著者
林 光緒
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

居眠り運転による交通事故、夜勤中の産業事故や医療事故など、疲労と睡眠不足による居眠り事故は枚挙に暇がない。これらの事故は生命にかかわる問題だけに早急な対処法を講じる必要がある。筆者らは、これまで日中の覚醒水準の向上を図る方法として短時間仮眠法を提唱してきた。本研究は短時間仮眠法の実用化に向けて短時間仮眠法の洗練化をはかったものである。特に最適な仮眠環境の構築と、最適な仮眠取得のタイミングを明らかにすることを目的として実施された。仮眠後には、却って眠気が強くなったり作業成績が低下したりする睡眠慣性の影響が残る。睡眠慣性は徐波睡眠から覚醒すると強くなるため、短時間仮眠後の睡眠慣性を低減させるには、徐波睡眠に達しないよう仮眠内容をコントロールすることが必須となる。そこで、短時間仮眠の睡眠内容を検討したところ、若年成人の場合は20〜30分間の仮眠でもそのうちの43%の仮眠に徐波睡眠が出現し、15〜20分間の仮眠でも23%の仮眠に徐波睡眠が出現していた。しかし、15分以内の仮眠であれば徐波睡眠は出現しなかったことから、短時間仮眠の長さは、15分以下にすることが望ましいことが明らかになった。また、徐波睡眠を含まない短時間仮眠は睡眠段階1と睡眠段階2だけで構成されているが、睡眠段階1だけでは効果がなく、少なくとも睡眠段階2が3分出現することが必須であることも明らかとなった。このときの仮眠の長さは9分間であったことから、適切な仮眠の長さは19〜15分であるということが明らかとなった。さらに居眠り運転事故の予防のために車輌で仮眠をとる場合は、シート角度(座面と背面との角度)を150度に倒すこと、仮眠時間を15分間とすることがより効果が高いことを明らかにした。入眠までに約5分かかることを考慮すると、車輌シートで仮眠をとる際は、20分間の仮眠時間を確保することが必要であることを明らかにした。
著者
奥村 武久 河原 啓 高野 新二 岡田 三千代 林 光代 鈴木 英子 野田 恵子 木村 純子 長井 勇 植本 雅治
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学保健管理センター年報 (ISSN:09157417)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-55,

定期健康診断に対する一般学生の持つ不安をアンケートによって調査した。1983年度と1984年度の回答を比較することにより,次の結果を得た。(1)1983年の結果と1984年の結果が非常に近似した。(2)健康診断の必要性は,1984年の新入生の89.6%,大学院生の94.3%が肯定した。否定は新入生の女性の12.8%が一番高い数字であった。(3)健康診断前の不安は,新入生の場合,男性の25.4%,女性の31.1%で女性の不安率が高かった。(4)不安の理由として,新入生の男性は視力,色覚を第1位に,新入生の女性は体重を第1位に挙げていた。(5)終了後の心配については,再検査の必要なものすべてが心配になるのではなく,20〜67%程度であることが判明した。(6)再検査の項目によっても差異があり,検尿の再検査者の中に心配になった者の率が高いことが分った。(7)批判・不満・要望の意見を検討すると,次の事が明らかになった。(a)一番多い批判は「時間がかかる。混む」という意見であること(b)尿検査の表示についての不満を解消するための努力によって,次年度にその効果が認められたこと(8)得られた意見と現状とのつき合わせを繰返すという息の長い努力が健康診断を望ましい方向へ近づけるのに重要であることを指摘した。
著者
進士 誠一 横堀 將司 清水 哲也 神田 知洋 林 光希 安康 勝喜 吉田 寛
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.98-104, 2022-02-20 (Released:2022-03-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2

