著者
谷 奈穂 竹内 茉莉子 池尻 亮子 丸茂 里江 庄司 三千子 國本 千裕 白川 優治
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.55-66, 2016-11-28 (Released:2017-09-15)

千葉大学附属図書館は,2012年,図書館付設型ラーニング・コモンズを含む建物を増築し,新しい学習環境を整備した。本稿は,この環境における学生の行動と,行動に関係する環境の要素を,フォーカス・グループ・インタビューによる調査で明らかにしたものである。調査で得られた発言をもとに,学生の行動を12通りに分類し,環境の要素を3種類導き出した。行動と環境との関連を分析したところ,学生の行動の幅を制限しない空間設計や設備を備えた環境が,行動を促すことが明らかになった。更に,学生の行動は,他の学生の様子や学生自身が環境に抱くイメージによって影響されることも見えてきた。
著者
白石 秀壽 三浦 政司
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2017年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.309-312, 2017 (Released:2017-11-30)

本研究では、マルチエージェントシミュレーションを用いて、ホテリングモデルを拡張することの意義を検討した上で、そのプロトタイプを提示する。ホテリングモデルは、2人の売り手の立地競争の帰結を描写したモデルであり,戦略的状況における最適化問題を解析的に解くことによって、メーカーの最小差別化や小売店の隣接を説明するのに引用されている。MASを用いてホテリングモデルを構築することによって、解析的なアプローチでは描写しえない複雑な状況をモデル化することが可能になる。とりわけ、消費者嗜好の時間変化と売り手のリポジショニングの関係や、消費者と小売業者の相互作用プロセスとしての買い物弱者問題などに広く応用可能であろう。
著者
吉永 泰周 長野 史子 金子 高士 鵜飼 孝 吉村 篤利 尾崎 幸生 吉永 美穂 白石 千秋 中村 弘隆 藏本 明子 髙森 雄三 野口 惠司 山下 恭徳 泉 聡史 原 宜興
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.154-161, 2014 (Released:2014-05-07)
参考文献数
23

目的 : 歯周病原細菌と考えられている細菌群はグラム陰性菌であり, 進行した歯周炎患者の歯周ポケット内ではグラム陰性菌が優勢である. しかしながら, 歯肉炎や初期の歯周炎ではプラーク中の細菌はグラム陽性菌が優勢であるため, 歯周ポケット形成の初発時にはグラム陽性菌が大きな影響を与えると考えられる. われわれの過去の実験では, グラム陽性菌であるStaphylococcus aureusとグラム陰性菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansの菌体破砕物で感作したラットの歯肉溝に各菌体破砕物を滴下すると, 両細菌ともに強い歯周組織破壊を誘導した. しかし歯周組織の破壊が著しく, どちらがより強い影響を与えるかについての判断はできなかった. そこで本研究では, グラム陰性菌とグラム陽性菌の歯周組織破壊への影響を比較するために, より低濃度の菌体破砕物を用いて実験を行った. 材料と方法 : S. aureusとA. actinomycetemcomitansの菌体破砕物にて感作したラットと非感作ラットの歯肉溝内に, 12.5μg/μlの菌体破砕物を頻回滴下し, 病理組織学的に観察した. 無滴下のラットを対照群とした. 結果 : A. actinomycetemcomitans感作群では対照群と比較して統計学的に有意なアタッチメントロスの増加と歯槽骨レベルの減少を認めたが, S. aureus感作群およびA. actinomycetemcomitans非感作群ではみられなかった. 両細菌の感作群では免疫複合体の存在を示すC1qBの発現が接合上皮に観察されたが, 非感作群では認められなかった. 結論 : グラム陰性菌であるA. actinomycetemcomitansの菌体破砕物のほうが, グラム陽性菌であるS. aureusのそれよりも歯周組織破壊への影響が強いことが示唆された. また, 歯周組織の破壊には免疫複合体の形成も重要であることも改めて示唆された.
著者
江尻 愛美 河合 恒 安永 正史 白部 麻樹 伊藤 久美子 植田 拓也 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.459-467, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
26

