著者
田中 敏博
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 = Japanese journal of pediatric pulmonology (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.141-146, 2002-12-01
参考文献数
6
被引用文献数
1

2001/02シーズンに当科では, インフルエンザ・ウイルス感染症に罹患した小児に対して, ザナミビルを生理食塩水に溶解してネブライザー吸入の方式で治療に用いた。原則として, 一律1回5mgを, 入院では1日2回最大5日間, 外来では1日1回2日間, 投与した。有害事象の発生もなく, 安全に施行でき, 全身状態の改善という意味で速やかに効果を発揮した印象であった。しかし, 入院群, 外来群, 対照群の3群間における解析では, 解熱と再発熱を指標とした場合, 統計学的にこの治療法の有効性を示すことはできなかった。各群の背景因子が均一でなかったことや, 投与量の不足などが原因ではないかと思われた。一般にザナミビルは, 効果発現が速やかで, 安全性も高いとされており, インフルエンザの重症化が最も懸念される乳幼児こそよい対象である。この場合でも, ネブライザー吸入であれば, 簡便かつ確実に投与が可能である。今後, 投与方法の改良と平行して, 正確な評価法を用いてその効果を検討していく必要がある。
著者
大川 清孝 上田 渉 佐野 弘治 有本 雄貴 久保 勇記 井上 健 田中 敏宏 松井 佐織 小谷 晃平 青木 哲哉
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1103-1108, 2011 (Released:2011-06-14)
参考文献数
10

5日間の便秘後と下剤服用後に発症した一過性型虚血性直腸炎の2例を経験した.腹部大動脈手術,骨盤内手術,膠原病・血管炎,動静脈廔などはなく腸管側因子が主因で発症したと考えられた.いずれも肛門直上にも病変がみられた.著明なCRP上昇がみられたが保存的治療にて速やかに改善した.虚血性直腸炎は血管側因子が主因でおこると考えられていたが,腸管側因子が主因で発症することもあることを示した点で貴重な症例と考えられた.
著者
西田 健次 田中 敏雄 新田 徹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.76, pp.161-166, 1997-08-20
参考文献数
4

人間の記憶は、次々と新しい事例を記憶し、それを失うことなく類似の事例をまとめて概念化していくことができる。そして、頻繁に利用される記憶は想起しやすくなるなどの優れた機能を持っている。また、人間の記憶には、嬉しかった事悲しかった事など、何らかの感情を伴った事例は記憶されやすいという特徴がある。本稿では、感情の記憶における働きに着目し、感情を記憶に対する制御信号と捉えた感情記憶システムを提案する。感情記憶システムでは、感情の活性化により記憶事例の獲得や記憶の概念化が実現でき、学習により頻繁にアクセスされる記憶は想起しやすくなるなど、人間の記憶機能をうまく再現できる。In this paper we propose a memory system which employs emotion as a control signal for memory. This Emotional Memory system can learn concepts without losing memory instances, and frequently accessed memories become easily associated.
著者
村上 悟 濱谷 義弘 長渕 裕 神谷 茂保 田中 敏
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

積分方程式の解に対する定性的性質を中心に研究を行った.実際、線形方程式に付随する解作用素の生成素に対してスペクトル解析を行い、本質的スペクトルの半径に関する評価を得た.さらに、非同次方程式に対して相空間における解の表現公式を確立した.これらの結果を融合して応用することにより、有界解や周期解などの存在に関するマッセラ型の定理を確立し、さらに、非線形方程式に対し線形化原理を導いて解の安定性解析への有効な手法を確立した.
著者
兼保 直樹 吉門 洋 水野 建樹 田中 敏之 坂本 和彦 王 青躍 早福 正孝
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.80-91, 1994

関東地方で初冬季に出現する広域・高濃度NO<SUB>2</SUB>現象の要因として, 数値実験的にはその寄与が指摘されていたNO<SUB>x</SUB>-炭化水素系光化学反応を, 野外観測によって捉えることを試みた。 NO<SUB>2</SUB>の高濃度 (>90ppb) が観測された1991年11月26, 27日および12月6, 7日に東京都都心部の高層ビル屋上および地上, 東京湾岸の東京都環境科学研究所, 関東平野内陸部の4地点および筑波山頂上において光化学反応に関与する物質の測定を行い, 各物質濃度の経時変化を検討した。<BR>東京都都心部でのperoxyacetylnitrate (PAN) 濃度は最高3.9~11.7ppbと高濃度を示し, 経時変化は [PO (=NO<SUB>2</SUB>+O<SUB>3</SUB>)-NO<SUB>2</SUB><SUP>Prime</SUP> (直接排出起源のNO<SUB>2</SUB>)] の経時変化と類似した挙動を示した。 高層ビル屋上で測定されたNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度は12月7日以外の3日間は日中に顕著な増加を示し, 特に12月6日に最高59μgm<SUP>-3</SUP>と非常な高濃度に達した。 アセトアルデヒド/CO比は12月6, 7日の日中に顕著な増加を示した。 これらの指標物質の挙動から, 高濃度NO<SUB>2</SUB>の出現時に光化学反応が生じていたことが明らかとなった。 また, 船舶による東京湾内での観測結果より, 東京湾上空ではPOはO<SUB>3</SUB>の形で存在する割合が大きいことが示唆された。 さらに, 関東平野内陸部での観測結果より, 冬季光化学大気汚染はNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>の生成を通して高濃度SPM現象の一因となる場合があることが明らかとなった。
著者
田中 敏嗣 若林 芳樹
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.154-167, 1985-10
被引用文献数
2

