著者
渡辺 茂
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.7-13, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
15

Ⅰ.なぜネズミで研究するのか 共感は現在最も注目を集めている現象の一つである1)2)。他人の不幸に共感したり、逆に、不公平であることを嫌悪したり、他人を嫉妬したりするのは人間の自然な感情であり、いわば、人間の人間らしい面だとも考えられる。なぜ、この現象を動物で研究する必要があるのだろうか。18世紀の大生物学者であるルイ・ビュッフォンは「もし動物がいなければ、人間の本性はさらに一層不可解なものとなるだろう」と述べている。つまり、人間のことは動物と比較することによって理解が深まる。共感や嫉妬は人間の自分の気持ちを他者と比較することによって生じる情動である。人間で見られるそのような情動がネズミでも見られれば、その進化的起源が明らかになるばかりでなく、人間ではできない実験的研究が可能になり、その神経基盤の解明が可能になってくる3)4)。 Ⅱ.共感を単純化して考える 共感については哲学者、社会心理学者などが様々な定義、分類、理論を展開してきた。これを動物実験で研究するには、なるべく単純化することが必要である。前提としては、まず自分と他人のすくなくとも二人(動物では2個体)がいることである。つまり、共感は個体が複数いることによって成り立つ個体間現象なのである。共感については、相手の気持ちがわかるという認知的側面を強調する立場と、相手の情動によって自分も快感を感じたり、逆に不快を感じたりする情動的側面を強調する立場があるが、まずは他者の情動表出によって起きる情動反応と考えよう。どのような情動が起きるかについても様々な意見があるが、単純化すれば、快か不快か、ということに還元できる。そう考えれば共感は図1のように表すことができる。 幸せな人を見て自分も幸せになるのを「正の共感」としておこう。ヒトではごく普通に見られる現象で人間の基本的な共感と思われるこの正の共感は、動物では案外見つけにくい。逆に、他者の不快が自分の不快になることを「負の共感」とする。この正の共感、負の共感に共通する特徴は他者の状態と自己の状態が一致していることである(状態一致性といわれる)。この「同じ気持ちになる」二つの共感が狭い意味での共感と言われるものである。 しかし、自分の情動は他者の情動と一致するものばかりではない。他者の幸福がむしろ不快に感じられる場合も考えられる。いわゆる嫉妬などはこれに含まれる。これは狭い意味の共感としてあげたもの以上に人間の行動を支配している情動のようにも思われる。まことに人間の暗い側面のように思え、ヒトの発達した社会性が生み出した負の遺産のように見えるが、のちに述べるように動物にもその原始的なものが認められる。ということは、この情動もヒトの文化が独自に生み出したものではなく、なにか生物学的な意味のある情動だと考えられる。ここでは、この情動を「不公平嫌悪」としておこう。 さらに複雑なものに他者の不幸を快とする場合もあり、日本語での「他人の不幸は蜜の味」ということに相当する。日本語あるいは英語の単語でこの情動を表すことばはないが、ドイツ語ではシャーデンフロイデ(Schadenfreude)という単語がある。 さて、このように考えてくると共感とはまことに矛盾した情動だということになる。同じ他者の不幸があるときには悲しみに(負の共感)になり、別の場合には快感(シャーデンフロイデ)になる。他者の幸福も喜び(正の共感)になったり、不公平嫌悪になったりする。 Ⅲ.正の共感 「貧苦は共にできても、富貴は共にできない」というくらいで、他者の幸福を自分の幸福とするのは他者の不幸を悲しむより難しいことかもしれない。しかし、友人や家族の幸福を祝福し、一緒に喜ぶというのはヒトでは普通に見られる。しかし、幸福の共感の動物研究は例が少ない。ひとつには動物の快感の測定が難しいという問題がある。 中枢作用を持つ薬物の中には快感を起こすものがあり、それらの薬物の中には社会的促進があるものが知られている5)。薬物による快感の測定方法としては条件性場所選好(Conditioned Place Preference: CPP)がよく用いられる。