著者
石盛 真徳 藤澤 隆史 小杉 考司 清水 裕士 渡邊 太 藤澤 等
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.159-168, 2008-10-05
被引用文献数
1

本研究では、ソシオン理論の家族システム論に基づいて、家族成員間関係から家族システムの機能を把握するアプローチと家族システムの全体的機能に関して直接的に取り扱う研究アプローチとが融合し得るか、について検討を行った。具体的には、家族成員間の感情コミュニケーションにおける思いやりと家族全体システムの機能との関連性が調査された。その結果は、家族システムへのアプローチとして、家族成員間関係に基づくアプローチと全体的機能へのアプローチを重ね合わせて検討することの有効性を示していた。また家族構成や家族成員のジェンダーといった家族システムの内的構造変数に、社会階層意識といった外的構造変数も加えて、家族成員間関係と全体的機能との関連性を分析することによって、家族援助の実践的取り組みに対するより役立つ基礎データが提供可能となることも示された。本研究のデータは、ソシオン理論の家族システム理論に基づいて要請される完全な二相三元非対称データではなく、4人家族の子供のみを調査協力者として収集された部分的なデータであったので、今後は完全な二相三元非対称データに基づいた検討が必要とされる。
著者
川本 直義 清水 裕之 大月 淳
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.580, pp.41-48, 2004
被引用文献数
1 1

I investigated the situation of the practice fields use of city bands and satisfactory degree for practice fields and analyzed it. Now city bands used a social educational institution most. Users of social educational institution have dissatisfaction toward that the practice field is not for music, but it is thought that they endure it because the fee for use is cheap. Local governments should consider the use of a cultural organization in public facilities and should keep the multi-purpose use.
著者
水田 惠三 清水 裕 西道 実 田中 優 堀 洋元
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

仙台市、新潟中越両地区に防災意識に関するアンケート調査を行い、両地区の比較を行った。ランダムサンプリングにもかかわらず仙台、新潟中越両地区の回収率は5割近く、両地区ともに防災への意識は高い。両地区とも防災の主体は50歳代以上の方である。両地区においては災害伝言ダイヤルへの関心は少なく、さらに携帯電話が通じない場合の家族との連絡方法、集合場所を確認していない。発災後の情報源のほとんどはテレビであり、停電した場合(ワンセグは除いて)のことがほとんど想定されていない。仙台市民は家具の安定や自宅の耐震強度など防災のハード面に力を入れていたのに対して、新潟中越は地震に関する情報、家族での話し合いなど防災のソフト面に力を入れていた。仙台市民は地震による津波の被害はほとんど想定していなかった。
著者
大清水 裕
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度は研究計画の最終年度であり、これまでの研究をまとめ、公開することに精力を傾けた。他方、研究計画に沿って小アジアの諸遺跡、特にエフェソスやアフロディシアスの調査も行なっている。まず、学会での口頭発表としては、5月の日本西洋史学会第61回大会で「『マクタールの収穫夫』の世界-3世紀北アフリカの都市参事会の継続と変容-」と題した報告を行なった。「マクタールの収穫夫」とは、チュニジア中部の高原地帯に位置する都市マクタールで発見された3世紀後半の墓碑に登場する人物である。この碑文は、現在、ルーヴル美術館の所蔵となっており、2010年5月に行なった実地調査の成果を交えて報告を行なった。従来、「3世紀の危機」を反映したものと扱われてきた有名な碑文だが、その内容だけでなく、碑文の刻まれた石の形状や遺跡のコンテクストも含めてその位置づけを見直し、「危機」とされる時代の再評価を行なっている。次に、雑誌等に発表したものとしては、「マクシミヌス・トラクス政権の崩壊と北アフリカ」(『史学雑誌』121編2号、2012年2月、1-38頁)がある。この論文では、238年の北アフリカでの反乱で殺害された人物の墓碑の再評価を行なった。従来、その文言から、親元老院的な都市名望家とされてきたこの人物を、その石の形状や発見地などの情報をもとに、帝政期の北アフリカ独自の文化環境に生きた人物として描き出している。また、Les noms des empereurs tetrarchiques marteles: lesinscriptions de l'Afrique romaine,Classica et Christiana,6/2,2011,549-570も公表されている。四帝統治の時代の碑文から皇帝たちの名前が削り取られた理由を検討したもので、従来想定されてきた理由とは別に、碑文の刻まれた石の再利用という目的を重視するよう指摘した。遺跡での現地調査としては、今年度は9月にトルコの諸遺跡を訪れた。その成果は、今後何らかの形で公開していきたいと考えている。
著者
清水 裕子 上田 伸男
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

