著者
森 哲
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

調査地域でのシマヘビとヤマカガシの食性は主にカエル類で、共にシュレ-ゲルアオガエルとモリアオガエルが中心であった。このほかに胃内容物からアマガエル、トノサマガエルが少数発見されたほか、ヤマカガシではタゴガエルやヒキガエルを捕食していることもあり、シマヘビに比べてヤマカガシは食べているカエルの種類が多かった。一方、シマヘビはカエル以外にトカゲや小型哺乳類も食していた。捕食していたカモルの大きさを2種のヘビの間で比較したところ、ヤマカガシの方がシマヘビよりも相対的に大きなカエルを食べていた。さらに、呑み込んだ方向を調べたところ、シマヘビは大きなカエルの場合は頭部から呑む傾向が強かったのに対し、ヤマカガシではその様な傾向は見られなかった。しかしながら、ヤマカガシはカエルを後肢から呑み込むときは、両後肢をそろえて呑むという、シマヘビには見られない傾向が観察された。呑み込む方向の違いが、どのような理由から起こっているかを確認するため、飼育下で両者の捕食行動をビデオを用いて詳細に観察し比較した。この結果、シマヘビは大きなカエルを捕食する場合には、最初に咬み付いた場所に関わらず、ほとんど頭部から呑み込んだのに対し、ヤマカガシでは呑み込む方向は最初に咬み付いた場所に大きく依存することがわかった。しかしながら、ヤマカガシは、最初に片方の後肢のみに咬み付いた場合、まず両後肢を呑み込んで続いて胴体へとうつっていき、片方の後肢だけを先に呑んでしまうことはほとんどなかった。このように、ヤマカガシは顎を用いてのカエルの扱い方においてシマヘビよりも器用であることが示唆された。一方、野外での電波発信機を用いた採餌行動の調査は現在も継続中であり、特にヤマカガシについて、さらにデータを追加していく必要がある。
著者
上坂 健一郎 時田 英夫 森 猛 内田 大介 島貫 広志 冨永 知徳 増井 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.121-131, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
19

首都高速道路は50年以上に渡り重交通下で供用されており,鋼I桁橋の横構ガセットプレートまわし溶接部に多くの疲労き裂が発生している.それらのほとんどは止端に留まっており,バーグラインダで切削除去することで補修を行っている.UITはこれまで止端から発生する疲労き裂の予防保全対策として用いられており,施工が容易で高度な技能を必要としない.本研究では,鋼I桁橋の横構ガセットプレートを想定し,止端から発生した疲労き裂に対するUITの補修効果についてモデル試験体の疲労試験を行うことにより検討した.そして,作用する応力範囲が65N/mm2以下であれば,止端に留まるき裂に対して打撃痕の深さが0.23mm以上となるようにUITを施工することで,疲労寿命は溶接ままの継手の2倍以上になるという結果を得た.

1 0 0 0 OA 胸痛

著者
木野 昌也 永松 航 森井 功
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.796-799, 2015-04-10 (Released:2016-04-10)
参考文献数
5
著者
森 久男
出版者
愛知大学現代中国学会
雑誌
中国21 = China 21 (ISSN:13428241)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.47-70, 2009-05-30
著者
森 稔
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.25, no.278, pp.1077-1085, 1976-11-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
156
著者
藤本 潔 酒井 寿夫 森貞 和仁 古澤 仁美 中嶋 敏祐 布施 修 小林 繁男
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-90, 1998-12-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
20

1984年の長野県西部地震に伴い発生した御岳岩屑流は,森林域にも多大な被害をもたらした。この岩屑流発生から10年目の植生発達状況と立地環境との関係を明らかにするため,岩屑流堆積物が薄く堆積する標高約2000mの小三笠山北側の緩傾斜地(田の原)と,厚さ数10mの岩屑流堆積物で埋積された標高約950mの王滝川谷底部(氷ヶ瀬)にトランセクトを設け,地形断面測量,堆積物の粒径分析および植生調査を行った。波長数10〜100m程度,振幅10m程度の波状起伏がみられる田の原では,流水の影響を受けやすい谷部で粒径2mm以下の細土含有率や細土中のシルト・粘土含有率に顕著なばらつきがみられ,細土がほとんど存在しない箇所で出現種数・被度とも低い値を示すものの,細土含有率が5%程度以上ある地点では,微地形条件に関わらず,これらは同様の値を示した。氷ヶ瀬では岩屑流堆積面が現河床を含め3段に段丘化しており,岩屑流堆積後,河川による侵食作用を被ることなく安定した地形環境下にあった上位面が出現種数・樹高・被度のいずれも最も高い値を示した。これらの結果は,流水による侵食プロセスが初期植生発達過程に大きな影響を及ぼしていることを示す。岩屑流発生後,同じ期間を経ていると考えられる田の原と氷ヶ瀬上位面を比較すると,樹高およびそれぞれの種の被度百分率の合計値のいずれも標高の低い氷ヶ瀬上位面の方が高い値を示した。
著者
大森 美保 永田 智久 永田 昌子 藤野 善久 森 晃爾
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.293-303, 2021-09-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
64

