著者
林 靖浩
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.383-387, 2018

<p>中越パルプ工業㈱高岡工場では,抄紙機での品種構成見直しにより針葉樹漂白パルプ使用量が減少した。このため設備能力が過大となることが多くなり,生産効率,エネルギー原単位が悪化していた。また老朽化した設備の機器メンテナンスのコスト増,建設後51年経過している建屋の耐震強度不足が問題点としてあった。これらの問題を解消すべく,針葉樹漂白設備及び建屋を新設し2015年12月に操業を開始した。</p><p>アンドリッツ社製洗浄機を選定した理由は,省スペースでの多段洗浄が可能であり,薬品,エネルギー原単位の改善が見込めること,また運転停止作業に対するオペレーターの負担が小さいことである。</p><p>蒸気ハンマリングの発生しない加温装置ソラリス,ドラム高圧洗浄機オシュレーター,クリーナー後脱水機GFF,漂白自動制御システム晒ACE等を導入し,稼働当初から様々な問題点はあったものの,その都度改善工事,調整を行い,現在はおおむね安定した操業状態となり,操業状況および原単位の改善を得た。</p><p>電力原単位は,晒4段シーケンスを3段シーケンスへ1段減らしたことで改善した。蒸気原単位は悪化したが酸脱工程の温度アップによりΔ白色度,ΔKappa価は大幅に向上した。薬品原単位は有効塩素換算で6%改善した。また漂白自動制御システム晒ACEの導入効果によりパルプ白色度のバラつきを大幅に低減させることができた。</p><p>今後の課題として,さらなる薬品,エネルギー原単位の改善,白色度自動制御を最大限に生かした操業に努めたい。</p>
著者
坂手 誠治 惠 千恵子 小林 正嗣 村田 和弘 阪上 皖庸 木村 隆
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.201-205, 2003 (Released:2004-09-10)
参考文献数
8

中性脂肪 (TG)値は飲食により大幅に変動するので, 空腹時の基準値に基づいて食後のTG値から高TG血症の有無を判断するのは難しい. 多くの健康診断受診者 (TG以外の生化学検査所見異常者と要治療有症者を除く)のTG値を検討すると, 男性における空腹時TGの平均値 (M)+2標準偏差 (SD)は, 一般にスクリーニング値とされる150mg/dlにほぼ一致した. このことから, 食後TGの経時的スクリーニング値を食後の各時間帯でのM+2SDとしたところ, ふるい分け率は19.9~21.8%で, 空腹時の23.5%に近似した率を示した. 従って, 食後におけるTGの実用的なスクリーニング値は, 食後の各時間帯でのM+2SDに最も近く1桁目が0の整数値とするのが適当であると考えられた. 女性の平均TG値は加齢により上昇する傾向を認めるものの男性のそれよりも低値であり, 20~49歳でのふるい分け率は空腹時5.3%, 食後3.2~5.8%に対し, 50歳代ではそれぞれ11.3%, 8.2~12.9%であった.
著者
中林 一樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.209, 2007

