著者
曽良 一郎 猪狩 もえ 山本 秀子 池田 和隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.6, pp.450-454, 2007 (Released:2007-12-14)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

モノアミントランスポーターはコカイン,メチルフェニデート,メタンフェタミン(MAP)などの覚せい剤の標的分子であることから,覚せい剤依存の病態における役割を明らかにするための詳細な精神薬理学的研究が行われてきた.モノアミントランスポーターには,各モノアミンの前シナプス終末に主に発現する細胞膜モノアミントランスポーターと,すべてのモノアミンを基質とするシナプス小胞モノアミントランスポーター(VMAT)の2種類がある.覚せい剤は,モノアミン輸送を阻害し,神経細胞内外の分画モノアミン濃度を変化させ薬理効果を示す.コカインは細胞膜モノアミントランスポーター阻害作用を有し,その報酬効果はドパミントランスポーター(DAT)を介しているとする「DAT仮説」が提唱された.しかし,DATとセロトニントランスポーター(SERT)が共に関与していることが示された.ただし,SERTよりもDATがより大きな役割を果たしていると考えられる.「DAT仮説」は当初提唱された以上に複雑であると思われる.また,メチルフェニデートを健常人に投与すると投与が興奮や過活動を引き起こすが,注意欠陥多動性障害(ADHD)患者へは鎮静作用がある.DAT欠損マウスはメチルフェニデートを投与されると移所運動量が低下することから,ADHDの動物モデルの一つと考えられる.MAPはコカインとは異なる薬理作用を有する.コカインがDATを阻害し,細胞外ドパミン(DA)を増加させるのに対して,MAPはDATに作用して交換拡散によりDAを細胞外へ放出させることで細胞外DA濃度を増加させる.さらに,MAPはVMATに作用して小胞内のDAを細胞質へ放出させる.MAPの反復使用は,逆耐性現象(行動感作)や認知機能に障害を引き起こすことから,覚せい剤精神病や統合失調症などの動物モデルの一つと考えられている.依存性薬物のモノアミントランスポーターへの複雑な作用機序を明らかにすることにより,薬物依存の病態の新たな知見が得られてくると期待される.
著者
曽山 奉教 吉田 秀人 下村 大樹 高橋 幸博
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2013-04-08)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

体外循環時のヘパリン化血における血液凝集塊の原因としては、主に血小板凝集・血栓形成説と「いが状赤血球」凝集塊説の2説があるが、機序解明には至っていない。今回、体外循環で生じるアルカレミア環境下で出現する血液凝集塊が「いが状赤血球」に起因することを裏付けるため、体外循環でのヘパリン化血が、アルカレミア環境において血小板凝集能および血液凝固時間に与える影響を検討した。結果、ヘパリンナトリウム血で作製した血小板は、アルカリ負荷(pH9)で粒径25μm以下の小凝集塊を形成したものの、粒径50μm以上の大凝集塊の形成には至らなかった。また、PTおよびAPTTはともにアルカリ負荷(pH9)で有意に延長した。したがって、体外循環時のアルカレミア環境下での血液凝集塊形成に血小板凝集、血栓形成は関与せず、「いが状赤血球」に起因することが強く示唆された。
著者
海上 耕平 小木曽 智美 平間 崇 大木 里花子 別府 寛子 石渡 亜由美 内田 啓子
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.363-370, 2021 (Released:2022-02-23)
参考文献数
40

In Japan, organ donor shortage is a chronic problem in transplantation; therefore, the proportion of living-related organ transplantations is higher than that of deceased donor transplantations. For the development of living-related organ transplantation, guaranteeing the health of transplantation donors is crucial, and further donor evaluation and treatment after organ donation are required. Therefore, transplant physician intervention would be desired not only for recipient complication treatment but also for donor treatment throughout transplantation.
著者
吉井 ゆかり 徳山 喜政 今野晃市 曽根 順治
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.18(2006-CG-122), pp.7-12, 2006-02-20