During their clinical clerkships (CCs) in surgery, medical students are generally introduced to such areas as surgical indications, surgical techniques, and perioperative management through rounds and practical skills training on wards and in operating rooms. Given the technological advances made in virtual reality (VR) over recent years and its increasing use in education and corporate training, we decided to try using VR for the benefit of students on surgical CCs. To this end, we developed what we termed a "VR surgery tour" in the field of gastrointestinal surgery, which involved students using VR goggles to view edited 3D images. We then asked 26 fifth- and sixth-year medical students at Nippon Medical School assigned to CCs in gastrointestinal surgery between November 2020 and September 2021 to evaluate the VR surgery tour via a questionnaire survey. The questionnaire included questions using a five-point Likert scale and space for free comments. Our results showed that all respondents felt satisfied with the VR surgery tour, with 96% of them indicating it was a viable alternative to clinical training; moreover, about 90% of the students found it useful as a teaching aid for pre-learning and requested that VR teaching materials be made available in other fields as well. We concluded that our VR surgery tour is a valuable supplement to practical training in gastrointestinal surgery and that it increases medical students' motivation to learn. We believe VR is an effective teaching aid and that there will be increasing demand for its use in various education and training programs.
著者
林 光昭 都丸 裕司 川崎 聡 志村 隆 内海 政春
出版者
一般社団法人 ターボ機械協会
雑誌
ターボ機械 (ISSN:03858839)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.625-632, 2013 (Released:2015-07-23)
参考文献数
6
被引用文献数
6

In order to analyze a stability of the balancing mechanism for the axial thrust force in turbo-pumps, the simplified model expressing the essentials of dynamic behavior is shown. By the examination on that model, the dynamic characteristics in several working conditions are considered, it is shown that what kind of conditions determine the response and stability of the balancing mechanism.
著者
植田 光晴 孟 薇 大林 光念 堀端 洋子 安東 由喜雄
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第35回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.121, 2007 (Released:2007-10-12)

【目的】 関節リウマチなどに併発するAAアミロイドーシスの発症機構は不明な点が多く確立された治療法もない。本研究ではT細胞とアミロイド沈着機構の関連に注目し、実験的AAアミロイドーシス惹起マウスに対しT細胞の活性化を抑制する免疫抑制剤であるFK506を用いアミロイド沈着抑制効果をはじめとする病態変化を解析した。 【方法】2種類の方法(急性アミロイド惹起と慢性アミロイド惹起)でマウスにAAアミロイドーシスを惹起しFK506を連日投与した。組織学的にアミロイド沈着量の変化を検討した。同時に血清中のSAA、IL-1β、IL-6、TNF-α濃度の変化をELISA法で測定した。また、肝臓でのSAAのmRNAレベルをリアルタイムRT-PCR法で検討した。更に、SCIDマウスとヌードマウスのアミロイド形成性を検討した。 【結果】FK506は用量依存性を持ってアミロイドーシス抑制効果を示した。FK506投与でアミロイド前駆蛋白質であるSAAの血清濃度とそのmRNAレベル、SAAの産生を刺激するIL-1β、IL-6は抑制されなかった。また、SCIDマウスとヌードマウスはAAアミロイドーシス惹起に対して抵抗性を示した。 【結語】 AAアミロイドーシス形成機構にT細胞の動態が関与していると考えられる。T細胞の活性化抑制をターゲットとする治療戦略はAAアミロイドーシスの新たな治療法となる可能性がある。
著者
林 光緒 荻野 裕史
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.52-64, 2021-04-30 (Released:2022-03-23)
参考文献数
61

入眠困難は,生理的覚醒だけでなく不安や懸念などの認知的覚醒によっても生じると考えられている。しかし認知的覚醒によって入眠過程のどの部分が妨害されるのかについては明らになっていない。本研究は,9つの脳波段階を用いて入眠努力が入眠過程に及ぼす影響を検討した。睡眠愁訴をもたない健常な男子大学生(9名,21―23歳)が2夜の実験に参加した。彼らは眠くなったら眠る(中性条件)か,できるだけ早く眠る(努力条件)よう教示された。その結果,努力条件において,脳波段階1(α波連続期)と4(平坦期)の出現時間延長した。これらの結果から,入眠努力は覚醒系の活動が低下する入眠期初期にのみ影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
林 光利
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.69-71, 1980-02-05 (Released:2008-12-25)
参考文献数
2
著者
小林 光 一條 佑介 野崎 淳夫 二科 妃里 成田 泰章 後藤 伴延 吉野 博
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
no.60, pp.789-793, 2019-06
被引用文献数
1

