著者
山田 正俊 田副 博文 楊 国勝
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

福島第一原子力発電所事故後の環境試料中の236U濃度と236U/238U同位体比をモニタリングするために、誘導結合プラズマ質量分析装置による環境試料中の236U分析法の開発を行った。開発した分析法の信頼性は認証標準物質を用いて評価した。福島原発事故により汚染された46土壌試料中の236U濃度及び236U/238U同位体比を測定した。その結果、236U濃度は(0.469-24.4)×10-5 Bq kg-1、236U/238U同位体比は(0.099-1.35)×10-7であった。これをPu同位体の結果とともに解析して、福島原発事故により極微量ではあるが236Uが放出されたことを明らかにした。
著者
田中 幹人 石橋 真帆 于 海春 林 東佑 楊 鯤昊 関谷 直也 鳥海 不二夫 吉田 光男
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.71-82, 2022-04-28 (Released:2022-05-26)
参考文献数
27
被引用文献数
1

新興感染症であるCOVID-19に対処する中では,日々更新されるリスク知識を社会で共有し,また政策から個々人のレベルに至るまでリスクを判断していく必要があった。このリスク情報の流通と議論の場となってきたのは,もちろんメディアである。本稿では,我々の研究結果を基に,まず情報の送り手である新聞報道の傾向を振り返り,また情報の受け手である日本のメディア聴衆の相対的リスク観を把握する。そのうえで,ソーシャルメディアを含むオンラインメディア上でのコミュニケーションの成功例,失敗例を確認し,そこから教訓を得る。更にマス/オンラインメディアが複雑に絡み合う中で,COVID-19禍を通じて明らかになった感染者差別,ナショナリズム,懐疑論や隠謀論といった問題を確認したうえで,コミュニューション研究の知見を踏まえて,リスクのより良い社会共有に向けた方針を提示することを目指す。COVID-19という災害は,新興感染症として私達の医療・社会制度の刷新を求めているのみならず,コミュニケーションを通じたリスク対応のあり方についても大きな変革を求めているのである。
著者
西浦 博 楊 一馳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1049-1053, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
6

感染症の数理モデルは,流行が集団内で起こり,それが拡大していく様を数理的に記述した模倣的な描写ツールである.様々な疾患の疫学研究の中で感染症は最も長い歴史を有するが,200年以上ある感染症数理の歴史の中で最近15年間の進歩は凄まじく,統計学的推定(特に計算統計学)の技術革新やコンピュータの計算能力の向上に伴って,数理モデルを流行データに適合(フィット)して感染性や重症度を定量化することや未来の予測を施すことが当たり前の時代に突入した.いまや,保健医療の現場において,特定の感染症の流行状況を客観的に理解したり,予防接種や治療効果の政策判断を実施したりするうえで,数理モデルは欠かせない研究手法となった.昨今のエボラ出血熱やジカ熱,新型インフルエンザ等の新興感染症流行のデータ分析においても,世界でいち早く流行状況を理解し,予測を施すために用いられている.数ある研究課題の中でも,予防接種の有効性に関する検討は数多く,また接種効果の推定や人口レベルでの接種政策判断などは,数理モデルの威力が最も発揮される活用課題として知られる.なぜなら,直接伝播する感染症の予防接種は,接種者個人が恩恵を受ける直接的な(ミクロ生物学的な)効果に留まらず,予防接種者が増えることによって集団レベルでもたらされる間接的な予防効果としての集団免疫(herd immunity)をもたらすためである.公衆衛生学的な観点で考えれば,集団免疫があるということは,人口の全てに予防接種を実施しなくても流行が制御可能であるという歓迎すべきことであるが,データ分析を実施して予防接種を評価・計画する立場で考えれば,それは研究デザインからモデリング,結果解釈に至るまで相当のケアをしなければいけないことを意味する.本稿では,数理モデルを活用した予防接種の評価研究に関する最前線の理解を得るために,基本的な考え方を読者諸氏と共有する.
著者
楊 祝良 土居 祥兌
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum Ser. B Botany (ISSN:03852431)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.107-130, 1999-09

Specimens of the genus Amanita collected from Japan and deposited in the herbarium of the Department of Botany, National Science Museum, Tsukuba, Ibaraki, Japan (TNS) were studied. Eighteen taxa, including two species new to science and two taxa new to Japan are reported here. Brief notes on a few type specimens of the Amanitae described by T. Hongo are also included in the present accunt. The new species are Amanita orientogemmata and A. oberwinklerana, while the new records are A. manginiana sensu Chiu and A. subjunquillea var. alba. Amanita sphaerobulbosa is treated as a distinct species, independent of A. abrupta.

