著者
吉尾 雅春 西村 由香 村上 弦 乗安 整而
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0922, 2004

【目的】 MRI等を用いて股関節屈曲角度の計測結果がいくつか報告されているが,いずれも骨盤の固定に問題を残している。そこで新鮮凍結遺体を用いて,骨盤を機械的に固定した状態で股関節の屈曲角度を求め,制限要因などについて検討したので報告する。<BR>【方法】 札幌医科大学および韓国カトリック大学に献体された平均年齢74.1歳(45~89歳)の新鮮凍結遺体男性11体女性5体21股関節を解凍して用いた。変形性股関節症や骨折の既往を視認できたものは対象から外した。遺体から骨盤と大腿を切離し,股関節関節包以外の軟部組織をすべて除去した。上前腸骨棘と恥骨結節とを結ぶ線が固定台と水平になるように台上に骨盤を載せ,クランプを用いて固定した。まず股関節内旋外旋・内転外転中間位(中間位)で検者Aが大腿骨を持って制限があるまで股関節を屈曲させ,検者Bがそのときの最大角度を測定した。さらにそこから股関節を最大外転したとき(外転位)の最大屈曲角度を求めた。屈曲角度は骨盤長軸を基本軸に,大転子と大腿骨外側上顆とを結ぶ線を移動軸にして,Smith & Nephew Rolyan社製ゴニオメーターを用いて1度単位で計測した。最大外転角度は矢状面に対する大腿骨のなす角度とした。角度計測後,股関節関節包を前方から切開して股関節を解放し,屈曲時に何が制限要素になっているか肉眼的に観察した。その後,股関節を離断し,骨盤と大腿骨の形態計測を行い,股関節屈曲角度との関係を調べた。統計学的有意水準は5%とした。<BR>【結果】 股関節中間位における最大屈曲角度は93.0±3.6度であった。外転位の最大屈曲角度は115.4±9.2度で,最大外転角度は23.6±4.7度であった。年齢と中間位での最大屈曲角度との関係はなかった。中間位と外転位での最大屈曲角度は正の相関(r=0.668)を示した。関節包前面を切開して中間位で最大屈曲したとき,大腿骨の転子間線から約1cm骨頭側の頸前面が関節唇に衝突し,それ以上の屈曲はできなかった。前捻角は15.4±5.6度で中間位での最大屈曲角度と正の相関(r=0.521)がみられた。頸体角は124.1±5.0度で,最大屈曲角度との相関はみられなかった。大腿骨頭の直径は476.3±27.7mmで最大屈曲角度との相関はなかった。大腿骨転子間線中央から骨頭先端までの距離は679.2±49.9mmで,最大屈曲角度と負の相関(r=-0.461)がみられた。<BR>【考察】 骨盤を機械的に固定したときの股関節中間位における屈曲角度は平均93度で,外転位では115度であった。その制限因子は骨性のものであり,前捻角と大腿骨転子間線中央から骨頭先端までの長さが影響を与えていた。生体では大殿筋等の拮抗筋や股関節前面の軟部組織が制限要因となり,屈曲角度はさらに小さくなる可能性がある。臨床的に参考値としている120~130度のうち,30~40度は骨盤の傾きによることが明らかとなった。
著者
村上 弘之
出版者
上武大学
雑誌
上武大学看護学部紀要 (ISSN:1880747X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-14, 2007-09

近年,麻疹や風疹などの小児ウイルス感染症や結核などの集団感染事例が高校・大学等の教育機関だけでなく,医療機関では院内感染として問題になっている.臨地実習が看護教育上欠かすことができない看護学生は,臨地実習施設が病院だけでなく地域施設などにも及ぶことから何らかの感染を受ける危険が高い.また,患者に感染させる危険も高い.現在の看護学生が属する10歳代後半から20歳代若年者集団には,小児ウイルス感染症や結核などに対する感受性が高い者が多く含まれている.これまで,医学や看護を学ぶ学生にはB型肝炎感染予防対策が中心であり,空気感染や飛沫感染によって伝播するウイルス感染症や結核に関する対策は少なかった.看護学生の属する若年者の感染症に対する感受性を考慮し,臨地実習では学生の安全だけでなく患者の安全を厳守するという医療安全,学校内では集団感染発生に対する危機管理上必要な対策が求められている.
著者
村上 善彦 中野 康弘 加藤 太司 中川 恭子 南 毅生
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.36-40, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
9
被引用文献数
1

前縦隔に異所性甲状腺癌が発生した犬に外科手術を行った3例を経験した。3症例はCT検査を行い、他臓器への浸潤、転移、胸水を認めなかったため、細胞診、病理組織検査後、外科手術を行った。術後、症例1、3はそれぞれ1,050、1,420日経過しているが、再発転移なく良好に経過している。また、症例2は術後2,925日に腫瘍とは関連なく死亡した。症例の集積による検討が必要ではあるが、前縦隔に発生した異所性甲状腺癌は、他臓器に浸潤や転移がない場合、外科手術を行うことで良好な予後が得られる可能性が考えられた。
著者
八代 英子 國府田 正雄 村上 敏史 田口 奈津子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.535-538, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
9

