著者
緒方 里紗 小原 美紀 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.137-151, 2012 (Released:2013-06-06)
参考文献数
17

人々は社会的成功を努力で決まると考えているのであろうか,それとも運で決まると考えているのであろうか.本論文では,日本人が持つ社会的成功に関する価値観の形成要因を分析する.とくに,学卒時に直面する経済状況が価値観の形成に与える影響に注目する.分析には『くらしと好みの満足度についてのアンケート調査』(大阪大学)による回答を用いる.調査回答の特異性を利用して,個人のさまざまな異質性を捉えた上で,主観的な回答に対する同一個人の回答バイアスや測定誤差の影響を除いて分析した結果,学卒時に偶然にも不景気に直面した者は「社会的成功は努力よりも運で決まる」という価値観を持ちやすい可能性があることが示された.さらに,男性と女性の価値観の形成要因には大きな違いが見られることが明らかにされた.
著者
緒方妙子 大塔美咲子
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.57-65, 2013-03

本研究は大学生の月経前症候群(PMS)と日常生活習慣、及び症状出現時の対処としてセルフケアしていることの実態を明らかにし、その関連性を探ることを目的としている。PMS症状に関しては、PMSメモリーリスト52項目1)の結果を、似通った症状2)をまとめて身体・精神・社会的症状それぞれ10項目とし、症状の程度別に示して分析した。統計解析は、単純集計による分析、及び相関に関しては、ソフトSPSS statistics19を用いて、Pearson の両側有意差検定を行った。看護学科女子大学生(1・4年生)212名を対象に質問紙調査を行った結果、以下のことが明らかになった。1.月経前症候群の認知度は4年生69.6%、1年生18.6%であり、学年差が表れていた。2.月経周期が規則的な有効回答者162名中、月経前に何らかの症状が現れる者は97.0%に及んだが、その内PMSを知らない者は56.7%であった。3.日常生活に影響があるPMS症状を持つ者は61.7%、症状が激しい者は30.2%であった。主な身体的症状は「眠くなる」、「下腹痛、腰痛」、「食欲の変化、下痢、便秘」、「ニキビ、肌荒れ」、「疲れ易い」、「頭痛、肩こり、冷え」、精神症状では「イライラする」、「無気力・憂鬱」、「集中できない」、社会的症状では「物事を面倒くさく感じる」、「-人でいたい」などであった。4.日常生活習慣の「運動」、「朝食の摂取」、「良好な睡眠」、「気分転換」は、PMS精神症状と有意な関連がみられた為、日常生活でのこの点での配慮がPMS精神症状軽減に有用であることが示唆された。5.日常生活に影響するPMS症状を持つ者で、セルフケア実践者は87%であり、その主な内容は、「十分な睡眠」、「気分転換」、「周りに"月経前"と言う」、「お腹・腰を温める」であった。この中で幅広い症状に最も多く適用されていたのは「十分な睡眠をとる(60.9%)」であった。
著者
片山 卓也 島津 明 東条 敏 二木 厚吉 緒方 和博 有本 泰仁 落水 浩一郎 早坂 良
出版者
JAIST Press
巻号頁・発行日
vol.2, 2007-09

法令工学は,法令文書の作成や変更,法令実働化情報システムの構築を系統的に行うため,人工知能,言語処理,ソフトウェア工学の研究成果を使おうとする工学的アプローチであり,21 世紀COEプログラム「検証進化可能電子社会」の主要研究課題の一つである.安心な電子社会の実現には,電子社会の仕様書である法令を適切に作成し,それを施行する情報システムを正しく構築しなければならない.また,法令の改定に対しては,関係法令への変更伝播を整合的に行い,それを情報システムへの変更に矛盾なくつなげる必要がある.法令工学は,このような問題を工学的に解決することめざして,本COEで世界で初めて提案されたものである.現在,企業活動における法令尊守などが大きな社会問題として取り上げられているが,組織における規則の作成や尊守機構の設計なども法令工学の範疇に入ると考えられ,今後訪れる本格的な電子社会時代において,安心で公正な社会や組織の設計や実現に,法令工学はその基本技術を提供するものであると考えている.本書は,本COEにおける法令工学の研究活動を紹介するために書かれたものであるが,各章の著者は以下のようである.第1章 片山卓也 第2章 島津明 第3章 東条敏 第4章 二木厚吉,緒方和博,有本泰仁 第5章 落水浩一郎,早坂良
著者
成田 博実 青木 洋子 出盛 允啓 緒方 克己 津守 伸一郎 金田 礼子 菊池 英維 菊池 武英 黒川 基樹 黒木 康博 田尻 明彦 中野 俊二 楢原 進一郎 西田 隆昭 古結 英樹
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.58-64, 2013-02-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
11

