著者
藤木 卓 市村 幸子 寺嶋 浩介 小清水 貴子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.73-76, 2012

本研究では,両眼立体視により空間歩行可能なVRコンテンツの制作に必要な精度の変化が,現実感とVR酔いに及ぼす影響に関する知見を得ることを目的とした.そのために,大学生を対象とした主観評価実験を行った結果,次のことが明らかとなった.コンテンツの精度の変化に対して現実感とVR酔いは直線的な関係を示し,現実感が高くなるほどVR酔いの評価は低下する.また,コンテンツの精度に関しては,オブジェクトの形状の複雑さよりも貼付ける表面画像の質感の効果が高い.
著者
市村 一雄 川端 善彦 岸本 真幸 後藤 理恵 山田 邦夫
出版者
農業技術研究機構花き研究所
雑誌
花き研究所研究報告 (ISSN:13472917)
巻号頁・発行日
no.2, pp.9-20, 2002-09

バラ切り花の開花と花持ちの品種間差を25品種を用いて調べた。開花速度には品種間差が認められ,完全に開花しない品種も存在した。花持ちにも著しい品種間差が認められ,最も長い品種はカリブラの14.5日であり,最も短い品種はブライダルピンクの3.8日だった。国内で生産されている主要10品種(カリブラ,コンフィティ,ジェルファルレイ、ソニア,ティネケ,デリーラ,ノブレス,パレオ90,ブライダルピンク,ローテローゼ)を用いて,花持ちに関与する要因について解析した。花持ち日数と花弁の厚さあるいは蒸散速度との間に有意な相関関係は認められなかった。糖の不足と導管閉塞が花持ちが短い原因になってるか調べるために,切り花を20g・liter-1スクロース,200mg・liter-1,8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS)および両者を組み合わせた連続処理を行った。スクロース単独,HQS単独および両者を組み合わせた処理はそれぞれ,2,2 および4品種の花持ちを有意に延長した。一方,花持ち日数が8日以上の品種とローテローゼでは,花持ちを延長することができなかった。これらの結果は,いくつかの品種において,花持ちの短い原因が導管閉塞または糖の不足,あるいはその両者に因っていることを示唆している。
著者
市村 穣
出版者
香川大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

腸内常在菌叢を構成する主要な菌種であるBacteroides thetaiotamicron (BT)は、Clostridium difficile (CD)の細胞毒性を抑制する。このメカニズムを明らかにするため、BTにおいてトランスポゾン(Tn4351)挿入変異ライブラリーのスクリーニングを行い、CDの細胞毒性に対する抑制作用を消失した変異株を検索した。その結果、莢膜多糖合成や糖加水分解酵素の遺伝子にトランスポゾンが挿入した変異株では抑制効果が消失することを明らかにした。この結果はBTの糖代謝産物がCDの細胞毒性に対する抑制作用に関与している可能性が考えられた。BTのCDの細胞毒性に対する抑制効果がin vivoでも認められるか否かを検討するため、無菌マウスの腸管にBTとCDを同時に定着させ、マウスの死亡率、盲腸内Toxin Bの定量、および盲腸内容物のグラム染色像を比較した。その結果、BTの野生株とCDを共感染させた群では80%が生存したのに対し、葵膜多糖PS-4の欠損株を投与した群の生存率は20%であり、BTのCDの細胞毒性に対する抑制効果がin vivoにおいても認められた。この結果は、また、莢膜多糖PS-4がこの抑制作用に関与していることを示している。これらの群において盲腸内でのToxin B量をELISA法により定量した結果、BTの野生株とCDを共感染させた群のToxin B量はPS-4欠損株とCDを共感染させた群と比較して有意に低かった。盲腸内のグラム染色像を比較すると、BTの野生株とCDを共感染させた場合、CDはグラム陽性に保たれる菌体が多く、PS-4欠損株と共感染させた場合にはCDの多くの菌体がグラム陰性に染色された。このことは、BTのPS-4がCDの自己融解を抑制することにより毒素の遊離を抑えていると考えられた。
著者
竹井 かおり 星野 大地 市村 匡史
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.98-103, 2012-09 (Released:2013-10-08)

