著者
森 功次 林 志直 野口 やよい 甲斐 明美 大江 香子 酒井 沙知 原 元宣 諸角 聖
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.496-500, 2006-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3 11

ノロウイルス (NV) による集団胃腸炎は事例数患者数ともに毎年上位をしめ, その予防対策の構築が求められている. しかしNVは現在培養系が確立されていないため, その不活化の条件などに不明な点も多い. そこでノロウイルスと同じカリシウイルス科に属するネコカリシウイルス (FCV) が培養可能であることに着目し, 手洗いによるウイルス除去効果についてウイルス感染価と遺伝子量を指標にアルコール, クルルヘキシジン, 第四級アンモニウム塩, 成分としてヨード化合物, トリクロサン, フェノール誘導体を含むハンドソープを用いて検討を行った. その結果, 流水によるすすぎのみでもウイルス量が100分の1程度に減少することが明らかとなった. 手洗い時にハンドソープを使用することにより, さらにウイルス量の減少傾向が強まったことから, 手洗いはウイルス性胃腸炎の発生予防および拡大防止に非常に有効な手段であることが示唆された.
著者
江口 英利 三森 功士
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究はイベルメクチンがYAP1の阻害により胃癌に対して抗腫瘍効果を有すかを明らかにする。イベルメクチンを胃癌細胞および胃癌マウスモデルに投与すると腫瘍増殖抑制効果を認めた。またその機序として、Hippo経路の転写因子であるYAP1は細胞増殖関連遺伝子であるCTGFを誘導するが、イベルメクチン感受性胃癌細胞においてイベルメクチンの投与によりYAP1 mRNA、核内YAP1蛋白が減少し、CTGFの発現が減弱した。つまり、イベルメクチンはHippo経路のYAP1発現を抑制することにより細胞増殖を抑制しうる。また胃癌症例において、YAP1高発現群は予後不良であった。
著者
森 功次
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.37-48, 2012-06-30

In the last section of Saint Genet (1952), Jean-Paul Sartre attempts to vindicate Jean Genet's immoral works. Sartre tries to save Genet from severe moral criticism in French literary world at the time. In this paper, I will organize Sartre's argument and examine his complex defense. According to Sartre, the immorality of Genet's works consists in the veriter's devious intention to invert our values and the bad influence he has on his readers. On the other hand, Sartre claims that Genet's works have some moral merits: to give readers some understanding of what Sartre calls 'solitary' positions such as Genet's, and to impress upon readers an identical possibility for themselves. Moreover, these moral merits are supported by the aesthetic appreciation of his works. The fact that readers could fully appreciate Genet's immoral works irresistibly points out to the readers the relation between themselves and the immorality of the works. It is not, however, clear how these moral merits are able to overcome the criticism against Genet. Moreover, because Sartre's argument presupposes an appreciation that deviates from Genet's own intention, which Sartre himself recognizes, it is not clear whether or not Sartre's attempted vindication can be viewed as a legitimate evaluation of Genet's works.
著者
森 功次
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.16-29, 2009

Dans la pensee de l'art chez le premier Sartre, l'image et le reel sont-ils distinctement separes? Sartre a-t-il meconnu la materialite de l'oeuvre d'art? Il serait excessif d'affirmer cela. Premierement, si l'on examine les concepts de <<spontaneite pre-volontaire>>, de <<degradation>>, et de <<motivation>> dans la theorie de l'image de Sartre, il apparait clairement que dans l'experience de l'oeuvre, le reel se maintient derriere l'imaginaire. La negation de l'existence de l'objet d'appreciations esthetiques ne signifie pas ne pas voir l'oeuvre. Deuxiemement, par comparaison avec le reve, l'experience de l'oeuvre d'art maintient des relations plus etroites avec le reel. Certes, le reve et l'experience esthetique constituent pareillement une experience de la conscience captive et concernent l'imaginaire, et Sartre lui-meme a d'ailleurs souvent decrit la ressemblance entre les deux. Mais dans L'imaginaire, a certains egards-notamment la distance vis-a-vis du reel, la facilite de la reflexion, et la nature du sentiment-, Sartre a clairement distingue l'experience esthetique de celle du reve. De ce point de vue, dans la theorie sartrienne, la realite de l'oeuvre, elle aussi, joue un role efficace.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.409-419, 2021-01-01 (Released:2021-12-10)