This paper examines the properties of cognitive space through employing median instead of mean as a measure of central tendency for the data of cognitive distance and direction. The data used in this study were collected through the questionnaires concerning the cognitive distances and directions, estimated by 212 students of Hiroshirma University, from the front gate of the university to the nine places selected within the city. In that survey, cognitive distances and directions were obtained through the 'statement in words method' and the 'sketch map method', respectively. The results obtained are as follows: 1. The proposition that intra-urban cognitive distance is generally overestimated is not supported when median is employed, while it is supported in case of mean. 2. In Hiroshima city where the built-up area is divided by six river channels, the overestimation of cognitive distance increase with the number of bridges in the route. 3. The cognitive directions deviate 10 or 20 degrees counterclockwise from the true directions, due to the clockwise deviations of river channels running across the city from the north-south line. 4. There are significant relationships between the cognitive distance and subject-centered factors, such as sex, the attitude toward space, duration of residence, although no significant relationships are detected between the cognitive direction and such factors. 5. In the spatial configuration of sampled places constructed from the cognitive distances and directions, the relative locations of places coincide with the objective ones, though variation is appeared between the groupes of respondents classified by similarity of cognition. It is thus clarified that mean is not suitable measure of central tendency for the skewed data concerning cognitive distance and direction. And that, deviations of cognitive directions from the true ones suggest that simplification of spatial information affects the process of spatial cognition.
著者
杉原 俊一 田中 敏明 宮坂 智哉 前田 佑輔 泉 隆 伊福 部達
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【はじめに】半側空間無視(USN)の空間認知には複数の座標系の関与が考えられ,我々はHMD(Head Mounted Display)による視覚呈示方法を用い,身体を中心に対象物の方向を位置づける身体中心座標と身体以外の対象物,または参照枠を中心に位置づける物体中心座標を人工的に作り,机上検査と動作分析より空間認知の障害として捉えたUSN障害像について検討を進めている.先行研究ではHMDを用いて座標系の違いにおける無視状況の変動を報告した.本研究は異なる座標条件でのより詳細な検討を試みるため,HMDの評価に加え,眼球運動および頭部・体幹運動の同期計測を含めた新しい検査システムを開発した.そこで本システムを用いた症例検討として左USNに対する評価・治療へのHMD応用について報告する.<BR>【症例紹介】被験者は研究内容を理解し同意を得られ,右脳梗塞後遺症により左USNを有する62歳男性である.石合らによる日常生活動作・訓練場面におけるUSN評価では10項目中7全項目で無視症状を認めた.<BR>【方法】机上検査には行動性無視検査(BIT日本語版)の線分抹消試験を用いた.被験者は椅座位を基本測定肢位とし,1)通常の机上検査,2)上方に固定した小型CCDカメラで机上の検査用紙のみを撮影しHMDの眼鏡状液晶ディスプレーに投影する物体中心条件,3)小型CCDカメラ内蔵のHMDで机上の検査用紙を投影する身体中心条件,の3条件で検査を実施した.更に2)・3)に関して,(A)HMDに投影する映像を画面の両端を基準に左右方向に75%および60 %に縮小した条件,(B)映像の左側に点滅する矢印を表示する条件の画像修正で検査を実施した.分析方法は線分抹消試験の中央列4本を除き紙面を左と右に2分割し,抹消した線分の抹消率を求め,各条件について比較検討した.また,検査前には超小型CMOSカメラを搭載した重量85gのヘッドユニットで両眼球運動を撮影し,検査中はデジタルビデオカメラを用い体幹・頭部の運動を同時記録した.<BR>【結果】通常検査と物体中心の抹消率は共に左紙面は0%,右紙面は各々100%で,身体中心は左紙面抹消率89%,右紙面抹消率94%であった.物体中心(A)の右縮小60 %は同様の傾向を示し,更に(B)により左紙面の末梢率が上昇した.身体中心でも(A)に(B)を加えると左紙面の末梢率が上昇した.通常検査時の眼球運動では左側への眼球運動を認めず,物体中心条件の(A)では頭部は縮小方向への回旋位で保持し,身体中心では縮小方向に係わらず左回旋位での保持を認めた.<BR>【考察】HMD使用に加え眼球・頭部・体幹運動分析により,通常検査に比べよりUSN障害度を統合的に評価できるシステムを構築した.また,画面縮小,注意喚起用矢印などを加工してHMDによる視覚情報呈示を行うことにより無視環境を改善させ得る可能性が示唆された.<BR><BR><BR>
著者
田中 敏郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.408-413, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ヒト化抗interleukin-6(IL-6)受容体抗体トシリズマブ(商品名:アクテムラ)は,我が国初の抗体医薬として,2005年にキャッスルマン病の治療薬として認可され,2008年には関節リウマチ,全身型および多関節型の若年性特発性関節炎に対しても保険収載された.これらの疾患に対するトシリズマブの効果は劇的であり,新たな治療の時代を迎えたと言われる.IL-6は多彩な作用を有し,様々な疾患の発症や進展に関与するサイトカインである.そのためトシリズマブは,上記以外の疾患に対しても画期的な治療薬となる可能性があり,世界中で適応拡大に向けた臨床試験が進められている.また,新たなIL-6阻害剤も開発中にある.本稿では,その可能性について紹介したい.
著者
田中 敏博
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集 第42回日本臨床薬理学会学術総会 (ISSN:24365580)
巻号頁・発行日
pp.1-LBS-5, 2021 (Released:2022-04-14)