本試験では養液栽培において,育枯病の発病抑制効果が期待できるスイートバジル,オレガノ,ローマンカモミールを用いて,ハーブの栽植密度を変えてトマトとの混植試験を行い,ハーブの混植が青枯病発病ならびに培養液中の青枯病菌密度に及ぼす影響を調査した。その結果,対照区と比べて,スイートバジル混植区では青枯病発病が4日遅れ,オレガノ,ローマンカモミール混植区では,青枯病の進行が5~8日抑制された。さらに,スイートバジル,オレガノ混植区では培養液中の青枯病菌密度が検出限界以下(約10 2cfu/mL以下)に減少した。以上のことから,ハーブの混植により,青枯病発病抑制,青枯病進行抑制,培養液内の青枯病菌密度低下効果などが得られる可能性が示唆された。
著者
福島 圭亮 加藤 正史 市村 正也 兼近 将一 石黒 修 加地 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SDM, シリコン材料・デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.56, pp.23-28, 2007-05-17
参考文献数
9

窒化ガリウム(GaN)は高出力,高周波デバイスへの応用が期待されており,GaNのバイポーラデバイスプロセスにおいてエッチング工程は不可欠である.GaNのエッチング技術としてプラズマエッチングの1つであるICP(Inductively coupled plasma)エッチングは有効であるが,試料表面にダメージ層を形成することがわかっている.本研究ではICPエッチング処理を施したGaNに対し,マイクロ波光導電減衰(μ-PCD)法により過剰キャリアライフタイムを測定した.減衰曲線の温度依存特性を測定することでICPエッチングダメージが導入する欠陥準位の特性を評価した.そしてICPエッチング処理を施したGaNにアニール処理をし,アニール温度による過剰キャリアライフタイムの変化を観測することでアニールの効果を議論した.
著者
森口 哲史 藤田 勉 市村 志朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学篇 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.19-28, 2008

フラダンスは,生涯スポーツとして中高年女性を中心に愛好家が増加している.しかしながら,その健康運動としての有効性を検証した研究は極めて少ない.本研究は中高年女性14名を対象にフラダンスを行った際の心拍変動,足圧重心動揺および気分プロフィールの変化について検討することを目的とした.その結果,フラダンス中の平均心拍数は60%HRmax程度であり,血中乳酸濃度の顕著な上昇はみられなかった.また,フラダンス直後の重心動揺総軌跡長は有意に短縮し(pく0.05),動揺面積も減少した. POMS検査では活気気分が有意に上昇し(pく0.01),すべての陰性気分が減少した.これらの結果より,フラダンス実践は,低強度の有酸素的運動としての効果が期待でき,運動刺激が一過的に重心動揺を制御する可能性が示唆された.また,陽性の感情変化は運動継続と精神的健康維持に寄与するものと推察された.本研究により,フラダンスは中高年者の健康運動活動として,心理生理的に有効性が高い可能性が示唆された.
著者
市村 太郎 河瀬 彰宏 小木曽 智信
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.1-8, 2012-10-05

本稿では,国立国語研究所 「通時コーパス」 プロジェクトの一環として検討されている, 『洒落本大成』 『虎明本狂言』 の電子化について,構造化仕様・文書型定義を示し,割書や発話表示等,資料特有の形式の扱いや,それに伴う課題等について論ずる.This paper describes the specification and Document Type definition(DTD) for digitized documents of "Sharebon" and "Toraakira's Kyogen", as part of NINJAL Diachronic Corpus Project, and discusses its characteristic properties, styles and issues.
著者
久保田 彰人 北島 規雄 小林 祐貴 市村 哲
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.18, pp.1-6, 2009-05-14

現在,気軽に使える移動手段として自転車が利用されることが多い.しかし,自動車のような免許制度がなく,自転車事故に対する危機意識の低さがある.そこで本稿では,危険箇所や注意箇所などに対し運転者に注意喚起を行う,自転車用安全運転支援システムを提案する.本システムは,自転車運転時に 3 軸加速度センサーを用いて道路状況を推定し,GPS から得た位置情報と合わせて地図上に書き込み,Web 上で他のユーザーと共有する.その地図データを用いて自転車運転時に危険箇所や注意箇所で運転者に警告や注意といった注意喚起を行う.注意喚起の方法として,運転中の画面注視は危険であるため,振動機器を腕に取り付け,その振動パターンで情報を通知するようにした.A bicycle is used as a transportation vehicle which can be used casually in many cases. However, there is no license system like a car and there is lowness of a sense of crisis to a cycling accident. Then, we propose the safe driving supporting system for bicycles which can gives warning and cautions to a driver near a dangerous places. Three axis acceleration sensor is used for this system, and it senses a road condition. The positional information acquired from GPS, are shared among users on the Internet. Warning and cautions are notified to a driver near dangerous places. As gazing at a screen is dangerous while riding bicycle, a vibrating device is attached to an arm.
著者
目良 和也 市村 匠 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.10-24, 2010-02-15
被引用文献数
1 8