環境の異なる区画(たとえば白い部屋と黒い部屋)からなる装置に動物を入れて自由に行き来させ、予めそれぞれの区画での滞在時間を測定しておく。ついで薬物を投与してある区画(たとえば白い部屋)に閉じ込め、別の日には溶媒を投与して別の区画(たとえば黒い部屋)に閉じ込めるということを繰り返す。その後、動物を自由に動き回れるようにしてそれぞれの区画での滞在時間を再び測定する。投与薬物が何らかの快を引き起こしていれば、その投与と結びついた区画での滞在時間が増加するはずである。 マウスを使ったCPPでこの強化効果の社会的促進を検討する。1個体でなく2個体同時にメタアンフェタミン(ヒロポン)を投与する。つまり、仲間と一緒に覚せい剤を投与する。生理食塩水投与の日には2個体とも生理食塩水を投与される。この手続きを繰り返した結果、アンフェタミンの区画の滞在時間が1個体で実験した場合より増大することがわかった6)。つまり、他者と自己が同じ快の状態であると、薬物の強化効果は強くなるのである。 社会的促進の簡単な説明としては、薬物自体の効果と薬物を投与された個体の強化効果が加算された結果だというものがある。このことを解明するためにマウスを2群に分け、一方の群はヒロポン投与の経験をさせておく7)。他方の群は生理食塩水投与の経験をさせておく。ついで、ある種のCPPを行うが、被験体のマウスは薬物の投与を受けるのではなく、薬物を投与されたケージ・メイトと一緒に一方の区画に入れられ、翌日は生理食塩水を投与されたケージ・メイトと一緒に他方の区画に入れられる。つまり、薬物の強化効果を調べるのと同じ方法で薬物投与されたケージ・メイトの持つ強化効果を調べたのである。その結果、事前にヒロポンの経験をさせた群ではヒロポン投与個体の強化効果が認められるが、ヒロポンの経験がない群ではヒロポン投与個体の強化効果は認められなかった。このことはヒロポン強化効果の社会的促進は薬物投与の共通経験を介したものであることを示唆する。面白いことにモルヒネではこのような効果は観察されない。 Ⅳ.負の共感 同種の他個体の負の情動表出が嫌悪的なものであることはヒト以外の動物でも広く認められている。心拍などの自律反応でも他個体の情動反応で変化が生じることがわかっているが、行動指標でこの共感を明らかにした最初の研究はチャーチ8)のものである。彼はまずラットにレバー押しのオペラント条件づけを訓練した。反応が安定したところで、実験箱の隣で他のラットに電撃をかける。電撃をかけられたラットは痛覚反応を示す。するとレバーを押していたラットはレバー押しをやめてしまう。つまり反応が抑制されてしまう。この抑制は繰り返しによって消失する。わたしたちの実験室では同じような現象をハトのオペラント条件づけで確認した9)。 他者の嫌悪反応は自分の嫌悪的経験の信号であり、他者の嫌悪反応によって事前に逃避すれば、自分の嫌悪経験を避けられるかもしれない。これには個体発生的な経験(学習)で獲得されるものがある。先ほどのハトやラットの実験で、他個体に電撃がかかると、それに続いて自分にも電撃がかかるように条件づけをする。この場合、隣の個体の痛覚反応が条件刺激(CS)、自分の電撃が無条件刺激(UCS)になる。この後、ハトを再びオペラント箱に入れて隣で別のハトに電撃をかけると、オペラント反応は再び抑制される。これは、条件づけをしたのだから、当然のことである。別の個体には、このような条件づけをしないで、ただ電撃をうける経験だけをさせる。条件づけをしていないにもかかわらず、この同じ経験を持つ個体でも隣のハトの痛覚反応でオペラント反応が抑制されるようになる。すなわち、条件づけではなく共通経験が共感を促進したことになる。 他者の負の情動表出が嫌悪的であるということは道徳の起源であるとも考えられる。他者を傷つけることに負の情動が伴うことは、文化、時代による程度の差はあってもヒトに共通しており、そのことから、マーク・ハウザーはヒトが民族や時代を超えて共通の普遍文法を持つように、ヒトに共通する普遍道徳があるのではないかと考えた 10)。 (以降はPDFを参照ください)
著者
渡辺 茂
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.218, 2018 (Released:2021-01-21)

