著者
小栗 友紀 角田 鉄人 加来 裕人 堀川 美津代 稲井 誠 黒田 英莉 鈴木 真也 田中 正己 伊藤 卓也 高橋 滋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> アブラムシの中には鮮やかな体色をもつものも多く,その体色表現にポリケタイド系色素が深く関わっていることが分かってきた.そして当研究室では,これまでにイタドリに寄生するユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola,黄色)から黄色色素furanaphin<sup>1)</sup>を,セイタカアワダチソウに寄生するセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(Uroleucon nigrotuberculatum,赤色)から赤色色素uroleuconaphin A<sub>1</sub>, B<sub>1</sub>,<sup>2)</sup>黄色色素xanthouroleuconaphin<sup>3)</sup>を,ソラマメヒゲナガアブラムシ(Megoura crassicauda,緑色)から緑色色素viridaphin A<sub>1</sub> glucoside<sup>4,5)</sup>を単離し構造決定した.その他,megouraphin glucoside A, Bやuroleuconaphin A<sub>2a,b</sub>, B<sub>2a,b</sub>の構造決定も行った (Fig. 1).一方,これら色素はポリケタイドであることから,生物活性も期待された.実際,</p><p>Fig. 1</p><p>ヒト前骨髄性白血病細胞 (HL-60)に対する細胞毒性試験を行ったところ,furanaphinのIC<sub>50</sub>は25 mM,uroleuconaphin A<sub>1</sub>では30 mM,uroleuconaphin B<sub>1</sub>が10 mM,viridaphin A<sub>1</sub> glucosideが23 mMと,弱いながらも細胞毒性を示した.このように当研究室ではアブラムシのもつ色素成分に注目して研究してきたが,今回は無色透明のアブラムシCryptomyzus sp.について調べた.当然のこととして,色素は存在しないと考えられるが,それに代わる何らかの化合物の存在を期待した.</p><p>1. 構造決定</p><p>1-a. 抽出と単離</p><p> Cryptomyzus sp.はヤブサンザシ(Ribes fasciculatum)の葉裏にひっそりと目立たず寄生している無色で透明感のあるアブラムシである.体長わずか0.5-1 mmの極小な昆虫であることから,テントウムシなどの捕食昆虫にとっては極めて発見しにくいものと思われる.このアブラムシを刷毛で掃き集め,エーテル中で潰して成分を抽出した.このエーテル抽出物を順相及び逆相クロマトグラフィーを繰り返し,4種の無色結晶cryptolactone A<sub>1 </sub>(1), A<sub>2 </sub>(2)(A<sub>1 </sub>: A<sub>2</sub> = 6.2:1)およびcryptolactone B<sub>1 </sub>(3), B<sub>2 </sub>(4) (B<sub>1 </sub>: B<sub>2</sub> = 4.7:1)を得た (Fig. 2).当然ながら着色成分は一切得られなかった.</p><p>Fig. 2</p><p>1-b. Cryptolactone A<sub>1</sub> (1)およびA<sub>2 </sub>(2)の構造</p><p> Cryptolactone A<sub>1 </sub>(1)の分子式はCI-HRMSよりC<sub>18</sub>H<sub>30</sub>O<sub>4</sub>と決定した.またIRスペクトルから水酸基 (3407 cm<sup>-1</sup>),カルボニル基 (1712 cm<sup>-1</sup>)の吸収が観測された.<sup>13</sup>C-NMRより18個の炭素シグナルが観測され,DEPTより1個のメチル基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 14.1/0.88],11個のメチレン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 29.9/2.34 and 2.41, 41.5/1.75 and 1.82, 48.8/2.53 and 2.66, 43.6/2.43, 23.6/1.57, および 22.6, 29.1, 29.2, 29.3, 29.4, 31.8/1.26-1.32],4個のメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89, 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のカルボニル炭素 [d<sub>C</sub> 164.2 and 212.2] の存在を確認した.またこれらデータから2個のオキシメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のオレフィン炭素 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89]の存在も確認できた.最終的にHMBC実験の詳細な検討により,化合物1はb-ヒドロキシケトン構造を側鎖にも</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
田中 正次郎 菊地 隆志
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.197-202, 1967-04-01 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1 1

