著者
森田 学 山本 龍生 竹内 倫子
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

口腔関連の疾患と気象条件との関係を明らかにすることを目的とした。岡山大学病院予防歯科診療室の外来患者で、歯周病に起因する症状を急遽訴え、予約時間外で来院した患者(217名)を対象に、来院時の気象条件との関連を分析した。各月を3等分(上旬、中旬、及び下旬)したところ、その間に来院した患者数が、その期間中の平均気圧(r=0. 310、p<0. 05)、平均日照時間(r=0. 369、p<0. 05)と有意な相関を示した。以上のことから、気象条件と口腔の炎症性疾患との間には何らかの関係がある可能性が示唆された。
著者
児玉 高有 阿部 貴恵 兼平 孝 森田 学 舩橋 誠
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.52-61, 2010-12-15

近年,唾液中のアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAをストレスマーカーとして用いることが注目されている.しかし,これらの物質の経時的動態変化については不明な点が多い.そこで生体への刺激に対する唾液中のストレスマーカーの変動を定量し,その動態について調べた.さらに,これを歯科治療の術中や予後の評価に応用出来るかどうかについて検討を行った.外科的,内科的疾患のない成人男性61名から任意の時期に唾液採取管を用いて唾液を採取した.これらの被験者は,1)前腕肘部の静脈から真空採血管と注射針を用いて採血を行った者(30名),2)抜歯を施術した者(5名),3)抜歯を伴わない一般的な歯科治療のみを施術した者(26名)がいた.各被験者群において,採血前後および施術前後の唾液中のアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAの変動比の経時変化を分析した.アミラーゼとクロモグラニンAは採血前の時点においてすでに有意な増加を示し,心理的ストレスに対して反応することが示唆された.被験者は採血前の基準日におけるストレスマーカー量について高濃度群と低濃度群に大別された.このうち高濃度群は低濃度群と比べて,すべての上記ストレスマーカーの変動が少なく,ストレス応答系の活動が高まりにくい可能性が示唆された.歯科治療を行った場合,アミラーゼとコルチゾール濃度は初診時に比べ再診時には有意な低下を認め,また抜歯による有意な増加が観察された.これらの結果は,初診時の不安や恐怖が再診時には緩和されることによりストレスが減少したことを示し,一方,抜歯は強いストレスとして作用したことを示していると考えられた.本研究により唾液中のアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAは採血によるストレスに対してそれぞれ反応速度が異なり,さらにその変化率はもともとの唾液中ストレスマーカー量が多いか少ないかによって異なることが明らかとなった.また,これらのストレスマーカーは歯科治療の内容や受診回数によって動態が変化し,歯科治療の術中や予後の評価に応用出来ることが示された.
著者
稲垣 幸司 内藤 徹 石原 裕一 金子 高士 中山 洋平 山本 龍生 吉成 伸夫 森田 学 栗原 英見
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.201-219, 2018-12-28 (Released:2018-12-28)
参考文献数
50
被引用文献数
1

日本歯周病学会では2006年に定めた歯周病分類システムの中で,「喫煙は歯周病の最大の環境リスクファクターである」という認識に基づき,リスクファクターによる歯周炎の分類の1つとして喫煙関連歯周炎を提示した。喫煙が関連する歯周炎に対する歯周治療において,患者の喫煙状況の確認,喫煙者への喫煙の健康障害についての情報提供による禁煙支援は,歯周治療の反応や予後を良好に維持するため,重要である。本論文では,喫煙に関連する国情,喫煙者の動向,禁煙支援教育の現状,歯科における禁煙支援の効果に関するエビデンスおよび歯周治療における禁煙支援の手順を概説する。
著者
朝山 奈津子 森田 学 山田 高誌
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.114, pp.59-73, 2015-10