現在,音声によるインタフェースに対する注目は年々高まっており,応用システムとしても,さまざまな用途のアプリケーションが開発されている.このような人間とインタラクションを行うエージェントにとって重要な機能として,人間の意図の理解,エージェントの行動の決定,エージェントの状態表出の3機能が挙げられるが,本研究では特にエージェントが自身の感情状態を表出する機能に注目する.本研究では,CGエージェント型の音声情報案内システムである「たけまるくん」に対してエージェントの感情を付与することで,より親しみやすいコミュニケーションを実現することを目指す.「たけまるくん」はユーザ発話を想定した質問文データベースを持っており,それぞれの質問文には,応答文とエージェントのリアクション動画が対応付けられている.そして音声入力からスコアリングにより質問文が選択され,リンクされた応答文とリアクション動画を出力する.本手法では,まず情緒計算手法を用いてユーザの発話内容に対するエージェントの生起情緒を計算する.次に,気分の変化を状態遷移によって表すため,心的状態遷移ネットワークを用いる.これにより気分状態はエージェントの生起情緒をもとにして心的状態遷移ネットワーク上を連続的に変化していく.各気分における固有の応答文データベースとリアクションデータベースを作成することで,質問文に対し気分によって異なる反応を返す.さらに,事前に計算され質問文に付与された生起情緒を基に気分の遷移を行う.生起情緒は,入力文,応答文,リアクション,気分の4つのセットに対して計算される.そのために,まずこのセットを人間が認識および行動したときに心の中で認識される事象を抽出し,その事象に対して情緒計算手法を適用することで生起情緒を計算する.そして,生起情緒と心的状態遷移ネットワークの遷移コストをもとに7種類の気分状態を遷移する.従来のエージェントと本手法のエージェントに対する印象を18の形容詞に対し評価した結果,本手法においては好感因子の平均得点が高く,性格に関する項目においては,「やんちゃ」や「不真面目」の項目の平均得点が従来手法に比べて高かった.使用感に関する項目では,「楽しめそう」の項目で高い平均得点を得た.本手法は従来手法より好ましい印象を与え,エージェントが性格を持っているように感じられることから,本手法に基づくエージェントに対して,ユーザがより親しみを感じているといえる.
著者
後藤 文孝 白井 克典 森口 幸久 市村 正也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス
巻号頁・発行日
vol.96, no.66, pp.33-38, 1996-05-23
参考文献数
13

CdSO_4とNa_2S_2O_3を含み、pH値を釣2.5にした溶液から、ネサガラス(In_2O_3)基板上に、電気化学的堆積(electrochemically deposition)法によりCdS薄膜を作製した。これを窒素、空気、酸素の各雰囲気において200〜500℃で30分間アニールした。He-Cdレーザを用いて77Kでフォトルミネッセンス測定を行うと、窒素雰囲気アニールの場合、アニール温度が高いほど、488nmのバンド始発光は弱くなり、より長波長側に欠陥準位を介した発光が現れた。しかし、空気、酸素雰囲気アニールの場合、アニール温度に関わらずバンド始発光が強く観測され、欠陥準位を介した発光の長波長側へのシフトはみられなかった。また、ピークの幅は、酸素雰囲気アニールの方が狭くなった。
著者
目良 和也 市村 匠 山下 利之 三木 睦明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.465-474, 2003-08-15

相手が発した文章の内容を,相手の好き嫌いの基準をもとに解析し,そこから相手の情緒を推測する手法として,情緒計算手法が提案されている.しかしこの手法では,連体修飾構造,特に節構造による連体修飾の際の好感度計算について有効であるとは言えず,これらの情緒空間に対して,例外処理となっていた.本研究ではこのような問題点を解決するため,連体修飾節の好感度計算に対して,ファジィ真理値限定を適用することによって,適切な計算と処理の統一を試みた.ファジィ真理値限定における真理値計算のうち,言語真理値による影響を修飾節の内容による影響と見なして計算を行う.その際,"好き"の度合を表す真理値と"嫌い"の度合を表す真理値を別々に用意し,被修飾語の持つ好感度に対して,修飾節の影響が打ち消す方向に大きければ,修飾構造全体の好感度を好きから嫌い,嫌いから好きへと変化させる.さらに,情緒計算手法の処理手順についても,効率化を図った.本手法を童話「かちかち山」に現れた連体修飾節に適用した結果を述べる.
著者
山下 利之 高橋 雅博 酒井 秀昭 武田 利浩 市村 匠
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.105-112, 2000-04-15
被引用文献数
8

