著者
谷口 淳一 清水 裕士
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.175-186, 2017 (Released:2017-04-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2

本研究では,大学新入生の友人に対する自己高揚的自己呈示が,その後の友人からの評価,関係満足感,及び自尊心に与える影響を検討した。調査参加者は4度の縦断的調査(4月,5月,6月,7月)に同性の友人とペアとなり,質問紙への回答を行った。232名(116組,男性134名,女性98名)を分析対象者とした。Actor-Partner Interdependence Model(APIM)を用いて,5月に友人に対して自己高揚的自己呈示を行うことが,6月の相手からの実際の評価やその評価の推測を介して,7月の関係満足感や自尊心に与える影響を検討した。分析の結果,友人に対して有能さと親しみやすさの自己呈示を行っているほど,友人からポジティブな評価を得ていると認知し,関係満足感および自尊心が高いというActor効果がみられた。また,親しみやすさの自己呈示を行っているほど,実際に友人からポジティブな評価を得ており,その後の友人の関係満足感も高いというPartner効果もみられた。つまり,親しみやすさの自己呈示は,自己呈示を行った本人と友人の双方の関係満足感の高さに影響していた。大学新入生が友人に対して自己高揚的自己呈示を行うことの有益さについて議論を行った。
著者
清水 裕士
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.22-41, 2018 (Released:2019-07-11)
参考文献数
47
被引用文献数
13

The use of Bayesian statistics in psychology has been of recent focus. This paper discusses the effectiveness and usefulness of “Bayesian statistical modeling” in psychological studies by exploring its differences with traditional methodologies used in psychological studies. First, we explain differences between two trends in Bayesian statistics: hypothesis testing using Bayesian statistics and Bayesian statistical modeling. Second, Bayesian estimation and probabilistic programming languages may make it easy for psychologists to use statistical modeling. Third, the three advantages of studies using Bayesian statistical modeling in psychology are demonstrated. These advantages include developing mathematical explanations of behavioral mechanisms, valid estimation of psychological characteristics, and improved transparency and replicability of the data analysis. Fourth, it is argued that Bayesian statistical modeling and traditional psychological methodology could coexist by influencing each other.
著者
島宗 理 清水 裕文
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.269-277, 2006

We conducted theoretical analyses on reading comprehension from a behavior analytic point of view. First, reading comprehension is defined as behavioral changes that are caused by function-altering effects of reading text. Then, we inferred the conditions in which such function-altering effects might evolve. At minimum, textual, tact, and intraverbal responding are required, to the verbal stimulus in the text, ideally with equivalence relationships to what is described. Furthermore, autoclitic repertoires such as "A is B" and "if X then Y" seem to be critical for the text to have function-altering effects. Furthermore, for more comprehensive understanding, other supplemental verbal behavior, such as repetition, imagination, and looking up a dictionary seem to be effective problem-solving behavior, which could be explicitly taught. A gap between theoretical and empirical research is found in the investigation of the acquisition process of autoclitic frames, which thus calls for future research.
著者
杉浦 仁美 坂田 桐子 清水 裕士
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1218, (Released:2014-03-28)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究の目的は,地位格差のある集団間状況において,集団間葛藤が生起する過程を明らかにすることである。そのため,内集団バイアスに着目し,集団間の相対的地位と集団間の関係性,集団内での個人の地位が,内集団,外集団メンバーの評価に及ぼす影響について検討した。大学生120 名に対して,集団間地位と集団内地位を操作した実験を行った。その結果,高地位集団では,高地位者よりも低地位者のほうが,外集団メンバーの能力を低く評価することが明らかとなった。逆に,低地位集団では,低地位者よりも高地位者のほうが,外集団の能力を低く評価していた。また,この交互作用は,集団間の関係を非協同的であると認識する者においてのみ見られた。これらの結果から,集団内地位と集団間地位の高さが異なり,個人間比較と集団間比較のジレンマが生じる状況では,補償的に外集団を卑下する戦略が用いられる可能性が示唆された。
著者
清水 裕士 大坊 郁夫
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.13225, (Released:2014-10-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

The latent rank structure of the General Health Questionnaire (GHQ) was examined and a methodology for “ranking assessment” for use in clinical screening was suggested. Clinical screening is conducted by using dichotomous methods, which is problematic. Recent research has introduced the concept of ranking assessment, which is conducted by dividing clients into ordinal groups according to the Latent Rank Theory (LRT). Participants (N = 949, including 80 neurotic patients) completed the GHQ. They were then divided into four ordinal groups according to LRT. The usual cut-off point of the GHQ (16/17 points) distinguished the third and fourth rank group as the clinical group and the first-rank group as the healthy group. However, the second rank group was classified as neither a healthy or clinical group. These results indicate that the LRT has the potential to facilitate practical and flexible clinical screening.
著者
清水 陽子 中山 徹 清水 裕子 森田 尋子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.87, no.800, pp.1964-1974, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
13

