著者
松坂 貫太郎 緒方 浩顕 山本 真寛 伊藤 英利 竹島 亜希子 加藤 雅典 坂下 暁子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.389-396, 2019 (Released:2019-11-08)
参考文献数
16

血液透析患者では,摂取不足,腎での生合成の減少や透析療法による除去などのためにカルニチンが極めて高頻度で欠乏すると報告されており,カルニチン欠乏がさまざまな腎不全合併症(エリスロポエチン抵抗性貧血,低左心機能や筋痙攣等)に関与することが想定されている.本研究ではカルニチン代謝障害の実態を検討するため,カルニチン静脈投与の有効性を検証する前向き観察研究(「透析患者の合併症に対するL-カルニチン静注製剤の有効性の検討」)に登録された昭和大学横浜市北部病院およびその関連施設の外来血液透析患者501名に対して,血中カルニチン分画を測定し,その関連因子を横断的に検討した.主要評価項目として遊離カルニチン(Free)濃度とアシルカルニチン濃度/Free濃度(A/F比)を解析した.Free濃度を3群間(充足群(36≦Free≦74µmol/l),不足群(20≦Free<36µmol/l),欠乏群(Free<20µmol/l))に分類したところ,充足群は全体のわずか8.4%であり,A/F比も>0.4が98.8%と,ほとんどの患者がカルニチン代謝障害を合併していた.Free濃度とA/F比それぞれに関連する因子を多変量解析で検討したところ,カルニチン代謝障害と血清尿素窒素濃度(SUN),透析歴,性別,アルブミン,リンや標準化タンパク異化率(nPCR)との間に有意な関連がみられた.一方,血液透析療法の差異(血液透析と血液ろ過透析)は,カルニチン代謝障害に関連していなかった.興味深いことに,ともに栄養状態,タンパク摂取状況の指標とされるSUNとnPCRがFree濃度との関連では全く反対の関連性を示したことである.透析患者におけるカルニチン代謝障害の病態生理について更なる検討が望まれる.
著者
早野 駿佑 長沼 篤 岡野 祐大 鈴木 悠平 椎名 啓介 吉田 はるか 林 絵理 上原 早苗 星野 崇 宮前 直美 工藤 智洋 石原 弘 小川 晃 佐藤 賢 柿崎 暁
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.5, pp.828-836, 2016-05-05 (Released:2016-05-05)
参考文献数
23

51歳女性.混合性結合組織病(MCTD)治療中,肝に径10~40mmの多発結節を認めた.限局性結節性過形成(FNH)が疑われたが,肝生検で結節性再生性過形成(NRH)様結節をともなう特発性門脈圧亢進症(IPH)と診断した.NRHなどの良性肝細胞性結節は,共通の原因を基礎に発生する類縁疾患で,近年門脈域形成異常症候群と呼ばれる.MCTDにNRH様結節をともなうIPHの合併はまれであり,今回報告する.
著者
福居 誠二 門田 暁人
雑誌
ウィンターワークショップ2018・イン・宮島 論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.32-33, 2018-01-11

