著者
横山 潤 福田 達哉
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、アーバスキュラー菌に依存する菌寄生植物を対象に、菌根菌との対応関係,栄養摂取様式に関連した菌根菌との対応関係の変化、および炭素源移動に関連する生理的機能を明らかにして、植物の従属栄養性の進化を総合的に解析することを目的とした。菌寄生植物とリンドウ科植物の菌根菌の分子同定を行なった結果、Glomus Group A系統に属する菌が菌根を形成していることが明らかになった。これらの菌類は周辺植物、特にハナヤスリ科植物から高頻度に検出された。菌寄生植物やリンドウ科植物から得られた菌根菌の炭水化物トランスポータ遺伝子には、栄養摂取様式と関連する変異は見つからなかったが、発現量が栄養摂取様式と関連している可能性が示唆された。
著者
粂川 義雅 三浦 収 藤本 悠 伊藤 桂 荒川 良 横山 潤 福田 達哉
出版者
The Japanese Society of Soil Zoology
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.19-24, 2019 (Released:2020-03-29)

ニホンアカザトウムシPseudobiantes japonicus の2 つの異なる系統群(クレードA とクレードB) の分布域が接触する四国中央部において両系統群間の交雑や遺伝子移入の有無を明らかにするために, ミトコンドリアDNAと核DNAのPCR-RFLP解析を行った.両クレードの混棲が確認されたのは1地点のみであったが,その地点を含め,この地域内で,核DNAの遺伝子におけるヘテロ接合と判定される個体やミトコンドリアDNAと核DNA間における不一致は発見されなかった.これは,クレードA とクレードB が接触地域において交雑や遺伝子移入を経験していないことを示唆し,これらのニホンアカザトウムシは隠蔽種であると考えられた.
著者
横山 潤
出版者
法曹会
雑誌
法曹時報 (ISSN:00239453)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.529-555, 2011-03
著者
横山 亜紀子 横山 潤
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.25-30, 2009 (Released:2017-11-10)
参考文献数
12

伊豆沼の砂泥サンプルを実験室内で静置したところヒカリモが発生した.光学顕微鏡による形態観察の結果,黄金色藻特有の色調をもった浮遊相細胞と,長短2本の鞭毛をもつ遊泳細胞を確認した.遊泳細胞を単離培養し,詳細な形態観察を行なった結果,本藻は葉緑体に半埋没するピレノイドをもっていた.これらの形態的特徴はChromophyton vischeri (=Ochromonas vischeri ) と一致した.単離培養株から18SrRNA遺伝子の塩基配列を決定し,既報配列と比較したところ,C. cf. rosanofii CCMP2751株と99.9%の相同性を持つことがわかった.自然状態での発生ではないものの,伊豆沼は現在報告されているヒカリモの発生地の中では最北限となる.
著者
山路弘樹 中村輝子 横山潤 近藤健児 諸田隆 竹田秀一 佐々木博 牧雅之
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.57-78, 2007-04-20 (Released:2022-10-20)

日本産カンアオイ属ウスバサイシン節植物の形態変異を明らかにするために,国内の全分布域・既知の分類群,地域集団を含む55集団について野外調査を行った.同節に関する過去の研究はいずれも量的形質の評価が不十分であるため,本研究では今まで用いられてきた形質,新たに採用した形質の評価に加え,花の量的形質に基づく多変量解析を行った.その結果,形態より区別できる8型が認識された.日本の同節はまず萼筒内壁のカラーパターンで2型に分けられ, D 型は全面暗紫色なのに対し, L 型は基底部は暗紫色,中央部は黄緑色ないし淡紫色,萼筒開口部は暗紫色ないし白色だった. D 型はさらに萼筒内壁,萼裂片内面の毛の細胞数,雄蕊・雌蕊の数で D1-D4 の4型に分けられ, L 型は萼筒の形態,萼筒開口部の大きさ,萼裂片の形態,サイズで L1-L4 の4型に分けられた.この8型はほぼ異所的に分布し,それぞれ独立の分類群に値するまとまった地域集団と推定された.
著者
河田 雅圭 杉本 亜砂子 牧野 能士 丸山 真一朗 横山 潤
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