【緒言】頸椎転移による強い痛みに対し,ハローベスト装着により良好な痛みの緩和が得られ,自宅退院が可能となった症例を経験したので報告する.【症例】76歳,男性.食道癌術後,リンパ節再発に対し化学療法施行中,頸椎転移を認めた.徐々に悪化する右頸部から背部への痛みに対し,薬物療法,放射線療法施行したが改善なく,さらにオピオイドによる強い副作用のため,著明にADLが低下した.症状緩和目的にハローベストを装着した.痛みは軽減し,オピオイドは不要となり,転院後に自宅退院,約2カ月間自宅療養をされた.【考察】ハローベスト装着は,標準治療にても疼痛緩和に難渋する症例に,今後も検討したい治療法である.本邦では,自宅療養中の装具装着は一般的ではなく,患者・家族の精神的負担が大きいことが予想される.重篤な合併症の報告もあり,整形外科医との連携が必須であり,患者,家族とともに慎重に適応を検討する必要がある.
著者
池田 浩士 村上 勝彦 玉 真之介 田中 学 坂下 明彦 川村 湊 馬 興国 劉 立善 劉 含発 衣 保中 黄 定夫 梁 玉多 山室 信一 森 久男 我部 政男 井村 哲郎 蘭 信三 徐 明勲 歩 平
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、旧「満州」へ送り出された日本人農業移民の実態を総合的に解明し、日本の近現代史のひとこまを新たな視覚から再構成することを目的としたが、とりわけ次の諸点で成果を収めることができた。1.「旧水曲柳開拓団」の生存者たち、及び入植現地の中国農民生存者たちからの聞き取り調査と、日中双方の関係農村のフィールドワーク調査によって、日中農民の接触実態や土地収用とその後の営農状況等について、多くの証言と、それを裏付けるデータを得た。2.農業技術、雇用状態等、日中双方の農業史における未解明の領域で、具体的な実態を解明するための多くの手がかりを得た。3.稲作地帯である入植地の朝鮮族農民、さらには朝鮮半島から「満州」へ送り出された朝鮮人農民に関する調査研究を、韓国の研究者および中国の朝鮮族出身研究者たちとの共同作業として重点的に進め、未開拓のこのテーマについての証言とデータを多数得た。4.「満蒙開拓団」政策の形成と実施の過程に関する資料の探索・分析に努め、この政策を推進したイデオローグたちの役割を、思想史の中に位置付ける作業を行った。5.「満蒙開拓団」を、政治・経済・農業・軍事などの次元にとどまらず文化の領域における問題としてもとらえ、文学・報道・映画・音楽などとかかわるテーマとして考察した。これによって、日本国民の感性の中へ「満州」と「満蒙開拓団」が浸透していった実態の一端を解明することができた。6.聞き取りとフィールドワークの記録を、ビデオテープ、音声テープに大量に収録したが、生存者がますます少なくなっていくなかで、これらは重要な歴史的ドキュメントとなるであろう。
著者
藤井 志保 村上 かおり 鈴木 明子 今川 真治 権田 あずさ 中山 芙充子 広兼 睦
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.42, pp.165-174, 2014-03-24

家庭科教員免許取得を目指している大学3年生を対象に,内容「A家族・家庭と子どもの成長(1)(2)(3)」と内容「C衣生活・住生活と自立(3)ア布を用いた物の製作,生活を豊かにするための工夫」を関連づけて学習するための題材を構想させ,大学での教職および教科関連科目の学びや教育実習での体験に基づいて適切な教材の選択やそれを用いた題材構想がどの程度可能になっているのかをとらえた。さらにその構想を教材構成力の下位能力からとらえ分析することを試み,学生自身による自己評価と,教科教育,教科内容(保育学,被服学)及び教育実習担当者の三者4名による客観的評価から教材構成力の実態を明らかにすることを目的とした。その結果,題材目標や構想の表現の未熟さや,取り上げる教材の偏り,すなわち教材構成の視点の狭さは感じられたが,15名の学生は,何らかの形で内容Aと内容C(3)を関連づけた題材の流れを構想できていた。教材構成力の向上を図るカリキュラムの改善に向けて,教科目標を意識した専門科学の内容の再構造化の必要性があることが示唆された。
著者
岩月 矩之 高橋 浩子 村上 衛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.218-223, 1989

下腹部及び下肢の手術患者35名を対象として, 脊椎麻酔用0.5%等比重及び高比重ブピバカイン液と0.5%等比重テトラカイン液を用いて脊椎麻酔を行った. 麻酔効果発現時間, 無痛域の広がりは高比重ブピバカイン液が等比重ブピバカイン液に比べて早かった. 麻酔持続時間は等比重ブピバカイン液が3~4時間と高比重ブピバカイン液よりも約1時間長く, また運動神経麻痺の程度も強かった. 血圧下降の程度は等比重液の方が軽度であった. 0.5%等比重ブピバカインと0.5%等比重テトラカインとの比較では, その効果に有意差はみられなかった.
著者
村上 雅博
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.305-314, 1994-07-05 (Released:2010-02-10)
参考文献数
12
著者
高木 繁 中村 善久 鈴木 元彦 伊藤 博隆 村上 信五 西村 穣 植田 恭弘
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.879-885, 2000-10-01
参考文献数
17
被引用文献数
7 1