快適性・感性の評価を客観的に行う方法を確立し、衣服の快適性・感性に影響を与える要因相互の関係を明らかにする目的で、客観的指標として脳波を取り上げ、解析を行った。また、衣服だけではなく、食物のおいしさ、好ましさと生理特性との関係を明らかにするために、検討した。結果は以下のとおりである。(1)極端な冷房による不快感と脳波の関係を検討した。冷房が苦手な被験者群と冷房が苦手でない被験者群との間では、主観評価、皮膚温について有意な違いがみられた。脳波については有意差ではなかったが、冷房の苦手な被験者群の方が、全般的にα波の出現は少ない傾向がみられた。(2)人体を圧迫する衣服に関しては、素材の異なる2種類のガードルで、サイズが合ったものと、ワンサイズ小さいものの合計4種類のガードル着用による快適感・覚醒感・圧迫感の調査と脳波の測定を行った。ガードル着用時のα波のパワーの比率は、日常的にガードルを着用していない被験者の方が全般的に減少しており、非着用者にはガードル着用による精神的な緊張がみられ、主観調査と共に、日常の着用状態による違いがみられた。(3)衣服の快適性の客観的な評価に、脳波の時間的空間的相関を検討する武者利光らの感性スペクトル解析法を用いて検討を行った。絹、綿、麻、ポリエステル新合繊を用い肌触りの異なる衣服を作成し、これらブラウスの着心地のよさとの関係を調べた。感性スペクトルは個人による差がかなり大きいが繊維による違いが認められた。(4)好きな食べ物と嫌いな食べ物を被験者に食べさせ、脳波、心電図、皮膚表面温度、鼓膜温度、心理評価を行った。脳波の変化としては、嫌いな食べ物を食べることにより、α波の低下、心拍数の増加がみとめられた。以上のような研究の結果、脳波測定と解析を用いて、衣服や食物に関した快適性の客観的な評価を行うことができることが示唆された。とくに、寒さを防ぐための衣服の効果、衣服による拘束のような不快感、食物の好悪に関した快・不快に直接反映されることがわかった。
著者
川本 直義 清水 裕之 大月 淳
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.63-76, 2003
被引用文献数
2

市民吹奏楽団という具体的な市民文化活動の実態を明らかにし、自治体等の活動支援のあり方を考察する。演奏機会、練習場、資金について、自治体等がどのように市民吹奏楽団を支援しており、それがどのような活動結果につながっているかを分析した。その結果、支援の性格によって活動の方向に違いがあることがわかった。共同体としての支援の枠組みだけでなく、新たな支援の枠組みが今後必要となるであろう。
著者
杉野 直樹 斎藤 栄二 高橋 貞雄 清水 裕子 根岸 雅史 野澤 健 石塚 智一 内田 照久 前川 眞一
出版者
全国英語教育学会
雑誌
ARELE : annual review of English language education in Japan (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.221-230, 2003-03

The present study aims at explicating the influence of test taking strategies on the test item reliability in English language proficiency tests. Widely known test taking strategies include starting with a certain section that might require more time than others to answer so that test takers can allocate more of their time allowance on it, or, especially in multiple-choice format, marking an alternative based on wild guessing. Also widely speculated is that, in the Daigaku Nyushi Center English test (DNC test, henceforth), those test takers who find themselves running out of time are forced to rely on wild guessing in answering test items. Some English language proficiency tests, such as TOEFL or TOEIC, strictly instruct test takers to tackle a specific section so that they cannot use the first strategy, however, many of the entrance examinations administered in Japan do not have such restrictions. In order to examine the influence of these two test taking strategies, viz. the 'answering order' strategy and the 'wild guessing' strategy, we conducted a large-scale survey using two parallel tests with different question/answering orders. Our analysis of the data with simulated wild guessing shows that wild guessing would deteriorate the test item reliability. Furthermore, it shows that those test takers who had more time to answer the same section seem to be using the wild guessing strategy anyway, which has significant implications on the test format itself.
著者
川谷 隆彦 清水 裕之 マッキーチャン マーク
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1742-1751, 1997-07-25
被引用文献数
10