CGアニメーションでは,人物や動物などのキャラクターの形状モデルが重要である. これらの形状を複数枚の Bezier,B-spline や NURBS などのパラメトリック曲面で表現する場合,曲面同士を滑らかに連続するのは困難であり,複雑な処理を必要とする.この問題を解決するために,近年細分割曲面(Subdivision Surfaces)がよく利用されている.しかし,効率的でデザイナーの意図するようなモデリングが依然として大きな課題である.一方,曲線メッシュを Gregory パッチで内挿することで滑らかな曲面を生成するモデリング手法はよく知られている.この方法は,曲線メッシュを変形しても曲面同士の G1 連続性が保たれるという大きなメリットがある.本研究では,ポリゴンメッシュと同一位相をもつ Catmull-Clark 細分割曲面の曲線メッシュを生成し,曲線メッシュを Gregory パッチで内挿するようなモデリング手法を提案する.本手法により生成した曲線メッシュの曲面形状と細分割曲面の形状が非常によく似ている.また,直観性と局所変形性においては曲線メッシュの曲面が細分割曲面より優れているため,自由曲面形状のモデリングにおいては,ポリゴンで大まかな形状を生成したあと,曲線メッシュを変形して最終形状を生成する手法が有用である.
著者
藤井 秀俊 佐藤 秀昭 粕谷 潤一郎 小坂 梨奈 中曽 浩一 深井 潤
出版者
公益社団法人 日本冷凍空調学会
雑誌
日本冷凍空調学会論文集 (ISSN:13444905)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35, 2018-03-31 (Released:2019-03-31)
参考文献数
14

未利用熱の蓄熱による熱の最適利用は,各種のヒートポンプシステムの高効率化・省エネルギー化の方法の一つである.飲料自動販売機は圧縮機によるヒートポンプによって加温・冷却を行っており,その消費電力量の約6 割を加温が占めていることから,加温の消費電力の改善が求められている.本研究では,CO2 ヒートポンプ飲料自動販売機の省電力化を目的に,2 種類の潜熱蓄熱槽の設計指針を明らかにした.ヒートポンプのCO2 冷媒の熱を蓄熱する2 種類の蓄熱槽の伝熱を検討した結果,ヒートポンプ停止時の加温庫室における空気の加熱に用いる第一の蓄熱槽では,蓄熱材側の熱伝導促進の効果と空気側の熱伝達促進の必要性を明らかにした.また,圧縮前のCO2 冷媒の加熱・蒸発に用いる第二の蓄熱槽では,蓄熱槽における各パラメータの寄与度を示した.
著者
曽我 英雄
巻号頁・発行日
1989-03-18
著者
曽我英雄著
出版者
敬文堂
巻号頁・発行日
1987
著者
阿曽村 智子 Tomoko Asomura
出版者
学習院女子大学
雑誌
学習院女子大学紀要 = Bulletin of Gakushuin Women's College (ISSN:13447378)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-19, 2003-03-31

This article aims at evaluating the performances of the New National Theater which was opened in 1997 as Japan’s first full-scale National Opera House. Evaltlation is conducted through the analysis based on the reports of surveys commissioned by the Theater for improving its management. In analyzing the reports, the author took into consideration the method applied by Baumol&Bowen in their co-authored work, P6吻7〃zing、Arts-the Economic 1)ilemma, a classical achievement in the field of cultural economics. The analysis shows that the age composition of the opera audience of the New National Theater is considerably high (49.90n average) and that the mainstream (frequent visitors) belong to the graying generation that lived through Japanis post-war high-economic growth. The inancial statements of the New National Theater seem to indicate its stable capacity to survive, mainly on the presentation of established pieces of opera, agreeable to the mainstream of the present audience. In view of the mandate of the New National Theater to promote the creation of modern performing arts, however, it is recommended that the Theater make further efforts to diversify the audience.
著者
川崎 剛志 曽根 正人 佐藤 明浩 近本 謙介
出版者
就実大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