【はじめに】ガルカネズマブ(商品名:エムガルティ)は、片頭痛に関連すると考えられているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に特異的に結合し、CGRPの受容体への結合を阻害するよう設計された新規作用機序のモノクローナル抗体である。片頭痛の予防を適応として2018年9月、米国において承認を取得し、本邦でも2021年4月に発売となった。【症例】15歳男児、中学3年生【既往歴】特記事項なし【家族歴】母、片頭痛【現病歴】以前より天候の影響を受けるなどして頭痛を訴えることがあり、登校できないこともあった。当科を受診し、頭痛対策としてアセトアミノフェンやロキソプロフェン、片頭痛としてバルプロ酸、起立性調節障害としてミドドリン等を順次服用したが、効果を認めなかった。中学3年生になり、春先は登校できていたが梅雨時期に入って状態が悪化。頭痛が続き、登校も運動もできなくなって、精神的な落ち込みが顕著となった。本人および保護者と相談し、ガルカネズマブを投与することとし、7月末に初回の2本を投与した。【経過】投与後数日して頭痛の軽減を自覚した。日々の調子がよくなり、自発的に身体を動かす意欲が出てきて、食欲も増進した。8月末、9月末と1本ずつ投与し、2学期からは登校ができてサッカーの練習にも参加、体育祭にも出場した。【結語】年長児の従来の治療薬に抵抗性の片頭痛に対して、ガルカネズマブの投与は選択肢となり得る。ただし、特に小児における長期的な有効性と安全性の評価に留意していかなくてはならない。
著者
今枝 秀二郞 孫 輔卿 内山 瑛美子 田中 友規 スタッヴォラヴット アンヤポーン 角川 由香 馬場 絢子 田中 敏明 飯島 勝矢 大月 敏雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.85, no.773, pp.1387-1395, 2020 (Released:2020-07-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

[Introduction] Falls and femoral fractures are one of the most serious problems for an elderly daily life, these causes the possibility to become bedridden or forced to move to an elderly facility from their home. However, ways of falling and continuing to dwell in own houses by changing the architectural environment for the elderly people were unknown. The whole study revealed the measures of fall prevention by architectural ways at home and the purpose of this part was to clarify the architectural factors which related to falls and femoral fractures in their houses from the viewpoint of fall prevention. [Methods] This study had two steps. First, interview in hospital was conducted when elderly patients went into the University of Tokyo Hospital after they experienced falls and femoral fractures. In this interviews, basic information of patients and situation of falls were collected also by using clinical information. Second, tracking investigation by home-visit interview or interview in hospital was conducted after they went back home and it included measurement of fall places. [Results] The average age of 43 patients was 80.9 (SD 8.3) years old, the number of female was 34 (the average age was 80.6, SD 7.8) and that of male was 9 (the average age was 81.8, SD 10.4). First interviews showed that falls which caused femoral fracture happened all over places but the number of falls at home was biggest, 17 cases in 43 cases. In the houses, the number of falls at bedroom was 6 cases, at the corridor was 4 cases and at the living room was 3 cases. All 6 falls at the night time occurred going to or going back from toilet at home. In six types of falls, the number of falling by internal forces was biggest and next was falling by external forces. Fall cases at home had four types of falls. By analysis of each fall case in the house, architectural factors which caused falls and the effective architectural measures against falls were revealed. In addition, falls at home related to toilet had high risk for falls in spite of fall types and these results indicated that it was important to consider the routes and behaviors when falls happened. The home-visit interview revealed that these routes and behaviors related to housing plan such as the locations of bed and types or directions of doors. The actual routes at falls were showed on housing plane figure, how people rotated in the architectural spaces before they fell was revealed. From these second investigation, the ways of renovation which will prevents next fall at home was clarified. [Conclusion] This research showed the ways of falls which caused femoral fractures for the elderly in their houses and the possibility for the ways of architectural fall preventions by multidisciplinary specialists including architecture, medicine, nursing and physical therapy. In the next step, how people renovated their houses after they went back home in long-term care insurance system and who were involved with these renovation will be researched.
著者
田中 敏嗣
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.593-596, 2018-07-05 (Released:2018-07-05)
参考文献数
15