高度情報化社会の発展に伴い, コンピュータとのコミュニケーションにより, 長時間の仕事, 作業を進める機会がますます増えつつある.人間同士のコミュニケーションの場合, 自然言語によるverbal情報に, 表情や身振りによるnonverbal情報が加わり, 円滑なコミュニケーションが行われている.そこで, 人間とコンピュータとの円滑なコミュニケーションを促進するインタフェースとして, 本研究では顔に注目した.そして, 特定の状況において生じる感情を表している表情をファジィ推論によって選択するモデルを提唱した.眉と目の傾きに関する3条件と口の形の3条件の組合せによる9種類の顔を用いてファジィ推論モデルを構成した.本モデルを, コンピュータ画面上に入力された文章に表されている感情を表情で表現するシステムへ応用することを試みた.システムに関する質問紙調査の結果, ヒューマンインタフェースとしての顔表示の有効性が示された.
著者
坂田 一拓 市村 重博 倉島 顕尚
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.6, pp.37-42, 2000-01-20

携帯電話を用いたメールサービスは、単独の受信者にメールを送信する機能しか持たないため、利用者がグループコミュニケーションを行う際にはメーリングリストを用いる。コミュニケーションには、そこで交換される情報を目的とするものと、雑談のように情報交換の行為を目的とするものがある。メーリングリストには、後者のコミュニケーションを行う場合、そこに参加する意思のない者にまで不要なメールを配信してしまう、という問題があった。本論文で提案するメーリングリストサーバは、グループの各メンバの意思に応じてメールの配送先を動的に変更するセッション召集方式により、この問題を解決する。A mailing-list system is used for group communication over mobile-phone e-mail services, since the services allow their users to specify only one recipient for each e-mail. Two types of group communication can be considered, i.e., the exchanging of concrete information and mere casual conversation. Traditional mailing list servers are not well suited for the latter, since they deliver e-mails even to members who are not interested in the content of the e-mails. As a means of solving this problem, we propose a mail-delivery method called "session-call method" which dynamically changes the members of the delivery group in accordance with recipients' requests.
著者
村川 由加理 作田 裕美 永井 春歌 島本 千秋 荒井 文恵 市村 由紀乃 田中 和代 松岡 仁美
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-9, 2020 (Released:2019-10-18)
参考文献数
14

目的:A病院救命救急センターにおいてシャドウイングによる新人教育を受けた新人看護師の気づきを明らかにすることである。 方法:A病院救命救急センターに勤務する新人看護師6名を対象に、シャドウイング新人教育後1カ月の時点において、「シャドウイング指導で学んだこと」をテーマに400字程度での自由記述を依頼し、収集した自由記述から、新人看護師の気づきを抽出し質的に分析した。 結果:シャドウイング新人教育による新人看護師の気づきは、①〈救命救急センター先輩看護師の看護の特徴〉と②〈救命救急センター看護師として私がこれから身につけなければならないこと〉に分類することができた。①では、【よりよい看護への使命】【ケアリングの実践】【安全と安楽と合理性の追求】【緻密な観察を重視する】【効果的なエビデンスの活用】【メンバーシップを発揮する】が抽出された。②では、【看護師に求められる姿勢の確立】【先輩から学ぶ】【貪欲な知識の摂取】【救急看護実践の習得】が抽出された。 結論:新人看護師育成に取り入れたシャドウイング新人教育により、新人看護師は、救命救急センター看護師の特徴をとらえながら同時に救命救急センターで必要な看護や看護専門職のアイデンティティの形成に必要な項目を能動的に導き出すことができていた。シャドウイングによる教育は、自己啓発や自己研鑽への意識を向上させる教育として効果が高いことが示唆された。
著者
市村 直也 小山 祥美 佐藤 明日香 町田 友美 萩原 三千男 東田 修二
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.708-715, 2018-10-25 (Released:2018-10-27)
参考文献数
11