The clinical effect of cetirizine hydrochloride on Japanese cedar pollen allergy patients was analyzed by compairing treatment before the start of the pollen season and treatment after the pollen had been scattered.<br>1. Based on the symptom-medication score method, treatment before the pollen season shows a significantly lower value than that of treatment within one or two weeks after the pollen had been scattered.<br>2. Analysis also revealed that this medication relieved nasal symptoms, even in cases, occurring after the season had started.<br>3. Cetirizine hydrochloride was an effective initial treatment for the clinical effects of Japanese cedar pollen allergic reactions.<br>These results suggest that cetirizine hydrochloride is useful for the treatment of Japanese cedar pollinosis.
著者
後藤 昌弘 村上 譲
出版者
japan association of food preservation scientists
雑誌
日本食品低温保蔵学会誌 (ISSN:09147675)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.193-196, 1994

ベゴニアを食用花として収穫し, 2℃と20℃に保存した場合, 両温度区とも貯蔵2日では花の色 (品種) によって鮮度指数の低下が異なり, 赤花 (パーシティレッド), ピンク花 (フィナーレ) よりも, 白花 (パーシティホワイト) で大きかった。しかし, その後はどの花色も同様に指数が低下し, 商品性は2℃で約7日, 20℃で約3日保持された。この鮮度の低下は主として萎凋と花弁の変色によるもので, 萎凋はハーブ類よりも少ない重量減少で激しい症状がみられた。また, 花弁の変色は周辺部から起こることがわかった。<BR>花を手づみした場合とはさみで摘み取った場合, 両温度区とも手づみの鮮度の低下が速かった。<BR>以上の結果から,ベゴニアを食用花として収穫し,貯蔵する場合には,はさみで丁寧に摘み取り,低温に保存することが望ましいと思われた。
著者
竹越 国夫 山之内 博 東儀 英夫 村上 元孝 亀山 正邦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.371-377, 1976-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
15

老年者の新鮮脳血管障害66例 (脳硬塞38例, 脳出血28例) 中, 41例にステロイドを使用し, 25例は対照群として, ステロイドの有効性を, 意識レベルの改善と生存を指標として検討した. 対象の年齢は, 平均76.2歳であった. 47剖検例については, 病巣部位, 病巣の大きさを確認した. ステロイドの使用方法について, 薬剤はプレドニゾロンが22例, デキサメサゾンが14例, その他5例であった. 薬剤の使用総量は, デキサメサゾン換算量で平均40.4mgであり, 一日最大使用量は, 平均10.0mgであった. ステロイドは, 発症後平均1.7日以内に使用開始し, 平均7.2日間使用した.結果は, 1) 脳硬塞において, 意識レベルの改善は, ステロイド使用群では23例中9例 (39%) にみられたのに対し, 対照群では15例中5例 (33%) にみられ, 両群間に有意の差は認められなかった. 4週生存率は, ステロイド使用群では70%であったのに対し, 対照群では80%であり, 両群間に有意の差は認められなかった. 入院時意識レベル別に検討した場合, 意識レベルの改善率と生存率において, ステロイド使用群と対照群の両群間に有意差は認められなかった.2) 脳出血において, 意識レベルの改善は, ステロイド使用群で18例中5例(27%)にみられたのに対し, 対照群では10例中1例 (10%) にみられ, 両群間に有意差は認められなかった. 4週生存率は, ステロイド使用群で56%であったのに対し, 対照群では10%であった. しかし, ステロイド使用群と対照群の間に, 意識レベルの条件が一致せず, 厳密に比較検討することはできなかった.3) ステロイドの副作用について, 消化管出血が, ステロイド使用群に3例, 対照群に1例みられ, 非ケトン性糖尿病性昏睡が, ステロイド使用群に1例みられた.
著者
村上 次雄 菊地 光雄 井川 一成 土屋 晉
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.618-624, 1994-09-15 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8

次亜塩素酸カルシウム2水和物 (CHDH) は, 偏平な四角板状結晶であり, 固液分離性が劣る, 脆い等, その形状に起因して工業上多くの問題点を有している.このCHDHの晶癖を改善することを目的として, 水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムの水性混合スラリーを回分式で塩素化する方法を用いて, 添加剤の効果について検討した.添加剤として多くの無機および有機化合物を用いた結果, カルボン酸化合物および炭水化物に強い媒晶作用を見い出した.この中で多塩基性力ルボン酸化合物が, 実用上有効な添加剤と考えられる.この添加剤の作用は, 結晶の幅 (a, b軸) 方向の成長を抑制し, 厚み (c軸) 方向の成長を促進するものであり, 新しい形状, 即ち単結晶で柱状のCHDH結晶が得られた.添加剤効果のメカニズムとして, (1) 添加剤が結晶の厚み方向の面に選択的に吸着する作用, (2) 添加剤がCa2+とキレートを形成し, 過飽和濃度を高める作用, が考えられる.