8 0 0 0 OA [春の]色

著者
桒楊菴 [撰]
出版者
蔦屋重三郎
巻号頁・発行日
1795
著者
山内 一史 楊箸 隆哉 木戸 能里子 坂田 和嘉子 石川 稔生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-7, 1989-03
被引用文献数
1

インスタントコーヒーを用い,暗算作業量を指標としてカフェインの精神運動刺激作用をみる実験を行った。1.暗算作業検査を繰り返し行うと,その作業量の伸びは徐々に鈍ってくるが,カフェイン飲用によってこの傾向は軽減される。この効果は安定しており,少なくとも30分は持続する。2.上記のクレペリンテストにおけるカフェインの効果は,被験者の暗算作業能力や学習能力において,それぞれ高い能力を持つ被験者に,より有効に作用することが示された。これらの結果より,カフェインの中枢作用について考察を行った。
著者
王 麗楊 用稲 栄 寒川 昌平 山田 佐知子 桑原 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.103-107, 2018 (Released:2018-01-28)
参考文献数
16
被引用文献数
3

カルシウム (Ca) の生理学的効果は, イオン化Ca (iCa) 濃度によって決定されるが, iCaは日常的には測定されていない. 日本では血清アルブミン (Alb) 濃度を用いて血清総Ca (tCa) を補正した補正Ca (cCa) が広く用いられている. 今回われわれは, 低Alb血症の血液透析患者で現在用いられている補正式 (Payneの式およびKDOQI-1式, KDOQI-2式) が適切かどうかを検討した. 血液透析患者41名のうち, 血清Alb 3.7g/dL未満であった33名で, iCaとtCa, cCaの相関を比較検討した. AlbはBCP改良法で測定し, 測定値に0.3g/dL加えた値をBCG法の推測値として用いた. cCaとiCaとの相関係数はKDOQI-1式が最も高く, 次いでtCa, KDOQI-2式となり, Payneの式との相関が最も低かった. KDOQI-2式, Payneの式は低Ca血症の見逃しが多く, 偽性高Ca血症も2例認めた. 一方, tCaでは偽性低Ca血症を7例認めた. 低Alb血症患者のiCaに対応したtCaの推定にはKDOQI-1式によるAlb補正Ca濃度評価が勧められる.
著者
楊 洋 植田 憲
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.6_75-6_84, 2015-03-31 (Released:2015-07-31)
参考文献数
69

本稿は,中国湖南省江永県地域において,女性の間のみで共有された女書の文化的・社会的役割を明らかにすることを目的としたものである。調査・考察の結果,以下の知見を得た。(1)女書の詩文は以下の5つに分類することができた:(A)契りを交わした血の繋がりのない女性の間の楽しみを描写したもの,(B)日常生活における消極的な思いを吐露したもの,(C)災難や不幸を乗り越える行事や儀礼を詠ったもの,(D)日常生活の厳しさを吐露したもの,(E)女徳に関する教育・教養を涵養したもの。(2)女性たちは,幼い頃から,煤や木片などの身の回りの材を道具として積極的に女書の習得・上達に勤しんだ。(3)姉妹の契りを交わした女性たちは,女書を通して,悲しみや喜びを吐露し励まし合い当該地域で生きる活力を獲得した。(4)女書は,当該地域のハレの日を知らしめる手段であった。(5)女書は,封建社会に生きる女性たちの道徳教育の媒体,ものづくりの図案の教本,家や世代を超えた文化伝承の媒体であった。
著者
楊 碩 橋本 敬 李 冠宏 李 暁燕
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.331-339, 2015-01-06 (Released:2015-01-06)
参考文献数
20