20世紀初頭にイタリアで興隆したピアノ伴奏付独唱歌曲は従来、事典項目や音楽通史においていささか表面的に「ドイツ・リートの影響下で」確立したジャンルとされてきた。しかしその影響関係は、実際の響きや音楽形式からも、このジャンルに取り組んだ作曲家たちや詩人たちの創作活動からも、けっして自明ではない。そこで本論文は、両者の関係性を問い直した上で、このジャンルに対するドイツの影響を指摘しようと試みる。
著者
伊藤 弘 埴岡 隆 王 宝禮 山本 龍生 両角 俊哉 藤井 健男 森田 学 稲垣 幸司 沼部 幸博
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯周治療の一環として禁煙治療が歯科保険に導入されるためには、禁煙治療の介入による歯周治療の成果が極めて良好となることが重要である。そこで、禁煙外来受診による改善を、一般的に行われている臨床パラメータと歯肉溝滲出液と血漿成分の生化学的成分解析、さらには禁煙達成マーカーである血漿中コチニンと呼気CO濃度の変化を検索した。その結果、禁煙外来受診により、禁煙達成マーカーが減少し、さらには自己申告による禁煙の達成から、禁煙外来受診は禁煙に対し有効な戦略である。しかしながら、生化学的変化は認められなかった。今後長期的な追跡が必要であると考えている。
著者
梅谷 健作 玉木 直文 森田 学
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.581-588, 2011-10-30
参考文献数
33
被引用文献数
2

ブラッシングが脳を活性化させるということが報告されている.本研究では,術者によるブラッシングが患者の自律神経系に与える影響を評価すること目的とした.測定項目は,心拍変動解析による自律神経の活動,ストレス指標の唾液アミラーゼ活性とSTAI(State-Trait Anxiety Inventory)による状態不安の程度の3つとした.対象者は健常男性15名(年齢32.3±9.5歳)とし,ブラッシング処置を15分間行った.処置前に心拍変動,唾液アミラーゼ活性と状態不安を測定し,ベースラインとした.処置中の15分間は,心拍変動解析を継続して行った.処置終了後,再び処置前と同じ3項目を測定した.その結果,心拍変動解析においては,副交感神経の活動の指標であるLnHF(Lnは自然対数)の値がベースラインと比較して処置の終盤(処置開始後10〜15分の5分間)と処置後に有意に上昇した.自律神経の活動の指標であるLnTPはすべての時点で有意に上昇したが,交感神経の活動の指標であるLn(LF/HF)にほとんど変化は認められなかった.状態不安の得点は処置の前後で有意に減少したが,唾液アミラーゼ活性の値は減少傾向にあったものの統計学的な有意差はなかった.以上の結果から,ブラッシングによる適度な刺激が,中枢神経系に作用した結果,副交感神経の活動に変化が生じたものと考察された.副交感神経活動の指標であるLnHFが上昇し,状態不安の得点が減少したことから,術者によるブラッシングには患者をリラックスさせる効果がある可能性が示唆された.
著者
森田 学 丸山 貴之 竹内 倫子 江國 大輔 友藤 孝明
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

高齢者をターゲットとした研究は、日本をはじめとする先進国の喫緊の課題である。これまでの歯科領域における研究対象としての“高齢者”は、主に“要介護高齢者”あるいは“要支援高齢者”である。これに対して近年、“オーラルフレイル(口腔機能の虚弱)”という口腔機能の軽微な衰えを表す概念が注目されている。現実には、日常生活で口腔機能に不自由を感じていない高齢者(前オーラルフレイル期高齢者)は多数存在する。しかし、このような高齢者を対象に歯・口の機能の継時的変化(機能の衰え)を追跡した研究は少ない。本研究では、オーラルフレイルに関連する要因とオーラルフレイルに至るまでのプロセス(パス)を解明することとした。岡山大学医療系部局研究倫理審査専門委員会で承認を得たのちに大学病院外来患者を対象に、オーラルフレイルと関連する身体的、精神的、社会的指標を調査した。オーラルフレイルの判定には、オーラルディアドコキネシス、舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、咬合接触面積、細菌検査、質問票の結果から総合的に判定した。オーラルフレイルと関連している可能性のある指標として、全身の老化指標(BMI、栄養状態、日常生活動作)、生活のひろがり(活き活きとした地域生活を送っているか否か)、精神・心理状態(WHO Five Well-Being Index)など調査した。総計150名の患者が調査に参加した。現在35名(平均年齢74.3±5.0歳、男性10名、女性25名)について入力し、分析を開始している。舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、質問票については正常の者が多かった。しかし、細菌検査、咬合接触面積、オーラルディアドコキネシスについては、正常以下の者が多かった。総合的に判断した口腔機能低下症が認められる群(6名)と認められない群(29名)との間で、全身の老化指標、生活のひろがり、精神・心理状態を比較したところ、2群間で有意に異なる指標はみられなかった。
著者
角舘 直樹 須貝 誠 藤澤 雅子 森田 学
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.640-649, 2007-10-30
被引用文献数
6