The purpose of this study is to compare the trends between moving in and out and moving within the city. The results are as follows. It can be classified into six categories based on the trend of dynamics. Movements had a great deal to do with social dynamics in the region. According to the trends by age group, even if the population is increasing, the future aging of the population and its impact on the local community should be taken into consideration. Even if the population is declining, it does not affect the number of households.
著者
清水 裕 水田 恵三 秋山 学 浦 光博 竹村 和久 西川 正之 松井 豊 宮戸 美樹
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-12, 1997
被引用文献数
1

The purpose of our study on the 1995 Hanshin Earthquake was twofold. First, we investigated the operation of the relief shelters, including relief activities. In this part of the study, we focused on the leaders of the shelters. The second purpose of this study was to reveal factors contributing to the effective management of the shelters. About three weeks after the Hanshin Earthquake, we conducted interviews with 32 leaders of the relief shelters and of volunteer workers. We were mainly concerned with the conditions of the emergency facilities, how leaders were selected and what managerial problems they faced. The result of our study showed three types of motivation for becoming leaders. The first occurred naturally as an outcome of their activities; the second by their own choice; and the last because of their regular job positions. These results were analyzed and categorized by the type three quantification analysis. We found that the most effective management of the relief shelters was under leaders chosen by the last method; that is, those who held positions of leadership in their regular jobs.
著者
清水 裕毅 松田 絵奈 日浦 ゆかり 今福 信一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.35-38, 2020-02-01 (Released:2020-05-12)
参考文献数
17

Toe web infection はグラム陰性菌の,とくに緑膿菌感染によって趾間のびらんや潰瘍を生じるのが特徴で,再発を繰り返す疾患である。日常診療でしばしば遭遇する疾患であるが本邦での報告数は少ない。 症例 1 は 66 歳,男性。受診の 2 週間前から右足の趾間に亀裂とびらんが出現し,近医で抗菌薬と抗真菌薬の外用を開始したが改善に乏しく,疼痛が増悪したため当科を受診した。右足の全趾間に悪臭と緑色の膿を伴うびらんがあり,辺縁に浸軟した角質を認めた。症例 2 は 42 歳,男性。受診の 2 週間前から左足の趾間にびらんと発赤が出現し近医で抗菌薬の外用と内服をするも改善なく当科に紹介された。左足の趾間に悪臭を伴うびらんがあり,びらんの辺縁に浸軟した角質があった。どちらの症例も細菌培養検査で Pseudomonas aeruginosa が検出された。抗菌薬の全身投与とスルファジアジン銀クリームの外用,デブリードマンを行い改善した。治療後に再度真菌検査を行ったが陰性であった。自験例は早期の真菌検査,細菌培養検査を行い抗菌薬治療とデブリードマンが効果的であったと考えた。
著者
清水 裕次 田森 佳秀
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, no.30, pp.43-48, 2002-03-20

ヒトは探索物を発見した瞬間に「Aha!」と思う。この瞬間は、いわばひらめきの瞬間のことであるから、いつ起こるのか予測できない。同様な事は他のモダリティでも見られることから、「Aha!」の瞬間は、モダリティーに共通の認知現象であると考えられる。我々は「Aha!」の瞬間に起こる神経活動の変遷を調べるために多チャンネルMEG計測を行った。電流双極子の位置推定の結果、「Aha!」の瞬間に関連する局在した神経活動は、上前頭回と帯状回前頭下部に出現することが分かった。
著者
村澤 昌崇 椿 美智子 松繁 寿和 清水 裕士 筒井 淳也 林 岳彦 宮田 弘一 中尾 走 樊 怡舟
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は,因果推論の勃興を契機とし,社会科学の半ば慣習的な統計分析が再考を迫られると認識した.そこで,従来は因果分析とされたが,厳密には因果推論ではない分析を仮に“説明”とし,その再定義,モデル評価,係数の解釈に関する新たな理論を構築する.この取組について、社会科学の方法論について深遠な議論を展開している専門家、心理学、経済学、統計科学、データサイエンスを代表する専門家と共同し議論を深めていく。併せて、新たな実験的調査を実施し、得られた情報に関して、新たな"解釈"の可能性を検討する。
著者
清水 裕士 小杉 考司
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.132-148, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
35