The utilization of CMC (carboxymethyl-cellulose) as a surface sizing agent has been studied. Through several experimental applications on a small size test paper machine, suitable conditions of CMC for the purpose of surface sizing were defined as follows : D.S. 0.50.8 Viscosity 50100 c.p. (3% soln., 25°C) Impurity Less than 25%The paper surface-sized by CMC showed such characteristics as high oil and air resistance and high wet tensile strength. These characteristics might enable us to use CMC for under coating besides general surface sizing. The practicality of CMC surface sizing was also approved qualitatively and economically by a test run on a commercial paper machine.
著者
島井 哲志 田中 正敏
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.243-252, 1993-04-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
33
被引用文献数
2

131種類10秒間の環境音を実験室内で聴かせて、その快-不快評価と音圧の関係を検討した。用いた音は、自然音13音、生物音15音、人間音23音、楽音18音、ひっかく音8音、日常生活音19音、機械音22音及び信号音13音であった。16人の男子学生にこれらの環境音を提示して、音の快-不快感、その音が何の音であるか、及びその回答の認知の確信の程度をたずねた。被験者は8人ずつの2群に分けられ、ほぼ日常経験する音圧レベルとその約10dBA低い音圧の提示を受けた。快-不快評価の結果では、快い音は音楽や鳥の鳴き声などであり、不快な音は歯科医のドリル、すりガラスを擦る音などであった。快-不快評価と音圧の関係をみると、不快な音では音圧が高くなるにつれて不快になるが、快い音でも音圧が高くなるにつれてやや快くなる傾向がみられた。また、快い音には認知の確信度の低い音はなく、確信度が高い音ほど、快いと評価された。これらの結果は、環境音の快-不快は、音圧が高くなるにつれて、より不快になるという単純な関係ではないことを示し、環境の快適さを図るためには、快-不快や音圧と共に音の認知要因を系統的に検討することが重要であることが示唆された。
著者
蜂須 貢 村居 真琴 田中 正明 瀬川 克己 武重 千冬
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.543-550, 1979-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

1.D-フェニルアラニンのペプチダーゼ阻害作用を生物学的に検定した.モルモット空腸の収縮はエンケファリンで抑制されるが, この抑制はペプチダーゼを含む脳の抽出液が存在する時は消失するが, D-フェニルアラニンを添加すると消失しないで, 脳の抽出液を熱処理して酵素活性を失わせた時と同じになる.2.ラットの脳室内に投与したエンケファリンによる鎮痛はD-フェニルアラニンの腹腔内投与によって著しく増強される.3.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛覚の閾値として, 針麻酔の刺激を加えると, 5%の危険率で有意の差のある鎮痛が現われるラットと現われないラットがあり, それぞれ針鎮痛有効群, 無効群とに区分できる.4.D-フェニルアラニンを投与すると, 針鎮痛無効動物の針鎮痛は著しく増強され, 有効群にD-フェニルアラニンを投与した時のわづかに増強された針鎮痛とほぼ等しくなり, 針鎮痛の有効性の個体差は消失する.5.針鎮痛有効群ラットは中脳中心灰白質刺激による鎮痛も有効で, 針鎮痛の有効性の個体差と中脳中心灰白質刺激による鎮痛の有効性の個体差はよく並行する.D-フェニルアラニンを投与すると, 針刺激ならびに中脳中心灰白質刺激無効群ラットの, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛は増強し, D-フェニルアラニン投与後わづかに増強された針刺激有効群ラットの中脳中心灰白質刺激による鎮痛とほぼ等しくなり, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛の有効性の個体差は消失する.6.モルヒネ鎮痛の有効性の個体差も針鎮痛の有効性の個体差と並行するが, D-フェニルアラニン投与後はモルヒネ鎮痛は増強され, 鎮痛の程度は両群ともほぼ等しくなり, モルヒネ鎮痛の有効性の個体差は消失する.7.針鎮痛, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛, モルヒネ鎮痛何れにも鎮痛性ペプタイドの内因性モルヒネ様物質が関与し, これら鎮痛の有効性の個体差はぺプチダーゼの活性の個体差に依存していると考察した.
著者
Иванов Ю. А. 後藤 隆雄 田中 正義
出版者
神戸常盤大学 :
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.5, pp.23-37, 2012

