著者
浅井 和康 鴻 信義 柳 清 深見 雅也 遠藤 朝彦 森山 寛 伊藤 裕之 大橋 正洋
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.329-334, 1995-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

頸髄損傷患者3症例について, 体位変換時および排尿前後での鼻腔通気度の変化を調べた。その結果, 坐位から仰臥位に体位変換することによって鼻腔抵抗値は上昇し, 排尿することによって低下をみた。これは, 頸髄損傷患者に特有の自律神経過反射 (autonomic hyperreflexia) と呼ばれる現象に伴うものと考えられた。すなわち, 膀胱内の尿の充満などによる麻痺域への刺激が交感神経反射を惹起して全身性の血圧上昇を起こす現象であり, これによって非麻痺域すなわち鼻腔の血管拡張を招き鼻閉をきたす。また健常者でも坐位から仰臥位に体位変換することによってわずかに鼻腔抵抗が増大するが, 頸髄損傷患者では顕著にこの現象が現れることも, 外傷に伴う交感神経系の機能障害が関与していることが示唆された。
著者
三森 耀介 斎藤 豪 佐伯 竜彦 鈴木 一帆
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.2-8, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
32

本研究ではAl源や養生温度の違いがトバモライトの結晶構造に及ぼす影響に関して検討するため、出発Ca源及びSi源にゲーレナイトやγ-Al2O3を添加し、各条件下で養生を施した。その結果、Al無添加試料を比較的低温である40℃で28日間養生することで1.4nmトバモライトが生成することを確認した。また1.4nmトバモライト生成過程において、Alを添加することで60℃温度条件下でもAl置換型1.1nmトバモライトが生成する可能性が示された。加えて1.1nmトバモライト生成過程においては、低結晶質のC-(A)-S-Hが結晶化すると共にAl置換サイトがQ2bからQ3へシフトする傾向が見られ、Al源の違いはAl置換量の違いを生み出す結果となった。
著者
北村 八祥 森 利樹 小堀 純奈 山田 信二 清水 秀巳
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.89-95, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
8 8

炭疽病抵抗性と極早生性を併せ持つ高品質な促成栽培用イチゴ品種‘かおり野’を育成した.1990年に‘女峰’,‘アイベリー’,‘とよのか’および‘宝交早生’の間の総当り交配により育成を開始し,その後‘章姫’,‘あかしゃのみつこ’,‘とちおとめ’および育成集団から品種化された‘サンチーゴ’を交配親として加えながら,9世代に亘り相互に交配を繰り返して改良した炭疽病抵抗性系統群のうち,系統‘0028401’と系統‘0023001’を2003年に交配して得られた実生から選抜された.特性調査,現地適応性試験を経て2008年に品種登録出願を行い,2010年に品種登録された.最重要病害であるイチゴ炭疽病に対して,‘宝交早生’および‘サンチーゴ’と同等の強い抵抗性を持つ.‘章姫’よりも強い早生性を示し,普通促成栽培において11月下旬から収穫を開始することができ,12月までの早期収量,3月まで総収量ともに高い.食味は高糖度,低酸度で甘みを感じやすく,上品な香りを特徴としている.果実は大きく,果形は円錐形で,果皮は光沢の強い橙赤色,果肉色と果心色は白である.品種の普及には,行政,研究および普及の各組織と生産者団体が一体になったプロジェクトにより取り組み,三重県に限定せずに県内外の生産者に生産を認める許諾制度を設け,栽培指針を改良しながら消費者に対する販売促進を進めた結果,‘かおり野’を選択する生産者は三重県内外で大きく増加した.
著者
松本 五十生 落合 勝義 船越 昭治 中村 公一 真野 光雄 森田 貞夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.74, pp.1-9, 1991-12-10 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6