目的 住民主体の通いの場の増加に伴い,住民がよりよい活動を継続できるよう自治体や専門職が支援する「継続支援」の重要性が増している。しかし,有効な通いの場の継続支援方法に関する知見は十分に蓄積されておらず,通いの場参加者が活動時に感じている課題の内容についても明らかになっていない。そこで本研究では,参加者が抱える課題の内容を活動期間に基づいて分析し,活動の時期によって変化する課題を明らかにすることで継続支援の方法を考察することを目的とした。方法 2018年に,島嶼部を除く東京都内53区市町村の担当者を通じて住民主体の通いの場活動を行う自主グループへ調査員訪問による自記式質問紙調査への協力を依頼し,40区市町で活動する155グループ2,367人より回答を得た。通いの場における課題は,10種類の提示からあてはまるものを選択させた。活動期間は,自己申告を基に,1年未満,1年以上2年未満,2年以上4年未満,4年以上の4群に分類した。活動期間と課題認識の関連を検討するため,活動期間を独立変数(参照カテゴリ:1年未満),各課題の認識の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を,Crude,性・年齢で調整したModel1,Model1に加えてグループの活動内容で調整したModel2の3つのモデルで行った。結果 分析対象者は2,194人(男性14.5%,平均年齢76.9歳)だった。活動期間により有意差が認められた課題(オッズ比)は,2年以上4年未満群では,グループの高齢化(1.92),グループの運営メンバーの不足(1.61),参加者の健康・体調(1.47)であり,4年以上群では,グループの高齢化(3.24),グループの運営メンバーの不足(2.63),参加者の不足(2.12),参加者の健康・体調(1.95),活動内容のマンネリ化(1.62),場所の確保(1.48)だった。結論 通いの場の参加者が感じている課題は活動期間により異なっており,継続支援においては活動期間を考慮した支援を実施する必要性があることが示唆された。2年以上の段階では,高齢者特有の健康問題への対処についての情報提供,運営メンバー確保のためのマッチングが必要である。また,4年以上では口コミによる新規参加者獲得促進のため,参加効果を実感させる働きかけが必要である。
著者
宮澤 大志 白井 英彬 五味 恭佑 江戸 優裕
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】ウィンドラス機構は足部の剛性と柔軟性を制御する上で重要であるが,臨床での定量評価は難しく,簡便な方法が示されてはいない。そこで,本研究ではウィンドラス機構の働きを,臨床で評価可能な中足趾節関節(以下,MP関節)の伸展に対する内側縦アーチの挙上率で定義した。その上で,他の理学所見や歩幅との関係からウィンドラス機構が破綻した症例に対する介入の糸口を見出すことを目的とした。【方法】対象は,健常成人25名(男性12名・女性13名:年齢24.5±2.1歳・身長164.0±9.1cm・体重55.0±10.0kg)とし,ウィンドラス機構の定量評価と,歩幅・下肢の関節可動域(以下,ROM)および筋力の計測を行った。ウィンドラス機構の評価は,全足趾のMP関節の伸展0度に対する他動的な伸展20度条件における舟状骨高の変化率と定義した(以下,ウィンドラス比率)。計測肢位は端座位とし,大腿遠位部に体重の10%の荷重をかけた。歩幅の計測は目盛をつけた歩行路上の歩行をビデオカメラにて矢状面から撮影して判定した。ROMおよび筋力は,股関節屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈・底屈をランダムな順に計測した。筋力は徒手筋力計ミュータスF-1(アニマ社製)を使用し,アニマ社が規定する方法に準拠して計測した。また,筋力は3回計測,歩幅は4回計測した平均値を採用し,各々体重比(%BW)と身長比(%BH)を算出した。統計学的分析は,各項目間の関係をPearsonの相関係数を用いて,危険率5%(p<0.05)で検討した。【結果】ウィンドラス比率の平均は,108.9±4.9であった。ウィンドラス比率とその他の項目の関係は,反対側の歩幅(r=0.44)・足関節背屈ROM(r=0.46)・足関節底屈筋力(r=0.44)に有意な相関を認めた。足関節背屈ROMと足関節底屈筋力(r=0.45)および反対側の歩幅(r=0.38),足関節底屈筋力と反対側の歩幅(r=0.45)にも有意な相関を認めた。【結論】本研究で定義したウィンドラス比率は,MP関節の伸展によるアーチ拳上の大きさを表す。したがって,ウィンドラス比率が高ければ足部の剛性を効率的に高めることができるため,足関節底屈筋による足関節底屈トルクを効率的に前足部へ伝達できると考える。歩行中,このような強力なテコとしての役割が足部に求められるのはTerminal Stance(以下,TSt)である。TStは下腿前傾に伴って足関節背屈を強めるとともに前足部に荷重が移行し,反対側の下肢を振り出す時期である。このようなTStの要求に合わせて,ウィンドラス比率と足関節背屈ROMおよび底屈筋力,反対側の歩幅に相関を認めたと考える。臨床上,MP関節を伸展してもアーチが挙上しないウィンドラス機構が破綻した症例に遭遇する。足部内在筋強化や足底板などによりウィンドラス機構の改善を図るとともに,足関節底屈筋や背屈ROMの拡大により,安定したTStの構築に繋がると考える。
著者
津福 達二 田中 寿明 末吉 晋 田中 優一 森 直樹 藤田 博正 白水 和雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.1661-1665, 2007-10-01
被引用文献数
2