本稿では,尖度と歪度を考慮した予測モデル有効性について検討した結果について報告する.
著者
津村 一美 渡邊 裕之 橋本 昌美 嘉治 一樹 高橋 美沙 重田 暁 千葉 一裕 月村 泰規 見目 智紀 高平 尚伸
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0965, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】棘上筋の筋活動を高める方法として,従来からEmpty can training(ECT)が実施されている。ECTは棘上筋が働きやすい肢位で実施されるため,棘上筋に対して効果的なトレーニング方法であり,他の棘上筋トレーニングと比較しても,棘上筋のより高い筋活動が得られると報告されている。しかし,これらの報告の多くは横断的研究に基づいており,ECTの介入効果を検証した縦断的研究は少ない。そのため臨床現場では,経験則に基づいた治療方法として対象者に施行しているのが現状である。従来,棘上筋の機能評価として肩甲骨面挙上筋力の測定が実施されてきたが,近年では棘上筋の正確な評価が困難であると報告されている。一方で高橋らの報告より,棘上筋筋活動と棘上筋筋厚との間に相関関係があり,筋厚測定が筋活動を反映することが明らかになっている。そこで,本研究は筋厚を測定することにより,ECTが棘上筋筋活動に及ぼす影響を検証し,介入効果を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は肩関節疾患の既往がない成人男性15名(年齢20.8±0.9歳)の30肩とした。対象者の年齢,身長,体重,利き手,スポーツ歴を聴取した。トレーニング介入前に棘上筋筋厚,最大等尺性肩甲骨面挙上筋力を測定した。対象者は週5日,6週間にわたりECTを実施した。トレーニング介入後にトレーニング介入前と同様の項目を測定した。棘上筋筋厚測定は超音波画像診断装置(SSD-4000,ALOKA)を用いて行った。肩甲棘長を100%とし,肩甲棘基部から外側へ10%の部位を測定位置とした。測定位置において,プローブを肩甲棘に対して垂直に固定し,棘上筋の短軸画像を描出した。浅層筋膜と深層筋膜との最大距離を棘上筋筋厚として測定した。棘上筋筋厚は各2回測定し,平均値を採用した。測定肢位は座位とした。測定条件は肩関節内旋位,肩甲骨面挙上30°にて他動保持時とセラバンド負荷時の2条件とした。なお,2kg負荷はセラバンドを用いて手関節近位部に負荷した。最大等尺性肩甲骨面挙上筋力測定は肩関節内旋位,肩甲骨面挙上30°での肢位にて測定した。検者はHand-held dynamometer(μ-tas F-1,ANIMA)のセンサーを手関節近位部に固定し,対象者は3秒間の最大等尺性収縮を肩甲骨面上で2回発揮し,平均値を採用した。ECTは,手関節近位部にセラバンドを固定し,肩関節内旋位にて肩甲骨面0°~30°挙上位までの反復運動を実施した。1回の運動を2秒で完遂し,20回を1セット,インターバルを1分として,1日に3セットを実施した。検者は週2日,代償動作が生じずに適切な肢位でトレーニングを実施できているかを確認した。統計学的解析にはWilcoxonの符号付順位検定を用い,棘上筋筋厚および最大等尺性肩甲骨面挙上筋力をトレーニング介入前後で比較した。なお,すべての解析において有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は同学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2012-014)。なお,対象者には書面にて同意を得た。【結果】棘上筋筋厚は他動保持時,セラバンド負荷時の条件において,トレーニング介入前と比較し,トレーニング介入後に有意に増大した(p<0.01)。最大等尺性肩甲骨面挙上筋力はトレーニング介入前後で有意な変化を認めなかった(p>0.05)。【考察】先行研究より,筋厚は筋活動を反映すると報告されていることから,トレーニングによる棘上筋筋厚の増大は棘上筋筋活動の増加を示唆していると考えられた。しかし,最大等尺性肩甲骨面挙上筋力に変化は認められなかった。最大等尺性肩甲骨面挙上は,運動時に三角筋による張力加重が生じるため棘上筋の筋張力に対する寄与は少ないと報告されている。そのため,最大等尺性肩甲骨面挙上筋力測定は,棘上筋の機能向上を反映する指標としては不十分であり,トレーニング介入前後で変化が認められなかったと考えられた。今回の研究では,対象者を健常成人男性とし,ECTの介入効果を検証した。しかし,実際に臨床で棘上筋トレーニングを実施する対象は,腱板断裂や反復性脱臼等の疾患を有する者である。そのため,今後は,実際に棘上筋の機能を高める必要のある対象者に対しトレーニングの効果を検証していく必要がある。また,ECTと同様に,従来から実施されてきたFull can trainingとの比較を検討し,臨床現場において,それぞれのトレーニングをどのような特徴のある患者に適応させるのかを検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】ECTによる治療介入に対して,棘上筋筋活動量の向上が認められ,理学療法としてのエビデンスを構築する一助となった。
著者
大場 百香 三輪 忍 進藤 智司 津邑 公暁 八巻 隼人 本多 弘樹
雑誌
研究報告システムとLSIの設計技術(SLDM) (ISSN:21888639)
巻号頁・発行日
vol.2017-SLDM-179, no.28, pp.1-6, 2017-03-02

