著者
中司 敦子 神崎 資子 高木 章乃夫 岩田 康義 池田 弘 福島 正樹
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.163-168, 2004
被引用文献数
2

慢性腎不全患者の意識障害として尿毒症性脳症が知られているが, 透析療法が普及した昨今ではこの病態を経験することはまれである. 今回われわれは緩下剤の連用中に高マグネシウム (Mg) 血症による意識障害をきたした慢性腎不全の2症例を経験したので報告する.<br>症例1は77歳, 男性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全で加療中, 食欲不振と意識混濁が出現し入院. 血清Cr 4.31mg/dL, BUN 64mg/dL, 血清Mg 7.3mg/dLと上昇. 血清カルシウム値は5.8mg/dLと低下. 皮膚の潮紅, 肺炎および呼吸抑制による呼吸不全を認めた. 血液透析で血清Mg値は低下したが, 翌日再分布によると考えられる再上昇をきたしたため血液透析を再度行い軽快した.<br>症例2は78歳, 女性. 慢性関節リウマチ, 腎機能低下で加療中に尿路感染症により腎機能が増悪し, 全身倦怠感, 見当識障害が出現したため入院. 血清Cr 6.56mg/dL, BUN 96mg/dL, 血清Mg 7.1mg/dLと上昇. 血液透析を3日間連続して行い軽快した.<br>いずれの症例もMg製剤の服用歴を有し, 高度な高窒素血症が存在しないにもかかわらず意識障害を呈した. 当院で2年間に血液透析導入時に血清Mgを測定した78例中, 中毒域の高Mg血症をきたしたのは今回提示した2例のみであった. その他に, 意識障害をきたした症例は低血糖の1例のみで, 尿毒症性脳症による意識障害はなかった. 今回の症例では緩下剤の連用および感染による慢性腎不全の急性増悪が重篤な高Mg血症の原因と考えられた. 治療として血液透析が有効であったが, 再分布による血清Mg値の再上昇に注意が必要である.
著者
金 延景 中川 紗智 池田 真利子
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.247-262, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
33
被引用文献数
1

本稿は,東京都新宿区大久保コリアタウンにおけるエスニック空間の夜の性質を,夜間営業施設の利用特性の分析から検討した。大久保コリアタウンの夜間営業施設からは,昼間-夜間と,夕方-深夜-早朝の時間帯において,エスニック集団の実生活に依拠した本質的なエスニシティと,ホスト社会に期待される観光資源としてのエスニシティそれぞれの様相と遷移が看取できた。また,夜の大久保コリアタウンは,昼間の領域性を薄め,歌舞伎町との連続性を強めて再構築されると考えられる。この大久保コリアタウンの領域性の再構築は,形成初期より歌舞伎町の遊興空間と深く結びつき存在してきたエスニック・テリトリ−がホスト社会の管理により縮小されながらも,韓流ブ−ムに起因する大久保側の観光地化と,第二次韓流ブ−ムによりもたらされた夜間需要の拡大といった外的要因により,そのエスニシティの境界が維持された結果と理解される。さらに,この領域性を歌舞伎町と大久保コリアタウンの境界域として捉えるならば,日本の盛り場的要素と韓国のエスニシティが交差した新たな文化的アイデンティティを有する「第3の空間」として新宿の夜の繁華街を構成し,その新たな都市文化の創造に寄与しているといえよう。
著者
田中 謙 池田 幸代
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.219-234, 2021-03

本研究は、保育所、幼稚園、認定こども園等幼児教育施設(以下、幼児教育組織)の「保育の環境構成」に関する事例分析を通して、幼児教育組織でのカリキュラムマネジメントにおける保育者のナレッジマネジメントの特質を明らかにすることを目的とした。その結果、事例としたM幼稚園の保育の環境構成を考えると、M幼稚園ではカリキュラムマネジメントにより保育環境の再構成を通して保育の質の向上が図られており、このカリキュラムマネジメントは保育者の知識資源を活用していることから、ナレッジマネジメントであったと考えられた。さらに組織でのカリキュラムマネジメントにおける保育者のナレッジマネジメントは、個々の組織のコンテクストに依存する特質を有しており、各組織で蓄積された知識資源を、各園でのコンテクストデザインと融合させる過程が必要であることを指摘した。
著者
池田 敦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2010 (Released:2010-06-10)