本論文は筆者の一人が先に提案したLDA法の改良と手書き数字認識への応用について述べている. LDA法ではフィッシャーの判別分析で求められる判別関数を原距離関数に重畳することにより原距離関数のパラメータの学習を行う. 判別分析においては, 判別すべき二つのパターン集合を1次元の軸z上に射影する. 今回新たな問題点として, LDA法では判別関数に1次の項のみならず2次の項まで用いるためにz軸上の分布は対称にならないこと, また, そのために最適な判別関数が求められず認識精度の向上に限界があることが判明した. 本論文では, 非対称性の影響を軽減させる方法を提案し, NISTのデータベースに含まれる手書き数字を用いた認識実験によりその効果を確認している. また, 誤読パターンの傾向の評価, および人間の読取り結果との比較を通じ, OCRの読取り能力は人間のそれにかなり接近してきていることを示している.
著者
阿久津 由香 飯塚 由美 篠崎 智子 佐々木 和也 清水 裕子
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.24, no.59, pp.7-12, 2000-10-19

近年の情報通信技術の発展はめざましく, 学校教育においても, 子どもたちにさまざまな情報の中から有効なものを見つけだしたり, 自ら情報を発信したりする能力を身につけさせることが重要な課題となっている.また, 教員がマルチメディアの特性を生かした授業を試みることも, 教育効果が高まることとして期待されている.本研究では, 栃木県下の小・中学校の情報教育に着目し, 教育の現状, 問題点, 教職員の意識等の調査を行い, 情報教育の基礎資料とした.また, 限られた時間だけでなく, あらゆる教科においても情報教育は展開される必要があると考え, 本研究室でマルチメディアコンテンツを用いた家庭科教材ソフトを作成し, 小・中学校の家庭科の授業に用い, 効果的な利用法を探っている.
著者
望月 史子 清水 裕之 有賀 隆 南 順一朗
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.72, no.617, pp.47-54, 2007
被引用文献数
5 2

The aim of this paper is to propose the grasping method of the pattern and level of the agglomeration of land use using remote-sensing data. Using "CN Index" developed by Kobayashi et al. we propose a new Index, "Distance Index", which can clarify the level of the agglomeration of land use of a large regional area. DI Index is a potential value calculated based on distribution of CN index. In the paper firstly we abstracted the pattern of land use by classification from their land-surface situation using remote-sensing data of West Aichi. Secondly we measured the DI Index. Then we checked the land use pattern of West Aichi using DI Index and considered the feature. As a result by using DI Index the level of the agglomeration of land use could be classified comparatively clearly and especially the shape of the edge of agglomeration could be figured.
著者
岩井 信彦 青柳 陽一郎 白石 美佳 大川 あや 清水 裕子 柿本 祥代
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.75-81, 2007-01
被引用文献数
1

回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者51例の日常生活活動(Activities of Daily Living ; ADL)を機能的自立度評価法(Functional independence measure ; FIM)を用いて、実際の生活の中で行っている活動「しているADL」を評価し、同時に理学療法室や作業療法室など限られた環境での潜在的な活動「できるADL」を評価し、その得点差の状況を比較検討した。その結果、入院時、低FIM群では更衣上半身、更衣下半身、トイレ動作で得点差が大きかった。一方、高FIM群では階段昇降、歩行で差が大きかった。さらにADL項目ごとの得点と「しているADL」と「できるADL」との得点の関係において、低FIM群ではその差は確認できなかったが、高FIM群においては得点が高いADLほど得点差が小さいという相関が確認された。このことから回復期脳卒中患者の「できるADL」と「しているADL」の格差の特性を知り、医療チーム全員が格差の早期発見と原因の解明に取り組んでいくことが重要であると思われた。
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007 (Released:2007-10-12)
参考文献数
38
被引用文献数
6 9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.
著者
中澤 勇夫 雨宮 将稔 清水 裕之 秦 正治 広瀬 敏之 佐藤 英昭 木村 滋 小寺 隆三 阿部 宗男 杉田 邦博 水谷 太蔵 光武 雄一郎 工藤 栄亮 野原 学 吉川 憲昭 鈴木 文雄 関 和彦 小川 博世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.568, pp.141-148, 2000-01-20
被引用文献数
1

