著者
吉藤 和久 越智 さと子 村上 友宏 金子 高久 小柳 泉
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.208-215, 2011
参考文献数
18

手術治療を行った連続34例の腰仙部脊髄脂肪腫(円錐部脂肪腫20例,終糸脂肪腫14例)について,脂肪腫の形態的特徴と臨床経過について検討した.脂肪腫の形態的所見のうち,「脊髄の脊椎管外突出」,「脂肪腫が脊髄と広く移行」,「神経根とその硬膜貫通部の異常」のいずれかが認められる場合,症候性となる可能性は高く,手術においては神経学的合併症,係留解除困難,術後のクモ膜下腔狭小の残存に有意に影響した.術前MRIでは脊髄の脱出と脂肪腫の広汎な移行は診断が可能であったが,神経根の走行異常は50%の症例で診断可能であった.このような脊髄脂肪腫の形態は,臨床経過や手術の困難性の予測に有用な所見と考えられる.
著者
村上 千鶴子 ムラカミ チズコ Chizuko Murakami
出版者
浦和大学総合福祉学部
雑誌
総合福祉
巻号頁・発行日
vol.3, pp.107-115, 2006-03

補完・代替医療としてのホメオパシーについて概観し、その日本的展開の可能性について論じる。はじめに、ホメオパシーとはどういうものかについて論じ、次に、evidence based medicineとしてのホメオパシーの位置付け、narrative based medicineとしてのホメオパシーの位置付けと特徴について論じた上で、ホメオパシーの日本的展開の可能性を、以下の項目に分けて論じた。1.漢方薬との共通点と相違点 2.漢方薬のレメディ化について 3.レメディの日本製原材料について 4.複雑なレメディ像とその例 5.風土と医療。その後、2例の事例提示を簡単に行った。結果として、全人的アプローチを要し、対人知覚に優れた国民性をもつ、植生の豊かな日本におけるホメオパシーが、臨床的可能性を大いにもつことが示唆された。また、我々の心身のメカニズムを知る上で、用量依存とは異なった次元の身体機能の説明概念である[波動医学]の洗練が期待され、それによってホメオパシーの治療効果の論理的説明が可能になることが示唆された。
著者
村上 祐子 足立 浩章 坂井田 勉 田中 浩 八代 洋一 中田 悟
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.278-284, 2013-12-20 (Released:2015-12-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

真皮のコラーゲン線維はⅠ型およびⅢ型コラーゲンから構成されており,加齢とともにⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率が減少する。また,これが真皮の物性に影響を及ぼすと考えられている。コラーゲン分子は,線維芽細胞において,プロ体として合成,分泌されたのち,酵素によりN末端およびC末端のプロペプチドが切断されることで互いに会合し,コラーゲン線維を形成する。今回,コラーゲン線維におけるⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の加齢にともなう減少メカニズムを調べる目的で,Ⅰ型およびⅢ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素の加齢変化について検討した。また,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素であるmeprinに及ぼすスクシニルブリオノール酸2Kの効果についても検討した。その結果,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素meprinの発現は,Ⅰ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素BMP-1およびADAMTS-14よりも加齢とともに顕著に減少した。また,スクシニルブリオノール酸2Kは,meprinの発現を促進した。以上から,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素がⅠ型のそれよりも顕著に減少するということが,コラーゲン線維中のⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率を低下させる一因であると考えられた。また,スクシニルブリオノール酸2Kにmeprinを増加させる効果が認められたことから,加齢によるmeprinの減少を防ぐことでⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の減少を抑制し,真皮の物性変化を改善できると示唆された。
著者
梶本 五郎 村上 智嘉子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.209-218, 1999-08-10
参考文献数
49
被引用文献数
12 11

緑茶, 麦茶を含めいわゆる健康茶として市販されている15種について, これらの熱水抽出物量, 抽出物の抗酸化性およびバナバ茶中の抗酸化成分をTLCとHPLCの組み合わせで検索を試みた。<br>1) 熱水抽出量の最も多いものはローズヒップ茶で, ついで, キダチアロエ茶, 麦茶, ギムネマ茶, 緑茶, 甘茶の順であった。抽出量の少ないものは, ハブ茶, バナバ茶, 柿の葉茶であった。<br>2) ランシマット法による油脂の酸化に対する防止効果は, イチョウ茶, ルイボス茶, 緑茶などで高く, ついで, ヨモギ茶, 麦茶, バナバ茶, 甘茶, 柿の葉茶, びわ茶の順であった。一方, キダチァロエ茶, ローズヒップ茶では抗酸化性は認められなかった。<br>3) 緑茶, 麦茶, イチョウ茶, バナバ茶およびびわ茶は, いずれも添加量が増すにしたがい油脂の酸化防止効果は高くなった。しかしながら, 柿の葉茶やびわ茶は0.1%添加濃度以下では防止効果はみられなかった。<br>4) DPPHラジカル消去能は, 緑茶, バナバ茶ともに認められたが, バナバ茶は緑茶に比べてやや弱いものであった。<br>5) 緑茶, バナバ茶にスーパーオキシド消去能が認められた。消去能は緑茶で高く, バナバ茶でやや低い。<br>6) バナバ茶中に没食子酸, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの存在とプロトカテキュ酸, アピゲニン, ルテオリン, シリンガ酸, バニリン酸, <i>t</i>-シナミン酸などの存在が推測された。<br>7) バナバ茶中には没食子酸が最も多く含まれ, ついで, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの順であった。これらのうち, ゲンチシン酸が最も抗酸化活性が高く, ついで, 没食子酸レゾルシノール, カテコールの順で, ルテオリン, ケルセチンにも認められた。
著者
村上 真 森川 充洋 小練 研司 廣野 靖夫 五井 孝憲 飯田 敦 片山 寛次 山口 明夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1237-1243, 2013-12-31 (Released:2014-07-02)
参考文献数
20