近年発見されたC. elegans の姉妹種であるC. inopinataを用いて、体長の進化に寄与した遺伝子を特定することを目的とした。二種間で大きな体長の差が生じるL4幼虫期と成虫期で、発現パターンが、種間で異なる遺伝子として2699遺伝子が検出された。6種の線虫のうち、C. inopinataの系統でのみ正の選択圧が42の遺伝子で検出され、その中に、daf-2があった。daf-2は細胞膜で発現するインスリン受容体で、C. elegansの変異体は体サイズが大きくなることが知られ、daf-2遺伝子の進化が体サイズの進化に対して大きな影響をもつ可能性が示唆された。
著者
遊川 知久 三吉 一光 横山 潤
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany (ISSN:03852431)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.129-139, 2002-12

Molecular phylogenetic analyses using two data sets, derived from DNA sequences of matK, the maturase-encoding gene located in an intron of the chloroplast gene trnK, and ITS (internal transcribed spacer) region of the 18S-26S nuclear ribosomal DNA, were performed to examine relationships among 37 taxa in Cymbidium. Although each data set did not provide conclusive evidence in itself, the data sets combining the two regions yielded the following insights: (1) Cymbidium subgenus Cyperorchis and section Pachyrhizanthe, often treated as independent genera, were nested within the remaining members of Cymbidium. (2) All the three subgenera of Cymbidium, namely, Cymbidium, Cyperorchis, and Jensoa, turned to be para-/polyphyletic. (3) Among sections of Cymbidium, Austrocymbidium, Cyperorchis, Iridorchis, and Maxillarianthe did not show monophyly. (4) At specific level, our results indicated the polyphyly of Cymbidium bicolor, although bootstrap supports for the clades including C. bicolor were not robust.
著者
松村 千鶴 中島 真紀 横山 潤 鷲谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.93-101, 2004-06-30
参考文献数
25
被引用文献数
10

北海道勇払郡鵡川町・厚真町と沙流郡門別町のほぼ7.75km^2の範囲にある水田や畑地,河川敷,山林において,2003年6月から9月の間にマルハナバチ類(Bombus spp.)の巣を探索し,地中のネズミ類の廃巣に作られたセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris L.)の自然巣8つを含む27の巣を発見した.そのうち9巣を採集して分解し,卵,幼虫,マユ,成虫の数をできるだけ雌雄とカースト(働きバチか女王バチか)を区別して計数するとともに,蜜の保存や排泄場所の有無などの営巣特性についての情報を収集した.新女王バチの生産に至った巣の比率には,外来と在来のマルハナバチ間で有意差はなかったが,セイヨウオオマルハナバチの1巣あたりの新女王バチ生産数は在来マルハナバチ類と比較して4.4倍の平均110頭であり,当該地域の野外でのセイヨウオオマルハナバチの増殖率の高さが示唆された.
著者
中島 真紀 松村 千鶴 横山 潤 鷺谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.57-63, 2004-06-30
被引用文献数
7

温室栽培トマトの授粉用に導入されたセイヨウオオマルハナバチの野生化の状況を把握するために,2003年5月下旬から8月下旬にかけて北海道勇払郡厚真町および鵡川町において踏査による営巣場所探索の調査を行った.のべ18人日の調査により,8つのセイヨウオオマルハナバチの野生化巣と11の在来マルハナバチの巣が発見された.巣の発見場所は,主に水田の畦や畑地の用水路の土手であり,特にセイヨウオオマルハナバチとエゾオオマルハナバチ,エゾトラマルハナバチは営巣場所の選択において類似性が高いことが示された.さらに在来種であるエゾオオマルハナバチの1つの巣から,セイヨウオオマルハナバチの働き蜂が出入りしていることが確認された.在来マルハナバチ類とセイヨウオオマルハナバチが同じ巣を利用することにより,寄生生物の異種間感染をもたらす可能性が示唆された.