2010 年 4 月 20 日に宮崎県児湯郡都農町で発生した口蹄疫が全県下に拡大蔓延 (発生農場 292カ所, 発生自治体 5 市 6 町) し, 約 29 万頭の家畜が犠牲になった。その防疫作業に伴う皮膚病変について宮崎県内の皮膚科医へのアンケート調査で 50 例を集計できた。年齢は 20~75 歳 (平均 42.0 歳), 男 45 例, 女 5 例であった。発生月は 5 月 17 例, 6 月 22 例, 7 月 7 例, 8 月 1 例と推移した。職種は県内公務員が 32 例と最多であった。疾患は化学熱傷 46 例, 急性結膜炎, 汗疹性湿疹, アトピー性皮膚炎の増悪, 注射針刺傷, 蜂窩織炎, 虫刺症, 毒蛾幼虫皮膚炎が各 1 例, 防疫作業後発症の帯状庖疹 1 例であり, このうち 3 例が 2 疾患, 1 例が 3 疾患を合併していた。46 例の化学熱傷の受傷状況は豚・牛舎の消毒作業 18 例, 作業場所不明の消毒作業 25 例, 埋却作業 2 例, 鶏舎の消毒作業 1 例であった。原因となる化学物質は消石灰 (水酸化カルシウム Ca(OH)2) 23 例, 炭酸ソーダ (炭酸ナトリウム Na2CO3) 4 例, 不明 19 例であった。受傷部位 (重複あり) は顔面 5 例, 上腕 3 例, 前腕 14 例, 手 6 例, 大腿 17 例, 膝 4 例, 下腿 51 例, 足 2 例で, deep dermal burn が多かった。発症機序は非耐水性防護服からの薬液のしみ込み, 袖口や破れからのしみ込み, 発汗による体表面への拡散, さらにはゴム長靴と皮膚との摩擦や股ずれ等による皮膚損傷部で, 薬液が皮膚に浸透し化学熱傷に至ったものと推察した。
著者
稲葉 洋平 大久保 忠利 杉田 和俊 内山 茂久 緒方 裕光 欅田 尚樹
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.31-38, 2014 (Released:2014-01-29)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

Objective: To determine constituents of fillers and mainstream smoke from Neo Cedar. Methods: Neo Cedar is a second-class over-the-counter (OTC) drug and similar to cigarettes in a number of ways. In particular, the design and usage are very similar to those of cigarettes. For the fillers of the drug, the levels of nicotine, tobacco-specific nitrosamines (TSNA), and heavy metals, and mutagenicity were determined using the methods for cigarette products. For the mainstream smoke, the levels of tar, nicotine, carbon monoxide (CO), TSNA, polycyclic aromatic hydrocarbons (PAH), and carbonyl compounds were also determined using the methods for cigarettes. The mainstream smoke from the drug were collected with a smoking machine using two smoking protocols (ISO and Health Canada Intense methods). Results: The nicotine and total TSNA levels in the fillers of the drug averaged 2.86 mg/g and 185 ng/g, respectively. The nine species of heavy metals were also detected in the fillers of the drug. The levels of nicotine, tar, CO, TSNA, PAH, and carbonyl compounds of mainstream smoke from the drug were higher when determined using the HCI regime than when using the ISO regime. The mutagenicity of the mainstream smoke determined using the HCI regime was also higher than that determined using the ISO regime. Conclusion: In this study, all constituents of Neo Cedar were determined by methods for cigarette products. The drug had a ventilation hole on its filter. Thus, its constituents are different from those determined by the smoking protocols. Neo Cedar users should be careful of higher exposure to the hazardous gases owing to smoking patterns.
著者
緒方 奈保子 車谷 典男 上田 哲生 西 智
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高齢者の眼科健診「藤原京EYEスタディ」を行い2868人(男性1513 人、平均年齢76.3±4.9)が受診した。年齢とともに視力が低下していたが、平均矯正視力はlogMAR0.048で、視力低下(logMAR>0.2)は6.6%であった。白内障術後は19.5%。認知機能検査MMSE平均は27.3±2.3、認知機能低下あり(23点以下)は5.7%で、年齢、視力低下、学歴と関連を認めた。加齢黄斑変性(AMD)患者66例における血漿PEDFは10.2±3.14μg/mlとコントロール群8.23±1.88μg/mlより高く(p<0.01)、PEDFがAMDの発症に関与している可能性が示唆された。
著者
松岡 裕之 緒方 規男
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.203-207, 2013-12-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
18