消化器外科手術において汎発性腹膜炎などの創分類classⅢ以上の症例ではSSIは依然高値である。今回,消化管穿孔による汎発性腹膜炎手術でのincisional SSI(以下,I-SSI)予防に持続吸引皮下ドレーンが有用かをretrospective検討した。2006年4月から2011年12月までの期間で,上部消化管を除く消化管穿孔例97例を対象に,持続吸引タイプ皮下ドレーンの有無でI-SSIの発生率を比較した。全体における皮下ドレーン留置群のI-SSIは12.9%で,非留置群の37.9%と比較し有意(p=0.0097)に低率であった。特に大腸穿孔でI-SSIが54.5%から7.1%まで低下した。皮下ドレーンは,使用症例を創分類Ⅲ以上の汚染手術とし,ドレナージチューブの抜去時期,効果的な留置に留意すれば,I-SSIの予防に有効な手段である。
著者
松木 愛子 村上 毅 田坂 聡明 有賀 一広 松英 恵吾
出版者
宇都宮大学農学部
雑誌
宇都宮大学農学部演習林報告 (ISSN:02868733)
巻号頁・発行日
no.52, pp.25-30, 2016-05

作業道新設のための踏査や林分構成の把握のため,森林内微地形や樹木位置などの簡易な測定が必要とされている。本論文では,市販のレーザ距離計(Leica DISTO A6)とArduino制御の1軸,2軸回転テーブルを使用した簡易な3D測定装置を製作し,林分内の微地形,樹木位置などをポイントクラウドデータとして簡易に測定する手法を検討する。作業道通過予定点周囲の地形測定実験を実施した結果,1軸回転テーブルを用いた装置では,ポール横断測量の距離分解能10cmを上回る詳細な測定ができることが明らかにされた。さらに,2軸回転テーブルを用いた携帯型の3D測定システムを作成し,林分内の2点においてポイントクラウドデータの作成を行った後,これらの3次元点群データにマージし,樹木位置および枝下高の自動推定のためのアルゴリズムの検討を行った。この結果,今回開発した3D測定システムでは,樹木位置の推定は可能であるが,胸高直径推定を行うためには点密度が低く,また合成時の誤差が大きいため明確な推定は困難であることが明らかにされた。
著者
村上 健太郎 上久保 文貴
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.820, 2005

大阪府南部から和歌山にかけての沿岸部は,温暖な地域として知られ,暖温帯から亜熱帯地域にかけて生育する植物の分布北限となっている。特に,年平均気温15℃,年最低気温平均値-3.5 ℃の等値線はヒガンバナ科ハマオモトの分布限界であり,ハマオモト線として知られている。しかし,近年,年間を通して気温は上昇傾向にあり,今後植物分布に大きな影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では,近年の気温上昇にともなって,大阪府周辺のハマオモト線付近を分布限界とする植物の分布について調べ,気温変化との関連を考察した。まず,1938年に描かれたハマオモト線に近い19府県の1980年代以降の気象観測所データと1990年代初めまでに作成された各県植物誌による植物分布データを,市民向けに開発された地理情報分析支援システムMANDARAに入力し,ミミズバイ,タイミンタチバナなど30種の分布限界域における気温データをえた。次に,大阪市立自然史博物館および兵庫県立人と自然の博物館のハーバリウムにおいて,大阪府および兵庫県の上記南方系植物30種の採集地および採集年代を調べ,1980年代以前と1990年代以降で,分布に差があるかを調べた。その結果,ヤナギイチゴなど,一部の種では,分布が北上している可能性が示唆された。また,先述した分布限界域の気温データを用いて,これらの植物の大阪府付近での現在の分布限界域について推定すると,多くの植物が現状では京都市付近まで分布拡大可能であると推定された。本研究でとりあげられた種のうち,自生個体が京都市付近にまで分布拡大している例は少ないが,都市域の石垣などの人工物に適応しているイヌケホシダや京都市内の二次林に移入したアオモジなど,人為によって持ち込まれた可能性が高い種については,大阪府_から_京都市において確実に分布を拡大している。今後は,各種の分散力やハビタットの選考性に関する調査を行い,より正確な分布拡大予測を行いたいと考えている
著者
馬場 祐之 西村 龍一 水上 直久 村上 龍次 森下 昭治 冨高 悦司 野津手 志保 村田 友佳 山下 康行
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.171-175, 2003