Greater workplace social capital (WSC) can be related to workers’ health and productivity. We sought to clarify the association between horizontal WSC and presenteeism and sickness absence (SA) and to examine the effects of psychological distress on these associations among Japanese workers. A cross-sectional study was conducted in 2017 at seven large Japanese companies. Logistic regression analysis was performed with presenteeism and SA as the dependent variables, horizontal WSC as an independent variable, and sociodemographic characteristics and psychological distress as covariates. After adjustment for sociodemographic characteristics, the results showed that greater horizontal WSC was associated with lower presenteeism and SA. The odds ratios for the relationship between horizontal WSC and presenteeism and that between horizontal WSC and SA dropped moderately after adjustment for psychological distress but remained significant. Further exploration of the factors underlying the relationship between WSC and productivity is needed to confirm if WSC enhances workers’ health and productivity and to inform the development of effective occupational health initiatives.
著者
森脇 由美子 Moriwaki Yumiko
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 = Jinbun Ronso: Bulletin of the Faculty of Humanities, Law and Economics (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.65-73, 2021-03-31

19世紀にアメリカで大流行した大衆芸能ブラックフェイス・ミンストレルは、音楽、ダンス、寸劇の要素が合わさっていることから、文学、音楽やダンス研究、歴史学と多方面から研究が行われている。ブラックフェイス・ミンストレルに見られる黒人文化の借用や差別的内容、その影響力などは多くの研究者の関心を集めてきた。とりわけ1990 年代以降は、ホワイトネスの研究者たちが移民労働者たちの「白人性」の構築過程を探るための手掛かりとしてこれを取り上げたため、その人種意識が国民化や国民文化などと結びつけて論じられることが多かった。しかし近年では、このようなナショナル・ヒストリーを超え、大西洋史的視座から捉える研究も見られるようになった。これまでの研究を振り返るとともに最新の研究を紹介し、ブラックフェイス・ミンストレル研究の今後の方向性を展望する。
著者
広田 正之 森田 武 井戸 和彦 遠藤 智紀 水落 秀木 貞広 修
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.27, no.65, pp.265-270, 2021-02-20 (Released:2021-02-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

In this report, the results of performance confirmation of fire-resistant wood members and beam-column joints, and the contents of application cases were reported. The main points are as follows. The refractory sheet was found to have the effect of reducing the temperature of the reinforced gypsum board. It was confirmed that the fire-resistant wood columns, fire-resistant wood beams, fire-resistant wood members, and column-beam joints made of Pc joint members incorporating fire-resistant foam sheets of heat-foamed material have 1 hour of fire resistance without carbonization in the core material.
著者
香川 和子 森 糸子 丸山 博 福山 幸夫
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.53-64, 1976 (Released:2011-05-24)
参考文献数
20

熱性痙攣患児307例について,単純型と複合型に分類し,各々の臨床的および脳波学的検討を行なった.男188例,女119例で,男女比は約1.6:1であった.単純型は131例,複合型は176例でやや複合型が多かった.脳波所見では,単純型の10.6%,複合型の19.8%に異常を認めた・熱性痙攣の家族歴は35.8%に,てんかんの家族歴は4.8%に認められた.脳障害の原因となり得る疾患の既往歴は16.6%に,また精神発達遅延の症例は4.8%に認められた.発作再発率に関し初発年齢0~11ヵ月,12~35ヵ月,36ヵ月以上の3群で有意差を認めた.臨床的諸項と脳波所見の相関関係について次の結果を得た.

1 0 0 0 OA 舌骨症候群例

著者
里見 文男 西村 善彦 森 裕司 雲井 健雄
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.359-362, 1991-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
7
被引用文献数
5 3

A 21-year-old female complained that the right greater cornu of her hyoid bone often slid out and projected to the side of her neck and caused pain on speaking. The projecting tip of the cornu could be returned manually to the original position, and the pain was instantly relieved. A plain radiogram of the neck revealed that the right greater cornu of the hyoid bone was elongated and had a much wider curvature than normal. Good symptomatic relief was obtained with surgical extirpation of the elongated greater cornu. There are various clinical features in the hyoid bone syndrome, including this case. The authors add a review of the literature.
著者
木村 健智 上山 泰史 久保田 明人 藤森 雅博 高原 美規 秋山 征夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.55-58, 2014-04-15 (Released:2014-10-06)
参考文献数
20

Reed canarygrass (Phalaris arundinacea L.) has been recognized as a major invasive plant in the US in recent years. In Japan, the differences between the native and invasive genotypes are unclear. To identify these differences, chromosomal analysis using fluorescence in situ hybridization (FISH) with 5S/45S rDNA probes was carried out on 7 populations of putative native Japanese P. arundinacea and 3 exotic P. arundinacea. The results showed that all populations were tetraploids (2n=4x=28). The 45S rDNA were mapped on 4 sites corresponding with the ploidy level in all populations. On the other hand, the numbers of 5S rDNA sites differed among the populations. Moreover, the 5S rDNA sites differed among individuals even within the same populations. Thus, the chromosomal characteristics could not ensure that the putative native Japanese P. arundinacea are the native.
著者
森 知晴
出版者
財務省財務総合政策研究所
雑誌
フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.83-106, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
97

本論文では,課税と給付の経済分析において,行動経済学の知見を用いた研究のサーベイをおこない,日本の課税・給付政策を行動経済学の観点から議論する。行動経済学とは,主体が「標準的な仮定」とは異なる仮定で動いているモデルを想定した研究の総称であり,近年では課税・給付の理論分析・実証研究においても研究が急増している。具体的には,税に関する不注意,課税・給付の複雑性がもたらす影響,退職貯蓄と年金の制度設計,納税促進,労働・教育・医療における給付の影響などが研究されている。また,理論的には最適課税との関係が研究されている。行動経済学的な知見は日本における課税・給付にかかる制度・政策を検証する新たな視点を提供し,より現実的な人間像を踏まえた制度設計を提案することができる。