ヒトの自己評価は自己と他者の相対評価に基づく。ヘンリー・ミラーは「大金持ちといえどもニューヨークでは不幸だ」といった。もっと大金持ちがいるからである。一茶は「秋風や、乞食は我を見較べる」と唱った。一茶は乞食よりも見窄らしいからである。社会的相対評価の生物学的基盤を検討するため、マウスで実験を行った。 1)嫌な経験も皆と一緒なら耐えられる これは日常的には経験することであるが、動物実験で調べた例はない。いくつかの方法でストレスの社会的修飾を実験した。拘束ストレスをかけると、コルチコステロンが上昇するが、仲間も一緒に拘束されていると上昇レベルが低い。ストレスの嫌悪性記憶の増強効果も調べた。マウスに拘束ストレスをかけてから受動回避条件づけを行うと嫌悪記憶が増強するが、仲間も一緒にストレスを受けるとこの効果は減弱する。ストレスを与えると体温が上昇することが知られている(SIH:ストレス誘導性高体温)。一匹で拘束されると体温の上昇が見られるが、仲間が同時に拘束されると、体温上昇が見られない。この結果はコルチコステロンや記憶増進作用の結果と一致する。このように、ストレスの公平性はストレスを減弱する効果がある。 2)動物の不公平嫌悪:負の不公平 不公平には2種類のものがある。自分だけが不利な「負の不公平」と、逆に自分だけが有利な「正の不公平」である。まず、負の不公平嫌悪が動物にもあるかを調べた。SIHを指標としてエサの不公平な配分の効果を実験した。マウスを空腹にしておき、ケージメイトにはチーズが与えられるが、自分には与えられない条件で体温を測ると明らかに体温が上昇する。しかし、自分も仲間もチーズが与えられる条件(公平条件)ではこのようなことがない。餌の不公平な配分はマウスにとってストレスなのである。面白いことに被験体のマウスに実験直前に十分チーズを与えるとSIHは見られなくなる。つまり、仲間には餌が与えられ、自分には与えられない、という条件そのものではなく、他者は幸せな状態であり、自分は不幸せな状態であることが不公平嫌悪を誘導するするのである。 次に、嫌悪事態での不公平嫌悪を調べてた。先ほどと同じ拘束ストレスを用いた。自分は拘束されているが、仲間は自由に周りを走り回っているというテストである。記憶増強効果は単独でストレスを受けるときよりさらに強くなる。コルチコステロン・レベルも上昇する。SIHでも皆が自由なのに一匹だけ拘束された場合にはさらに体温の上昇が顕著だった。すなわち、不公平はストレスを増強させる。言い換えればマウスでも不公平は嫌悪性があると言える。 3)動物の不公平嫌悪:正の不公平 ヒトは自分だけ有利であることを一定に嫌う。ただし、多くの社会心理学の実験はこの正の不公平嫌悪が負の不公平嫌悪よりずっと弱いことを示している。不公平を嫌うのは自分が不公平に不利な状態に置かれた場合に強い。先の餌の配分の実験で、被験体にはチーズが与えられ、仲間には与えられないようにする。SIHは多少認められるが統計的に有意な差ではない。拘束ストレスでも自分は自由で仲間が拘束されている状態ではSIHは認められない。つまり、マウスでは正の不公平嫌悪はほとんど認められなかった。 このように、ヒトの高次社会認知と思われる不公平嫌悪は動物においても、その基本的な現象はほぼ認められるのである。 略歴 学歴:1966年4月 慶應義塾大学文学部入学。1970年3月 慶應義塾大学文学部卒業。1970年4月 慶應義塾大学大学院社会学研究科心理学専攻修士課程入学。1975年3月 慶應義塾大学大学院社会学研究科心理学専攻博士課程修了。1979年3月 文学博士。 職歴:1973年4月~1981年3月 慶應義塾大学文学部助手。1981年4月~1989年3月 慶應義塾大学文学部助教授。1989年4月~ 慶應義塾大学文学部教授。2012年4月~ 慶應義塾大学文学部名誉教授、現在に至る。 受賞:1995年 イグ・ノーベル賞(Pigeons' discrimination of paintings by Monet and Picasso) 2017年 日本心理学会 国際・特別賞
著者
渡辺 茂夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.640-644, 1991-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