尿沈渣目視法における識別基準の標準化と検査担当者の分類精度を明らかにするため,『尿沈渣検査法2010』の画像による内部精度管理(internal quality control; IQC)システムを開発した。これは担当者に沈渣成分画像をモニタ上で分類させて,その精度を定量評価するものである。本研究は担当者の分類精度の検証と,臨床検査値の技師間差に対する効果の検証を目的とした。3名の担当者がシステムによるIQCを実施し,成分ごとの一致率と的中率を算出した。さらに臨床検査値の沈渣成分ごとの技師間差と陽性率の時系列変化を観察した。一致率または的中率は,60%を下回った成績不良な成分が担当者により異なっていることを示した。技師間差と陽性率変動幅の経時的推移は,IQC実施後に両値が拡大または縮小した成分があることを示した。さらに技師間差に統計学的有意差を認めた成分の数がIQCを実施した前後3ヶ月で比較すると,11成分から7成分に減少したことがわかった。開発したシステムは担当者の力量を数値化し,またIQCとしての活用により臨床検査値の技師間差に影響する可能性を示した。これは尿沈渣目視法における識別基準を標準化し,さらに検査室内の精密度の向上が期待できる。しかし患者背景などから総合的な判断が必要な沈渣成分ではその効果が限定される可能性があり,臨床検体での陽性率による技師間差の定期評価が必要である。
著者
水野 武郎 市村 秀樹 柴田 和男 田中 宏紀 山川 洋右 丹羽 宏 正岡 昭
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.55-62, 1985-02-28 (Released:2011-08-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

原発性肺癌56例の腫瘍径とtumor doubling timeからGeddesのノモグラムを用いて予測生存期間 (PST) を算出した.このPSTの組織型別平均値は, 扁平上皮癌14.7±11.8月, 腺癌39.9±437.月, 小細胞癌10.4±9.8月, 大細胞癌13.3±9.4月であった.PSTは実際の生存期間 (AST) と密接な相関Y=2.33±0.82X (r=0.80, p<0.01) を示し, 肺癌治療の効果を判定する良好な指標になると考えられた.PSTを大きく上廻るASTを示したものは, 1例を除き全例切除例であった.
著者
中島 功 大塚 洋幸 市村 篤 本多 ゆみえ 梅澤 和夫 関 知子 中川 儀英 猪口 貞樹
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.219-224, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

家禽や野鳥が保有する低病原性鳥インフルエンザウイルスであってもヒトが死に至る例が報告されており, これまで定説となっていた豚由来のウイルス感染とは違うルートが推測される。鳥からヒトへの感染に関する最近の文献調査, およびモンゴルへの調査視察を踏まえ鳥から直接感染するインフルエンザの動向を本稿では報告する。アザラシのインフルエンザ, 日本のイノシシのインフルエンザ, 豚便所, 北米大陸における豚のインフルエンザ, H7N9の動向, スペイン風邪, シアル酸レセプタなどを文献調査した。その結果, ヒト側の遺伝子の発現の仕方の違い (シアル酸レセプタ), ウイルス側遺伝子再集合, RNAポリメラーゼの読み違いなどにより, 鳥型インフルエンザが直接ヒトに感染し, 重篤な症状を引き起こす可能性がある。臨床医としてこれらの報告を鑑み, 患者の感染ルートには常に十分な注意を払うべきと考える。
著者
藤原 智 三木原 香乃 市村 美沙 石本 正芳 小林 知勝
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.161-169, 2023-09-30 (Released:2023-11-02)
参考文献数
11

In the Atosanupuri volcanic complex in the Kussharo caldera, eastern Hokkaido, Japan, short-term uplift followed by subsidence around 1994 was detected using interferometric SAR (InSAR) analysis. In this study, an InSAR time series analysis from 2014 to 2022 using the ALOS-2 satellite revealed continued long-term subsidence of the entire Atosanupuri volcanic complex. The subsidence followed an exponential trend, with a relaxation time constant of several decades. However, long-term data are required to determine future displacement convergence due to frequent temporary and unsteady stagnations and uplifts. In contrast, the northwestern part of the Rishiri lava dome showed a constant subsidence rate without fluctuations. The results of the InSAR time-series analysis from 2016 to 2020 demonstrated that a horizontal sheet-like crust (sill) located 5.3 km below the surface of the Atosanupuri volcanic complex is shrinking at a rate of −1.44 million m3/year, whereas another sill at a depth of 700 m below the surface of the northwestern part of the Rishiri lava dome is shrinking at a rate of −21,000 m3/year. Although the residuals after subtracting these pressure source models indicate displacements of a few millimeters per year, these are most likely systematic errors inherent in InSAR. The InSAR time series analysis proved to be highly accurate in capturing temporal changes and spatial distribution, even when the displacement is less than 1 cm per year, and the results were not easily confounded by various errors. Therefore, data accumulation is crucial for InSAR time-series analysis.