チェルノブイリの立ち入り禁止区域及び退避勧告区域(無条件再定住区域)で、90Sr と137Csの土壌から植物への長期に亘る移動が測定された。本論文では移動の主たる要因を解析した。放射性降下物質(フォールアウト:fall-out)の様々な痕跡に対する土壌中の移動形態、放射性核種の水系での形成過程、放射性核種の垂直方向移動のプロファイル、土壌から植物への放射性核種の移動等について計算した。更に、移動過程のメカニズムを定量的に計算した。

1 0 0 0 OA 人格と修養

著者
田中正 著
出版者
春江堂
巻号頁・発行日
1919
著者
藤本 智久 皮居 達彦 田中 正道 石本 麻衣子 大谷 悠帆 久呉 真章 大城 昌平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,新生児のケアにディベロップメンタルケア(DC)が導入されてきており,本邦でも日本DC研究会が中心となりNIDCAP(Newborn Individualized Developmental Care& Assessment Program)を普及するべく活動がなされ,現在,日本でも13名の国際NIDCAP連盟が認定するNIDCAP Professionalが誕生している。NIDCAPは,Alsが開発した赤ちゃんの行動を根拠とした新生児のケアを提供するプログラムであり,赤ちゃんと家族を中心としたケアを推進していくものである。現在,当院でも2名(PT,Ns)のNIDCAP Professionalがおり,NIDCAPを展開している。また,NIDCAPの効果についての報告は,海外では散見されるが,本邦ではNIDCAPの効果について検討した報告はない。今回,NIDCAPの効果を修正6か月前後の発達指数を用いて比較検討したので報告する。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,2013年以降に出生し当院NICU,GCU入院し,修正6ヶ月前後で新版K式発達検査2001が実施できた超低出生体重児17名(平均出生体重706.6±181.8g,男性6名,女性11名,在胎26.1±1.6週)である。そのうちNIDCAPの継続観察を実施した児(NIDCAP群)8名とNIDCAPの観察対象とならなかった児(Control群)9名に分けた。対象を外来で修正6ヶ月前後に発達検査を行い,姿勢運動(P-M)領域,認知適応(C-A)領域,言語社会(L-S)領域,全領域のそれぞれについて発達指数を算出し,NIDCAP群Control群で比較検討した。なお,統計学的検討は,Mann-WhitneyのU検定を用いて危険率5%以下を統計学的有意とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>NIDCAP群とControl群の修正6ヵ月時の平均発達指数(NIDCAP群/Control群)は,P-M領域では,100.3±14.8/102.9±9.4,C-A領域では,103.4±6.3/102.9±7.5,L-S領域では,110.5±7.2/101.2±7.5,全領域では,103.2±8.2/103.5±7.0であり,L-S領域でのみ有意にNIDCAP群が高値を示した(p<0.05)</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>今回のNIDCAP群とControl群の比較の結果,L-S領域にのみ有意差を認め,NIDCAP群が言語社会面の発達指数が高くなっていた。これは,NIDCAPによって赤ちゃんの行動観察を根拠としてケアを行うことで,相互作用が促され,また退院後も家庭で母親が継続することより,赤ちゃんとのアイコンタクトやコミュニケーションが増え,修正6ヵ月時点での言語社会面の発達につながっていた可能性も考えられる。また今回,運動面や認知面では有意差がみられなかった。これは,NIDCAPを開始するにあたってすでに浸透しているポジショニングや環境への配慮などベースとなるDCによる影響もあり,今回の違いとして出てこなかった可能性も考えられる。今後はNIDCAPの介入例を増やし日本での長期の予後等についても検討していく必要があると考える。</p>
著者
水原 修平 国光 求 別府 治 高橋 元幸 坂根 篤 田中 正紀
出版者
公益社団法人 日本マリンエンジニアリング学会
雑誌
日本舶用機関学会誌 (ISSN:03883051)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.868-877, 1998-12-01 (Released:2010-05-31)
参考文献数
3
被引用文献数
1