歯冠修復および定期歯科健診についての歯科医業収支を比較した.インレー修復,コンポジットレジン充填,抜髄後に鋳造歯冠修復,成人の定期歯科健診の4つの処置を対象とした.方法は,社会保険歯科診療報酬点数早見表を用いて医業収入を算出し,そこから医業費用を引いて収支差額を算出した.医業費用は材料費と歯科技工外注費および人件費に分けて算出した.収支差額とチェアタイムから,単位時間あたりの収支差額を算出して,各処置を比較した.その結果,単位時間あたりの収支差額は,コンポジットレジン充填,成人の定期歯科健診,抜髄後に鋳造歯冠修復,インレー修復の順に大きかった.以上の結果から,定期歯科健診を行う歯科衛生士とそのユニットを確保できる場合は,定期歯科健診を目的として来院する成人の患者数が増加することで経営的に収支差額が向上する可能性が示唆された.
著者
森田 学 西川 真理子 石川 昭 木村 年秀 渡邊 達夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.158-163, 1997-04-30
被引用文献数
8

つまようじ法とフロッシングを併用したバス法の2種類の刷掃法について,歯肉炎に対するマッサージ効果を比較した。実験的歯肉炎を有する24名の男子学生を対象とした。各被験者の上下顎を左右に2分割した。それぞれランダムに,一方をつまようじ法で刷掃する部位,残りの2分の1顎をバス法で磨き,かつデンタルフロスで清掃する部位とした。以降,歯科医師が毎日1回,21日間,染色された歯垢が完全に取り除かれるまで,被験者の口腔内を清掃した。刷掃方法の割付を知らされていない歯科医師が,歯周ポケットの深さ(PD)とプロービング時の出血(BOP)を診査した。また,上顎第1小臼歯の頬側近心歯間乳頭と頬側中央部の遊離歯肉の上皮の角化程度を,パパニコロ染色法により判定した。その結果, 1. 21日後には,つまようじ法で刷掃した部位のBOP値が,バス法とデンタルフロスで清掃した部位の値よりも有意に低かった。2. つまようじ法で刷掃した歯間乳頭部のみ,ベースラインと比較して,21日後には角化細胞数の割合が有意に増加した。3. 歯垢が完全に除去されるまでに要した時間では,つまようじ法の場合は,バス法とデンタルフロスを併用した場合の約70%であった。以上の結果から,つまようじ法はデンタルフロスを併用したバス法と比較して,短時間で,より有効なマッサージ効果を得られる可能性が示唆された。
著者
丸山 貴之 森田 学 友藤 孝明 江國 大輔 山中 玲子 竹内 倫子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近年、生活習慣病の対策として、成人に対する食育の重要性が注目されている。本研究では、食育活動の実践頻度と生活習慣病に関する検査値との関連性、早食いの主観的評価と客観的評価の関連性について調査し、食育活動が低い(早食いを自覚している)と判断された者を対象に、早食い防止啓発パンフレットの配布や食行動記録を行うことで、食育活動の改善がみられるかについて検討した。さらに、食育の知識とう蝕との関係について、歯科保健の立場から調査した。
著者
葭内 朗裕 兼平 孝 栗田 啓子 竹原 順次 高橋 大郎 本多 丘人 秋野 憲一 相田 潤 森田 学
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.12-24, 2011-09-15