緑茶の消費向上と嗜好の多様化に対応するため,緑茶にない芳香をもち,苦渋味の少ない新香味茶の製造方法について検討し,図2に示す技術を確立した。(1)萎凋と発酵は煎茶用自動乾燥機を用い,温風温度35~40℃で30分が適当であった(重量減7~10%)。(2)攪拌は中揉機に金網胴をとりつけ,60分処理で好結果が得られた(重量減15%)。(3)静置は生葉コンテナーを用い,室温(27℃)に60分放置した。これにより強い芳香が発揚した。(4)マイクロ波加熱による殺青(ブランチング)は出力4KW,照射時間50秒,重量減45~50%が良好であった。(5)整形及び乾燥は揉捻機,再乾機,乾燥機を用い,揉捻15分,再乾と乾燥はともに60℃の排気温で,それぞれ40分が好適であった。(6)仕上げは火入れを行って青臭みを除き,9号で切断し,10号の篩目で仕分け,整形した(平均粒度1.27mm)。(7)一般消費者に対して,代表的試製茶の嗜好調査を実施したところ,46%の人が好き,やや好きと答えており,市販された場合購買嗜好も高く明るい見通しを得た。
著者
森屋 秀樹 柳田 優子
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1547-1551, 2000-06-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
8

胆嚢管の走行や開口部にはvariationが多いが,胆嚢管が総胆管下部で合流するいわゆる胆嚢管低位合流に関する報告は少ない.総胆管拡張を伴った胆嚢管低位合流の1例を経験し,報告する. 79歳,女性.心窩部痛と発熱を主訴に来院.超音波検査で胆嚢腫大,総胆管拡張を認め胆管炎の診断で入院となる. ERCP, PTBDにより胆嚢管低位合流を認めたが,膵胆管合流異常は認めなかった.胆石,総胆管結石の診断で胆摘・総胆管切開・胆管ドレナージ術を施行した.肝内胆管の拡張は改善するも総胆管の拡張は残存し,本症例における総胆管拡張は,胆嚢管が低位合流することによる慢性胆汁うっ滞と考えられた.
著者
森山 寛 深見 雅也 柳 清 鴻 信義
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement1, pp.63-65, 1994-08-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
4

中鼻道自然孔ルート付近の非可逆的粘膜病変を伴った慢性副鼻腔炎の治療においては手術的に中鼻道を開大しさらに上顎洞の自然孔の開大が必要となる。というのは上顎洞, 篩骨洞などの副鼻腔内部には正常の状態においてさえ, 自然孔の特有の形態によりエアロゾル薬物粒子は到達し難い。自然孔を手術的に拡大することによりはじめて薬物粒子が洞内の病的粘膜に効果をもたらす。手術的に開放することにより副鼻腔は通気と排泄が改善され, さらに薬物の効果も相まって治癒に至ると考えられる。したがって慢性副鼻腔炎に対するネブライザー治療においては中鼻道の拡大や自然孔の開大さらに洞内における貯留液の吸引除去がまず必要となる。
著者
麻生 大吾 久光 慶紀 松田 浩幸 森重 真毅 武田 裕 久保 毅 藤木 稔
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.443-448, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

症例は26歳男性,繰り返す右上肢脱力発作の精査にて左内頚動脈高度狭窄と多発性脳梗塞を認めた.急性期加療を行いながら,若年性脳梗塞の原因精査で右冠動脈末梢の狭窄と,腹部大動脈に血栓を疑う陰影欠損を認めた.さらに血球増多があり,JAK2遺伝子変異を検出し,真性多血症と診断した.ルキソリチニブの内服開始後,頚動脈プラークの速やかな退縮が得られた.今回の症例経験からJAK2遺伝子変異陽性例では,脳梗塞予防には抗血小板薬だけでなく,抗腫瘍薬使用も有用と考えられる.真性多血症での多発性の血栓塞栓症の報告は多いが,塞栓源に対する経時的画像変化を捉えた報告は貴重であると考え,報告する.
著者
森 大地 板木 雅俊 岩佐 恭平 大濱 慎一郎 北川 知佳 田中 貴子 池内 智之 河野 哲也 津田 徹 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
pp.22-01, (Released:2023-03-29)