マウスを麻酔して2群に分け,一群には二酸化塩素のスプレーを他の一群には水のスプレーを噴霧したのち,マラリア感染蚊自由に吸血させた.二酸化塩素をスプレーしたマウスに対しては101匹の蚊のうち6匹が吸血した (5.9%) だけで、マウスの感染は13頭中1頭のみ (7.7%) であった.水をスプレーしたマウスに対しては蚊88匹のうち42匹が吸血し (47.7%), マラリア感染は11頭中6頭 (54.5%) であった.二酸化塩素スプレー群は有意差をもって吸血率 (p<0.01)・マラリア感染率 (p<0.05) の低下が見られた.次に両端をメッシュで覆ったチューブの中に蚊を入れ,チューブの片方は空気のみを含むケージに,反対側は二酸化塩素を含むケージに差し込んで,蚊がどちらの側に偏在するか調べた.Anopheles stephensi, Aedes albopictusおよびCulex pipiens pallensの3種蚊とも0.03 ppm以上の二酸化塩素濃度において反対側(空気側)に偏在した.二酸化塩素は蚊に対する忌避作用があるといえた.
著者
緒方 悠輝也 大衛 亮正 一井 雄太 村瀬 敦宣
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.23-011, (Released:2023-06-30)
参考文献数
15

Four collected gobiid specimens (55.3–87.6 mm in standard length) and a single photographed and released individual, from the coast of Miyazaki Prefecture, Kyushu, southern Japan, were identified as the endemic Japanese species Siphonogobius nue Shibukawa and Iwata, 1998, characterized by a simple infraorbital canal extending below the eye, and the oculoscapular canal between pore’s A' and L' lacking other pores, except for pore D. The species has been recorded to date from the Pacific coast of Honshu, northeastern Japan (between Fukushima and Shizuoka prefectures), the present specimens representing the southernmost known record of the species. A detailed description and color photograph of the Kyushu specimens is provided.
著者
岩田 知孝 浅野 公之 宮本 英 緒方 夢顕
雑誌
日本地震学会2022年度秋季大会
巻号頁・発行日
2022-09-15

2022年6月19日に石川県能登地方でMJ5.4の地震が発生して,K-NET正院(ISK002)では震度6弱を観測し,周辺で被害が生じた.この記録は周波数1Hz程度が卓越していることが見てとれた.染井・他(2022)では,ISK002を含む北陸地方の強震観測点記録を用いて,スペクトルインバージョンにより観測点サイト増幅特性を求めているが,ISK002のそれは,地震基盤面相当の地表観測点のサイト増幅特性を2とした時に,解析周波数帯の0.2-10Hzにおいて,10倍以上の増幅特性を持っていることが示されている.染井・他(2022)では観測点サイト増幅特性を1次元重複反射理論に基づく理論増幅と仮定して,当該サイトのS波速度構造の推定も行っている.これらの結果からはISK002においては,工学的基盤面相当以浅の浅部地盤構造による地震波への影響が大きいと推定されている. 一方,珠洲の平野部においては,1993年能登半島沖地震(MJ6.6)においても建造物被害が発生しているが,単点微動による地盤の卓越周波数特性から,被害を及ぼした地震波の特性と沖積層厚についての議論がなされていた(土質工学会・1993年地震災害調査委員会(1993)). 本研究ではこれらの調査結果を踏まえ,微動アレイ探査を実施し,当該地域の地質ボーリング資料などをもとに,ISK002及び周辺地域の浅部地盤構造と地震動増幅特性についての議論を行う. 参考文献:社団法人 土質工学会・1993年地震災害調査委員会(1993), 1993年釧路沖地震・能登半島沖地震災害調査報告書,404pp. 染井一寛・浅野公之・岩田知孝・大堀道広・宮腰 研(2022) , 北陸地方の強震観測点におけるサイト増幅特性とそれを用いた速度構造モデルの推定,京都大学防災研究所研究発表講演会, B120. 謝辞: 国立研究開発法人防災科学技術研究所強震観測網(https://doi.org/10.17598/NIED.0004)のデータを利用しました.関係諸氏に感謝致します.本研究は令和4年度科学研究費(特別研究促進費)「能登半島北東部において継続する地震活動に関する総合調査」(22K19949,研究代表:平松良浩(金沢大学))によるサポートを受けました.記して感謝致します.
著者
平賀 秀明 草野 真雪子 山﨑 彩菜子 緒方 美咲 植草 秀介 菅澤 彩香 多賀谷 理央 秋本 義雄 眞鍋 知史 木内 規之 大橋 綾子 早田 佳奈 久山 登
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.10-27, 2022-06-10 (Released:2022-06-21)
参考文献数
22