The world's first ADD30V medium speed diesel engines were produced and delivered for marine and stationary applications by Mitsui Engineering & Shipbuilding Co., Ltd. under the license of ADD Inc., Japan.This engine achieves extremely high power with B.M.E.P up to 2.7MPa and mean piston speed up to 12m/s, coupled with light weight and space saving compactness. In addition, high reliability as well as low fuel oil consumption is obtained.This paper describes the design features of principal components, such as the welded integral engine frame of steel modules, the crankshaft with cold-rolled fillets coupled with induction hardening, the piston of diffusion-bonded integral, the cylinder liner and the piston rings coated with wear-resistant ceramic, the singlevalve gas exchanging system, etc., which enable the ADD30V engine to achieve the above advantages under the extremely high power.Finally, the engine performance and the operating results are described on the basis of actual test results.
著者
大塚 香奈子 伊藤 久生 時澤 佳子 田中 正純 八谷 直樹 荒牧 真紀子 猪口 哲彰 大泉 耕太郎 Masahiro Yoshida
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.833-837, 1994-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は54歳, 女性で1968年特発性血小板減少紫斑病 (ITP) と診断され副腎皮質ホルモン投与されていたが, 1971年に慢性関節リウマチ (RA) を併発した. 1979年尿糖および高血糖が出現し, 糖尿病と診断され, その後ITPの増悪により副腎皮質ホルモン (プレドニン) を30mgに増量し, インスリン注射を開始した.この時点での尿中C-ペプチド (CPR) は36μ9/日であった. 1989年頃より血糖コントロールは徐々に悪化し1991年には尿中CPRが10μ9/日以下となり, グルカゴン試験も無反応を示した.また, 既往に流早産を数回経験し, 検査所見ではICA, RA因子, 抗血小板抗体, およびループアンチコアグラントが陽性を示した. 以上より時間的に推移しながらITP, RAおよび抗リン脂質抗体症候群にslowly progressive IDDMなどの自己免疫疾患を合併したもので, 免疫学的背景を考える上で興味ある症例と思われた.
著者
川橋 正昭 細井 健司 田村 健一 塩崎 孝壽 平原 裕行 山本 勝一 田中 正雄
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-26, 1990

We have proposed a new technique of illumination in a observation plane by sweeping of two laser beams scanned by the same face of a polygon mirror scanner. With this technique seeding particles in the plane are illuminated by each sweeping beam with short time difference controlled by incident cross angle of two beams to the scanner and angular velocity of the scanner. This can be named dual-beam-sweep laser speckle velocimetry.<BR>In this report, measurements of velocity distribution of flow in a T-type branch duct are performed by means of the velocimetry, and the results are compared with numerical results obtained by the finite volume method considering with k-e turbulence model.
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.50-56, 1984
被引用文献数
14