社会生注を営む人間に常に付き纏う精神的ストレスを解消する手段として, 飲酒は重要な位置を占めているが, 音楽も亦, 然りである。音楽の中の「1~fのゆらぎ」が精神的安定に効果が高いと言われている。飲酒あるいは音楽が人間の感性に与える影響を分析しながら, 音楽と飲酒の関わりについて解説していただいた。
著者
梶返 昭二 山本 益司 渡辺 茂樹 廣利 芳樹 西田 晶子 藤崎 静男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1757-1764, 1989-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

種々の9-置換9-(2-プロモメチルフェニル)フルオレン誘導体〔1〕(9-置換基としてOH,CH20HCOOH,COCH8,COOcH8など)を合成し,ついでこれらに塩基を作用させたところ,好収率でO-フェニレン基を環内に含むスピロフルオレン誘導体が得られた。また,いくつかの9-[2-(ヒドロキシアをぜルキル)フェニル]-9-フルオレノール誘導体〔2〕(ヒドロキシアルキル基としてCH20H,CH,C(CH8)20H,CH2C(CHs)(C2H,)OH,CH2C(C2H,)20Hなど)を合成し,これらを酢酸中,酸触媒存在下加熱して分子内脱水し,同じくスピロフルオレン誘導体を得た。また,こめ際のスピロフルオレン誘導体の生成機構を考察した。
著者
渡辺 茂 伊澤 栄一 藤田 和生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

本研究では3つの項目を検討した。1つは、共感性の動物モデルの確立であった。共感性を2個体間の情動とその一致性によって4分類し,マウスを対象にそれらの可否を検討した。2つめは、共感性の機能と生態因の検討であった。鳥類および霊長類の比較検討によって、協同繁殖と一夫一妻が、共感性進化の生態因であることを示唆した。3つめは、共感性の認知基盤の検討であった。高次共感を霊長類および食肉類で比較検討し、サルおよびイヌの第三者に対する情動評価能力を見出した。これら3項目の研究によって、共感性がヒト以外の動物においても協力性と随伴進化し、高次認知はそれとは独立に進化する可能性を示唆した。
著者
渡辺 茂
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.279-294, 2013 (Released:2018-08-18)
著者
寺山 和利 渡部 多真紀 渡辺 茂和 三浦 邦久 土屋 雅勇
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.32-38, 2020-02-25 (Released:2020-03-04)
参考文献数
29

【目的】痛みの評価はVASなど主観的方法が汎用されている.客観的評価ツールであるPainVision(PV)が痛みの測定に有用であるか,外用NSAIDsの薬効をPVとVASで評価した.【方法】被検者は成人ボランティア33名とした.試験薬剤はインドメタシン・ケトプロフェン・ジクロフェナク・フェルビナクを主成分とする外用NSAIDs 19剤を用いた.鎮痛効果はPVとVASを用いて検討した.【結果】PVとVASはr=0.681(p<0.01)と相関を示した.クリーム剤のミカメタン,テイコク,ユートクはインテバンに比べ有意差をもって強い鎮痛効果を示した(p<0.05).ゲル剤のエパテック,ナボールはイドメシンに比べ有意差をもって強い鎮痛効果を示した(p<0.05).【結論】PVが痛みの評価に有用なツールである可能性を示した.外用NSAIDsは主成分や剤型により鎮痛効果が異なるため,医師や薬剤師が薬剤を選択する際には,鎮痛強度の違いを考慮すべきである.
著者
渡辺 茂
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, 1961-05-25
著者
渡辺 茂 村山 美穂
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究では,1)ヒトで好奇心との関連が報告されているドーパミンD4受容体遺伝子多型領域の鳥類での解析,2)D4拮抗薬投与による好奇心の低下の検討、により行動特性の遺伝的側面からの解明を目指した。鳥類ではエキソン1領域にアミノ酸のプロリンをコードするCCNの反復配列が存在し、種間、種内で反復数に差があることを見いだした。個体の行動データがあるカササギ、カケス、ハトで遺伝子型を調べた。プロリン反復領域をPCR増幅して、ABI3100シーケンサー(アプライドバイオシステムズ)を用いて、BigDye V3.1キット(アプライドバイオシステムズ)によるdye terminator法で塩基配列を解析した。その結果、カラス、カササギ、カケス、オウム、ハトはそれぞれ3,3,3,3回反復遺伝子を持っており、種内多型は見いだされなかった。好奇心の強い種としてセキセイインコを用い、新奇刺激に対する接近行動を好奇心の指標として薬理実験を行った。D4拮抗薬としてはL-745,870を用い、0.1mg/Kgから0.2mg/Kgを筋肉内投与した。その結果、拮抗薬投与により、有意な接近行動低下が見られた。なお、一般活動性には薬物投与の効果は見られなかった。このことから、D4が鳥類においても好奇心に関係することがわかった。しかし、多くの種で種内の遺伝子多型が見られなかったため遺伝子多型と好奇心との関連は十分に解明されなかった。
著者
松木 祥彦 塚本 哲也 細山田 真 渡部 多真紀 渡辺 茂和 土屋 雅勇
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.51-56, 2013 (Released:2013-09-05)
参考文献数
17

