著者
若松 美貴代 中村 雅之 春日井 基文 肝付 洋 小林 裕明
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学医学部保健学科紀要 = Bulletin of the School of Health Sciences, Faculty of Medicine, Kagoshima University (ISSN:13462180)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-30, 2018-03-31

近年,妊産褥婦の自殺,子どもの虐待の問題から周産期メンタルヘルスの重要性が注目されるようになった。より細やかな支援のためには妊娠早期から関わることが必要である。そのため2017年に母子保健法改正が行われた。妊娠早期から産後うつ病を予測できる質問紙が求められ開発が行われているが,日本で使用できるものは少ない。諸外国で広く用いられているPostpartum Depression Predictors Inventory-Revised(PDPI-R)が有効と考えられる。日本語へ翻訳し,信頼性,妥当性と産前産後のカットオフ値の検討も行われている。PDPI-Rは妊娠期から産後うつ病を予測できるだけでなく,妊産褥婦の背景を多角的に把握でき,支援する際のアプローチの手がかりにもなりうる。今後,本調査票が広く用いられ,産後うつ病,虐待,ボンディング障害の関係性についても明らかになることが期待される。In recent years, the issues of suicide and child abuse committed by pregnant and postpartum woman have focused attention on perinatal mental health. Three questionnaires for use after childbirth have been found to identify mothers at risk for postpartum depression and child abuse. However, for detailed assistance it is necessary to provide support early in the pregnancy. Therefore, the Maternal and Child Health Law was revised in 2017.A questionnaire that can predict postpartum depression from early pregnancy is required and some candidates have been developed. However, no such questionnaire has been validated for use in Japan. The Postpartum Depression Predictors Inventory-Revised (PDPI-R), which is widely used in other countries, is considered to be effective for predicting postpartum depression. Therefore, we translated the PDPI-R into Japanese and examined its reliability, validity, and cut-off values during pregnancy and postpartum.The PDPI-R could not only predict postpartum depression during pregnancy, but also provided a multifaceted understanding of the backgrounds of perinatal woman. We hope that this questionnaire will be widely used in the future. It is expected that the use of the PDPI-R will help clarify the relationships among postpartum depression, child abuse, and bonding disorder.
著者
本多 佐知子 林 利恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.123, 2010

【目的】野菜は季節及び地域の影響が大きく、行事食に使われる際には、言い伝えもあり、食文化が反映されやすい食材である。日本調理科学会近畿支部食文化分科会では、2007年10~12月に、近畿2府4県の家庭における野菜の利用状況、調理方法、料理、行事食などを把握する為の調査を行った。一昨年、昨年に引き続き、本年度は野菜に特化した家庭で行われている行事食や使われる野菜の種類、年齢の違い等、兵庫県の現状を報告する。【方法】 調査時期:2007年10~12月、調査対象者:兵庫県在住者(県庁所在地とそれ以外の地域)の調理担当者、調査方法:直接記入法(留置法)による、有効回答数140部、回収率83.3%であった。その内、行事食の有効回答数129部、回答率92.1%であった。調査内容:17に分類した行事の料理名や供物、使用する野菜名、その野菜を用いる理由・由来等を記載する質問項目によった。【結果】 アンケート調査から兵庫県在住者が実施する主なものとして、80%の家庭で正月の行事食があげられる。正月の行事食は50歳以上、50歳未満の年代に限らず実施している。冬至も全体として54%となったが、正月と同様に年代に限らず半数以上が行っている。続いて七草47%、ひな祭り45%、節分41%、盆25%、大晦日19%、クリスマス17%となる。七草と盆は50歳以上の年代の方が実施している割合が多いが、節分とひな祭りは50歳未満の方が多い傾向になった。料理件数でも正月が多く、冬至、ひな祭り、七草、節分、盆の順に続くが、正月の行事食に使われている野菜の種類は32種類もあげられた。盆でも使われる野菜の種類が多く29種類になった。正月に使われる野菜としてくわいは上位6位に入っている。このように行事特有に使われる野菜に、七草粥の「七草」や節分の巻き寿司の「かんぴょう」、盆の「なす」「きゅうり」「かぼちゃ」があげられる。かぼちゃは、夏より12月の冬至の煮物として、代表的な野菜になっている。日本料理である正月の節句料理や盆の精進料理には、野菜が多く使われている。野菜の言い伝えもあり、健康にいいという理由からよく利用されているといえる。節分の巻き寿司は、毎年恵方に向かって丸かじりするという行事食であるが、宣伝効果もあり、根づいてきている。
著者
安冨 素子 岡崎 新太郎 河北 亜紀子 林 仁幸子 村井 宏生 眞弓 光文 和田 泰三 大嶋 勇成
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.827-832, 2013-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12