<BR>(1)復興対策の事前準備の重要性<BR> 阪神・淡路大震災(1995)では、全壊全焼家屋11万棟(195千戸)に及ぶ被害からの復興を、住宅戸数では概ね5年間で、基盤整備事業による都市復興は18地区300haで10年を超える長期の都市復興を進めている。阪神・淡路大震災の多くの教訓の一つが、「復興準備対策」あるいは「事前復興対策」である。防災基本計画の改定(97)では復興対策の充実が示されたが、進展していない。<BR> 復興対策は起きてから考えるのでは遅い。震災前に街づくりを進めていた街では復興が早い。これらは、阪神・淡路大震災の教訓である。阪神大震災を遙かに上回る被害が想定される首都圏では、復興の迅速性は首都機能被害(間接被害)の規模を規定する。復興が長引けば、東京の地域社会・地域経済がもたらす間接被害が増大する。<BR><BR>(2)「災害からの復興」の理念<BR> 阪神・淡路大震災・新潟県中越地震や台湾921大震災などから学ぶ地域復興対策の理念は、次の4つである。<BR>1)連続復興<BR> 避難生活から応急仮設住宅・仮設作業所などの応急復旧へ、そして本格復興までを連続的に進める。第1は「地域社会(生活・暮らし)」、第2は「地域空間」、第3は「地域経済」の連続性である。<BR>2)複線復興<BR> 被災家族、被災事業所の復興需要は多様である。その多様な復興需要にどのように対応するか。その鍵は、「復興基金」制度の活用である。<BR>3)地域こだわり復興<BR> 被災した地域社会と地域経済を支えてきた地域の仕組み」にこだわる復興である。やはり、第1は「地域社会」、第2は「地域空間」、第3は「地域経済」への『こだわり』である。とくに、高齢社会における災害復興では、地域社会へのこだわりが被災者の多くにとって、重要な要素となる。<BR>4)総合復興<BR> 都市-街-住まい-生活-しごと(暮らし)-文化・教育などの復興を如何に連続的に地域で展開できるか。「地域の復興」は総合的な街づくり・都市づくりとしての取り組みが重要である。<BR><BR>(3)東京直下地震の被害想定<BR> 内閣府中央防災会議による東京湾北部地震の被害想定によると、東京を中心に南関東で全壊全焼85万棟、死者11千人、被害金額112兆円(うち間接被害46兆円)に達する。自宅喪失世帯160万世帯と想定され、住宅再建あるいは都市的復興に係る被害は阪神・淡路大震災7~8倍に達する。<BR><BR>(4)東京都における事前復興対策<BR>1)都市復興マニュアル・生活復興マニュアル<BR> 東京都は、阪神・淡路大震災の教訓を受け、阪神・淡路大震災を遙かに上回る被害が想定される東京の地震災害では、復興が重要な課題となるとして、1997年に「都市復興マニュアル」を策定公表した。復興へのプロセスでは、都市計画的に被災市街地の復興の取り組みが最も早い取り組みとなる。震災から2週間で復興事業区域を選定し、2か月で都市計画決定するためのマニュアルを策定した。翌98年に、復興体制・住まい・生活・暮らし・教育文化・経済雇用の復興のための行政対応をとりまとめた「生活復興マニュアル」をとりまとめた。<BR>2)震災復興グランドデザイン<BR> マニュアルは手続きに過ぎず、東京の都市復興はどんな都市像・街像を目指すのか。「復興とは、その地域のトレンドに戻すことが基本」であるから、都市のトレンドを踏まえて、震災復興で目指すべき都市像を検討し、2001年に「震災復興グランドデザイン」を公表した。<BR>3)震災復興マニュアル(プロセス編・施策編)<BR> 2003年都市復興と生活復興のマニュアルを改定し、都民向け「プロセス編」と行政職員向け「施策編」とした。<BR><BR>(5)震災復興を規定する事前の街づくり<BR>1)東京都「復興市民組織育成事業」<BR> 膨大な被害からの復興には、地域や個人による自助・共助と公助との「協働」による取り組みが不可欠と『地域協働復興』を震災復興の基本概念に設置し、その事前推進として、地域に復興時に主体となるべき「市民組織」を育成していこうと復興市民組織育成事業(2004~06年度)を実践してきた。「復興まちづくり模擬訓練」である。<BR>2)「防災都市づくり推進計画」と防災生活圏整備<BR> しかし、究極の『事前復興対策』とは、震災復興時の苦労と原資を集中して事前に被害軽減を実現することではないか。2003年防災都市づくり推進計画を改定し、密集市街地で6,500haの整備地域、うち2,400haを特別整備市域に指定し、防災街づくりを推進しつつある。<BR><BR>(6)間接被害の軽減と企業BCP(事前復興対策)<BR> 首都中枢機能も連続復興が重要である。とくに国家の政治・行政機能、世界経済の一翼を担う経済中枢機能は、大震災時でも「機能継続」が不可欠の部門がある。その業務継続計画(BCP)は事前復興対策でもあり、災害からの緊急復旧そして迅速な本格復興を可能とする。
著者
高橋 佳子 樋上 智子 倉本 美佳 檜垣 文子 山下 典子 合田 昌子 足立 亜紀子 濱口 常男 門林 宗男
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.475-482, 2004-07-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