本研究は,北海道国民健康保険団体連合会(以下,"北海道国保連合会"と略)から提供を受けた平成19年5月のレセプトデータに基づき,北海道内の国民健康保険被保険者のうち,満70歳以上で歯科医療機関を含む医療機関を受診した者を対象に,現在歯数,欠損補綴状況,歯周病罹患状況と被保険者1人あたりの医科診療費との関連およびレセプト1件あたりの医科診療費から現在歯数と生活習慣病の罹患状況との関連について調べたものである.その結果,平均医科診療費は,1)現在歯が20歯未満の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べ,1. 2~1. 3倍,中でも現在歯数が0~4歯の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べ,1.4~1.6倍と有意に高いこと,2)歯の欠損部の補綴処置を受けていない高齢者は,受けている高齢者に比べ,1.1倍程度と統計学的に有意ではないがやや高い傾向にあること,3)重度の歯周病を有する高齢者は,歯周病がない,あるいは軽度の高齢者に比べ,統計学的に有意ではないが,1.1~1.3倍程度とやや高い傾向にあること,などが明らかとなった.また,生活習慣病による平均医科診療費(レセプト1件あたり)は,1)現在歯が20歯未満の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べて1.1~1.3倍,中でも現在歯数がO~4歯の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べて1.2~1.7倍と有意に高かった. 2)悪性腫瘍,糖尿病,高血圧性疾患,虚血性心疾患,脳血管障害では,現在歯が20歯未満の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べるとそれぞれ1.1~1.4倍,中でも現在歯数が0~4歯の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べ,1.4~1.7倍といずれも有意に高かった.
著者
竹原 順次 中村 公也 三宅 亮 森田 学
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.111-116, 2007-04-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,女子中高生における口腔乾燥感の自覚頻度および口腔乾燥感に関連する要因を明らかにすることである.分析対象は,資料が整った女子中高生997名である.口腔乾燥感の自覚率において,高校生(51.6%)は中学生(37.1%)に比較し,有意に高い値を示した(p<0.01).また,ロジステイック回帰分析の結果,口腔乾燥感の自覚(ときどきおよびいつも)に対して有意な変数は,学年(OR=1.77,高校生),食事を抜く(OR=1.53,ときどきおよびいつも),ファーストフードを食べる(OR=1.55,ときどきおよびいつも),鼻づまり(OR=2.00,ときどきおよびいつも),口呼吸(OR=1.55,ときどきおよびいつも)およびストレスを感じる(OR=2.02,ときどきおよびいつも)であった.以上より,口腔乾燥感の自覚率は,女子中学生に比べ女子高校生のほうが有意に高く,食習慣,鼻づまり,口呼吸およびストレスは口腔乾燥感の自覚に関連する要因であることが示唆された.
著者
森田 学 小椋 正之 恒石 美登里 渡邊 達夫 岡田 真人 宮武 光吉 梅村 長生
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.786-793, 1999-11-30
被引用文献数
3

根管治療(抜髄・感染根管処置)に関する歯科医療費と診療行為の内容を調査した。昭和55,58,60年,平成2,6年の厚生省社会医療診療行為別調査に用いられた歯科診療報酬明細書のデータのうち,病院,一般診療所分を除いた歯科診療所分のデータを対象とした。各年の対象とした件数は,それぞれ16,145,8,831,18,028,17,165,18,294件であった。歯髄炎や歯根膜炎を主傷病名とする歯科診療報酬明細書の割合は経年的に減少し,平成6年では12〜14%であった。また,根管治療にかかわる点数の合計も年々減少しており,平成6年では,1件あたり平均117点で,総点数の8.3%であった。平成6年の歯科診療報酬明細書について根管治療にかかわる点数を検討したところ,以下の知見が得られた。1)根管治療は40歳,50歳台で最も頻繁に行われていた。また,20歳台では,ほかの年齢層と比較して,3根管歯の抜髄頻度が高いことが認められた。2)根管治療点数の占める割合が最も高い年齢層は20〜29歳であり,総点数の11%であった。しかし,老人医療においては,その割合は約4.0〜5.0%と,全年齢層中,最も低かった。3)抜髄あるいは感染根管処置に始まり根管充填で終わる一連の検査,処置を包括化し,推定点数を算出した。その結果,推定点数の最頻値は,電気的根管長測定検査,麻酔抜髄(あるいは感染根管処置),0回または1回の根管貼薬処置の後に,加圧根管充填した場合の合計点数に等しかった。4)本調査は,1ヵ月の診療報酬明細書を扱い,比較的簡単な症例のみが抽出されていることから,今後数カ月にわたる追跡の必要性が示唆された。