第三世代移動通信システム(IMT-2000)は、世界各国で使用可能なグローバルサービスを目指す位置づけから1992年ITUにおいて世界共通の周波数(2GHz帯)の割当が行われた。国内のIMT-2000の2GHz帯導入に際しては、既存システムとの干渉特性を明らかにする必要がある。このため、(社)電波産業会(以後ARIB)では平成8年度より調査検討会を設置し、導入が期待されているCDMA方式による移動無線と、IMT-2000に割り当てられた周波数帯を用いている既存の固定無線との周波数共用の可否、及び周波数共用を可能とする条件を明らかにするために、計算機シミュレーションおよびフィールド実証試験について調査及び試験分析を行ってきた。本報告はこの内、フィールド実証試験についての調査及び試験結果の報告であり、相互干渉モデル、試験システム、広帯域伝搬路特性、電界強度特性等について述べる。
著者
清水 裕子 酒井 秀夫 南 知栄
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.75-84, 1996-08-15
被引用文献数
3

新素材の作業服として,今回,綿・ポリエステル高次複重層糸織物の作業服Aと,アクリル極細繊維編物の作業服Bを下刈作業服に用いた場合の衣内気候について検討を行った。衣内温度,絶対湿度の変化の全体的な傾向は外気の黒球温度のそれに一致していた。作業服Aは,多量の発汗が生じたときは通気性が阻害され,衣内湿度が高くなっていた。作業服Bは吸水率が高くて通気性もよいが,汗で完全に濡れた場合には熱伝導率が大きくなる。作業服A,Bは本来,通常の屋外での着心地を重視した開発意図によるものであり,多量の発汗には適応しきれなかったが,例えば曇りで風があるときや,晴れていても湿度が低く,風があるときのように,風,湿度等の条件がそろえば,蒸散によって身体を冷やし,その機能を発揮することができるものと思われる。
著者
松岡 勝 大野 洋介 戎崎 俊一 清水 裕彦 吉田 篤正 河合 誠之
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目指すものは、超広視野光学望遠鏡システムの基礎開発を行うことである。この装置を使った科学的な意義は、短時間で変動する天体・天体現象を連続的にモニター観測をして予測のできない天体現象を捉えることである。この研究で鍵となるのは「広視野望遠鏡」と「画像データの連続短時間読出し」の2点である。このため、本研究では(1)「広視野望遠鏡」ユニットを設計・製作し、(2)市販のCCDを焦点面にセットした試験観測を実行した。5度の視野をもつ望遠鏡は、通常の天文学用としては考えられない大きな視野である。このような広視野の天文観測用望遠鏡が実際実現され得るかどうかが、広視野トランジェント天体監視用望遠鏡システム実現の最初の試験項目であった。この試験観測のため、八ケ岳南麓天文台で試験観測を行った。散開星団M45(すばる)の観測を行い、測光制度0.1の限界等級が12等級であった。アナログ回路のノイズが60e相当であったが、現在は30e相当まで抑える見通しがつき、引き続き試験観測を行っている。CCD読み出し回路は、汎用CCD駆動・読み出しシステムを開発した。これを使って「連続短時間読み出し」に関して鍵となる技術であるTDI(ドリフトスキャン)方式による試験観測を野外で実施し、10秒間、望遠鏡固定の状態で鮮明な星像を捉えることができ、初期の目的が達成された。本研究の最大の目的であった望遠鏡システムの基礎開発は、ほぼ初期の目的を達成した。今後は、引き続いてこの望遠鏡の詳細な特性を試験観測で行う予定である。また、大量にこのような広視野望遠鏡を安価で製作する方法についての検討が必要である。さらに、大量の画像データを速やかに処理するソフトウヱアも将来の問題として残されている。