Objective: In previously reported comparisons of aminoglycoside antimicrobials administered once daily versus multiple administration, toxicity was found to be equal or lower while efficiency remained high.  However, there are few reports on the clinical condition of targeted elderly persons.  The objective of this study was to evaluate the once-daily dosing regimen of 400 mg of AMK involving elderly pneumonia patients aged 75 years or older with regard to clinical evaluation including the efficacy and toxicity.Methods: A survey to clinically evaluate the efficacy and toxicity of 400 mg AMK administered once daily for 30 min at 24 h intervals was carried out.  One hundred twenty-seven patients with pneumonia and who were 75 years or older at Funabashi General Hospital were targeted, with the aim of an expected clinical effect of Cmax/MIC≥ 8-10.  Serum concentration monitoring was carried out after administration began.Results: There were 121 patients (95.3%) of controlled AMK concentration with a trough serum concentration of <10 μg/mL, which is a safe concentration range.  There were 6 patients (4.7%) where trough serum concentration in the toxic range >10 μg/mL, with an average at 15.1±5.0 μg/mL, and the average administration days were 7.5 ± 3.3 days.  Moreover, before/after AMK administration, there were 3 patients (2.4%) where CRE values increased more than a 150% over the previous values, and were evaluated as renal dysfunction.  Average trough serum concentration at that time was 3.6 ± 1.1 μg/mL, and average number of days of administration were 13 ± 1.4 days.  Patients of trough serum concentration in the toxic range >10 μg/mL were not included.  The average peak serum concentration calculated by Winter’s pharmacokinetic parameter and the 1-compartment model was 35.3 ± 8.0 μg/mL, and the average Cmax/MIC which correlates with the AMK effect was 9.9 ± 2.2.  The treatment was effective for 83 (65.4%) of the 127 patients.Conclusion: By once-daily administration of AMK 400 mg to aged persons 75 years or older, change in trough serum concentration into a safe range and Cmax/MIC≥ 8-10, the level at which clinical effectivity can be expected, could be achieved.  This administration method is shown to be useful in maintaining AMK in the target serum concentration range for aged persons.
著者
伊東 裕司 高山 博 日比谷 潤子 渡辺 茂
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
no.98, pp.p123-139, 1995-01
被引用文献数
1

実験1 方法 材料 手続き 被験者 結果および考察実験2 方法 材料 手続 被験者 結果および考察実験3 方法 材料 手続 被験者 結果および考察総合考察In this study, we examined intersubject agreement of the judgment whether a face and a voice were of the same person or not. In Experiment 1, we presented subjects photographs of six male models and their voices, and asked to make six pairs of a face and a voice that they thought as the same person's. In Experiment 2, subjects judged whether each of the 36 pairs of a face and a voice was obtained from the same person or not on sevenpoint scales. These two experiments revealed that the subjects judgments agreed considerably although some idiosyncrasy was suggested. In Experiment 3, subjects judged 12, traits such as masculinity and soberness, of each of the six faces and the six voices. Results of Experiments 2 and 3 showed that differences in the trait judgment correlate with judgment of face-voice matching. Common mechanisms underlying both judgment, are suggested.
著者
渡辺 茂
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161, 2011 (Released:2017-04-12)

美に生物学的起源を求める考え方は進化美学あるいはダーウィン美学といわれ、生息圏の選択が美的感覚の起源であるという環境説や、性選択起源説が考えられてきた。しかし、これらの理論は思弁的なものが多かった。この講演ではヒト以外の動物における美を1)弁別刺激としての美(美を見分ける)、2)強化としての美(美の快楽)、3)運動技能としての美(美の創造)、の3 つの観点から実験的に分析する。1)については弁別訓練によってある程度美のカテゴリーが弁別可能であることが示されたが、もちろん、ここで言う美は洗練された芸術的な意味でのそれではなく、ごく低いレベルの美しさである。2)については種差、個体差があるが、個体差はヒトの場合にも認められるものである。3)は訓練によって絵画を描くといったことは可能であるが、作られたものが他個体にとって、あるいは自分自身にとって強化的であるかは不明である。