まず行尊の伝記研究では、史実研究と偶像研究との双方を視野に入れて研究を進め、その成果として川崎が「行尊年譜(稿)」を作成した(『研究成果報告書』)。この年譜に基づいて考察すると、史実研究の面では、(1)行尊の宗教活動の中核には護持僧としての活動があり、熊野御幸先達の事績などもその枠組みの中で捉える必要があること、(2)行尊の験功の事例は天台宗寺門派の伝記よりもむしろ『真言伝』に多く記録されており、史実の解明にも有効であることが判明した。他方、偶像研究の面では、(3)天台宗寺門派においては長承三年(1134)園城寺金堂再興供養を最高潮とするかたちで行尊伝が構成されていることが判明し、以後の再興事業において行尊による再興が常に規範とされたことが推測される。上記については研究論文を準備している。次に行尊の詠歌研究では、佐藤がその表現を和歌史上に位置づけるべく試みた(『研究成果報告書』)。行尊の和歌表現は同時代のそれと共通するところが多く、特異な体験によって裏打ちされた特徴的な表現が微温的に現われている、というのが結論である。これらと並行して、行尊が活躍したのと同時期、院政期における他宗の山岳信仰にも目を配り、川崎が南都(興福寺及び真言律宗寺院)における葛木峯=金剛山信仰の展開を跡付けた。なお研究を進めるなかで、行尊の詠歌が、行尊の宗教活動、ひいては後代の天台宗寺門派による偶像化を支える重要な道具として機能したことも一層鮮明となったが、その論証は今後の課題とせざるをえなかった。
著者
有本 純 曽根 直人 森井 昌克
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.1429-1433, 2019-10-14

未使用のIPアドレス空間であるダークネットには,マルウェアの感染活動やスキャン活動などの不正な活動に起因しているパケットが観測される.ダークネットのパケットを観測することにより,インターネット上で発生している不正な活動が把握可能になる.本研究の目的はダークネットを観測することにより,スキャンパケットの傾向と分析を行うこととした.初めに,大学機関が所有するIPアドレスによる不正トラフィックの解析を行った.解析結果の中から特徴的な挙動を示したIPアドレスを抜粋し,その挙動の解析を行った.次に,スキャンパケットのIPアドレスが詐称されているかどうかを調べた.また,ドメインとIPアドレスを対応付けて管理するシステムであるDNSの逆引きを使用し,どれくらいのパケットが詐称されているのかを調べた.最後に,健全なネットワークを構築するために,IPアドレスの詐称を防ぐ取り組みであるBCP38の普及や,使用しているIPアドレスの情報を提供して管理することを提案した.これらを実行することにより,ダークネット観測の有効性を発揮し,悪性のトラフィックを早急に検知することが可能になる.
著者
中曽根 春菜 北口 紗織
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.165, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
2

食べ物の食感に関するオノマトペ(擬態語・擬音語)による色彩連想を検討した.特に菓子の食感に関する9の刺激語(かりかり,ざくざく,ぱりぱり,ふわふわ,もちもち,ぷにぷに,ぷるぷる,とろとろ,しゅわしゅわ)について,色彩印象,単語の印象,連想語を調査した.色彩印象については,被験者にディスプレイ上で各刺激語から連想される1色を調色させた.単語の印象については5段階,15項目のSD法を用いて印象評価を行った.最後に刺激語から連想される語を2語までの自由記述により調査した.得られた色データは分光放射輝度計で測色し,a*b*色度図,L*C*色調図を作成した.その結果,色彩印象は1語(しゅわしゅわ)のみ9割の被験者が類似色相色を連想し,他8語については刺激語ごとに特徴が表れ,全体として3グループに分類された.グループごとの特徴は単語の印象との関連が示唆され,色彩印象と単語の印象の相関を考察したところ,5つの印象項目は色彩印象との相関が確認された.また,いくつかの連想語は刺激語の色彩印象との関連の可能性が示された.
著者
曽我 太佐男 佐々木 秀昭 白井 貢 九嶋 忠雄
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
サーキットテクノロジ (ISSN:09148299)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.380-394, 1993-07-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