症例は39歳の男性で,2004年1月,うつ病があり自殺企図にてウォッカを大量に飲用し,高度の胸焼け,嚥下障害を生じたため当院へ紹介となった.食道潰瘍および食道狭窄を認め,腐食性食道炎と診断した.希死念慮が強かったため精神科に入院となり,精神面の治療を行った.2月,狭窄症状が強くなったため,空腸瘻を造設し,全身状態の改善および精神状態の安定を待って,7月,非開胸食道抜去術,胸骨後食道胃吻合術を行った.経口摂取可能となり術後32日目に退院した.高濃度のアルコール(ウォッカ)飲用による腐食性食道狭窄を経験したので報告する.
著者
伊藤 美智子 白井 麻子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.19-33, 2015

本研究は,体育系大学生265名に知的障害者(ダウン症者6名,自閉症者1名,知的障害を伴う肢体不自由者1名)とその母親,弟妹をメンバーとするダンスグループの公演を客席で鑑賞させて,どのようなことを享受したのかを3種類のアンケートを実施して明らかにした。その結果,下記のような事が明らかになった。①作品の特徴を的確に捉えていた。②律動性に溢れた公演であったという印象を強くもっていた。女子の方が高い評価をする傾向があった。③自由記述による感想は,『感情』 『ダンス・作品』 『経験』 の3つの上位カテゴリーにまとめられ,その下位カテゴリーとして 『感情』 〈楽しい〉〈ヒーリング〉〈陶酔感〉,『ダンス・作品』〈表現性〉〈一体感〉,『経験』〈新奇性〉〈勉強になった〉〈今後に活かす〉にまとめられた。対象者が享受したものは,①ダンスそのものの学習,②ダンスを通じた特別な教育的支援を必要とする生徒への支援者・指導者としての学習,③社会における障害者の活動に関する理解についての学習に大別できた。また,ダンス教育における鑑賞学習の教育的意義について示唆を得ることができた。
著者
安田 友久 中村 正直 白石 茂雄 増田 麗子 三浦 雅史 川口 徹 和久井 鉄城
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0063-C0063, 2004

