著者
山本 輝俊 梶田 健史 山守 一徳 長谷川 純一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.70, pp.25-32, 1997-07-24
被引用文献数
9

本論文では、デフォルメ地図自動生成のための並列型道路変形手法について述べる。道路変形には、これまで道路を順番に変形していく逐次的な手法が開発されているが、結果が変形順序に依存する、変形順序を決める合理的な方法がないなどの問題があった。そこで本文では、各道路線分にかかる4種類の力を定義し、それらの合力に基づいて道路全体を反復並列的に変形させる手法を提案する。実験では、本手法と従来手法を実際の道路地図に適用し、それらの結果を2種類の尺度を用いて定量的に評価する。This paper presents a parallel road deformation method for automated generation of deformed maps. A sequential method has already been proposed for the same deformation problem. However, the deformed results depend on the order of deformation, and there is no reasonable way to determine the order. The method proposed here can deform the roads in parallel and iteratively based on a resultant of four types of forces placed on each road segment. In experiments using real maps the results by the proposed method and the previous one are evaluated quantitatively with two kinds of criteria.
著者
二山 拓也 藤田 憲浩 常盤 直哉 進藤 佳彦 枝広 俊昭 亀井 輝彦 那須 弘明 岩井 信 加藤 光司 福田 康之 金川 直晃 安彦 尚文 松本 雅英 姫野 敏彦 橋本 寿文 劉 逸青 Chivongodze Hardwell 堺 学 丁 虹 竹内 義昭 梶村 則文 梶谷 泰之 櫻井 清史 柳平 康輔 鈴木 俊宏 並木 裕子 藤村 朋史 丸山 徹 渡辺 寿治 原 毅彦 大島 成夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.2, pp.39-42, 2009-04-06

32nmCMOS製造プロセスを用いて3ビット/セルの多値技術を持った32GビットのNANDフラッシュメモリを開発した。微細化と3ビット/セル技術の導入により、チップサイズ113mm2を実現した。プレスリリースされている32GビットNANDフラッシュとしては世界最小かつ最高密度であり、マイクロSDカードに実装できるNANDフラッシュメモリとしては世界最大容量を実現した。本発表では、最近のNANDフラッシュメモリの技術動向に関してもあわせて紹介する。
著者
福嶋 政期 梶本 裕之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HCI, ヒューマンコンピュータインタラクション研究会報告 = IPSJ SIG technical reports (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.128, pp.A7-A8, 2008-05-21

2008年4月5日から10日の6日間、ACMSIGCHIが主催する国際会議CHI2008(Conference on Human Factor in Computing Systems)が開催された。CHIはHuman-Computer Interactionに関する最高峰の国際会議である。今年は、ルネサンス発祥の地として名高いイタリアのフィレンツェで開催された。フィレンツェは、町の至る所に美術館、教会、石像等があり、また、屋根は赤褐色で統一されており、町全体が一つの美術館のようであった。会場は、「バッソ要塞」(図1)と呼ばれる五角形の大建築物であった。今年の参加登者数は約2300人であった。会議内容の統計は以下通りである。全採択数は582件(全投稿数1969,採択率29.56%)、論文発表は157件(投稿件数714件,採択率22%)、ショートトーク61件(投稿件数341件、採択率18%)であった。なお、全投稿件数はこれまでで最多であった。6日間のうち初めの2日間はプリカンファレンス(Workshops, Doctoral Consortium等)であり、残り4日間がテクニカルプログラムであった。会議初日にはIrene McAra-McWilliam氏によるOpening Plenary、また、最終日には、Bill Boxton氏によるClosing Plenaryが行われた。会議は、毎日朝にその日のセッションの発表者が30秒で自分の発表の広告を行うCHI Madnessというイベントが行われた。その後はPapers/Notes, Case studies、Panel等に加え、デモ展示、企業展示、ポスター発表なども平行して行われた。筆者にとって初めての国際学会であったこともあり、休み時間の間は常にプログラムと睨みあっていた。また、3日目の夜はMicrosoft, Google等のHospitality Events(図2)が行われた。イベント会場内は多くの人で溢れかえっていた。個人的な話で恐縮であるが著者はMicrosoftのイベントでの抽選でZune(80GB)を頂いてしまった。今年は、ベストペーパー7件、ベストノート3件が選ばれた(プログラムの24ページに記載されている。http://www.chi2008.org/program.html) 。
著者
福嶋 政期 梶本 裕之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学]
巻号頁・発行日
vol.2008, no.50, pp.A7-A8, 2008-05-21