症例は4カ月女児.生後1カ月より湿疹が出現し,近医で小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)・十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう),NSAIDs外用剤による治療を受けていたが,皮疹の増悪,下痢,体重減少を認め当科に入院した.入院時血清Na126mEq/L, K7.3mEq/L, Alb3.0mg/dl, IgG15.3mg/dl.便中EDN,血清IL-18値が著明高値で,上記漢方薬のDLSTは陽性であった.漢方薬中止後に下痢は消失,ステロイド外用剤で皮疹は改善.母の食事制限なしに母乳で体重増加も回復し,検査所見も正常化した.外用剤の不適切な使用による皮膚症状の増悪に,漢方薬による修飾も加わり,電解質異常,低蛋白血症を来したものと考えられた.アトピー性皮膚炎の治療において,漢方薬は補助的治療薬と位置付けられるが,乳児への適応は慎重にされるべきである.
著者
林 純子 金子 和幸 井上 豊仁 下村 和則 横瀬 勝美 廣瀬 英晴 西山 實 黒田 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.279-286, 2004-07-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

市販石膏溶解剤12製品を組成分析(IR, WDX, TG-DTA)して主成分を同定するとともに,石膏浸漬前後での溶解剤のpH変化,浸漬時間による溶解量を測定した.石膏溶解剤の主成分はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N, N', N'-三酢酸三ナトリウムである可能性が高かった.溶解剤の固形分含有率は10.4〜31.8%であった.未使用の石膏溶解剤のpHは,10製品で8〜9を,2製品で13以上を示した.普通石膏硬化物の溶解率は,浸漬時間の増加に件い増大し,pH8〜9の10製品では浸漬2〜3時間で100%を示したが,pH13以上の2製品では浸漬3時間で14.3〜37.4%であった.
著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-258, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
28

本研究は,土地所有履歴を時間と空間両スケールで集約化し分析することによる,地域における新陳代謝メカニズムと空間変容の相互作用への理解を目的としている.研究を通じて以下の点を明らかにした.1)土地の所有形態分布はランクサイズルールに従い,寡占地主は分散して所有していた土地を取引を通じて集約する一方で,多くの地主が短期的所有を行なっている.2)寡占地主の土地再配分が地域の公共事業と関連し,地域の特徴的な空間を形成している.3)地割の変化しない街区がある一方で地割の大きく変化した街区が以降の土地利用に影響を与えている.
著者
小林 伸彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1178-1181, 2001-10-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
17

走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて個々の原子を操作することにより,人工ナノ構造の作成が可能となっている.また,そのナノ構造の電気伝導特性を利用し,ナノテクノロジーへの応用も期待されている.本稿では,第一原理電子状態計算による原子操作や原子細線の電気伝導の研究を紹介し, STMによるSi原予引き抜きにおいて,探針による近接効果やバイアス電圧による効果がどのように働き原子が引き抜かれるか,また,個々の原子が連なったAl原子細線がどのような伝導特性をもつかを解説する.
著者
大本 俊彦 小林 潔司 大西 正光
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.693, pp.231-243, 2001 (Released:2010-08-24)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