マルチコアニューラルネットワークアクセラレータでは,メモリとコア間のデータ転送時間がボトルネックとなっており,ニューラルネットワーク計算を効率良く行うことができない.そこで本論文では,このデータ転送をブロードキャスト化することでボトルネックを解消するアクセラレータを提案し,性能分析およびハードウェアコストの評価を行った.
著者
下畑 享良 木村 暁夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.825-832, 2021 (Released:2021-12-22)
参考文献数
33

抗IgLON5抗体関連疾患は,2014年に睡眠時随伴症,閉塞性睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害と,タウオパチーを示唆する病理所見を呈する疾患として報告された.これまで八つの臨床病型が報告されている.睡眠時随伴症と閉塞性睡眠時無呼吸症候群を合併する患者,また運動異常症,運動ニューロン病,認知症患者において特徴的な睡眠時随伴症を合併する場合は,血清ないし脳脊髄液の抗IgLON5抗体を測定することが望ましい.一般に予後は不良であるが,免疫療法により改善する症例も報告されており,早期診断による病初期からの免疫療法が,予後を改善する可能性がある.
著者
小林 暁雄 桂樹 哲雄 伊藤 研吾 稲冨 素子 山崎 啓太 川村 隆浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3Yin214, 2022 (Released:2022-07-11)

ムーンショット型研究開発「フードロス削減とQoL向上を同時に実現する革新的な食ソリューションの開発」では、美味しく、かつ、一人ひとりの体質や体調改善に効果的な料理を自動的に提供する、AIシェフマシンの実現を目指している。農研機構では、このAIシェフマシンの実現に向けて、栄養・機能性食品データ、調理レシピデータ、プロファイルなどを適切に構造化した知識グラフ(ナレッジグラフ)を構築し、一人ひとりの嗜好、健康状態に合わせたレシピデータを3Dフードプリンタに出力するシステムを構築している。知識グラフの構築にあたっては、食に関する大規模オントロジーであるFoodOnとリンクすることで、コンソーシアムが独自に解析・収集したデータでは網羅しきれない成分や調理手法などについても取り込んでいる。知識グラフに基づく推論技術としては、食に関する知識をビックデータで確率的に取り扱う手法の適用を検討している。本稿では、構築された知識グラフ及び収録されたデータについて解説するとともに、知識グラフに対する推論手法の適用実験について解説する。
著者
細谷 暁夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.81-85, 2019-07-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
3

1.はじめに平成のある年のことである.本学の論理学の教授が私のところに来て,仙台に東北大学文学部教授の私の父の家を訪ねた思い出話を切り出しに,文理融合科目の総合Bの授業を私に依頼した.
著者
鷲野 巧弥 志田 大 谷澤 徹 那須 啓一 宮本 幸雄 井上 暁
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.2621-2625, 2012 (Released:2013-04-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