【目的】慢性呼吸器疾患患者の要介護度は過小評価される傾向にあり,患者の不満が多いと報告されている.今回,認定結果に対する不満の有無とその関連因子について検討した.【方法】通所リハビリテーションを利用する慢性呼吸器疾患患者を対象とした.認定結果への不満の有無で2群に分け,比較検討を行った.患者特性,身体機能,ADL(BI,NRADL),呼吸困難,呼吸機能,心理状態を調査・解析し,不満の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】解析対象は31例で,不満なし群(21例),不満あり群(10例)であった.ロジスティック回帰分析の結果,NRADL(オッズ比0.914,95%CI 0.852 - 0.980)が不満の有無と有意な関連を認めた.【結論】認定結果への不満にはNRADLが関連しており,NRADLの点数を考慮することで,要介護度の過小評価を是正できる可能性が示唆された.
著者
福山 佑樹 森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.365-374, 2014-02-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
1

社会的ジレンマにおいて協力行動を取ろうとする「道徳意識」を獲得するためのカードゲーム教材である「The irreplaceable Gift」を開発した.ゲームは,参加者にこれまでのゲームでは体験できなかった「社会的ジレンマによる悪影響の時間的遅れ」を体験させ,協力行動を取ろうとする道徳意識を獲得することができるようにデザインされた.「The irreplaceable Gift」を用いた実験群と,「時間的遅れ」の要素を除いたゲームを用いた統制群との比較実験の結果,本ゲームの参加者は「道徳意識」を獲得しており,その獲得はゲーム終了時のリフレクションを通して「未来への世代」への影響を参加者が判断した結果によることが示唆された.
著者
桂樹 哲雄 森 翔太郎 十一 浩典 石川(高野) 祐子 小林 暁雄 伊藤 研悟 山本(前田) 万里 川村 隆浩
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 (ISSN:24349895)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.13, pp.47-61, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

農研機構では,2012-2015 年度に実施した機能性農林水産物・食品開発プロジェクトの成果物を元に,農林水産物が持つ機能性成分について文献情報と共に整理し,「機能性成分・評価情報データベース」として2018 年より公開している.一方,2019 年から,農研機構は島津製作所と共同で「食品機能性成分解析共同研究ラボ(NARO 島津ラボ)」を設置し,機能性農林水産物に関する様々な分析を実施してきた.また,農研機構内には戦略的イノベーション創造プログラム第2 期「スマートバイオ産業・農業基盤技術」(SIP2)の分析データも存在する.このたび農研機構では,機構内で得られた食品機能性成分データを一か所に集める狙いから,「機能性成分・評価情報データベース」,「NARO 島津ラボ」のデータ,SIP2 の成果等を集約し,「農研機構食品機能性成分統合データベース」を開発した.収録するデータには,公開情報だけでなく閲覧者を制限すべきクローズドデータが含まれるため,柔軟なユーザ認証機能を導入し,適切なアクセス管理を行えるようにした点に特徴がある.本データベースでは,データの属性に応じて検索結果をグループ化して表示するファセット検索機能やグラフ表示機能などを実装した.
著者
細谷 泰夫 森崎 修司 松本 健一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第71回, no.ソフトウェア科学・工学, pp.227-228, 2009-03-10
著者
森 良弘 北 寿郎
出版者
特定非営利活動法人 日本ビジネスモデル学会
雑誌
BMAジャーナル (ISSN:24321850)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.15-29, 2021-06-30 (Released:2021-09-07)

Because of limited human capacity to gather and process information, heuristics inevitably impact on decision making to cause cognitive biases. This applies to firms’ managerial decision making and a lot of examples of misjudgment has been reported. R&D engineers may also be suffered from such biases, but very few research articles are found in this field. In this paper, we investigated whether such biases also apply to engineers by literature reanalysis and case studies. Our research suggested that engineers are suffered from several types of cognitive biases that are generally observed in psychological studies. Because of these biases, R&D engineers potentially cause wrong technological decision.
著者
森満 保 河野 正 平井 卓哉 栗田 壽男
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.7-12, 2010 (Released:2019-12-04)