【目的】肺野の小結節の線量分布計算における散乱補正の有用性をファントムモデルにより検証する.<BR>【方法】肺野の結節を摸したファントムモデル (1×1×0.7cmおよび3×35×5cm) を作成し, 胸部ファントムに装着して撮影したCTデータをもとに線量分布計算装置にて4MVX線および10MvX線での線量分布をsuperposidon法 (散乱線に対する密度補正あり) および不均質補正ありのClarkson法で算出した. 同じファントムモデルでMarcuschamberおよびフィルム法で実際に線量を測定し, superposition法およびClarkson法で算出された照射野中心での推定線量と実測値の差異とX線のエネルギーおよび結節の大きさ毎に検討した. また, 線量分布図および結節平均線量についても大小の結節についてsuperposidon法およびClarkson法で各々算出し, 両者の比較を行って線量分布および結節平均線量の線量計算方法による差異を検討した.<BR>【結果】照射野中心推定線量と線量計よる実測線量との比較ではsuperposition法での計算結果と実測線量の差は5%以下と僅かであったのに対して, Clarkson法では実測線曇に対して小結節において7%(4MVX線) および32%(10MVX線), 大結節でも6%<BR>結簸の平均線量の比較ではCI訂kson法はsupeosition法での推定線量に比較して小結節では29%(4MVX線) および48%(10MVX線), 大結節でも12%(4MVX線) および13%(10MVX線) の過大線量評価 (いずれもp<0.001) を認めた.(4MVX線) および7%(10MVX線) の過大線量評価を認めた.<BR>【結語】肺野の小結節におけるsuperposition法による計算結果が信頼性の高いものであることが確認された. 特に10MVX線で1cm程度の肺野小結節に照射する場合には従来一般的に用いられている散乱線に対する密度補正を行わないclarkson法では実測値に対して32%の線量過大評価をしており, 注意が必要と思われた.
著者
日本糖尿病学会糖尿病関連検査の標準化に関する委員会 桑 克彦 岡橋 美貴子 佐藤 麻子 難波 光義 前田 士郎 村上 正巳 目黒 周 西尾 善彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.336-339, 2021

<p>HbA1cの測定を外部の検査機関に委託した場合,測定値が低値になることがある.その理由として,全血の検体を冷蔵で搬送,保存した場合に,老化した赤血球ほど溶血しやすいことが挙げられる.全血の検体を長時間にわたって冷蔵保存した後に採血管を遠心し,その赤血球層を用いてHbA1cを測定する方法(HPLC法の一部,免疫法の一部および酵素法の一部)では,溶血の影響を受けにくいEDTA採血管を使用することが推奨され,血糖検査用のNaF入り採血管の使用は望ましくない.</p>
著者
岩崎 勤 松下 哲 折茂 肇 白木 正孝 萬木 信人 加藤 洋一 高橋 龍太郎 蔵本 築 村上 元孝 野間 昭夫 岡部 紘明
出版者
一般社団法人 日本動脈硬化学会
雑誌
動脈硬化 (ISSN:03862682)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.87-91, 1981-04-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Effects of γ-oryzanol on the serum HDL, LDL and total cholesterol (ch) and Triglyceride were studied in 17 cases whose age was 47 years old to 82 years old (mean age was 71.2 years old). Three hundred mg/day of γ-oryzanol was given for 4 months.Serum HDL-ch was 50.0±2.3 (m±SE) mg/dl before γ-oryzanol and 53.7mg/dl 3 months later but HDL-ch which was below 50mg/dl before treatment increased significantly (p<0.01) from 43.3mg/dl to 50.4mg/dl 2 months later. HDL-ch below 45mg/dl increased significantly (p<0.01) from 41.3mg/dl (mean) to 50.0mg/dl (mean) 2 months later. LDL-ch decreased significantly (p<0.01) from 158.8mg/dl to 134.8mg/dl after γ-oryzanol. HDL-ch×10/LDL-ch showed significant changes (p<0.01) (from 3.26 to 4.14) 2 months later. Total-ch did not change and between 203mg/dl and 208mg/dl. Triglyceride did not show significant changes.It is suggested that γ-oryzanol alters the metabolism of HDL-ch and LDL-ch and increases serum low HDL-ch.