近年「アートをビジネスに活かそう」というメッセージを掲げた本が多数出版されている.本報告では,近年のこの動向をまとめつつ以下の4点を指摘する.この動向の書籍では,(1)「アート」という語は基本的に価値語として用いられている.(2)「解釈は自由だ」とされる一方で,アートの文脈の豊かさも強調されている.(3)「アート」「アーティスト」に関する主張が不適切に一般化されたり,逆にことさらアートのことでもない話がアートの特徴として語られたりしている.(4)想定されている芸術形式や芸術的価値に偏りがある.最後に,この動向を大学教育に導入するさいの注意点を,対話型鑑賞教育,授業履修者数,アーティスト・イン・レジデンスの3つに関して述べる.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.457-473, 2020-01-01 (Released:2020-07-15)

2015年のVOCA展に,コンセプチュアル・アーティストの奥村雄樹が作品を提出しようとしたところ,事務局側から出品を拒否された.本論はこの出品拒否事件をめぐってなされた奥村と事務局とのやりとりを読み解きながら,芸術作品のカテゴリーと作者性との関係を考察する試みである.作品の作者はどのようにして特定されるのか,また,作品の見方によって作者が変わることはありうるのか.こうした問いに対して本論は,作者性をめぐる近年の分析美学の議論を援用しながら「意図」や「責任」という観点から答え,最終的に作者の芸術的達成や責任を限定する一つの原理を提案する.それはすなわち,作品制作に複数の者が関わっている場合,あるカテゴリーにおいて一方の者に芸術的達成の責任を認めつつ,同時に同一カテゴリーにおいて別の者のみに作者性を付与することはできない,という原理である.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.365-381, 2021-01-01 (Released:2021-12-09)
参考文献数
33

近年の分析美学の領域では,理想的批評家や美的価値についての伝統的理論を再考しようという動きが高まっている.本論では,伝統的理論を批判的に再検討するその近年の動向を紹介し,その理論進展をふまえるとわれわれは専門家の意見にどのように耳を傾けるべきなのか,という問題を考察する. 本論はまず,伝統的な議論として,ヒュームが「趣味の標準について」で提示した論点を紹介し,次に最近の議論として,理想的批評家について検討しているジェロルド・レヴィンソンの議論を紹介する.その後,美的価値の快楽主義に対する近年の批判について検討する.本論ではとりわけ,ドミニク・ロペスが提示しているネットワーク説に焦点を当て,その利点と動機を明らかにする.最後に,そこまでの考察を元に,われわれ凡人は芸術批評をどのように読むべきか,という問題に答える.われわれは,批評家がそこで何を達成しているか,そして批評家がそこでどのような能力を発揮しているか,といった点に着目しながら批評文を読むべきである.
著者
千葉 隆司 貞升 健志 長島 真美 熊谷 遼太 河上 麻美代 浅倉 弘幸 内田 悠太 加來 英美子 糟谷 文 北村 有里恵 小杉 知宏 鈴木 愛 永野 美由紀 長谷川 道弥 林 真輝 林 志直 原田 幸子 藤原 卓士 森 功次 矢尾板 優 山崎 貴子 有吉 司 安中 めぐみ 内谷 友美 神門 幸大 小林 甲斐 長谷川 乃映瑠 水戸部 森歌 三宅 啓文 横山 敬子 吉田 勲 浅山 睦子 井田 美樹 上原 さとみ 小野 明日香 河村 真保 小西 典子 小林 真紀子 齊木 大 下島 優香子 鈴木 淳 西野 由香里 村上 昴 森田 加奈 吉丸 祥平 木本 佳那 新藤 哲也 堀田 彩乃 小林 千種 大塚 健治 吉川 聡一 笹本 剛生 稲葉 涼太 小峯 宏之 佐伯 祐樹 坂本 美穂 塩田 寛子 鈴木 淳子 鈴木 俊也 高久 靖弘 寺岡 大輔 中村 絢 成瀬 敦子 西山 麗 吉田 正雄 茂木 友里 飯田 春香 伊賀 千紘 大久保 智子 木下 輝昭 小杉 有希 斎藤 育江 高橋 久美子 立石 恭也 田中 優 田部井 由紀子 角田 徳子 三関 詞久 渡邊 喜美代 生嶋 清美 雑賀 絢 鈴木 仁 田中 豊人 長澤 明道 中村 麻里 平松 恭子 北條 幹 守安 貴子 石川 貴敏 石川 智子 江田 稔 岡田 麻友 草深 明子 篠原 由起子 新開 敬行 宗村 佳子 中坪 直樹 浜島 知子 野口 俊久 新井 英人 後藤 克己 吉原 俊文 廣瀬 豊 吉村 和久
出版者
東京都健康安全研究センター
雑誌
東京都健康安全研究センター研究年報 (ISSN:13489046)
巻号頁・発行日
no.71, pp.39-46, 2020
著者
倉田 和夫 島森 功
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement2, pp.5-10, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
1