<p>This study explored changes in spatial radiation dose rate both indoor and outdoor associated with a decontamination operation for a wooden house in a high dose rate region in Fukushima. As a result, the averaged spatial dose rate at 1m height from the floor before the decontamination was 1.73μSv/h and the dose rate after the decontamination was 0.86μSv/h. Furthermore, the results of a comparison of the dose rate between pre- and post-decontamination indicates a decrease in the dose rate at almost all points. The reduction rate of spatial dose-rate was 40 to 50% at the center of the house.</p>
著者
小林 光 加藤 信介 村上 周三
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.68, pp.29-36, 1998-01-25
被引用文献数
11

居室の空気環境の設計は,室内が完全混合の状態にあると仮定して行うことが一般的である.しかしこの仮定を用いると,居住域空調などのように室内局所の環境を合理的に制御することは難しくなる.本研究は,気流分布,温度分布性状を中心とする室内の熱・空気環境場形成に作用する各種要因が室内環境場に寄与する程度と範囲を評価し,これにより合理的な環境制御を可能とすることを目的とする.本稿においては,筆者らが以前提案した換気効率指標(SVE:Scale for Ventilation Efficiency)第1,2,3に加えて,第4,5を定義し,CFDに基づく算出法を提案する.これは,室内の空気環境を制御する際に最も有効な制御要因である,吹出し・吸込み口の室内環境形成に対する寄与を評価するものである.また同じくSVE 6を定義し,CFDに基づく算出法を提案する.これは室内各点の空気が排出されるまでの時間(空気余命)を評価するものである.これらの指標を用いて換気性状の異なる二つの機械換気室の評価を行い,その有用性を確認する.
著者
小林 光夫
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.306-323, 2003-12-01
参考文献数
7
著者
林 光葉 小林 光 伊東 慶悟 谷戸 克己 石地 尚興 上出 良一 中川 秀己
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.949-954, 2012-11-01

要約 症例1:72歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その2か月後から両側乳頭部に疼痛が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で両側乳頭直下に円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止し,約1週間で乳頭部の疼痛は軽減した.病理組織像では乳管上皮の増生や断頭分泌を伴うアポクリン化生を認めた.症例2:83歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その1か月後から両側乳頭部に硬結が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止後約1週間で乳頭部の疼痛は軽減したが,皮下硬結は4か月後も残存していた.病理組織像では乳管上皮の増生を認めた.5α還元酵素阻害剤の副作用としての女性化乳房は広く認識されるべきである.
著者
岡田 正彦 松戸 隆之 三井田 孝 大林 光念 稲野 浩一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

動脈硬化症の初期変化をもたらす一つのきっかけは、低比重リポ蛋白(LDL)がラジカル種の攻撃で酸化変性を受け、生理的な代謝が行われなくなることにあると考えられている。しかし、具体的にLDLのどのような構造変化が血管内皮に対して異常信号として作用するのかについては、不明のままとなっている。本研究では、以下の成果をあげることができた。1.アポBの糖鎖構造と易酸化性との関係について調べた.その結果native LDLと酸化LDLで糖鎖構造に違いは認められなかったが、ある切断酵素を作用させたときにだけ、易酸化性が有意に上昇するという現象を認めた。この結果から、アポB上のある種の糖鎖が酸化防御に関わっていることが推測された。2.LDLの酸化によって生じるアポBのフラグメント解析を試みた。ところが種々のフラグメントのアミノ酸配列をホモロジー検索したところ、アポB以外のさまざまなたんぱく質が非特異的に結合していることが分かった。3.酸化LDLを血管内皮細胞に作用させ、VCAM-1のmRNAの変化を調べるという実験系の検討に入った。まず内皮細胞にIL-1を、濃度と時間を変えながら作用させ、VCAM-1のmRNAが発現する最適条件を検討した。さらにVCAM-1アンチセンスを用いたハイブリダイゼーションで、当該バンドが安定して確認できる条件を探った。その結果、IL-1および精製した酸化LDLを内皮細胞に作用させると、VCAM-1のmRNAが明らかに増加する事実を確認することができた。4.酸化によってLDLにどのような構造変化が起きるのかを確かめるべく、アポBの立体構造を解析する研究にも着手することができた。その結果、アポBの膜内でαヘリックスの束を作っている領域が5つあることを確認できた。これは、従来の生化学的な分析結果ともよく一致しており、方法の正しさが証明できたものと考えている。
著者
小林 光則
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.115-131, 1988-11-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
3