本稿では岩石氷河の起源について,混乱しがちな議論を整理し,その形成モデルおよびその地形が示唆する環境について考察する. 現在の基本認識 岩石氷河は寒冷環境下の傾斜地に発達する角礫層に覆われた舌状地形であり,その長さは数十mから数km,厚さは数十mである.その舌状形態と,ときに表面に発達する皺状の微地形が,粘着性をもった流動による地形形成を暗示する.実際に多くの岩石氷河で年間数cm~数mの地表面流速が観測され,その流速は岩石氷河内の氷の変形によることが確実視されている. しかし岩石氷河の形成モデルを巡っては大きな見解の対立がある.一つは,氷河上ティルが非常に厚くなり消耗が極端に抑制された結果,涵養域/消耗域比がごく小さくとも質量収支が成り立つ氷河(もしくはその遺物)と岩石氷河を捉える氷河説であり,もう一つは,永久凍土環境下において崖錐や氷河堆積物内で凍った水と落石等に被覆された残雪に起源をもつ集塊氷の変形によって形成されるという永久凍土説である. 研究の進展の結果,完新世に氷河と隣接した形跡がない岩石氷河(図中D)については永久凍土説が広く適用されているが,上流側に氷河(あるいは完新世のモレーン)を有する岩石氷河については,いまだ研究者間でその成因についての認識が大きく異なっている. 議論が混乱している理由 岩石氷河内の氷体が氷河に由来することと,岩石氷河が氷河のシステム(涵養域と消耗域の収支を平衡させる流動システム)に則っているかどうかは,分けて考えるべきだが,氷河説の支持者は前者を(多くは断片的に)確認しただけで後者を念頭にモデルを提示している. また,岩石氷河とその上流側に存在する氷河との間には,地形的なギャップがない場合(図中A)とある場合(図中B,C)があるが,これまでのレビューや討論では,それらの違いを区別した議論がなされていなかった. 論争解決のための分類 (1)氷の主な起源,(2)流動システム,(3)上流側の氷河の有無をもとに,岩石氷河を4タイプに分類した.(1)氷河起源で(2)氷河システムの氷河型岩石氷河(A),(1)氷河起源で(2)非氷河システムの堆石型岩石氷河(B),(1)非氷河起源で(2)非氷河システムかつ(3)氷河が非干渉の崖錐型岩石氷河(D)ならびに(3)氷河が干渉(間欠的に被覆)する氷河被覆型岩石氷河(C)である. この分類に基づくと,Aは涵養量が少なく,涵養域での岩屑/氷比が相対的に大きく,さらに消耗量が極端に少ない寒冷氷河の存在を,Bは氷核モレーン中の氷が岩石氷河を発達させえるだけ長期間保存される環境(永久凍土環境)を,CとDは永久凍土環境を示すと考えられる.Cに関しては上流側の温暖氷河(涵養大・消耗大)の前進が岩屑供給と永久凍土の部分融解を引き起こしている. このうちAとBに関しては,内部構造や内部変形に関する実証的な研究がほとんどなく,その点で上の記述は推論の域を抜けていない.今後の研究の進展が望まれる.
著者
高橋 宏佳 高橋 幸利 美根 潤 向田 壮一 池上 真理子 池田 浩子 大谷 英之 下村 次郎 久保田 裕子 藤原 建樹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.273-276, 2010-07-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

&emsp;Dravet症候群に対するtopiramate (TPM) の治療効果を検討した. Dravet症候群と診断された11症例 (7.1&plusmn;6.2歳) を対象とし, 投与前2カ月と投与後2カ月, 投与後6カ月目を含む2カ月間の発作回数を比較した. けいれん発作に対する投与後2カ月での評価は, 発作消失が1例, 50%以上発作減少が6例, 50%未満~無効が3例, 悪化が1例であった. 服用を6カ月間続けたのは10例で, 発作消失が1例, 50%以上発作減少が7例, 50%未満~無効が2例, 悪化が0例であった. TPMはDravet症候群のけいれん発作抑制に有効と思われた.
著者
米山 京子 池田 順子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.1008-1017, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
13