2008年4月5日から10日の6日間、ACMSIGCHIが主催する国際会議CHI2008(Conference on Human Factor in Computing Systems)が開催された。CHIはHuman-Computer Interactionに関する最高峰の国際会議である。今年は、ルネサンス発祥の地として名高いイタリアのフィレンツェで開催された。フィレンツェは、町の至る所に美術館、教会、石像等があり、また、屋根は赤褐色で統一されており、町全体が一つの美術館のようであった。会場は、「バッソ要塞」(図1)と呼ばれる五角形の大建築物であった。今年の参加登者数は約2300人であった。会議内容の統計は以下通りである。全採択数は582件(全投稿数1969,採択率29.56%)、論文発表は157件(投稿件数714件,採択率22%)、ショートトーク61件(投稿件数341件、採択率18%)であった。なお、全投稿件数はこれまでで最多であった。6日間のうち初めの2日間はプリカンファレンス(Workshops, Doctoral Consortium等)であり、残り4日間がテクニカルプログラムであった。会議初日にはIrene McAra-McWilliam氏によるOpening Plenary、また、最終日には、Bill Boxton氏によるClosing Plenaryが行われた。会議は、毎日朝にその日のセッションの発表者が30秒で自分の発表の広告を行うCHI Madnessというイベントが行われた。その後はPapers/Notes, Case studies、Panel等に加え、デモ展示、企業展示、ポスター発表なども平行して行われた。筆者にとって初めての国際学会であったこともあり、休み時間の間は常にプログラムと睨みあっていた。また、3日目の夜はMicrosoft, Google等のHospitality Events(図2)が行われた。イベント会場内は多くの人で溢れかえっていた。個人的な話で恐縮であるが著者はMicrosoftのイベントでの抽選でZune(80GB)を頂いてしまった。今年は、ベストペーパー7件、ベストノート3件が選ばれた(プログラムの24ページに記載されている。http://www.chi2008.org/program.html) 。
著者
梶川 裕矢
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

引用ネットワーク分析は、学術分野の全体像を俯瞰するための手法として国内外で広く研究がなされている。その手法として、共引用、書誌結合、直接引用が古くから知られているが、手法間の差異を実証的に検討したものは極めて少ない。本研究では、各手法の有する特徴を定量的に明らかにした。具体的には、特定の分野の論文集合に対し、3種類のリンク形成手法(共引用、書誌結合、直接引用)を用いて引用ネットワークを形成し、それぞれの手法の妥当性、有効性、効率性を評価した。さらに、引用に重みを持たせる手法にを提案し分析を行った。その結果、萌芽領域の検出において、直接引用を用いた手法が最も効果的であることが分かった。また、直接引用を用いたネットワークの語の分布の特徴、分野横断性や、分野間の引用の時間遅れを測定する手法に関する基礎的な検討を行った。
著者
橋本 正洋 坂田 一郎 梶川 裕矢 武田 善行 松島 克守
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.302-305, 2007-10-27
被引用文献数
1

イノベーションという概念は、経済学、経営学等という学問分野だけでなく、経済政策の運営にとっても、近年とみに重要性を増し、学術と政策との連関が深まっているが、他方で、学術の世界におけるイノベーションに関する議論については、これまで、どういう視点で何が議論されてきたのか、今後の研究の重点課題は何かということについて、必ずしも明確になっていない。筆者らは、学術論文の引用分析という手法により、イノベーションに対する学術研究の俯瞰を試みた。具体的には、論文のタイトルやアブストラクトといった書誌事項に「イノベーション」という用語を含むものを抽出した。4万件近い学術論文が該当した。次に、それらの間の引用分析を行った。これら論文群によって構成される引用ネットワーク中、最大連結成分に含まれる論文について、Newman法を用いてクラスタリングをし、主要なクラスターの特性の一部を明らかにした上で、可視化(俯瞰マップの作成)を行った。更に、各クラスターの平均年齢の特定も行った。主要なクラスターには、イノベーション創成の環境、技術経営、組織のイノベーションなどの横断的テーマのほか、ヘルスケア、環境問題、サービス、農業などの分野別テーマがみられる。また、時系列的にみると、イノベーション研究そのものは70年代以前から行われてきたが、90年代初頭から活発となり、論文数は急速に増加している。その傾向は、最近一段と顕著になっている。分野別には、技術経営は、特に成長が著しい。また、大学とイノベーションとの関係に関する論議も、90年代初頭から活発化していることが判明した。このように、学術論文の引用分析という手法を用いることで、イノベーションに関する研究動向を客観的に捉えることが可能となった。
著者
中山 二博 濱坂 卓郎 大勝 貴子 梶原 和美 小椋 幹記 黒江 和斗 伊藤 学而
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.49-57, 2003
被引用文献数
7