本研究では建設工事において発注者と請負者の間に生じる紛争解決のメカニズムに関してゲーム理論を用いた分析を試みる. 建設工事における紛争は当事者の間で建設工事契約に関する解釈が異なることにより生じる. 紛争解決の手段として和解もしくは仲裁が存在する. 本研究では工事契約に対する解釈の違いや紛争の程度が, 紛争解決の手段選択に及ぼす影響を分析するとともに, 第3者裁定が紛争解決の効率化に果たす役割を分析する. さらに, 日本型紛争解決方式と国際紛争解決方式の相違点について考察し, 日本型紛争解決方式に残された今後の課題をとりまとめる.
著者
武林 敬
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.861-869,928, 1999-09-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
3
被引用文献数
5

粉体を扱う業界において, 紛体そのものの製品化を行うことは少ない。その理由として, 紛体の特性, 粒子形状および粒子径によって, 本来必要とされる紛体なお持ち味が十分に生かしきれないことが多いためと考えられる。その場合, 目的用途に合わせた形に造粒したほうが, ハンドリングあるいは後工程の操作が非常に容易となる。ここでは, 一般的な流動層造粒について解説を試みる。
著者
小林英司
雑誌
臨床医薬
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1528-1532, 1998
被引用文献数
3
著者
佐々木 邦博 米林 由美子 平岡 直樹
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.419-422, 2001-03-30
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

長野市松代町は城下町であり,水道網が発達していた。武家屋敷において庭園の水を隣家から隣家へと流す泉水路が存在し,現在でも一部ながら残されている。江戸時代における泉水路の形成過程,その範囲,その用途を明らかにするのが本研究の目的である。対象地は上級武家屋敷地であった殿町とした。真田家文書などの水道絵図から分析すると,次の結論が得られた。中水道が江戸時代中期頃に形成され始め,後期には泉水路として水系を形成する。殿町にはほとんどの家に泉水路が流れ,主に生活用水として,後期には部分的には養魚池の給水源としても用いられていた。その範囲はおそらく松代城下町全体に及んだのではないかと推測される。
著者
小林 初夫 安部 清哉
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.12, pp.173-225, 2014-03-01

本研究は、2011 年3 月11 日の東日本大震災で、避難生活を強いられた小学校児童・中学校生徒が受けたであろう言語面への影響についてアンケート調査を実施し、言語形成期にあたる児童生徒が受けた言語の面での有形無形の影響を、部分的にでも記録しようとするものである。児童生徒が、避難生活前後において、各自の言語や周囲の言語の変化について、どのように受け止め、どのように感じたのか、主にその言語意識の側面に関する質問への選択回答形式と自由記載形式によってアンケート形式で調査した。調査対象は、福島県南相馬市の小学校3 校、中学校1 校で、2012 年2 ~ 3 月の間に学校別に実施し、小学生計57 名、中学生計91 名、合計148 名の回答を得た。それを、小・中別、中学の学年別、男女別、避難先の遠近別ほかの観点から分類して集計し、それぞれについて若干の分析と考察を行った。調査ということそのものの“ 難しさ” もあったが、幸い児童生徒の皆さんおよび関連諸方面のご理解とご協力をいただき、小さな調査ではあるが、前例のほぼない言語意識の記録を残すことができた。回答からは、避難生活後、友達の言葉が変化したと感じた児童生徒は、小学生で29%、中学生で41%、平均で39%あり、言語形成期にある児童生徒の5 分の2 以上が、何らかのかたちで言葉への影響を被ったであろうことが推定された。また、複数選択回答式質問への避難先別平均回答率の相違からは、言葉がより異なる県外への避難を経験した児童生徒の方が、福島県内避難の児童生徒の場合よりも、より強く言葉(地域言語)を意識するようになった様子が読み取れた。\ 本研究は、「震災原発等による避難生活が言語形成期の児童生徒に及ぼす影響に関する調査研究」(学習院大学人文科学研究所の平成24 年度特別共同研究プロジェクト、代表:安部清哉)の研究成果の一部である。\This research was based on a survey about the impact on the language of elementary and junior high school students who were forced to live as refugees in local or di erent prefectures after the earthquake on March 11, 2011. Th e survey was conducted in a questionnaire form that asked students, who were in a the formative period for personal language, about how they felt there had been changes in their or other peopleʼs language since living as evacuees. Three elementary schools and one junior high school in Odaka, Minamisoma City in Fukushima were surveyed. The total response was one-hundred forty-eight including fty-seven elementary school students and ninety-one junior high school students. Th e period of survey was from February 2012 to March 2012. Th e response was aggregated for the study by lementary/junior high school, school year, gender, and the distance of their relocation. is is an unprecedented record as a language survey of elementary and junior high school students in uenced by the Great East Japan Earthquake. From the survey responses, students noticed that their friendʼs personal language had changed after living as evacuees: 29% of students noticed in elementary school, 41% in junior high school, and the average proportion is 39%. It appears that two fths of students in the formative period of personal language development had their language a ected in some way by their lives as evacuees.
著者
内田 晋 林 清忠 我有 満 梶山 努 白澤 繁清 高橋 宙之 寺島 義文 松岡 誠 吉永 優
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会研究発表会講演要旨集 第4回日本LCA学会研究発表会(会場:北九州国際会議場)
巻号頁・発行日
pp.152, 2008 (Released:2009-02-05)