本稿は、CG、Webデザイン、映像編集などコンピュータを使うデジタルデザイン分野において共通するスキルとしてプログラミング能力が要求されるようになってきていることから、情報系の短期大学でデザインを専攻する学生へのプログラミング入門教育の新しい試みとしてCGソフトPOV-Rayを使ってプログラミングの思考法を理解させる教育事例を報告する。
著者
森 功次
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.16-29, 2009-12-31 (Released:2017-05-22)

Dans la pensee de l'art chez le premier Sartre, l'image et le reel sont-ils distinctement separes? Sartre a-t-il meconnu la materialite de l'oeuvre d'art? Il serait excessif d'affirmer cela. Premierement, si l'on examine les concepts de <<spontaneite pre-volontaire>>, de <<degradation>>, et de <<motivation>> dans la theorie de l'image de Sartre, il apparait clairement que dans l'experience de l'oeuvre, le reel se maintient derriere l'imaginaire. La negation de l'existence de l'objet d'appreciations esthetiques ne signifie pas ne pas voir l'oeuvre. Deuxiemement, par comparaison avec le reve, l'experience de l'oeuvre d'art maintient des relations plus etroites avec le reel. Certes, le reve et l'experience esthetique constituent pareillement une experience de la conscience captive et concernent l'imaginaire, et Sartre lui-meme a d'ailleurs souvent decrit la ressemblance entre les deux. Mais dans L'imaginaire, a certains egards-notamment la distance vis-a-vis du reel, la facilite de la reflexion, et la nature du sentiment-, Sartre a clairement distingue l'experience esthetique de celle du reve. De ce point de vue, dans la theorie sartrienne, la realite de l'oeuvre, elle aussi, joue un role efficace.
著者
前原 都有子 藤森 功
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【背景】肺炎の日本人の死因の第5位であり、肺組織への好中球浸潤や肺浮腫を伴う肺機能の低下を特徴とする。中でも、誤嚥や敗血症を起因とする急性肺障害は、40%の死亡率を示すが、有効な治療法はない。肺炎患者の気管支肺胞洗浄液中でプロスタグランジンF2α(PGF2α)の産生量が増加することが報告されているが、その機能は分かっていない。本研究では、急性肺障害におけるPGF2αの機能解析を目的とした。【方法】野生型マウスに塩酸(2 µl/g)を気管内に投与することで肺炎モデルを作製した。PGF2αの阻害剤であるAL8810は塩酸投与の1時間前に腹腔内に投与した。塩酸投与6時間後に、肺機能および炎症の評価を行った。【結果・考察】生食投与群に比べ塩酸投与群では、肺機能の低下を伴い、気管支肺胞洗浄液中への好中球の浸潤および浮腫形成が促進した。また、TNF-αやIL-1β、IL-6の遺伝子発現量が顕著に増加した。AL8810の前処置は、肺機能の低下および好中球の浸潤をさらに促進させたが、炎症性サイトカインの遺伝子発現量には影響を与えなかった。免疫組織化学染色によりPGF2αの受容体が気管支上皮細胞および肺胞マクロファージに発現していることが明らかになった。さらに、肺の伸展能を制御するサーファクタントプロテインBの遺伝子発現量がAL8810投与により顕著に低下した。これらの結果から、PGF2α受容体の阻害は、肺の伸展能を制御するサーファクタントの産生を減少させ、血管透過性を促進させることで、肺機能の低下および肺浮腫を促進させ、急性肺炎を悪化させることが示唆された。
著者
前田 豊樹 三森 功士 牧野 直樹 堀内 孝彦
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.41-47, 2019-05-31 (Released:2019-06-19)
参考文献数
22