【はじめに】2003年2月「第5回アジア冬季競技大会青森2003」の開催に引き続き,3月に青森県と岩手県を会場に「2003ジャパンパラリンピック・アジア国際障害者スポーツ交流大会」が開催された。青森県ではクロスカントリースキー,アイススレッジホッケーの2種目が行われた。この大会において青森県理学療法士会では青森県内の会場に理学療法室を開設し,選手・役員への理学療法サービスを実施した。今回,演者らが直接関わった八戸会場を中心に,今後の対応について検討したので活動内容と合わせて報告する。<BR>【大会概要】八戸会場大会期間:2003年3月6日から9日まで,八戸会場:八戸市新井田インドアリンク,競技種目:アイススレッジホッケー,参加チーム:北海道,八戸,長野,東京,韓国(国際交流大会として参加)の計5チーム,大会参加選手数:74名。試合形式:日本国内4チームでのトーナメント方式,韓国チームは全3試合。<BR>【活動内容】活動期間は大会期間と同様で,競技会場内の一室を理学療法室として開設した。理学療法室には選手の応急処置,コンディショニングなどに対応できるよう,物理療法機器,テーピング材料一式,治療用ベッドなどを用意した。人員配置は5施設から計10名の理学療法士が常時2から3名となるよう配置した。<BR>【活動結果】利用者は全て選手で,利用者のべ人数および治療行為のべ件数は,それぞれ56名,81件であった。治療目的としては疲労回復(40%),リラクゼーション(24%),安静固定(17%),消炎鎮痛(14%)の順になっていた。治療手技としては,マッサージ(47%)が最も多く,次いで超音波(14%),テーピング(12%)の順で多かった。<BR>【まとめ】今大会では疲労回復・リラクゼーションを目的としたコンディショニングに対するサポートが多かった。また,コンタクトスポーツという特性からか,打撲に対するアイシングや安静固定・疼痛軽減を目的としたテーピングの処置も多い傾向にあった。今回の活動を通じて,特にテーピングやマッサージは理学療法士間で技術格差があり,技術面に対する事前の準備不足が考えられた。八戸会場では,試合会場内に理学療法室を開設したが,選手から宿舎での処置希望の声も多く,会場と宿舎で対応できる体制が望まれると考えられた。また,中にはオーバーユースからくる慢性疼痛を訴える選手もおり,超音波やストレッチングの治療手技も有用であった。近年,スポーツ現場に携わる理学療法士が増えつつあるが、障害者スポーツに関わるトレーナーや理学療法士の数は,健常者スポーツの現場に比べまだまだ少ないことが予想される。今後,障害者に対する知識を多く持つ我々理学療法士が障害者スポーツにも積極的に関わり,健常者と同様に理学療法サポートを行っていく必要性があると考える。
著者
山内 一彦 白石 健一郎 檀原 徹
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.643-670, 2014-10-25 (Released:2014-11-13)
参考文献数
50

This paper examines changes to the river system and faulting in the Ikachi Basin and surrounding area in the southwestern part of the Chugoku Mountains since the Middle Pleistocene, based of an investigation of the fluvial terrace and tectonic landforms. Fluvial terrace surfaces in the study area are classified into five levels: H, M1, M2, L1, and L2, in descending order. The M1 terrace surface is widely observed in the Ikachi Basin, and there is a narrow band of Sanbe-Kisuki tephra on the top layer of the terrace deposit, suggesting that the surface was formed around 110-115 ka. Aira-Tn tephra is observed in the L2 terrace deposit, indicating that it was formed around 30 ka. The distribution of terrace and deposit indicates the existence of the Paleo-Shiwari River, which differed from the river system existing today. The Paleo-Shiwari River flowed northwestward from the southeastern margin of the Ikachi Basin, and from near Hizumi, westward through the basin. There is a possibility that the upper reaches of the Paleo-Shiwari River reached Yashiro Island. The Paleo-Shiwari River lost its upper reaches as a result of river capture around the current Obatake-Seto in Middle Pleistocene. Furthermore, as a result of continued large-scale uplifting in the downstream area of the Paleo-Shiwari River basin, accompanied by activities of the Hizumi and Oguni faults since the Middle Pleistocene, the height of the riverbed of the Paleo-Shiwari River increased and its riverbed slope became gentle. At the same time, continued large-scale subsidence with faulting from the downstream basin of the Yuu River to Aki-Nada led to a gradual steepening of the riverbed of the Yuu River, and the valley head of the Yuu River along the fracture zone expanded due to erosion. Subsequently, the Paleo-Shiwari River was captured by the Yuu River at the Hizumi depression around 110-115 ka during the formation period of the M1 surface. It is concluded that river capture between the Yuu River and the Shiwari River occurred due to the influence of crustal movements.
著者
白仁田 和彦 林 健一郎 大坪 昭文
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.70, no.689, pp.192-199, 2004-01-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
10