プリント配線板上に搭載される電子部品のスルーホール継手構造について, 温度サイクル加速試験による信頼性評価を行った。スルーホール継手のコネクタなしのピン構造におけるクラック進展要因を明らかにし, クラック進展を低減するための対策を示した。この構造では, 汎用のガラスエポキシ基板に対して, ピンと基板間の熱膨張差で生ずるはんだの最大せん断歪とクラック発生率との相関性は得られないことがわかった。そこで, ピン, 基板, はんだ間の熱膨張差で発生する軸方向に作用する最大応力で評価した結果, 最大応力とクラック発生率との相関性を見出した。その結果, 応力が大なるほどクラック発生率が高いこと, ガラスエポキシ基板の場合, ピン径が大なるほど応力は小さく, クラック発生率が低いこと等を明らかにした。他方, 実用的な構造であるコネクタ付ピン継手のクラック進展についても検討した。クラック進展の主な駆動力は, コネクタとプリント配線板との基板面方向の熱膨張差で生ずる曲げによる歪である。コネクタ両端部のピン継手におけるクラック進展は中央部ピン継手に比べ顕著に大であり, コネクタの構造, 寸法効果が大きいことがわかった。一般的に, スルーホール継手構造においては, ピンが穴の周囲で拘束されるため, 初期にフィレット部でクラックが早期に発生しても, クラック進展速度はクラック進展と共に低下してくる。このため, スルーホール継手はフリップチップ形, フラットパッケージ形継手と比べ, 高信頼構造であると考えられる。
著者
堀 天 髙木 祐介 相川 悠貴 福地 かおり 吉川 明里 藤原 紗音 小木曽 洋介 下村 有佳里 家吉 彩夏 枝元 香菜子 関 和俊 堀田 典生
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.761-773, 2022 (Released:2022-09-27)
参考文献数
44

Sudden cardiac death is a common cause of death during hiking activities. Since the exaggerated blood pressure (BP) response to physical activity is known to increase the risk for the development of cardiovascular events, hiking might also induce an excessive BP response and such events. The purpose of this study was to investigate the effects of hiking at around 1,200 m on the circulatory responses to isometric handgrip (IHG) exercise. Five healthy women volunteered to hike and stay at Mt. Ibuki (altitude, 1,377 m; Shiga, Japan) for 2 consecutive days. On the first day, the participants ascended to 1,220 m (Hiking study), and on the second day, they drove to an altitude of 1,260 m where they remained for about 5.5 h (Staying study). The participants performed IHG exercise before (altitude, 220 m), during (altitude, 990 m), and after (altitude, 220 m) hiking in the Hiking study, and before driving (altitude, 160 m), after staying for 5 h (altitude, 1,260 m), and after driving back from an altitude of 1,260 m (altitude, 122 m) in the Staying study. The participants performed IHG exercise at 30% maximum voluntary contraction for 2 min after seated rest. We measured systolic and diastolic BP (SBP and DBP), and pulse rate during the test, and then calculated the double product (DP) from the product of the SBP and pulse rate. In the Hiking study, SBP and DP responses to IHG exercise during hiking were significantly augmented (P < 0.05). Importantly, these responses to IHG exercise during hiking were significantly higher than those before hiking (P < 0.05). On the other hand, in the Staying study, staying at an altitude of 1,260 m for about 5.5 h did not significantly change circulatory responses to IHG exercise. In conclusion, we demonstrated that SBP and DP during IHG exercise were significantly augmented during hiking at an elevation difference of about 1,000 m. This finding suggests that transient increases in BP due to physical activity, which might trigger cardiovascular events, could be enhanced during hiking at a moderate altitude.