これまで温泉治療が様々な疾患に療養効果があることは示されてきたが,一般的にどのような疾病に予防効果があるのかは示されていない.また,温泉入浴の禁忌症は示されているものの,某かの疾病の発症を促進する可能性についても知られていない.このような状況を踏まえて,筆者らは,平成24年度から3カ年間,65歳以上の高齢別府市民2万人を対象に,温泉の利用歴と各種疾患の既往歴に関するアンケート調査を実施し,その解析結果を先頃論文報告した.結果は,性別によって分かれており,温泉入浴が,男性においては,心血管疾患の予防に寄与し,女性では,高血圧に予防的に働くが,膠原病などの発症には促進的に働く可能性などが示唆された.このように,温泉は必ずしもすべての疾患の予防に働くわけではなく,一部促進する場合もあり得ることが伺えた.この疫学調査から伺える予防的効果には,温泉の効能としては期待されてこなかったものやこれまで示されてきた効能に反するものが含まれている.本編では,様々な疾患に対する温泉の予防効果と治療効果のずれという観点から,アンケートによる疫学調査をレビューする形で紹介したい.
著者
前田 豊樹 三森 功士 牧野 直樹 堀内 孝彦
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2318, (Released:2018-10-26)
参考文献数
22

これまで温泉治療が様々な疾患に療養効果があることは示されてきたが,一般的にどのような疾病に予防効果があるのかは示されていない.また,温泉入浴の禁忌症は示されているものの,某かの疾病の発症を促進する可能性についても知られていない.このような状況を踏まえて,筆者らは,平成24年度から3カ年間,65歳以上の高齢別府市民2万人を対象に,温泉の利用歴と各種疾患の既往歴に関するアンケート調査を実施し,その解析結果を先頃論文報告した.結果は,性別によって分かれており,温泉入浴が,男性においては,心血管疾患の予防に寄与し,女性では,高血圧に予防的に働くが,膠原病などの発症には促進的に働く可能性などが示唆された.このように,温泉は必ずしもすべての疾患の予防に働くわけではなく,一部促進する場合もあり得ることが伺えた.この疫学調査から伺える予防的効果には,温泉の効能としては期待されてこなかったものやこれまで示されてきた効能に反するものが含まれている.本編では,様々な疾患に対する温泉の予防効果と治療効果のずれという観点から,アンケートによる疫学調査をレビューする形で紹介したい.
著者
三森 功士
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.449-452, 2022 (Released:2022-10-28)
参考文献数
11

がんゲノム医療により分子標的薬に合致した患者群は生存期間が延長した.しかしその恩恵を享受できる症例は未だに少ない.ごく最近,ミスマッチ修復酵素異常を有する直腸がん12例に対してPD1阻害剤を投与したところComplete Responseが100%という衝撃的な報告がなされたことをまず紹介する.一般に大腸がんはAPC/βcateninなどWNTシグナル経路,KRASを擁するEGFR/PI3Kシグナル経路,Notchシグナル経路そしてTGFβシグナル経路におけるゲノム変異が重要であり,これらを標的とした創薬において世界中で鎬が削られている.また核内転写因子に対する阻害剤の開発は難しいとされておりWnt/βcatenin TCF複合体に対しては未だに有効な化合物はない.本稿では免疫療法を含め大腸がん治療標的となる遺伝子変異を改めて確認すると同時に治療薬に関する最新情報の一部を紹介する.