大腸癌発癌の一因として,日本住血吸虫感染症が指摘されている.今回,癌部に日本住血吸虫卵を認めた同時性多発大腸癌の1例を経験したので報告する.症例は79歳男性,18歳まで日本住血吸虫の流行地であった山梨県甲府盆地に居住していた.健診での便潜血の精査で進行S状結腸癌および早期下行結腸癌と診断した.内視鏡的切除を行った下行結腸M癌の病理組織において,茎部・粘膜筋板直下に日本住血吸虫卵を認めた.同時に切除した大腸腺腫4カ所には虫卵はなかった.S状結腸癌に対しては,腹腔鏡下S状結腸切除術を行った.病理所見は,中分化管状腺癌,type2,45×35mm,SS,N1(1/13)であり,H0,P0,M0,fStage IIIaであった.S状結腸癌病巣の一部および周囲粘膜筋板直下にも日本住血吸虫卵を認めた.虫卵の存在と発癌の関与が示唆された.
著者
栗駒 かおり 池 康平 畑 知宏 久木 はる奈 堀 晋之助 河合 春菜 服部 暁穂 山田 めぐみ
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P3052, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】 有酸素運動として一般的にはウォーキング(速歩)、ジョギング、サイクリング、水中運動等が挙げられる.しかし、臨床では心疾患及び骨・関節疾患等の身体的なリスクがある場合において、自転車エルゴメーター(以下エルゴ)及びリカンベントを用いることが多い.それらを使用するにあたり、それぞれの特性を把握しておくことは重要である.しかし、エルゴとリカンベントを比較した報告は少ない.そこで我々は、双方に心肺運動負荷試験(以下CPX)を実施し、駆動姿勢の変化が有酸素運動に及ぼす影響について検討した.【方法】 対象は同意を得た健常成人10名(男性6名女性4名、年齢24.6±5.4)とした. エルゴを使用し、起立座位及び、リカンベント様姿勢にて回転数60rpmのRamp負荷法(男性20watts/min、女性15watts/min)でCPXを施行した.呼気ガス分析はミナト医科学社製エアロモニターAE300Sを用いた.比較項目は、運動開始から嫌気性代謝閾値(AT)までの負荷増加に対する酸素摂取量(AT-V(ドット)O2)・時間(AT-Time)・負荷量(AT-Load)とした.また、同様に呼吸性代償点(RC)までの、酸素摂取量(RC-V(ドット)O2)・時間(RC-Time)・負荷量(RC-Load)・ATからRCまでの酸素摂取量(AT- RC V(ドット)O2)、及びボルグスケールも算出・比較した.統計処理はスチューデントのt検定を用いて検討した.有意水準は5%未満とした.【結果】 CPXから得られた双方の各指標は有意な差を認めなかった.また、V(ドット)O2及びボルグスケールは有意差を認めなかったが、リカンベント様姿勢での施行が高値傾向であった.【考察】 本研究において駆動姿勢の変化は、CPXの各指標には有意な差を認めなかった.このことから、身体的なリスク(肥満、高齢者、長時間の端坐位が困難な腰部疾患や体幹が不安定な片麻痺)を有し、エルゴ使用困難な場合、リカンベントを使用することで、エルゴと同様の有酸素運動が実施出来ることが示唆された. しかし、ボルグスケールや動員筋活動に影響すると言われているV(ドット)O2はAT及びRCにおいて有意な差を認めないが、リカンベント様姿勢が高値傾向であり、被検者からは下肢の疲労の訴えが多かった.その原因として、リカンベント様姿勢は体幹が固定され下肢を中心とした運動が多い、また、駆動時の下肢の運動方向がエルゴでは従重力位に対し、リカンベント様姿勢は水平方向であったため、筋活動に違いを生じたのではないかと考える.このことから、リカンベントの使用は有酸素運動に限らず機能訓練にも有効であると考えられる.本研究では双方の下肢筋活動量は測定していないが、今後それらを比較・検討する必要がある.【まとめ】 本研究により、エルゴ使用時の駆動姿勢の変化は双方ともに同様の有酸素運動効果が得られると示唆された.
著者
暁烏敏 著
出版者
香草舎
巻号頁・発行日
1937
著者
長坂 行雄 山本 暁
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.348-354, 1985-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
23

著者らはすでに長期酸素療法で著効をみた原発性肺高血圧症の第1例 (Chest 74: 299) を報告しているが, この例は酸素投与開始後8年の現在も夜間のみの酸素吸入によって良好に経過している. 以下に報告する例はこの第一例と異り酸素の急性効果は認められなかったが, 長期酸素療法により同じく改善を認めた. 症例は原発性肺高血圧症の10歳男子でカテーテル中に酸素への反応はほとんど認められず, phentolamine の投与では逆に30%以上の肺動脈圧の急激な上昇を認めた. しかし, 酸素の長期投与の結果 NYHA IV°→II°へと有意の改善を認めた. EKG, 胸部レ線像では特に改善を認めなかったが, 理学所見で肺動脈, 右室の拍動は軽微となり, 右心性4音は消失した. 5ヵ月間の安定期の後, 酸素吸入時間が大幅に短縮し,「感冒」様症状の後, 急速に悪化した. この後3ヵ月で治療に反応し難い右心不全で死亡した. 剖検により典型的な原発性高血圧症の肺血管病変 (plexiform lesion), 高度の右室肥大を認めた. 左心系にはシャント, 弁膜症などの異常は認めなかった. 肺実質にも異常を認めず, 酸素による障害時にみられるような細気管支肺胞炎は認めなかった. 著者らは現在, 4症例に家庭酸素療法を行っており, 全例良好な経過をとっている. 原発性肺高血圧症における長期酸素療法は, 血管拡張剤の投与時にみられるような低血圧, 逆説的な肺動脈圧の上昇も認められず, 安全かつ有効であり, 本症に先づ試みられるべき治療と考えられる.