2009年3月19日.宮崎県串間市大字大納恋ヶ浦の浜辺に単独座礁死したハナゴンドウ(雄)の、聴器の病理組織所見を報告した。両側鼓室胞内から、クラシカウダ属寄生虫、各十隻前後を採取した。鯨石の脱灰・HE染色による病理組織検査では、内耳炎の所見は無く、ラセン神経節にも著変を認めなかった。しかし内耳道内の蝸牛神経は、道底近辺では略正常であったが、中間部から中枢側まで、高度の変性と崩壊を認めた。また周耳骨周囲の結合組織内に散在する寄生虫卵と、輪切りにされた寄生虫体を認め、更に蝸牛周辺の結合組織内に著明な石灰化巣を認めた。顔面神経は略正常であった。単独上陸死の原因として、クラシカウダの異所寄生(聴器)により、エコーロケーション機能を失ったための採餌不能・飢餓衰弱を推測した。
著者
大野 佳子 三瓶 舞紀子 長谷川 文香 松隈 誠矢 半谷 まゆみ 森崎 菜穂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.135-148, 2023-02-15 (Released:2023-03-02)
参考文献数
34

目的 コロナ禍の学校では感染対策に伴い行動が制限されるなか,こどもはどのような意見を持っているのか,そのテキスト(語られた言葉)の構造および保護者の心理・社会経済状況による特徴を明らかにすることを目的とした。方法 2020年9~10月に実施されたWeb調査「コロナ×こどもアンケート第3回調査」の回答者(小・中・高校生相当の男女)2,111人のうち,自由記述による有効回答が得られた1,140人のテキストデータを対象とした。質問内容は「いま気になることや言いたいこと[本音]」および「どのようにすればいいと思いますか?誰がどのようなことをしてくれたらいいと思いますか?[実行案]」であった。保護者の属性には年齢,仕事の有無,心理的苦痛尺度(K6),経済状態等を保護者から情報収集し,分析にはテキストマイニングソフトによる頻度分析,特徴分析,ことばネットワーク(単語関連図)作成を行った。結果 [本音]と[実行案]のテキストは総行数(回答者数)531,1,017であり,平均行長(文字数)21.5,31.5であった。係り受け頻度分析では[実行案]が「話-聞く」等であり,[本音]では「行事-無くなる」「マスク-外す」等が多かった。ことばネットワークでは[実行案]で最もノードの大きい「私」に「動く」「話しかける」等が強く共起のネットワークを形成していた一方,[本音]では「COVID-19」に「終息+?」「無くなる+したい」等が強く共起していた。保護者の属性による特徴的な単語(補完類似度)は,[実行案]では仕事あり群で「話(35.9)」,K6良い群で「話(26.6)」であり,K6不良群で「分かる+ない(23.5)」,経済状況悪群で「分かる+ない(17.3)」であった。一方,[本音]では仕事あり群および精神的健康度の高い群で「COVID-19(28.1,27.5)」であった。結論 こどもの本音ではCOVID-19に対する不快感や怖れを持っている一方で,実行案を問うと「私」が主体となって動き,他者に話しかけると同時に,誰かに話を聞いてもらいたい意思のあることが明らかになった。保護者の心理的苦痛と経済状況が良くないこどもの実行案の特徴として“分からない”が多かった。
著者
野村 亮太 石田 聖子 福島 裕人 森田 亜矢子 松阪 崇久 白井 真理子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.111-114, 2022 (Released:2023-02-27)

笑いに関する研究は世界中でおこなわれています。本欄では、英語で発表された笑い学の最近の研究成果を紹介しています。笑いに関する研究は、医学、心理学、社会学、哲学、文学、言語学、動物行動学など、多様な学問領域の専門雑誌に掲載されています。幅広い分野で展開されている世界の研究動向について共有することで、国内での笑い学の研究がさらに発展することにつながればと考えています。 本号では計6本の研究論文についての紹介記事を掲載することになりました。記事の執筆には、6名の研究者にご協力いただきました。どうもありがとうございました。