To determine the influence of the angle of holding an eye medication container on the squeezing force needed for each drop of the medication and drop volume, we measured squeezing force and drop weight using a force gauge for 11 prod ucts commercially available in Japan, at 3 different angles to the horizontal surface-90°, 60° and 45°. At 90°, the squeezing force for each drop varied from 0.770kg (Tobracin®) to 1.575kg (Timoptol® 0.25%) and at 60° and 45°, the squeezing force decreased for all products except KetasR. Thus the squeezing force was affected by the angle of holding the container. At 90°, drop weight varied from 33mg (Ketas®) to 44mg (Tobracin®). At 60° and 45°, drop weight decreased for all products except Hyalein® 0.1, Kary Uni® and Sanpilo® 2% (tip and cap type). These results show that the angle of holding an eye medication container is an important factor because of the influence it has on drop size and squeezing force. For this reason, the optimal angle for patients to hold eye medication containers should be investigated in greater depth.
著者
前谷 俊三 大林 準 西川 俊邦 小野寺 久
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.90-96, 2014-12-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
21

癌治療の進歩に伴い,その有効性や有益性を評価する尺度の妥当性を検証する必要性が高まっている.評価尺度としては,古くは5年生存率があり,最近では米国食品医薬品局(FDA)の推奨するエンドポイントがある.本稿ではそれぞれの評価尺度を簡単にレビューし,主として患者の立場から何が望ましい尺度かを再検討する.  対象とした尺度は,5年生存率,全治率(Boagモデル),生存期間の中央値と平均,log-rank統計量,ハザード比,FDAのエンドポイントである.各尺度を比較した結果; 1)5年生存率は患者や非専門家にとってわかりやすい尺度であるが,癌の全治率を過大視する傾向がある; 2)全治例は延命例に比べて一般に生存期間が長く,かつその間のQOLも優れている.更に全治例が増加している現今,全治の可能性がある患者集団が解析の対象であれば,評価尺度として延命期間よりも全治率を優先すべきである; 3)もし患者の延命期間が長ければQOLが逆に低下し,患者の希望に反する結果となる恐れもある.結論として,今後,癌治療の評価尺度は更に改善の余地がある.癌の性質や,治療法および患者の希望に応じて最適の癌治療を選択する必要がある.
著者
加藤 幸宣 高林 哲司 坂下 雅文 意元 義政 徳永 貴広 二之宮 貴裕 森川 太洋 吉田 加奈子 野口 恵美子 藤枝 重治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.261-266, 2018 (Released:2018-12-26)
参考文献数
37

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は,鼻腔内に多発性鼻茸を有し,鼻茸・末梢血中に好酸球増加を伴う難治性副鼻腔炎である。次世代シーケンサーを用いた,鼻茸のRNA-sequencingにおけるtranscriptome解析では,ECRS患者の鼻茸でCST1の発現が高い傾向にあった。我々はCST1がECRSの病態に関与していると考え,ECRSの鼻茸内でのCST1の発現や働きについて詳細な検討を行った。CRSwNP患者の鼻茸内におけるCST1の発現に関して,real-time PCRを用いたmRNAの発現・免疫組織化学を用いた解析では,non-ECRS患者群に比べて,ECRS患者群でCST1が有意に高発現していた。特にCST1はsevere ECRSの鼻茸上皮で強い発現を示していた。つまり,CST1の発現は,ECRSの難治性や再発性と関連する。ECRS由来の鼻茸上皮細胞を精製し,IL-4+dsRNA+CST1で刺激すると,IL-4+dsRNAで刺激した時に比べて,TSLPの発現が有意に上昇した。鼻茸上皮細胞へのTSLPあるいはIL-33の刺激は,CST1の発現を誘導した。また,ECRS由来の鼻茸線維芽細胞に対するCST1の刺激は,CCL11とperiostinの発現を誘導した。CST1は鼻茸内において,ECRSの鼻茸形成・増悪に関わる様々な因子と相互作用することにより,Th2/好酸球性炎症として作用し,鼻茸の重症化,難治性,再発に関わる。ECRSの鼻茸に対して,CST1をtargetとした治療戦略が有用となる可能性がある。本稿では,CST1のECRSにおける役割を中心に解説する。
著者
小林 淳 蔡 恩美 山中 修也 櫻 勇人 山本 隆太 加藤 宏平 高橋 義朗
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 71.2 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.507, 2016 (Released:2017-12-05)