本論文の目的は,「人々が対人行動の適切性をいかにして判断しているのか」について,一つの仮説を提案することである。本論文では,人々が対人行動の適切性をある原則に基づいた演繹によって判断しているものと捉え,演算の依拠する原理として,パレート原理を採用する。次に,Kelley & Thibaut(1978)の相互依存性理論に基づいて,パレート解を満たす葛藤解決方略を導出した。さらに,これらの理論的帰結が社会現象においてどのように位置づけられるのかを,Luhmann(1984)のコミュニケーション・メディア論に照合しながら考察した。ここから,葛藤解決方略は,利他的方略・互恵方略・役割方略・受容方略という四つに分類されること,また,方略の選択は他者との関係性に依存することが示された。そして,このような「行動の適切性判断のための論理体系」をソシオロジックとして定式化し,社会的コンピテンス論や社会関係資本論などへの適用について議論した。
著者
杉浦 仁美 坂田 桐子 清水 裕士
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.101-111, 2015 (Released:2015-03-26)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究の目的は,地位格差のある集団間状況において,集団間葛藤が生起する過程を明らかにすることである。そのため,内集団バイアスに着目し,集団間の相対的地位と集団間の関係性,集団内での個人の地位が,内集団,外集団メンバーの評価に及ぼす影響について検討した。大学生120名に対して,集団間地位と集団内地位を操作した実験を行った。その結果,高地位集団では,高地位者よりも低地位者のほうが,外集団メンバーの能力を低く評価することが明らかとなった。逆に,低地位集団では,低地位者よりも高地位者のほうが,外集団の能力を低く評価していた。また,この交互作用は,集団間の関係を非協同的であると認識する者においてのみ見られた。これらの結果から,集団内地位と集団間地位の高さが異なり,個人間比較と集団間比較のジレンマが生じる状況では,補償的に外集団を卑下する戦略が用いられる可能性が示唆された。
著者
清水 裕文
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.77-82, 2004-06-30 (Released:2017-06-28)

本稿では、行動分析学研究に掲載された心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関するスペイツ氏の英語論文(Spates & Koch, 2003)を日本語で要約した。原文では、「エキスポージャー療法」と「眼球運動による外傷的記憶の脱感作と再体制化を行う技法(EMD/R療法)」に共通する治療メカニズムについて言及している。原文を読む前、あるいは後に本稿を読んでいただいたとき、少しでも本稿がお役にたてば幸いである。
著者
清水 裕子 森 理恵
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 (ISSN:13433954)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.29-39, 2006-12-25

本研究は,ファッションブランド,メゾン・マルタン・マルジェラについて,ブランド自身はどう考えているのか,雑誌などではどう取り扱われているのか,そして,実際の着用者はどのように見て,着ているのか,この三者の関係性を見ていくものである。調査の結果,メゾンとメディアと着用者の関係については次のことが明らかになった。メゾンは様々なことに挑戦していこうとしており,そこに意味付けをしているのはメディアである。しかし着用者はメディアが作るイメージよりも,服そのものの新しさに驚いたり,楽しんだりして着ているのである。
著者
清水 裕子 望月 宗一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.39-45, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
21

目的 一次救命処置(BLS)•自動体外式除細動器(AED)の技術習得と実施に関連した学校教職員の認識を明らかにすることを目的とした。方法 A 県内の中学校 2 校•高等学校 2 校の全 4 校の教職員計192人を対象に無記名自記式質問紙留め置き調査を行った。調査項目は,対象の属性のほか,BLS の講習受講状況や技術習得に関する認識,AED の設置状況,AED 技術習得状況等であった。結果 有効回答は160人(83.3%)であった。男性91人(56.9%),女性69人(43.1%)で,勤務先は中学校が52人(32.5%),高等学校が108人(67.5%)であった。BLS に関する講習を過去に受講したことのある者は144人(90.0%)で,AED の講習は105人(65.6%)が受講していた。BLS 技術を「習得できていない」と認識している者は39人(24.4%)で,BLS 実施に対し「不安や心配がある」者は140人(87.6%)であった。所属校に AED が設置されていると回答した156人(97.5%)のうち,AED の設置場所を把握していなかった者は 3 人(1.9%)であった。BLS と AED の講習については,「教員」が教員以外の者より有意に参加していた。学校主催の今年度の取り組みへの参加状況については,「教員」と「運動部顧問」が,それ以外の者より有意に参加していた。BLS の技術を習得できていると認識している者の割合は,「養護教諭•体育科教諭等の専門教員」,「教員」,「BLS 講習受講者」,「急変時遭遇者」が,各々それ以外の者よりも有意に多かった。「専門教員」はそれ以外の者よりも,BLS 実施に対し不安を抱える者が有意に少なかった。結論 BLS の技術習得に対する認識や BLS 実施に対する不安については,対象の属性で差がみられ,教員以外の職員や BLS 講習の未受講者はその認識が低かった。また,BLS 講習を受けたことのない者や勤務先の AED の設置場所を把握していない者も実在した。今後は,全教職員が正確な知識を持ち,緊急時に迅速かつ的確に対応できるよう,学校全体で組織的に取り組む必要性が示唆された。また,BLS や AED に関する知識や技術を習得しているという意識が高まることで,それを必要とする場面に遭遇した際の不安が軽減されるのではないかと考えられた。