エネルギー作物栽培は、よりエネルギー利用に特化した品種の導入や栽培技術の改善により、そのエネルギー効率を改善し、環境負荷を低減させることが可能である。本研究ではテンサイ、バレイショ、カンショ、ソルガム、サトウキビの5種類のエネルギー作物について、品種改良や栽培技術上の改善がライフサイクルでのエネルギー効率や温室効果ガス排出量に与える影響を評価し、慣行栽培に比べどの程度エネルギー効率を改善でき、環境負荷を低減できるかを検討した。
著者
清水 浩 小林 和生 岩田 博夫 雨宮 浩 阿久津 哲造
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.203-208, 1991-02-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1

ハイブリッド型人工膵臓では、ラ島は血管系から切り放されさらに半透膜で被われている。このためハイブリッド型人工膵臓の血糖値変化に応答したインスリン分泌は、当然自然の膵臓からのインスリン分泌とは異なるであろう。本研究では、ハイブリッド人工膵臓の形状、半透膜の膜厚や膜中の高分子濃度等がインスリン分泌に与える影響を、実験と理論の両面から検討を加えた。よく実験値を再現できる数式モデルを組み立てることができた。数式モデルによる解析より、インスリン分泌の動特性に与える影響は、ハイブリッド型人工膵臓の形状よりはラ島を包むハイドロゲル膜の膜厚が大きな影響を与えることがわかった。本研究により、ハイブリッド型人工膵臓作製のための、基礎データを得る膜透過試験評価システムまたインスリン分泌の数式モデルを構築でき、これらは今後新規な封入材料を選定したり、新たなシステムを作製する有効な手段になり得ると考えられる。
著者
林 和寛 池本 竜則 牛田 享宏
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.260-268, 2016-03-25

はじめに 痛みは不快な感覚・情動経験であり,侵害刺激に起因するだけではなく,認知・情動的側面が影響を及ぼすことが知られている.多様な要因がかかわる「痛み」を客観的にとらえるために,脳内神経活動を用いた評価の試みが行われている.本稿では,痛みにかかわる脳内神経活動の知見を紹介するとともに,痛みを遷延させる認知・情動的要因の評価と介入方策を概説し,患者の痛みにかかわる問題を解決するための一助としたい.
著者
小林 郁夫
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.330-334, 2002 (Released:2007-03-30)
参考文献数
25
被引用文献数
8 6