目的 食事からのカルシウム(Ca)摂取量の増大は長期授乳婦の骨密度低下を阻止し得るか,また,長期授乳により低下した骨密度の回復について,骨代謝を考慮して検討する。方法 1 年間以上の授乳婦について,授乳中の Ca 摂取量を食事指導により増大させた群(M 群)と授乳中に乳・乳製品を殆ど摂取しなかった群(N 群),および非授乳群(C 群)について,超音波法による骨密度測定および尿,血液(M, C 群のみ)中の骨代謝指標の測定を出産後 1~12週に開始し,その後半年に 1 回の頻度で最長 2 年間追跡測定,それらの変化を 3 群または 2 群間で比較検討した。結果 1. M 群の Ca 摂取量は平均1,032 mg/日で,日本人の授乳婦の栄養所要量に較べ幾分少なかった。 2. 骨密度変化のパターンは 3 群間で有意に異なり,1 年後に N 群では有意に低下(−8.0%),C 群では有意に上昇したが,M 群では有意な変化は認められなかった。開始時の骨密度値および出産回数を考慮して,1 年後の骨密度変化率は 3 群間および M, N 群間で有意であった。 3. 1 年半後の骨密度変化率は 3 群間で有意差は認められなかった。 4. M 群では開始時および半年後の尿中 Hydroxyproline/Creatinine は N 群より有意に低く,1 年後の尿中 Calcium/Creatinine は有意に高かったが,C 群とは両指標とも有意差は認められなかった。 5. M 群では 1 年後までの血清中 Bone alkaline phosphatase は C 群の半年後の値に較べ有意に高く,1 年後までの Osteocalcin も高い傾向であった。結論 授乳に対して Ca 摂取量が充足されれば,1 年以上の長期授乳でも骨密度低下はみられない。長期授乳により骨密度が低下した場合も平均的には離乳後半年で開始時まで回復するが,授乳期間中の骨密度の極端な低下は母児双方にとって好ましくない。
著者
池田 光穂
出版者
関西鍼灸大学
雑誌
関西鍼灸短期大学年報 (ISSN:09129545)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-61, 1991-04-01

En este reportaje, se escribe la vida alimentaria de un pueblo mestizo hondureno segun el metodo etnografico,con su interpretacion del autor. La gente proyecta su propia relacion social en la explicacion de los procesos culinarios de ciertas comidas, por ejemplo,de maiz y frijoles. Tambien la imagen de la clase socio-economica que los pueblos mantienen, se presenta en el discurso sobre la vida culinaria y alimentaria. El autor recomienda que se consiga mas reconocimiento de los datos, porque hace falta etnografia de los mestizos centroamericanos ante la acumulacion etnografica de los grupos indigenas.
著者
池田 透
出版者
北海道大學文學部
雑誌
北海道大学文学部紀要 (ISSN:04376668)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.149-175, 1999-03
被引用文献数
3
著者
木村 賢治 池田 幸洋
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.137-140, 2008

一時停止交差点での出会い頭事故を低減する為、一時停止交差点に接近する行動を調べ、ドライバが一時停止に気づき、スムーズな減速を促進する為の情報提供のタイミングを検討した。
著者
池田 昭夫 松本 理器 長峯 隆 菊池 隆幸 小林 勝弘 國枝 武治 宇佐美 清英
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

難治てんかん患者の脳内脳波記録への数理モデルの適用や、手術病理標本の解析、動物実験などを通じ、てんかん焦点の脳波バイオマーカーとしてのActive ictal DC shiftsの存在を確立し、てんかん発作における、 神経細胞, 能動的グリア, 受動的グリアの3成分、特に前2者の重要性を明らかにした。また、てんかん発作前状態ではred slow(低周波数帯域活動と高周波律動の共起)がactive DC電位の領域に一致することを明らかにした。一方で、頭皮上脳波での記録の実証により、Active ictal DC shifts、Red slowのバイオマーカーとしての汎用性を明らかにした。
著者
稲垣 具志 藤澤 正一郎 高橋 和哉 池田 典弘 竹内 聖人 荻野 弘
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.A_166-A_173, 2016

市街地での移動制約が著しく高い視覚障害者の交差点横断を支援するために,視覚障害者誘導用ブロック,音響式信号機,エスコートゾーン等の施設の普及が全国各地で進んでいる.一方,横断時の方向定位の手がかりとなるこれらの支援施設や歩車道境界部の縁石等の信頼度が横断場面によって異なる状況は,当事者にとってむしろストレスを助長する要因にほかならず改善が急務の課題である. 本稿では,視覚障害者の道路横断時のより正確な方向定位を促す手法の構築を目指し,横断歩道口の視覚障害者誘導用ブロック付近へ敷設する方向定位ブロックの提案を目的として,全盲者を対象とした歩行実験を実施した.実験参加者の主観評価のヒアリングならびに歩行・方向定位状況の観察に基づき,支援性を最大限に高めるための仕様要件と敷設方法を抽出するに至った.