近年,増加している成人女性の矯正治療に伴う問題点を調査するため,鹿児島大学歯学部附属病院矯正科では,就業女性の矯正治療モニターを募集した。矯正治療モニターに応募した123名のうち,モニター選考の口腔診査に参加した67名にアンケート調査を行い,矯正治療を受けようと決めた動機と矯正治療モニターに応募した経緯を分析した。矯正治療の動機は,歯並びの見た目が悪い97%,顔貌が気になる66%,歯磨きがしにくい64%などであった。歯並びが気になり始めたのは13〜15歳,顔貌が気になり始めたのは16〜18歳であった。対象の90%は矯正治療の未経験者で,治療を受けなかった理由は治療費が高い82%,治療期間が長い75%などであった。応募の動機は,モニター募集に触発された88%,治療費が減額される78%,大学病院だから安心73%などであった。治療を始めようと思った理由は,モニター募集があったから82%,経済的余裕ができた46%,大人でも治療できると分かった39%などであった。モニター応募者には10代から審美的改善への欲求があった。受療に至らなかった理由として費用,治療期間などのほか,成人は矯正治療できないと考えていた者が3割もあり,矯正治療に対する正確な情報が不足していることが明らかになった。矯正治療モニターの募集が,結果的に成人の矯正治療に関する情報不足の解消と,潜在的治療希望者に受療のきっかけを与えた。
著者
藤原 宏志 藤田 佳久 梶田 真 戸島 信一 鈴木 康夫 城倉 恒雄 根岸 裕孝
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.244-249, 2003-06-30

2002年の地域大会として10月5日〜7日にかけて上記シンポジウムを開催した.10月5日の午後に宮崎市シーガイアワールドコンベンションセンターにて講演とパネルディスカッションを開催し,6〜7日に現地視察を宮崎県南郷村・諸塚村・椎葉村・五ヶ瀬町・熊本県蘇陽町等にて実施した.はじめに,藤原宏志氏(宮崎大学長)による特別講演「焼畑文化とむらづくり」,続いて藤田佳久氏(愛知大学)による基調講演「山村政策の展開と山村の再生を巡って」が行われた.これを踏まえて4名のパネル報告と藤田氏も加わった5名による討論を行った.座長は岡橋秀典氏(広島大学),宮町良広氏(大分大学)が務めた.討論の後,矢田俊文会長による全体総括が行われた.なお,現地視察の参加者は24名,パネルディスカッションヘの参加者は70名であった.
著者
梶村 皓二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.288-293, 1991-04-05

低温STM/STSが開発されたことによって, Giaever以来行われてきた超伝導体のトンネル分光法が原子スケールの空間的分解能という新機能を得た. この手法により, 超伝導体に侵入した磁束量子の渦糸(Vortex)内の素励起と酸化物超伝導体の異方的な局所状態密度が初めて明らかにされた. 一方, STMはその原理から絶縁性有機物質に適用するのは難しいと思われているにもかかわらず, 導電性基板表面に吸着・固定させて原子・分子配列の構造観察が行われ, DNAの塩基配列解読への挑戦にまで及んでいる. STM像が得られる機構についても考察する.
著者
梶本 五郎
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.387-391, 2000-08-20

本学学生の自宅生306名と単身生活生142名について,揚げ物と妙め物の回数,さし油の有無,使用後のフライ油の保存方法,廃棄までの使用回数,廃棄の目安,廃食油の処理法,捨て方などについてアンケート調査を行い,既報の調査結果と比較検討した。 1.自宅生と単身生活生の割合は68および32%で,自宅生の家族構成では4人家族が最も多く,ついで,5人,3人,6人の順であった。前回(1969年)調査に比べ,6人家族の割合の減少と,8人以上の家族はなく,核家族化,少子化傾向があらわれている。 2.揚げ物を行う回数は,自宅生の家庭で週1回が最も多く,ついで,2回であった。家族数が多くなるほど揚げ物を行う割合は高い。単身生活生は全く揚げ物をしない者が半数を占め,行っても月1回程度であった。 3.さし油を行う割合は自宅生と単身生活生で75%および68%で,前回の調査結果の60%よりやや高い傾向にあった。 4.使用後のフライ油は瓶,缶に移し保存するが60%で,40%はフライ鋼に入ったままの保存であった。 5.廃棄するまでのフライ油の使用回数は,自宅生の家庭で1〜2回が40%,単身生活生で50%を占め,4回までで廃棄する割合は両者ともに90%であった。 6.廃棄の目安は,フライ油の色で判断する割合が最も高く,ついで,使用回数であった。 7.廃食油として出されたフライ油の処理は,紙,布にしみ込ませて捨てる方法と市販の凝固剤で固めて捨てる方法が最も多く,両者で75%を占めていた。一方,廃食油を出さない割合は4%,生活排水に流す割合は自宅生の家庭では2%と少ないが,単身生活生の1割は生活排水に流していた。
著者
梶浦 欣二郎
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.p415-440, 1981
被引用文献数
2

