著者
門田 園子
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-46, 2008-03-31
参考文献数
15

二十世紀前半に活躍した国際的美術商である山中商会については、近代美術市場史を語る際にしばしば言及されてきたが、商会によって実際にどのような物品が、どの程度の数海外に渡り、現在どのような形で残されているのかについては依然として不明な点が多い。本稿は山中商会ロンドン支店の足跡を辿る事例研究であり、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム・アーカイブが保管している登録ファイルをもとに、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムの東洋美術コレクションのうち、山中商会が関わった作品について明らかにする。登録ファイルは1910年から1932年の間に山中商会ロンドン支店とヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムで交わされた文書からなり、購入にいたった作品には所蔵番号が付与されているため、所蔵状況を確認することができる。本研究はアーカイブ資料を用いた美術研究の有用性を示すとともに、ミュージアムという公的な場でいかに東洋美術のコレクションが形作られてきたかを、その担い手であったディーラーと専門学芸員の交渉過程から検証する。
著者
山田 園子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

『統治二論』における君主制論を読み解く際に不可欠なロックの教会論を解明し、それについての論文を公刊した『統治二論』の研究状況について日本政治学会で、ロック研究の視点を確保するべく、トマス・ホッブズの歴史認識等との対比を、日本ピューリタニズム学会で報告したロック『統治二論』にかかわる戦前日本での研究史の追跡と確認を行なった
著者
重田 園江
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_12-3_17, 2022-03-01 (Released:2022-07-25)

新型コロナウイルスのパンデミックは、人間の捉え方に二面があることを明らかにした。一つは生物種としてのヒトで、もう一つは社会的・政治的・関係的な世界に生きる人間である。この二つの軋轢としてコロナ禍で生じた社会的争点を理解することができる。 この新しい感染症は、一方で歴史的な既視感をもたらす。疫病の鎮静化と経済活動との両立の困難、個人の自由と行動制限との対立、反ワクチン派の動向など、これまでの伝染病でも同じようなことが起きた。 他方で新たな特徴もある。一つはワクチン開発における巨大製薬企業の役割であり、これは21世紀のグローバル資本主義のあり方を見事になぞっている。また、今回のパンデミックはグローバル資本主義そのものの問題の露呈で、また別の感染症が蔓延する可能性が高い。人間が地球環境と自然の一部であること、そして強者だけが肥え太る現状を理解するなら、経済活動をいまのままつづけることには首肯しがたい。