This paper describes a method of giving impression words for images based on colors. 160 impression words are prepared, and colors which are strongly related to each of the 160 impression words are registered into the system in advance. In this system, we adopt Lab color space which is a color coordinate system and can obtain exact color difference between pixels and extract main colors of images based on the results of clustering in Lab color space. The number of main colors of an image is determined when the sum of pixels of the main colors is larger than 85% of all the pixels in the image, and the colors with the larger number of pixels are determined in ascending order. We propose a distance between the main colors and the registered colors. In this system mCn combinations of distances between m colors registered in an impression words and n main colors are obtained. Using the mCn distances, we calculate a minimum distance and an average distance every 160 impression words. By the comparison of the minimum distance and the average distance of each impression word, the system determines suitable impression words for the image. Experimental results show the proposed method to be effective.
著者
平野 篤 亀田 倫史 白木 賢太郎 田中 丈士
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、独自技術によって得られた超高純度カーボンナノチューブを用いて、カーボンナノチューブとタンパク質からなる複合体であるタンパク質コロナの形成機構を解き明かすことを目的としている。カーボンナノチューブなどのナノ粒子が環境中から生体内に取り込まれた直後に形成されるタンパク質コロナの構造は、ナノ粒子の生体内動態を決定づける極めて重要な因子であり、ナノ粒子の安全性と深く関わっている。本年度は、昨年度に引き続き、タンパク質コロナ形成におけるカーボンナノチューブの骨格構造や電気的性質の影響を明らかにするとともに、アミノ酸とカーボンナノチューブの相互作用を調べることで、タンパク質とカーボンナノチューブの相互作用を要素還元的に理解することを目指した。分子動力学計算によって得られる相互作用の熱力学的な物性値に対するカーボンナノチューブの曲率依存性を調査した結果、曲率の増加によって相互作用が減少することが明らかになった。また、昨年度、タンパク質とカーボンナノチューブの化学的な相互作用である酸化還元反応が、カーボンナノチューブの原料に残存する夾雑物に由来する金属イオンの影響を受けることを明らかにしており、本年度は、タンパク質以外の生体分子(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドなど)とカーボンナノチューブの間の酸化還元反応における遷移金属イオンの効果を調査することで、酸化還元反応の多角的な理解を目指した。結果として、カーボンナノチューブに含まれる微量の鉄イオンによって引き起こされるタンパク質とカーボンナノチューブの間の酸化還元反応は金属キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)によって十分に抑制される一方、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドとカーボンナノチューブの間の酸化還元反応はEDTAによって抑制されないことが明らかになった。
著者
白田 理人
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.23-40, 2021

<p>喜界島小野津方言の呼称名詞(親族呼称や呼びかけに使われる人名)は,母音の長さの交替と音調型の点で特殊な振る舞いを示す。本稿は,呼称名詞の音韻的特徴について記述した上で,呼びかけの下降イントネーションが呼称名詞の語彙的な特徴に通時的変化を及ぼしたことを主張する。本稿において提案する仮説は,呼称名詞にアクセント型の推移と長母音化の二つの連続的な変化が起こったというものである。このうち二番目に起きた変化が,最も音韻的独立性の低い助詞によって部分的に阻止されたため,呼称名詞の特殊性が生じたと考えられる。</p>
著者
中山白峯 著
出版者
駸々堂
巻号頁・発行日
1901
著者
三木 誓雄 寺邊 政宏 森本 雄貴 樋口 徳宏 小川 亜希 白井 由美子 岡本 京子 菱田 朝陽 Donald C. McMillan
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.597-602, 2013 (Released:2013-04-24)
参考文献数
31

悪液質は「単なる栄養補給では改善できない、骨格筋喪失を伴う栄養障害」と定義される。悪液質は通常の低栄養とは異なり全身の代謝異常を伴い、治療の継続性、有効性に悪影響を及ぼし、QOLの低下のみならず生存期間の短縮をも、もたらす。これまで悪液質はがん終末期の病態と考えられてきたが、比較的早期の段階から出現し、病期に依存しない予後不良因子であることがわかってきた。20世紀半ばより悪液質に対する強制的経腸あるいは経静脈栄養が試みられてきたが、有効性を示すエビデンスは得られなかった。近年全身性炎症を制御する目的でEPAが悪液質の治療に用いられるようになった。しかしながらQOLを向上させるエビデンスは示されているものの生存期間の延長に関しては一定の見解は得られておらず、今後治療開始時からの免疫栄養療法の早期導入や分子標的治療を初めとする抗腫瘍療法との組み合わせなどが期待されている。