Owing to the fear of worsening their relationship with physicians, several pharmacists hesitate to contact physicians regarding prescription-related questions. We investigated the personal factors of pharmacists contributing to their hesitation to contact physicians regarding prescription-related questions. We analyzed the responses of 213 pharmacy pharmacists. A comparison of the degree of hesitation to contact physicians regarding prescription-related questions revealed that the most hesitant questions were pertaining to “the same prescription content from before”; insurance questions (3.37) were higher than medical questions (3.20) (P=0.006). The multiple regression analysis results revealed that “pharmacy work is busy and there is no time” was influenced by regular employees (medical (β=−0.181, P=0.030) and insurance (β=−0.257, P=0.002)). “A co-pharmacist said no questions needed” was influenced by the sex of pharmacists (medical (β=0.194, P=0.011) and insurance (β=0.177, P=0.020)). Overall, type of questions (medical or insurance) and individual backgrounds (prescription issuing medical institution, pharmacy scale, location, age, sex, employment type, years of service, current management pharmacist, and hospital work experience) have a complex effect on the pharmacists’ psychology. To facilitate pharmacists to contact physicians regarding prescription-related questions, physicians and pharmacists should share information and communicate on a daily basis, such as actively participate in joint training programs. It is also important to create an environment where regular employees and female pharmacists can work comfortably. The smooth resolution of prescription-related questions by relieving the psychological pressure of pharmacists will improve patient safety.
著者
緒方 剛 中村 好一 圓藤 吟史 林 朝茂 本田 靖
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.556-564, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
22
被引用文献数
1

目的 2003年に茨城県神栖町で井戸水の飲用による神経系健康被害が見つかった。これは,ジフェニルアルシン酸で汚染された水による集団中毒として初めて経験する例である。その後,より低い濃度の井戸水を飲用した同町民も確認された。本研究は曝露住民の神経系およびその他の自覚症状と流・死産の状況を検討した。方法 2004年に町内に居住する10~65歳の住民のうち,ヒ素換算値 2,262 μg/L のジフェニルアルシン酸を含む井戸水を飲用した高濃度曝露住民20人,2–230 μg/L(平均 85 μg/L)の井戸水を飲用して毛髪または爪からジフェニルアルシン酸の検出された中低濃度曝露住民67人,および後者住民の性・年齢をマッチした非曝露住民134人を対象とし,自覚症状,妊娠および自然流産について質問紙法で面接調査した。年齢で層別化して症状を比較した。結果 神経系自覚症状の「目眩」,「立ちくらみ・ふらつき」,「手足がビリビリ・ジンジン」,「文字が書きにくい」,「物が二重に見える」の出現割合,および神経系以外の自覚症状の「不眠」,「憂うつ」,「頭痛」,「皮膚が痒い」,「体重変化」,「下痢」,「咳」,「息苦しい」の出現割合は中低濃度曝露住民で非曝露住民に比べて有意に高かった。高濃度曝露住民でも高い傾向がみられた。1999~2003年に非曝露住民では妊娠が15回あり自然流産はなかったが,妊娠中に井戸水を飲用した中低濃度曝露住民では 5 回の妊娠で自然流産が 3 回あった。この自然流産は2001年以後であり,そのうち 2 人が飲用中止後に再度妊娠し出産した。結論 ジフェニルアルシン酸の曝露住民は,非曝露住民よりも神経系およびその他自覚症状の出現割合が有意に高かった。また,中低濃度曝露住民で自然流産がみられた。
著者
髙田 賢 大河内 博 緒方 裕子 栗島 望 原 宏 木村 園子ドロテア 高柳 正夫
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.26-33, 2014-01-10 (Released:2014-07-18)
参考文献数
23