近年、光格子中の冷却原子に対する量子気体顕微鏡の技術が急速に進展している。我々はこれまでにYb原子の量子気体顕微鏡を作成に成功している。これによって光格子中での原子位置を1サイトの単位で決定することができる。今回我々はこの技術を分子に適用した。光格子中のYb原子に対する2光子光会合によって電子基底状態の分子を作成し、さらにその分子を原子に戻して観測することで、分子の量子気体顕微鏡による観測に成功した。
著者
福島 雅夫 吉村 一彦 久保 恵嗣 小林 俊夫 半田 健次郎 草間 昌三
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.753-757, 1980

22才男. 中岳 (3,084m) 登頂後呼吸困難, 意識障害が出現, 天候不順のため4日間山頂付近に滞留した. 救助時昏睡状態, 全身チアノーゼを認め, 全肺野で湿性ラ音を聴取した. 呼吸不全のため救助後約12時間で死亡. 剖検にて肺水腫の他に肺胞毛細血管, 肺動脈に微小血栓を認め, 脳白質にびまん性点状出血を認め注目された.
著者
佃 為成 酒井 要 小林 勝 橋本 信一 羽田 敏夫
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.p433-456, 1989-12

北部フォッサマグナの糸魚川・静岡構造線に長野盆地西縁断層(善光寺地震断層系)及び千曲川構造線のそれぞれの延長がぶつかる地域において発生した1986年12月30日の地震の震源パラメータや余震活動および先駆的活動の特徴,テクトニクスとの関連について調べた.震源域直上の1臨時観測点を含む近傍の観測点のデータを用いて余震の高精度震源決定を行い,さらに本震の震源についても定常観測点に基づく結果を補正した.この際,深発地震データから推定した走時の観測点補正時間を導入した.本震の深さは5.5kmで,その近傍に集中した余震(狭義の余震)の発生域はN15~20°Wの走向をもち,僅かに西に傾いた,ほぼ垂直な面上にあり,水平に6km,深さ方向に4kmの広さに収まる.この余震分布は初動の押し引きから得られた断層面の一つ(走向N19°W,傾斜角73°,すべり角26°)にほぼ一致する.この狭義の余震の外に点在する広義の余震は東西,南北にそれぞれ20kmの広さに分布する.気象庁の観測点の変位地震計記録の初動P波から推定した震源断層の破壊は,本震の震源付近から,余震が密集している南の領域へ向けて3km/sの速度で伝播した.その全面積は6km2,平均的な変位は75cm.変位の立ち上がり時間は0.5sである.また,地震モーメントは1.3×1024dyne・cm,応力降下は220barである.本震の破壊領域は既存の断層上にはなかったが,広義の余震は,2本の新第三紀層中の断層(小谷-中山断層,持京断層)が会合する地点,両断層に画された東南側の領域一帯,北部の両断層に挾まれた地域や,孤立的に東部の一地点に分布する.活動の範囲は時間とともに,拡大縮小の変化が認められた.最大余震はM3.5(広義の余震)で,本震の大きさに比べ,極めて小さく,余震回数も多くはなかったが,その減衰の定数はp=1で,通常と変わらない.この地震に先行した微小地震活動があった.その震源域は広義の余震の一つのクラスターとほぼ一致する.また,周囲半径100km以内の地震活動が1~2年前から1年後にかけて活発であった.直前の5~9日前には,飛騨山地を隔てた跡津川断層でも,目立った活動があった.大町市付近の系魚川・静岡構造線に沿った地域には,過去にも度々M6程度の地震が発生している.その中で1958年の地震の震央は,今回の地震の活動域にある.このときにも跡津川断層の活動が連動した(1858年飛越地震,M6.9).糸魚川・静岡構造線等を含む広域のネオテクトニクスの枠組みのなかに今回の地震の活動域が位置づけられるとともに,小規模の地殻ブロックの役割も注目される.A remarkable earthquake of Af 5.9 occurred at 09:38 on December 30, 1986, 10km northeast of Omachi city, Nagano Prefecture. This earthquake was accompanied by precursory microearthquake activity from one year before, at nearly the same place with one of the clustering spots of aftershocks, which is located in the vicinity of the meeting point of the Tertiary faults: the Otari-Nakayama and Mochigyou faults. The historical earthquake of M 5.7 in 1858 took place around this spot. Adjacent to this area, there were two other historical events with magnitude around 6 in 1890 and 1918. Synchronized seismic activity between the Omachi region and the Atotsugawa fault region, about 60 km apart from each other, was found in this 1986 event as in 1858. The surrounding seismicity within 100 km from the epicenter of the 1986 event had been active from several years before.