トウガラシは新世界に起原した栽培植物で,4つの栽培種を含んでいる。C.chinenseは,アマゾン低地で広く栽培されており,同所的に分布しているC,frutescensがその祖先野生型である。C.baccatumは,栽培型と野生型の2つのvarietyから成り,栽培型var.pendulumは,ペルー及びボリビアで主に栽培されており,祖先野生型Var.baccatumは,ボリビア低地から高地にかけて自生している。筆者らは,南米で収集したこれらの種の系統間の類縁関係を明らかにするため種内及び種間雑種を作出し,その染色体対合を観察した。その結果,C.baccatumの種内雑種はすべて12"の正常な染色体対合と高い花粉稔性を示した。又,C.frutescensの種内雑種,及びC.chinenseとC.frutescensとの種間雑種も12"の対合と高い花粉稔性を示した。このことは,この両種の形態的類似性と考え併せて,C.chinenseとC.frutescensは,異なる種ではなく,ひとつの種と考えるべきであることを示唆している。C.baccatumとC.frutescensとの種間雑種では,多価染色体が観察された。又,一価の出現頻度が低く,これらの二種は,共通ゲノムを有すると結論された。この雑種の稔性は,極めて低く,C.baccatumとC.chinense/C.frutescensとの間には,生殖隔離が発達している。 本研究結果と野生型の地理的分布を考えると,これらの種は,元々或る共通の祖先種から一元的に起原し,その後地理的に隔離され,生殖隔離を生じたものと結論される。
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.50-56, 1984-03-01 (Released:2008-05-16)
参考文献数
12
被引用文献数
8 14

トウガラシは新世界に起原した栽培植物で,4つの栽培種を含んでいる。C.chinenseは,アマゾン低地で広く栽培されており,同所的に分布しているC,frutescensがその祖先野生型である。C.baccatumは,栽培型と野生型の2つのvarietyから成り,栽培型var.pendulumは,ペルー及びボリビアで主に栽培されており,祖先野生型Var.baccatumは,ボリビア低地から高地にかけて自生している。筆者らは,南米で収集したこれらの種の系統間の類縁関係を明らかにするため種内及び種間雑種を作出し,その染色体対合を観察した。その結果,C.baccatumの種内雑種はすべて12"の正常な染色体対合と高い花粉稔性を示した。又,C.frutescensの種内雑種,及びC.chinenseとC.frutescensとの種間雑種も12"の対合と高い花粉稔性を示した。このことは,この両種の形態的類似性と考え併せて,C.chinenseとC.frutescensは,異なる種ではなく,ひとつの種と考えるべきであることを示唆している。C.baccatumとC.frutescensとの種間雑種では,多価染色体が観察された。又,一価の出現頻度が低く,これらの二種は,共通ゲノムを有すると結論された。この雑種の稔性は,極めて低く,C.baccatumとC.chinense/C.frutescensとの間には,生殖隔離が発達している。 本研究結果と野生型の地理的分布を考えると,これらの種は,元々或る共通の祖先種から一元的に起原し,その後地理的に隔離され,生殖隔離を生じたものと結論される。
著者
田中 正晴
出版者
高知人文社会科学会
雑誌
高知人文社会科学研究 = Research reports of the Kochi Society of Humanities and Social Sciences (ISSN:21882479)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-62, 2018

会議名:高知人文社会科学会第5回総会及びシンポジウム「高知の環境紛争 科学、法、デモクラシー」 開催地:高知大学朝倉キャンパス共通教育1号館127教室 日時:2017年3月4日
著者
櫻井 俊一 田中 正晴
出版者
日経BP
雑誌
日経ニューメディア = Nikkei new media (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1665, pp.6-8, 2019-07-15

IoT、ケーブルテレビ ジュピターテレコム(J:COM)は2019年6月5日に、ホームIoTサービス「J:COM HOME」の発表を行った。既にJ:COM 東京の東エリアやJ:COM大阪で開始し、その他エリアも8月以降順次提供開始を予定する。同サービスの開発に当たった櫻井俊一氏(執行…

1 0 0 0 OA 神をつくる

著者
田中 正隆
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.65, pp.1-18, 2004-12-22 (Released:2010-04-30)
参考文献数
34