Japanese onomatopoeia is an important element to express feelings and experiences lively. It is very difficult for Japanese learners to acquire onomatopoeia, especially, its nuance. In this paper, based on traditional L2 learning theories, we propose a new learning method to improve the efficiency of learning Japanese onomatopoeias' nuance - both explicit and implicit - for non-native speakers. The method for learning implicit nuance of onomatopoeia consists of three elements. First is studying the formal rules representing the explicit nuances of onomatopoeic words. Second is creating new onomatopoeic words by learners to utilize those formal rules. The last is giving feedback of relevance of the onomatopoeias created. We then show a learning system implementing the proposed method. In addition, to verify the effectiveness of the proposed method and the learning system, we conducted an experiment involving two groups of subjects. While the experiment group covers all the three elements of the proposed method, the control group involves no creation process, which is supposed to be a core element of our proposed method, instead, does an assessment process in which the participants assess the appropriateness of onomatopoeic words presented. Both groups were required to take two tests, before and after going through the learning process. The learning effect is defined as the difference between the scores gained from pre-learning test and post-learning test. The result confirms that the proposed method has significant effect in learning onomatopoeia for non-native speakers. Moreover, the comparison against the control group shows that the creation process is the key to bring the learning effect.
著者
和佐野 喜久生 湯 陵崋 劉 軍 王 象坤 陳 文華 何 介均 蘇 哲 厳 文明 寺沢 薫 菅谷 文則 高倉 洋彰 白木原 和美 樋口 隆康 藤原 宏志 佐藤 洋一郎 森島 啓子 楊 陸建 湯 聖祥 湯 陵華 おろ 江石 中村 郁朗
出版者
佐賀大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本学術調査は農学及び考古学の異なる専門分野から、東アジアの栽培稲の起源に関する遺伝・育種学的研究および中国の古代稲作農耕文化の発祥・変遷・伝播についての中国での現地調査、考古遺物・文献・資料の収集とその研究解析、現地専門家との討論を行うことであった。これまでの3回の海外調査によって、多くの研究成果を得ることができた。研究代表者の和佐野がこれまでに行った古代稲に関する調査は、中国の長江のほぼ全流域、黄河の中下流域、山東半島、遼東半島および海南島の中国全土にわたるものとなった。また、調査・測定した古代稲の実時代は、新石器時代の紀元前5,000年から前漢時代までの約5,000年の長期間に及び、その遺跡数も18カ所になった。稲粒の粒大測定は、大量にあるものからは約100粒を任意抽出し、それ以下のものは全粒を接写写真撮影によって行った。また、中国古代稲の特性を比較・検討するために、韓国の2カ所および日本の14カ所の古代遺跡の炭化米の調査も並行して行った。以上の調査結果に基づいて、次のような結論を得ることができた。(1)紀元前5,000年ころの気温は現在より2度は高かったこと、および北緯30度周辺に位置する城背渓および彭頭山遺跡文化(紀元前6,000-7,000年)の陶器片および焼土中に多くの籾・籾殻・稲わらの混入が発見されたことから、紀元前6,000-7,000年頃には北緯30度付近に稲(野生か栽培されたものかは分からない)が多く生育していたと考えられる。彭頭山遺跡の籾粒は6ミリ前後のやや短粒であった。(2)古代稲粒の大きさ・形の変異の状況および稲作遺跡の時代的新旧の分布状態から、東アジアの稲作は、長江の下流域・杭州湾に面した河姆渡および羅家角両遺跡を中心とした江南地方に、紀元前5,000年以上溯る新石器時代に始まったと考えられる。(3)長江の中流域には、紀元前6,000-7,000年の城背渓および彭頭山遺跡から稲粒が発見されているが、稲作農耕の存在を証拠づけるものがまだ発見されていないこと、河姆渡および羅家角両遺跡と同時代の紀元前5,000年頃の稲作遺跡が存在しないこと、中流域に分布する多くの遺跡が紀元前3,000-4,000年のものであること、などから、稲作は下流域から伝播したものと考えられる。(4)長江の最上流域の雲南省の稲作遺跡は紀元前1,000-2,000年の新しいものであり、稲粒も粒が揃った極端な短円粒であること、さらには、雲南省の最古の稲作遺跡である白羊村遺跡の紀元前2,000年頃には、黄河流域からの民族移動の歴史があること、などから、稲作のアッサム・雲南起源説は考えられない。アッサム・雲南地域は、周辺地域から民族移動に伴って生じた稲品種の吹きだまり(遺伝変異の集積地)の可能性が強いことを提唱した。(5)黄河の中下流域の前漢時代の古代稲は、長大粒で日本の現在の栽培稲とは明らかに異なるものであったが、淮河流域の西周時代の焦荘遺跡の炭化米は、九州の弥生中期の筑後川流域のものによく類似した。(6)山東半島の楊家圏遺跡(紀元前2,300年)の焼土中の籾粒は日本の在来の稲品種によく類似したが、遼東半島の大嘴子遺跡の炭化米は短狭粒で、韓国の松菊里遺跡(紀元前500年)、あるいは日本の北部九州の古代稲粒のいずれとも異なるものであった。このことから、稲作が朝鮮半島の北から内陸を南下したとは考えられない。(7)山東半島の楊家圏遺跡、松菊里遺跡(紀元前500年)、および日本の北部九州最古の稲作遺跡・菜畑遺跡のやや小粒の古代稲粒は、浙江省呉興県の銭山漾遺跡の炭化米粒の中に類似するものがかなり見られた。このことは、日本への最初の稲作渡来が江南地方から中国大陸の黄海沿岸に沿って北上し、山東半島から韓国の西海岸を南下しながら北部九州に上陸した可能性を示すものである。森島、湯および王は、雲南省と海南島の野生稲の現地調査を行い、中国の野生稲の実態を明らかにした。佐藤は河姆渡遺跡の古代稲の電子顕微鏡写真撮影によって、同遺跡の稲が野生稲の特徴である芒の突起を有すること、さらに小穂の小枝梗の離層が発達していることを確認した。藤原と湯は、江蘇省青浦県の草鞋山遺跡(紀元前3,400年)周辺を発掘し、当時の水田遺構の確認および稲のプラントオパール分析を行い、当時の稲作の実態を明らかにした。樋口、白木原、高倉、菅谷および寺沢は、それぞれの専門から研究を行い、現在報告書の成作を完了した。厳、蘇、陳、何および劉は、新石器時代の稲作文化および古代民族移動に関する報告書を作成した。