東京都心から約30 km離れた東京農工大学FM多摩丘陵(東京都八王子市)にある30 m観測タワーの7高度で、大気中酸性ガス (SO2、HNO3) とエアロゾル (SO42-、NO3-) の鉛直観測を行い、森林フィルター効果の検証を行った。酸性ガスの鉛直分布は高度の低下に伴う濃度減少が見られ、森林フィルター効果が確認された。酸性エアロゾルでは粒径によって鉛直分布が異なり、微小粒子領域で高度の低下に伴う濃度減少が見られた。樹冠上空 (30 m) と樹冠下部 (6 m) の大気中濃度を用いて、森林フィルターモデルを適用したところ、酸性ガスでは両者の濃度差と樹冠上空濃度との間に高い正の相関があり、樹冠捕捉率はSO2で0.55、HNO3で0.43と推計された。酸性エアロゾルは微小粒子領域で樹冠フィルターモデルが適用可能であり、樹冠捕捉率はSO42-で0.52、NO3-で0.45と推計された。
著者
緒方 由紀
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.33-57, 2017-03-31

現代社会論を構成する包摂や共生社会といった概念は、多元的な政策への構築を基盤としながら、一方に市民社会の成立と構成員である自立的市民像としての新しい権利や義務の確立を求めるものになっている。そのことは精神保健医療福祉における新たな政策・実践面でも共通の課題であり、その一つが当事者の位置づけをめぐる議論である。つまり発病からさまざまな医療・福祉・生活等のサービスの利用、さらに市民生活の獲得にいたるまで、精神障害者の意思を精神保健医療福祉システムにどのように位置づけるかということに深く関わっている。そうした時代認識のもと本稿では、精神障害当事者の意思決定および意思の表明について、障害者権利条約や国のモデル事業として検討されてきたアドボケーター機能や意思決定支援ガイドライン構想等をとりあげ、現状の意思決定にかかる支援の方向性の整理を行った。精神障害者は法律上、医療的保護を必要とする存在としてとらえられてきたものの、一方で「社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進」という理念も同時に掲げられていることからすると、広く障害者の権利と結びつく形で支援が示されなければならないことになる。精神障害者に対する非自発的入院・治療や行動制限等といった強制介入が、精神医療の手続き面での本人の不在を認めうるのは、本人の尊厳を尊重しつつも専門的介入の適正性の担保がとれているかという社会的了解事項の側面ももちあわせている。言い換えれば本人の意思表明や意思決定に関して、権利擁護の視点からだけではなく、社会的責務として危機管理や安全・安心を組織や地域の中では考えなければならないという現実の中で、時に意に反した介入の判断がなされることを再確認した。最後に、意思決定をめぐるさまざまな議論の行方が、支援者側のあるべき姿にとどまるのではなく、法的能力(legal capacity)とその行使のための意思表明のありかたの契機として進めていく必要性を論じた。意思表明意思決定支援精神障害者法的能力の享有専門的介入
著者
緒方 正則 下間 頼一 塩津 宣子
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
公開研究会・講演会技術と社会の関連を巡って : 技術史から経営戦略まで : 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.51-54, 2006-12-01

Authors assumed that the origin of the standard gauge of the railway is in the interval of wheel tracks of ancient carriages such as war chariots, two-wheeled carts and four-wheeled wagons. Basing on the assumption, authors have measured the interval of wheel track at ancient ruins and ancient highway of the Eurasian Continent and the African Continent for long years. On the other hand, the oldest vehicle that exists in the world is chariot of Tut-ankh-Amen who was the Pharaoh of ancient Egyptian of the 18th New Dynasty before 3,500 years and another two chariots of the former dynasty. Authors visited at the Egyptian Museum in Cairo for four times till now and observed six chariots in detail that were displayed inside the glass case. Considering findings of the interval of wheel tracks, authors report the specifications of Tut-ankh-Amen's chariots in this paper.