南部ベナンには多様な神々を物質にして祀る信仰 (ヴォドゥン) が広がっている。ヴォドゥンとは神格化された祖霊であるが, 人々はそれを物質に置き換える。こうした神である物質を, 人々は日常品などの単なるものエヌenuと区別してヌワヌnuwanu (手を加えたもの) と説明する。こうしたもの一神は, 歴史を通じて人々が他地域から購入することで移動や混合がすすんできた。それは現在にいたるまで続いており, そうした神の流通には伝統医が深く関わっている。伝統医 (ボコノ) にとってこれは信仰活動でありつつ, 経済活動の一つでもある。本稿は伝統医の活動のうち, 薬, 呪物, 霊でもある「もの」の売買にかかわる面に着目し, 彼らの経済原理を明らかにする。近年の人類学におけるモダニティ論では, しばしば従来商品となることはなかった (個別化された) ものまでが売買される状況をさして, オカルトや過剰な自由主義経済化として解釈する。しかしアジャ社会における物質化された神は個人の要求に応えるという意味で個別的でありながら雑多な商品によって構成され, 貨幣と交換される。これらは個別性―商品性を対極におく, 物質文化論や交換論の枠組みでは理解できない。そこで本稿では伝統医の経済事情と作成儀礼, 彼らの語りを分析するなかで, 人々がむしろ作成過程と取引の持続性, 反復性を重視していることに注目した。このような取引にたずさわることはボコノにとって重要な信仰実践である。神々をめぐる取引はきわめて貨幣―商品経済的でありながら, 利潤の最大化が唯一の目的ではなく, 社会関係の構築を重視することを, 本稿は明らかにする。
著者
山本 真也 田中 正之
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第22回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.13, 2006 (Released:2007-02-14)

社会的な場面では、働き手と利益の受け手が必ずしも同一個体であるとは限らない。このような場面でヒトは互恵的に協力しあうことができるが、ヒト以外の動物種でこのような行動を実証的に調べた研究は少ない。本研究では、実験的に操作した社会的場面におけるチンパンジー2個体の利己行動・利他行動を調べた。群れで生活する飼育下のチンパンジー、母子3組とおとなのペア2組を対象とした。隣接する2つのブースに自動販売機を1台ずつ設置した。この自動販売機にコインを投入すると隣のブースにリンゴ片が出た。ブースに1組のチンパンジーを入れ、2つのブースにコインを1枚ずつ実験者が交互に供給した。間仕切りが開いていてブース間を行き来できる条件(母子のみ)と閉まっていて各ブースに1個体ずつ入っている条件でおこなった。間仕切りを開けた条件では、母子は利他的なコイン投入行動を交互に継続させず、最終的にコイン投入も報酬も子どもが独占した。その過程で、相手のいる側のブースでコインを投入し、素早く移動して報酬を獲得する行動や、相手にコインを渡して投入させ、自分が報酬を得るといった利己的な行動がみられた。間仕切りを閉じた条件でも、母子では利他的なコイン投入行動は交互に継続しなかった。子どもが先にコインを投入しなくなった。一方おとなのペアは、1個体統制場面に比べて投入までの潜時が伸びたり投入拒否がみられたりしたが、利他的なコイン投入行動を交互に継続させた。働き手と利益の受け手が異なる場面で、互恵的な協力関係が母子間では成立せず、おとな2個体間では成立した。自分が働いて相手が利益を得るという一時的に不公平な状況への寛容さが個体間関係や発達段階で異なることが示唆された。おとな2個体での結果は、チンパンジーもヒト同様、自分の行為が相手の利益になることを理解したうえで互恵的に協力しあう可能性を示している。
著者
田中 正幸 益永 孝幸 中川 泰忠
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.20090001, 2009-01-28 (Released:2009-01-28)
参考文献数
16

粒子法により非圧縮性流体を解析するMPS(Moving Particle Semi-implicit)法には空間的に粒子径を変更できないという問題があった.本研究では重み関数を粒子の大きさを考慮して計算し,さらに非圧縮条件を粒子径が異なる場合にも対応できるように変更することで,空間的に粒子径が異なっても安定に解析できるようにMPS法を改良した.また,粒子の分裂と結合を行うことによって動的に空間解像度を調整することを可能にした.その結果,ダム崩壊問題において計算時間を約1/9に削減することができた.