Tsunami energy generated by an earthquake is estimated on the basis of a simple fault origin model of the earthquake. Tsunami energy Et is given by log Et(ergs)=2Mw+log F+5.5 where Mw is the moment-magnitude of earthquake and F is a function of fault parameters (maximum F is about 0.1), such as the dip angle δ, slip angle λ and the relative depth h*(=H*/L; where H* is the mean depth of the fault plane with the length L and width W). The aspect ratio (=W/L) is assumed to be 1/2. The variation of F with respect to the full range of δ, λ, or h* (<1.0) is about a factor of 10. In particular, the difference of tsunami energy between the vertical faults with the dip and strike slips is conspicuous. Since the depth dependence of the tsunami energy is given in terms of the relative depth h*, the decrease of energy with the increase of the fault depth H* is more significant for smaller earthquakes. The results are compared with empirical values of tsunami energy published so far. The general trend of log Et with respect to Mw is consistent with the above formula. However, it is noted that the values of tsunami energy derived in the past on the basis of the energy flux method were systematically overestimated by a factor of 10 or more. On the other hand, the maximum tsunami energy (Chilean earthquake of 1960) would be around 1023 ergs and somewhat lower than the value expected from the formula.地震によっておこる津波のエネルギーを,幾何学的相似を仮定した簡単な地震断層モデルにもとずいて推定した.その結果によると津波エネルギーEt(エルグ)は,Log Et=2Mw+Log F+5.50で与えられる.ここで,Mwは地震のモーメント・マグニチュードであり,Fは地震モーメントと直接関係しない断層パラメータの関数である.長さL,幅Wの地震断層を考えると,Fに含まれるパラメータは断層面の傾斜角δ,断層面上のすべり方向λ,断層面の相対深さh*(h*IH*/L;H*は断層面の平均深さ,Lは断層の長さ),および断層面のたてよこ比W/Lであるが,このうちW/L=1/2を仮定した.これらのパラメータの変化により,Fは最大1桁くらい変るが,最大のFの値は約0.1である.鉛直の断層で,たてずれのときとよこずれのときの津波エネルギーの違いが最も大きい.断層面の深さによる津波エネルギーの違いは,相対深さh*の関数であり,やや深い地震ではEt~exp(-h*/2.4)の程度にエネルギーは深さとともに減少する.h*はもともと断層の長さLで無次元化されているので,Mwが小さくなるとLが減少するため,小さな地震ほど津波エネルギーの深さH*による減少率は大きくなる.これらの結果を,今までの津波エネルギーの推測値と比較する.まず,いろいろの方法によって推定された津波エネルギーの信頼度を検討し,エネルギー推定の不確かさを明らかにした.最も普通に行なわれる,エネルギー・フラックスを利用する方法では,今までの値は系統的に10倍以上の過大評価であるがMwに対する依存性は,Log Et~2Mwと矛盾しない.津波数値計算と実測波高との比較から求めた津波エネルギーは,もともと断層モデルから出発していることもあって上式でよくあらわされる.最大級の地震津波であるチリ津波について,地殻変動の推定から求めた津波エネルギーは1023エルグの程度と思われ,上式の方が過大評価ぎみである.これは,断層モデルを簡単化しすぎていることにも原因があるであろう.
著者
蒲原 行雄 山家 仁 重岡 裕治 吉永 啓 青木 史一 梶原 義史 兼松 隆之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.922-926, 1994-04-01
被引用文献数
9

鈍的腹部外傷によって生じる小腸狭窄はまれな疾患である.今回われわれは,転倒による腹部打撲後に発症した小腸狭窄の1例を経験したので,本邦報告例の検討とともに報告する.症例は56歳の男性.バイク乗用中転倒し,下腹部を打撲し来院した.入院時の腹部超音波検査,computed tomography(CT)検査にて腹腔内出血を認めたが,保存的に軽快した.第14病日に腹痛と嘔吐が出現し,腹部単純X線撮影にて鏡面形成を伴う小腸ガスの増加を認めた.イレウス管を挿入し症状は軽減したが,小腸造影で回腸に全周性の狭窄を認めた.開腹にて回盲弁から50cmの回腸の狭窄と周囲の腸間膜に瘢痕を認めた.腸切除を行い,術後経過は良好であった.病理学的検索にて,U1II-IIIの輪状潰瘍と炎症細胞の浸潤,および線維化を伴う肉芽組織の増生を認め,鈍的外傷による回腸の限局性の循環不全で生じた瘢痕狭窄と考えられた.