を各意見の重みとする.信頼度表現の重み,程度表現の分類,文章からの意見情報の抽出には自然言語情報を用いる.
著者
有田 英之 市村 幸一 山崎 夏維 松下 裕子 成田 善孝
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神経膠腫は成人悪性脳腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍である。同一の診断でも様々な経過を示すため、より詳細に臨床経過を反映した分類が可能なバイオマーカーの探索が望まれてきた。我々は、近年の神経膠腫の遺伝子解析で発見されたテロメア関連遺伝子、特にTERTに着目し、国内のコホートを用い、臨床経過との関連を詳細に検討した。TERTのプロモーター変異は、従来本腫瘍で予後因子として知られていたIDH1/2やMGMTと組み合わせることで、神経膠腫をより詳細に分類することができることを明らかとした。
著者
市村 将太
出版者
東京海洋大学
巻号頁・発行日
2020

東京海洋大学博士学位論文 2020年度(2020年9月) 応用環境システム学 論文博士 乙第39号
著者
市村 一雄 小田 雅行
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.341-346, 1998-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
23
被引用文献数
3 4

市販の植物多糖である寒天, アガロース, セルロース, ジェランガム, ペクチン, アルギン酸ナトリウムおよびデンプンの浸漬液がレタスの根の伸長に及ぼす影響を調べたところ, 寒天の促進効果が最も大きかった.寒天による根の伸長促進効果はキュウリ, ダイコン, イネ, ホウレンソウ, トマトおよびネギと比べて, レタスで最も大きかった.それに加えて, レタスでの促進効果は変動が小さく, 取り扱いが容易であったため, 以下の実験にはすべてレタスを用いた.根の伸長は寒天抽出液によっても促進された.寒天抽出液に含まれる無機イオンと同じ組成に調製した溶液は寒天抽出液より根の伸長促進効果は小さかった.これより, 寒天抽出液に含まれる根の伸長促進物質は無機イオンとは異なる物質であると考えられた.寒天抽出液をSephadex G-25カラムおよびBio-Gel P-2カラムを用いて分画したところ, 根の伸長促進活性は低分子領域の数画分に認められた.これらの活性画分をShodex C18カラムで分画したところ, グルコースより早く溶出した.これらの結果より, 寒天に含まれる根伸長促進物質は数種類存在しており, これらはいずれも低分子で, 親水性の高い物質であると示唆された.
著者
市村 高男
出版者
高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究科
雑誌
黒潮圏科学 (ISSN:1882823X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.174-187, 2013-03

鹿児島県三島村は、薩摩半島の南西海上に浮かぶ離島であり、竹島・硫黄島・黒島の三つの島からなる。これらの三つの島はトカラ列島とともに、中世日本の西の境界領域であった。この点に着目し、私は三つの島の文書・遺物の調査と遺跡の調査を実施した。本稿は、それらの成果を報告し、西の境界領域研究の新たな発展の基礎を固めた。また、本研究と黒潮トライアングルとの関係についても言及した。この研究によって、私は次ぎの点を明らかにした。まず第1に、三つの島の歴史的変遷を明らかにした。三つの島は、12世紀後半、13世紀末~14世紀前半、15世紀後半~16世紀後半に大きな画期があり、第3の画期が近世の島社会の出発点となった。第2に、硫黄島の三回目の変化は、島外からの新たな移住者である長浜家や岩切家らの活動によってもたらされた。長浜家は海の有力な商人であり、岩切家は硫黄採掘に関わる技術者であった。やがて長浜家は硫黄島の支配権を掌握し、君臨した。 第3に、竹島・硫黄島・黒島やトカラ列島がある海域は、多くの部分が黒潮の流れに洗われており、そこに点在する島は、航海する船の寄港地として重要な役割を果たしていた。島津氏や種子島氏らは、島の支配と商船の支配を一体的に考えていた。この海域の島々は、九州と沖縄との間の航海において、不可欠の存在であった。 第4に、この研究がフィールドとした島々や海域は、大半が黒潮トライアングルと重なっている。そこは人やモノの行き交う場であり、日本と琉球のせめぎ合いの場でもあった。それゆえ、この海域や島々の研究は、人文科学から黒潮トライアングルを考えることと深く関連する。自然科学と人文科学・社会科学との協働による研究の進展が望まれる。